【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
夜と朝が混じり合う夜明け前。徹夜で式神を飛ばしてくれた鬼手一族を労いながら、思業式神から地図を受け取る。
「約八割か。残りはぶっつけ本番だな」
「
「だな。取り敢えず、黒札と鬼手一族の中核は帰還させるのは確定かねぇ」
いざという時のリスクマネジメントは大切だ。せっかく育てたのに、終末前に全滅は愛宕ネキが過労死してしまう。
「ムラサキ達は外に置いて被害縮小の為の結界を張らせるから動かせない。セリスとレティの二人で転移のマーキングして貰って、ムラサキ達の遠隔転移で被害者を回収。俺はギンと二人で異界側に行くのがベターかね?」
「式神としては貴方に被害者回収の方へ回って貰いたいのだけど?」
「ソイツは無理な話だ。この異界はどう考えても可笑しい。俺が行かなきゃ全滅も有り得るぞ」
現在のGPで現れる悪魔は基本的に
対して目の前の異界は地図から読み取れるだけで厄ネタ満載となっている。人間と死体の融合体が大多数を占めているのにも関わらず、過剰な程に地脈から霊力を引き上げていのだ。
それが主の強化に使われてるなら分かるんだが、ここに来てから観測してる霊力に変化が無い。つまり、
「私達が死んでも新しく作れるでしょう?」
「何もかも〝同じ〟に作れるが、残念ながら人間はそんなに優秀じゃないんだよ。例え今のお前と全く同じ物を作り出したとしても、俺は
「完全に同じでも?」
「完全に同じでも」
ナノ単位で同じ言動、動きをしたとしても、俺はそれを何か違うと認める事は無い。
人間が視覚から得ている情報量は約80%。残りの五感で約20%を得ていると言うのが通説だが、考えても見て欲しい。
詰まった鼻の嗅覚で。髪に隠れた耳の聴覚で。煙草と珈琲に染まった舌の味覚で。鍛練や戦闘で酷使してきた手の触覚で。
100%の情報量を確保出来る訳が無い。
その僅かに不足している情報を脳が補正して〝認識〟するのが〝人間の仕組み〟な以上、
「俺はお前らが思ってる以上にお前らを愛してるぞ」
「その割には他の女に目移りしてない?」
「頭と
自分だけの爆乳が側に居ようと、野生の爆乳が居れば手に入れたくなるのが男だ。流石に他人の物には興味ないが。
そんな
「セツニキさん。少し時間を頂いても宜しいでしょうか?」
「おう。ムラサキ達が起きるまでは大丈夫だぞ」
「有難う御座います。まず、こちらの子が──」
そのまま扶桑ネキが挨拶するかと思ったが、少年が一歩前に出て片膝を着く。
「お初にお目にかかります。鬼手一族次期当主として黒札の皆様から指名されている──」
「あーそんな堅苦しくなくて良いぞ。というか黒札と緣を持ちたいなら逆効果だ」
「ですが……」
「
少しだけ考えると素振りを見せた後、次期当主様は立ち上がり、右手を差し出した。
「次期当主を押し付けられる予定の
「おう、よろしく。
「えっと……?」
「捨てたんだよ。この業界だと割とある事だから気にすんな」
当主や幹部以外に名を付けられない事すら有り得るのが名家であり、それを当然としているのが〝裏〟だ。
真名さえ看破出来れば呪殺出来る世界は伊達じゃない。
「セッツァーニキさん?は──」
「セッツァーかセツニキで良いぞ」
「ではセッツァーさんで。セッツァーさんは他の黒札の方々と少し違いますね。何というか一般人の〝香り〟がしません」
「俺は義務教育すら受けてないからなぁ……」
やる夫ニキの様に子供達の仲に混じれる気もしないし、最初から通うつもりも無かった。高校にはJKを青田買いする為に通いたい気持ちはあるが……山梨の異界が楽しすぎてサボる気しかしねぇ。
「えっと……す、すいません」
「気にすんな。学力で困った事も無いしな」
「ニシ君。セツニキさんは別格なので気にするだけ時間の無駄ですよ。貴方が岩手支部の役に立つ限り、貴方の味方であるという事さえ覚えておけば大丈夫です」
チラリとこちらに視線を向けてきたので、同意する様に頷く。
「サイトウは黒札を生かす事だけを考えておけば良い。そうすりゃこの糞みたいな世界で生き残る為に必要な物が流れてくる」
「必要な物……」
「霊装に霊薬、アガシオンや有用な術式。その他諸々が鬼手一族に流れてくるのは、黒札の役に立ってるからだ。それに黒札の大半は力があるだけの一般人だからな。頼りたい気持ちも分かるが、危険を遠ざけて生かしておいた方が役に立つんだよ。お前も戦場から逃げ出す奴を主軸に置きたくないだろ?」
「…………そうですね」
「ま、ソシャゲで言うならログボをくれるNPCみたく思っておけ」
「分かりました。極力黒札の皆さんを危険から遠ざける方針で行こうと思います」
「それで良い──っと、そうだ」
改めてサイトウを〝視〟る。ついでに
★人間<
万能型 毒耐性
スキル 直感 先導者 符作成 調薬
ここまでが簡易アナライズで見抜ける情報だ。で、ここからがアナライズ越しに俺の【霊視】で見えた
★人間<
万能型 毒耐性 破魔耐性
加護
スキル 直感*1 先導者*2 符作成 調薬 (
何というか当主として理想なスキルだな。少なくとも俺より当主に相応しい。これなら──必要なのは〝コレ〟かね。
霊符から取り出したのは、白と黒の金属が捻り合って作られた指輪。効果は【破魔無効】と【呪殺無効】の対即死耐性アクセだ。それを【毒無効】を付与した金のチェーンに通して渡す。
「これは……?」
「死ぬまで外すな。当主がやるべき事を間違えるなよ」
効果は敢えて教えない。俺の言葉を軽く見て死ぬならそれまでの命だ。
「分かりました。大切に使います」
「おう」
話の終わったタイミングで丁度良くムラサキ達がテントから出てきた。少し前から気配を感じていたので、待っててくれたのだろう。
「じゃ、ムラサキ達も起きたから軽く打合せして行ってくる。黒札達と監視役の鬼手一族以外は帰らせておけよ」
「分かりました。御武運を」
二人と別れ、テント内部で作戦会議を始める。とは言っても、先程までセリスと話していた内容と余り変わらないが。
「──って訳で、お前らは結界宜しく」
「せめてもう一人誰か連れていきませんか?」
「戦力が足りん。それに今回は
人と悪魔の融合技術が世に出回る方が困る。どう考えてもロクな事にならないし、下手すれば一瞬で終末到来だ。
「……納得は出来ませんが、分かりました」
「被害者達は鬼手一族と愛宕ネキが治療場所を確保してるからそこへ飛ばしてくれ。座標はこれな」
「確かに受け取りました」
「思ったより広範囲の関連施設を使うんだね?」
アイに手渡した紙を覗き込んだオオマチが不思議そうに呟いたので答えを返す。
「死体だったら霊符収納で済む話なんだが、母体として使われてるなら
「悪魔も他人事じゃないけど、人間って女をトロフィーや産む機械にし過ぎじゃない?」
「キリスト教のアダムとイヴの概念が強すぎるんだよ。そのせいで被害を受けてるっつーか」
創世記ではアダムもエバ──イヴも共に善悪の知識の木の実を食べて二人とも追放されたが、キリスト教の解釈だとアダムはイヴの誘いを振り払い、聖人として列せられている。
しかもアダムからイヴが生まれた、女が男から作られてる等といった一文が聖書にすら書かれているのだ。そりゃ男尊女卑の価値観が世界中に広がるわな。腐っても世界最大宗教だし。
ちなみにイヴを唆した蛇はサタンが変化した姿とも書かれており、そのサタンはルシファーが堕天し、地獄の底へ封じられた後の名だとされている。
つまり人間が苦しみを味わう羽目になったのは、完全で完璧で究極な筈の四文字さんがルシファーを堕天させたからだ。……メシア教徒はルシファー教徒に名前を変えるべきでは?
「なるべくしてなった、という訳ね」
「十戒とか称えるべき功績も大きいんだが、文化侵略もやりまくってるから評価に困るんだよな。キリスト教」
これがただの邪教なら話は早かったんだけどな。
◇