【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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悪魔感染(デビルハザード) 参

 

 

 換気もロクにされていない、埃臭さが鼻に付く倉庫代わりに使われてるだろう一室。乱雑に投げ込まれていた壊れている家具を適当に霊符へ収納して行き、何とか作り出した空間に車座になって座る。

 

 室内故に火が使えない……訳でも無いが、この埃臭いところで火を使いたくないと満場一致で決まった為、大人しくガイア連合製のカロリーバーをみんなで食べる。

 

 もぐもぐ咀嚼してスポドリで流し込めば食事終了。後は会議の時間だ。

 

 

「真面目な話になるが、攻略どうする?」

 

「何か問題でもあるの?」

 

「俺じゃなくてお前らにな?」

 

「……?」

 

 

 首を捻る岩手幹部二人。おいおい、気付いてないのか?

 

 

「一般黒札の俺ならともかく、お前らには幹部としての仕事があるだろ?」

 

 

『『……あ』』

 

 

 漸く気付いたらしい。

 

 

「そうよね。今日中に片付けるつもりだったけど、この感じだとちょっと厳しいわ」

 

「私も一族の指導や調査の割り振りがあります……」

 

「だろうな。この依頼は予想以上に面倒そうだし、まず間違いなく一日じゃ終わらんぞ」

 

 

 単純に討伐だけなら一日で終わらせる事も可能だが、被害者の確保や原因の調査までやるとなると、俺でも一日は厳しい。

 

 

「悩ましいわね。セツニキが居る内に攻略したい気持ちもあるけど……」

 

「放置しておくとロクな結果にならなさそうですもんね……」

 

「今回は依頼受けてるから最後まで面倒見るが、次回からはあんな友達価格だと無理だぞ?今回限りとは限らないし、〝手に負えない事態〟が起きた時の事を考えれば一度幹部勢で話し合うべきなんじゃないか?」

 

「帰ったらすぐに会議するわ。……ちなみに星祭の人を呼ぶのに幾らぐらい掛かるの?」

 

「伝も面識もないヤツが相手なら最低でこれぐらいだな」

 

 

 スマホの電卓をポチポチ叩いて愛宕ネキに見せる。

 

 

「……円よね?」

 

「マッカだぞ」

 

「あの、疑ってる訳じゃないのですが……どうしてこんな額に?」

 

「一番稼げない破壊神系俺達の日給がこれぐらいなんだよ。俺とか術系は触媒の関係で日給にプラスして触媒代が上乗せされるし、下層で必須の斥候系やヒーラー系は殿様商売が許されるレベルで稼げるんだわ」

 

 

 仲間内ならノリと勢いで無料(タダ)でも良いが、流石に地方の為にタダ働きしてこい!とは幾ら俺でも言えん。

 

 

「真面目に修羅勢召喚用の積み立てしないと不味いわね。いざという時の保険があるのと無いのとじゃ所属してくれてる黒札の安心度が違い過ぎるわ」

 

「他の支部も同じ様にいざという時の積み立てをしてるんですか?」

 

「トップが修羅勢なら無料だから……」

 

「あー……岩手支部とは根本的に違うんですね……」

 

「実力が無ければそもそも人が集まらんし、ちひろネキや富豪俺達も支援しないからな」

 

 

 呉支部を始めとする修羅がそのまま支部長やってる場所は、基本的に問題が起きても支部長が解決して一瞬で終わる。その際に掛かる費用がどうなるかは各支部長判断なので、たぶん大半はタダ働きしてると思う。

 

 それと同じ事が岩手支部も出来るんじゃないか?と思うかも知れないが、岩手支部に所属してる黒札の平均レベルは二十前後。最大は愛宕ネキの四十。

 

 残念ながらその程度で全ての問題を解決出来る程、この世界は人間に優しくない。

 

 

「はぁ……ナイナイ尽くしで嫌になるわ」

 

「一つ気になったのですが、主様の様(修羅勢)になれば問題解決では?」

 

「レティシアさん。普通の人は死の恐怖に耐えられないの。それを精神力で乗り越えるから修羅勢は頭が可笑しい(イカれてる)って言われてるのよ」

 

「私も強くなる為の努力を欠かした事は無いですけど、やっぱり常識の範囲内で収まってしまいますね」

 

「んー……そんなものですか」

 

 

 イマイチ理解が及ばないのは、レティ自身が修羅勢にカウントされるからだろう。ついでに言えば、俺らと付き合いが長い事も原因な気がする。

 

 何気にレティはレコードホルダーだしな。ガイア連合内で修羅勢を蘇生&治療した回数の単独トップは伊達じゃない。

 

 

「セツニキ。やっぱり岩手支部に来ない?今なら過激なサービスするわよ!」

 

「わ、私も頑張りますよ!」

 

「見た目だけなら高級式神作れば解決するし、性欲だけならミナミィネキの店や嫁が居るからノーと言わせて貰おう」

 

「それで話が終わってしまうのが黒札の酷いところよね……」

 

「その為にショタオジが頑張ってるからな」

 

 

 最初は悪魔、次は地方。今だとメシア教にハニートラップ(ハニトラ)を食らわない為にスケベ部が全力で性能向上を目指している。最新式はどうなってるやら。

 

 

「はぁ~やめやめ!今は異界に集中しましょ。日付が変わる前に帰らないと、高雄がマヨヒガのリセットに行けないわ」

 

「そりゃ大切だ」

 

「大切な金の卵を生む鶏ですからね」

 

 

 二人が立ち上がるのに合わせて俺とレティも立ち上がる。さて、頑張りますかね。

 

 

 

 

 残念ながら異界の攻略ならず。二十二時まで粘ったが、ギミックの攻略には至らなかった。

 

 結界を張って異界内部のMAGを安定させた後、【脱出(トラエスト)】で離脱。その場で解散。

 

 ちなみに戦闘中の様なMAGが乱れまくってる時に【脱出】を起動する事はオススメしない。最悪、出た先で〝壁の中に居る〟状態となる。

 

 今回の様な生体系異界も脈動に合わせてMAGが動くので、結界を張って安定させないと危険が危ないのだ。ガイア連合製の【脱出】アイテムはセーフティ付きなので問題ないが。

 

 岩手内で活動する時に良く使ってる旅館にレティと二人で泊まり、暖かい飯と温泉と夜の運動を楽しんだ翌日。

 

 

 俺は一人で異界に訪れていた。

 

 

「何というか〝因果〟ってヤツの凄さを感じるな」

 

 

 悪魔と人間の合体または融合。これは〝ぼく〟が犠牲になった時に使われていた〝合体の壺〟を想起させる。

 

 次にメシア教の転生者と殺り合った月水石神社近くの過激派拠点で行われていた肉体の肥大化と拡張。さらに複数の母体を繋ぎ合わせ、管理する技術。

 

 ここまで揃えば、最初にやり合ったキリスト教徒のレギオンも関係していると見た方が良い。メタ的になるが、〝因果〟という物を主軸にして考えるべきだ。

 

 何せここはオカルトありきのメガテン世界。無関係だったら楽になるだけだし、最悪を想定しておいた方が良い。

 

 頭で今回の件について考えながら、両手は別の事に使う。この異界を攻略するまでの間、一般人に余計な被害をもたらさない為にも結界の構築は必須。

 

 本来なら鬼手一族の仕事だが、流石にレベル五十以上の異界を封印、管理するのは無理だ。流石の俺もそれを理解していて任せる程、耄碌していない。

 

 結界の構築を終え、綻びが無いかの最終チェック。……問題無し。これで最低でも被害は結界内部に留まるだろう。

 

 一仕事を終え、気晴らしに一服をしようと懐に手を伸ばすが、運悪く煙草の箱は空だった。今朝の一本が最後だった様だ。

 

 嫌煙家俺達のお陰か年齢確認が年々厳しくなってきているので、近くのコンビニで購入する事は不可能。何時もならムラサキ辺りに頼むんだが、残念ながらムラサキ達は仕事中。

 

 仕方なく()()を取り出し、特別に調合した刻み煙草を詰め込み、火を付ける。

 

 

「大自然の中で煙管を吹かすのも乙なもんだ」

 

 

 実はこの煙管、煙々羅の召喚器だったりする。元々は過激派に押収された名家の持ち物だったっぽいが、それを俺が強奪した形となる。

 

 その関係で煙管(これ)を使うと煙々羅が嬉しそうに抱き着いてくるんだよな。所詮は煙なので、せっかく弄った爆乳の感触は無いが。

 

 僅かに残した火種へさらに刻み煙草を丸めて投入。煙管は三口程度しか吸えないので、本当の意味で一服したら終わる。紙煙草に慣れた人間には少し物足りないのは言うまでも無い。

 

 吸い終えた煙草の灰を携帯灰皿に叩き込む。アニメや漫画の様に雁首*1で灰皿の縁をカンカン叩いて灰を落とす事は止めた方が良い。

 

 正しい灰の落とし方は火皿を下に向けて遠心力で落とすか、煙管を持っていない方の腕で持っている方の腕を叩く形となる。まぁ、俺は叩いて落とすけどな!

 

 ちなみに歌舞伎で使われる場合、演じる役によって煙管の持ち方が変わる。

 

 武士は羅宇を下から支える形だ。町民は羅宇をペンの様に持つ。農民は雁首を下から支え、博徒は吸い口をペンの様に持つ。

 

 煙管一つの持つ場所、持ち方だけで、当時の生活を魅せる事が出来るのも歌舞伎の魅力だな。

 

 

 やはり歴史の深みは素晴らしい。

 

 

 持ち込んだエメマン(珈琲)のプルタブをカチャリと上げて一口。煙草と珈琲のキスの味はうんこらしいが気にしない。というか気にした女を見たことが無い。

 

 煙草嫌いならそもそも寄ってこないし、珈琲嫌いも同じだ。似たような趣味や生活をしている女としか付き合ってないだけだろと言われればそれまでだが、逆に問おう。

 

 趣味や生活習慣の違う女に合わせた結婚生活は辛くないか?

 

 金銭に対する価値観、毎日の食事の味、生活に求める物。育児や教育費に月のお小遣いの額まで夫婦で決めなければならない事は多岐に渡る。

 

 その内の数個すれ違うだけで離婚問題に発展するのに、これからの人生を共に過ごす人間に対して隠し事したまま行けると本気で考えてるのか?

 

 だとしたら甘い。甘過ぎる。

 

 嫁に迎えた女との出会いが職場の場合、女性側の稼ぎは旦那と大差無い事が多い。つまり、最低でも好き勝手使えていた旦那と同額の給料が丸々使えなくなるのだ。

 

 買い物好きの女性にとってはそれが苦になる事は想像に容易く、旦那側はそれを理解しないから嫁の浪費に苛立つ。

 

 子供が出来て、旦那のお小遣いが減ったらさぁ大変!夫婦喧嘩の始まりだ。

 

 ちなみに主夫でも同じ事が言える。立ち位置が変わるだけで、金銭感覚を即座に修正出来るヤツの方が少ないしな。

 

 只でさえそんな火種があるのに、煙草の好き嫌いや食事の味まで積み重なったら長くは続かないだろう。

 

 そう考えると、黒札の式神嫁や各勢力のハニトラ要員は凄まじい。

 

 見目良く、趣味に寛容。能力は優秀なのに平凡な俺達を立ててくれる。そんな理解力のある嫁に絆されない俺達は少ないだろう。

 

 だからこそ製造班やショタオジは理想の嫁作りに忙殺されている訳だが。

 

 

 思考が逸れまくりだな。本題に戻ろう。

 

 

*1
実は煙管には様々な種類がある。皆が想像する煙管は口元、吸い口、小口、羅宇(らう)、小口、雁首、火皿のパーツで成り立っており、煙草の様に雁首を灰皿の縁へ当てる様に灰を落とすと、破損する可能性がかなり高くなるのでNGだったりする。

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