【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
見付けたら誤字報告よろしく!(他力本願)
前世で散々
とある男は組織のボスの逆鱗に触れ、生きたまま鳥葬の刑を受けた。
四肢をワイヤーで縛られた状態で生きたまま腹を切り開かれ、鳥の餌となったのだ。
とある女は麻薬の売人だった。縄張りを無視して薬をバラ撒いた結果、麻薬の元締めに捕らえられて四肢を切り落とされ、とある富豪のペットとして虎の毛皮の中で生涯を終える結末を迎えた。
戦場を共に駆けた戦友は、戦車の砲撃が直撃して上半身と下半身が分かたれた。最後まで自身の下半身を探し、上半身だけで這いずり回っていた光景は今でも夢に見る事がある。
────
〝死〟という名の明確な終わりが存在していた。少なくとも人として終わりを得る権利があった。
確かに幸せに満ち溢れた最後では無かったかも知れない。ほんの少しだけ良い方向へ転がれば、ほんの少しだけマシだったかも知れない。──それでも。
「コレよりは上等な最後だろうよ……!」
物質とMAGの中間に留められたそれらは半ばゲル状となっており、貯水槽が溢れるギリギリまで詰め込まれていた。
百では足りない。万でも少ないだろう。下手すれば十万を超える人間を
貯水槽の底に刻まれた癒やしの術式により、無理矢理生かされ続けているのだ。
『『でも、僕らには〝君〟という救いがやって来た』』
貯水槽から中央部へと架けられている鉄橋の先から聞こえてきたのは──ドイツ語とクルド語。
だが俺の脳はそれを日本語として理解した。──【
「どういう事だ?お前達は何をしようとしている?」
カツン、カツンと鉄橋を歩き、中央部へと向かう。敵意は感じない。殺意も感じない。伝わってくるのは、感謝と申し訳無さを混ぜたような感情だけだった。
『『僕達は君を──正確にはガイア連合が誇る〝黒札〟を待っていたんだ。メシア教が行ったこのおぞましい実験を
「だから岩手支部に依頼を出したと?」
『『正確には後始末を頼むつもりだったんだ。もちろん、こんな危険な場所に若い子が来ないように配慮したよ?一定以上の実力のある人間以外には見付からない様に
「成る程な」
報酬が不味い、拘束期間が長い、依頼主がクソ、状態異常を連打してくる。他にも色々あるが、塩漬け依頼には塩漬けになるだけの理由が多数存在している。
設立当初の頃ならともかく、最近合流した黒札どころか〝札持ち〟にすらそこら辺の説明がされている程度には周知の事実なのだ。
この館の調査依頼も、その一種だと受けた時は思っていた。
今思えば、貼り出されていた依頼書の中で、この依頼だけは依頼書の紙質が違ったな。ついでに言えば、経年劣化すら起こっていなかった。
とはいえ古くなった依頼書を再掲示する場合、紙が新しくなる事は普通に有り得る事だ。だからこそ俺は深く考え無かったんだが……
「そこまでして〝黒札〟を呼びたかったのか」
『『君達の噂も、実力も、厄介さも、何もかも〝研究者〟達が教えてくれたからね。後の無い僕達が頼るだけの信頼は自然に積み重なったのさ』』
「一応言っておくが、大半の黒札は雑魚だぞ」
『『でも〝君〟は違うだろう?──セッツァー君。この街の霊能者を子猫から虎に変え、多くの過激派から畏れられている君はね』』
「買い被り過ぎだ。俺はガイア連合の中では数いる一人でしか無い」
漸く辿り着いた中心部。遠くから見えていたからどんなモノなのか理解していたが、間近で見た感想は──
ユダヤ教の神秘思想──カバラでは、神による天地創造の象徴を十の円と二十二の直線で図式化した。その図を〝生命の樹〟とも〝セフィロト〟とも呼ぶが、旧約聖書に書かれているエデンの園の中心部に生えてる樹を指す場合もある。
『神である主は、見るからに好ましく、食べるのに良さそうなあらゆる木を地から生えさせ、園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えさせた』
この一文に登場する命の木が
実はユダヤ教のセフィロトと聖書に書かれているセフィロトは考え方が違うんだが、それも今は横に置いておく。
大事なのは目の前の
「
全体の印象としては
そこへ十のセフィラの役割を担う様に改造されたレギオンシフターを埋め込めば、クトゥルフですら生温く感じる眼前の〝生命の樹〟が出来上がる。……糞がッ。
『『……君はこんな僕達を〝人〟として扱ってくれるんだね』』
確かに目の前の存在を〝人〟だと叫べない奴が人類の大半を占めるだろう。
中東系の男とドイツ系の男を背中合わせで無理矢理
さらに二人の腹部には〝想い人〟の頭部が埋め込まれており、どんな慈悲深い存在でも、化け物だと断言しても可笑しくない──が。
「日本を舐めんな。見た目だけで判断する奴はクソって古事記にも書かれてる*2国だぞ」
『『ふふ。それは良いことを聞いた。あの世で彼女達に自慢できるよ』』
半身を樹に埋められている二人が、大切そうに自身の
──無理、だな。
救うのは無理だ。〝想い人〟の遺体にはすでに魂が入っておらず、肉体を取り戻したとしても新たに宿るのは別の魂になるだろう。
そして、完全に〝生命の樹〟と融合して一つとなっているコイツらを助けるのは無理だ。完全に癒着してしまった魂を切り離す事は殺す事と変わらない。
『『そんな顔をしないで欲しいな。僕達は彼女達の遺体を取り戻す事に成功した。だからこんな姿になった事も含めて何一つ後悔してないんだよ』』
「……さよけ」
軽く頭を振って、意識を切り替える。目の前の
「それじゃ改めて聞かせて貰おうか。お前達は何の為に俺を──黒札を求めた?」
『『君達に求める事は簡単な事だよ。〝これ〟を砕き、僕達を終わらせて欲しいんだ』』
融合体と胸が縦に裂かれ、中から真紅の宝玉の様な物が現れる。
「自殺は無理なのか?」
『『腐ってもメシア教と言うべきかな。教義としても、実験素材としても、どれ程の地獄に居ようが自殺させてくれないんだ。だからこそ、彼ら彼女らは僕達と共存してくれている訳だけど』』
視線を向けた先には、貯水槽を埋め尽くす小さな脳味噌が。
「そんな姿にされたのに随分メシア教の肩を持つな?俺には理解出来ん」
『『完全に〝融合〟してしまったからね。お互いに隠し事は何一つ出来ないんだ。まぁ、だからこそ僕達は彼らの気持ちを理解してしまったんだけど』』
「気持ち?」
『『彼らはね。救いを求めていたんだよ。メシア教に所属して、この世の誰よりも早く終わりが来る事を知って。この世界に先が無い事を知って絶望してしまったんだ』』
「…………まぁ、そうじゃなきゃ〝救世主〟なんて求めないだろうな」
人間が強くない事を俺は誰よりも知っている。戦争中で、戦後で。人間の〝弱さ〟から来る罪を誰よりも見てきたのだ。
今更、例え嘘でも、それを否定する事は出来ない。
『『メシア教としては世界中の霊地を抑え、他の宗教を弾圧する狙いもあっただろうね。何せ一神教だ。他の国の神を認める訳には行かない。でも、そんなのは一般信徒には関係ない』』
「それならどうして
『『……彼らはね。〝天国〟に行きたかったんだよ』』
「……アズライールか」
アズラーイール。アズラエルとも呼ばれ、ユダヤ教、キリスト教およびイスラム教において、死を司る天使として世界にその名を轟かせている大天使だ。
聖書によっては四大天使に数えられたり、死を司るが故に四大天使の中で
片手には全ての生者の名を記した書物を持ち、人が死ねばそこから名前が消える、または消される。容姿は非常に恐ろしく、全身に無数の目、口、舌を持ち、人の罪を見て、語り、裁くらしい。レギオンに降ろす天使としては、かなりの相性の良さだろう。
誤字修正すると全部直したくなって最終的に削除したくなるんですよねぇ。