【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「……最悪の想定はこんなもんか」
外れてくれたら大助かり。もし当たったら覚悟を決めるだけ。これ以上の最悪がこんにちわしたら潔く諦めて対処する。
占術も未来予知も出来ない人間なんてこんなもんだ。
とはいえそれが情報を疎かにして良い理由にはならない。次に考えるべきは館の探索方法か。
昨日探索した感じだと、そこまで驚異になる様な存在は居なかった。
つまり、岩手一族が使える。流石に異界の主戦には使えないが。
「主様。貴方のムラサキが来ましたよ」
俺の背中に柔らかいモノが押し当てられる。ついでの様に優しく抱き締められたので、前に回された腕を優しく撫でた。
「仕事の方は大丈夫だったか?」
「三人で協力して担当分は終わらせて来ましたので。何もなければ問題無い筈です」
「さよけ。じゃ、一旦宿に頼むわ」
「畏まりました」
視界が切り替わり、見慣れた旅館の一室に変わる。そこには
「こういう時【転移】持ちが羨ましくなるわね」
「私も異界攻略の時は貴女の事が羨ましくなるわ」
俺の腹に回していた腕を
「アタシ達は火力的な面だと微妙だからねぇ」
「オオマチはまだマシだろう。私なんて転移と聖域を除くと一番練度のあるスキルは【農業】なんだぞ?」
「主様の煙草の消費量を考えると終末後に一番役に立ちそうですね」
確かに一番大切かも知れない。ヤニ切れで世界を滅ぼす魔王になりそうだし。
「そういや気になってたんだけど、レティは主様の喫煙を止めないのかい?」
「煙々羅が居る以上、吸うなは論外でしょう。健康的な意味でも市販の煙草の毒性なんて有ってないような物ですし」
「それもそっか」
「ギンはどうなの?貴方の鼻の良さだと辛かったりしない?」
「わふ!」
「主様の匂いだから気にならない、か。アタシも分かるな~」
「煙草と珈琲の匂いは確かに御主人様の匂いだな」
女三人寄れば姦しいと言うが、五人も集まると会話は止まることを知らないらしい。
嫁達を眺めながら煙草を懐へ補充する。ついでに部屋吸い用に置いていた箱から煙草を取り出し、火を着けた。
「あ゛ぁ~生き返る。やっぱメシア教の思考なんて読むもんじゃねぇな」
「そんな厄介な事になってるの?」
「現状だと良くあるメシア教の拠点だな。俺の予想する最悪通りなら拠点を完全に潰した後、ガイア連合として追加で追跡調査する必要があるぐらい厄介だぞ。もし研究内容が拡散されてたらロクな事にならねぇ」
「力押しで潰しては駄目なのですか?」
問い掛けてきたのはアイだ。
「現在の主が不確定過ぎてな。メシア教の糞みたいな研究だけでも厄介なのに、そこへ流れの闇召喚士が手を加えてる可能性があるんだよ」
「成る程。一神教系以外の思想や術式が混じった結果、メシア教の置き土産がどうなるか全く読めない感じですか」
「主様と潜った感想としては完全に〝バイオハザード*1〟でしたね。クトゥルフも混ざってましたけど」
「そりゃ厄介だねぇ……アイツらって基本的に不死だし、見ただけでアウトな奴も多いだろ?」
「ですね。しかもクトゥルフじゃなかったらそれはそれで問題なんですよ。肥大化させた人間の体内で研究を続けられる精神って事になりますし」
「仕事柄、日本各地の話を聞くことが多いのだけど、だからこそ断言出来るわ。メシア教はそれが可能な精神の持ち主よ」
「アタシもムラサキと同意見かなぁ。アイツらなら絶対やると思うし、それについて後悔なんてしないよ」
「私も二人の意見に賛成だ。アイツらは式神である私から見ても裁かれるべき人間だと思うぞ」
「おじちゃん感動したぜ。俺の
逆に言えば、メシア教は悪魔である式神以下という事だが。いや、この場合は以上か?
「褒められてる様な侮辱されてる様な難しいラインね」
「人間以上の倫理観は褒めているけど、比較対象がメシア教だから馬鹿にされてる様に感じるのよね」
ムラサキとセリスが感想を口にする。それに対してレティが身も蓋もない事を言い出した。
「正直、メシア教徒よりそこらへんの殺人犯の方が倫理観ありますからね」
『『『それを言ったらおしまい
式神に断言されるぐらい倫理観が欠如してるってヤバすぎるだろ。
「あ、そういえばこれからの予定って決まってるの?アタシ的にはこのまま自堕落に過ごすのも万々歳だけど」
「今夜は寝かせるつもり無いが、その前に一回支部行って会議だな。お前らには鬼手一族の召集を頼むと思う」
「了解。今夜を楽しみに働きますかね〜」
ぐでっと机に体重を預けるオオマチ。……ふむ。机と身体の間でスライムの様に潰れる爆乳は何時見ても良いものだな。気分が高揚するぜ。
「今すぐ食べても良いんだよ?」
「今夜の楽しみに取っておくさ」
それだけ言い放ち、部屋を出る。目の前に人参がぶら下がってるのも良いもんだ。
◇
「──ってのが、俺の想定する最悪なパターンだな」
現在地、岩手支部長室。そこで会議をしていた幹部の前で、先程纏めた最悪のパターンを伝える。富豪俺達も居る辺り、修羅勢召喚用積立の話をしてたのかも知れんな。気にせず乱入したが。
「そんなの有り得ないわ!人間はそんな残酷な生き物な訳無いじゃない!……って言えたら、どれだけ幸せだったんでしょうね」
「普通の人間なら断言出来るだがなぁ……」
「メシア教ならやりかねんのが何とも言えん」
悲痛な声の演技を入れた愛宕ネキに対して、富豪俺達が諦観の声を上げた。
「最低でも死体と悪魔の融合と人体の拡張は確定してますからね。それ以上が飛び出て来ても不思議では無いかと」
「私は話を聞いただけだけど、現場はそんなに酷かったの?」
「高雄なら吐いてたんじゃないかしら?少なくとも普通の黒札には任せられないわよ」
「私も同感ですね」
「まぁ、高雄ちゃんはそれで良いと思うぞ。岩手の金庫番を前線に立たせる方が可笑しいしな」
「そうそう。前線で使い潰すならセツニキみたいな奴等が先だ」
「ドレイン系高位霊能者の俺が潰れる様な敵って、間違いなく岩手ごと吹き飛ぶんじゃないか?」
「セツニキさんが潰される様な物量なら私達も生きてなさそうですね」
「下手すれば終末より酷い事になってそうね」
生存能力だけで言えば、俺の上は誠一郎ニキとシエラ婆ぐらいしか居ないしな。まず間違いなく絶望的な戦場になってるだろう。
「しかし、メシア教を追い出してすぐにこの問題か。相変わらず我々にとっては疫病神以上の存在だな」
珈琲に口を付けて一息入れた轟ニキが面倒そうな声色でそう言うと、即座に愛宕ネキが諦めの声を上げた。
「それは分かっていた事でしょう?どうせ情報の開示を求めても何も分からないで終わらせるでしょうし、横槍が入らないだけマシと思わなきゃ」
「まぁ、そうだな。……それで?セツニキはどうするつもりだ?」
「山梨の素材庫が出来る前に帰りたいから、扶桑ネキから鬼手一族を借りるつもりだ」
「こう言うのは当主として駄目だと思うんですが、役に立つのですか?ハッキリ言ってあの悪魔もどきすら厳しいと思いますよ?」
「今の日本の名家に戦闘力を期待する奴はタダの馬鹿だろ。俺が頼みたいのは調査の方だ」
「調査?異界に入らせるって事?」
愛宕ネキが首を捻りながら尋ねてきたが、首を横に振る事で返答する。
「いや、式神を飛ばして貰うつもりだ。って訳で扶桑ネキ。【視覚同調】出来る奴を全員集めてくれ。移動に関してはムラサキ達を使うから近くの支部や派出所に集めてくれれば良い」
「分かりました。一族専用の連絡網で召集します」
「で、愛宕ネキは被害者の受け入れ場所の準備を。高雄ネキは今回の攻略に掛かる費用と報酬の計算を宜しく。最悪、俺が一時的に立て替えるから計算だけはしっかり頼む」
「分かったわ」「分かりました」
後は……あぁ、そうだ。
「これは今回の件が終わった後で良いんだが、一人金札に推薦したい奴が居る。後で山梨から書類を取り寄せておいてくれ」
「へぇ……セツニキが推薦するとはね。」
「デモニカでも与えておけば凄く役に立ちそうなんだよな」
式神移植でも良いが、先輩には創意工夫で生き残って欲しい。鬼手一族の目標になるだろうし。
「一度こちらで面談するけど、セツニキの推薦なら出来レースで良いかしら?」
「まぁ、それで構わないじゃろ」
「それで良いのか岩手支部」
『『『これが信頼ってやつ
「さよけ」
何というか手を抜ける所はとことん抜くな。こいつら。
◇