【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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始まる前に終わっていた物語4

 

 

「だが可笑しくないか?〝生命の樹(お前達)〟に刻まれた術式で降ろせるのはアズライールじゃない。どう考えても()()()だろう?」

 

 

 〝生命の樹〟には〝死〟の概念が存在しない。というか〝邪悪の樹(クリフォト)〟にすら無いぞ。

 

 

『『汝、隣人に対して偽りの証言をしてはならない。確かに十戒にはそう書かれているね。でもこの施設に居た組織(過激派)によると、嘘と偽りの証言は違うらしいよ?』』

 

「その言い分を認めた場合、四文字は全知全能の癖に穴だらけの十戒を作った事になるんだが?」

 

『『彼らは心から信仰しているのに、信仰対象を貶める事に全力だよね。僕達の中に居る過激派の()()すら呆れてるよ』』

 

「……怒りじゃないのか?」

 

『『メシア教がメシア教として纏まっている理由。それを考えた事はあるかい?』』

 

 

 その問い掛けに少しだけ灰色の脳細胞を働かせる。

 

 穏健派、過激派等の呼び方に違いはあるが、アイツらは決して()()()()()()と名乗らない。

 

 主の教えに背いている事への罪悪感だと思っていたが……違うのか?他にどんな理由がある?

 

 

『『その様子だと全く分からないみたいだね?』』

 

「まぁ、俺にとってメシア教は、この世界で最も世界を救える可能性があったにも関わらず、それを投げ捨てた馬鹿の集まりだからな」

 

『『それは手厳しい。でも、だからこそ君には分からないんだろう』』

 

 

 生々しいドリアードが呆れとは違う、どちらかと言うと羨望の様な視線を俺に向ける。

 

 

『『メシア教が纏まっている理由はね。そもそも彼らには立ち向かう勇気が無いからなんだ。彼らは戦うことを選べず、迫り来る〝終末〟に対して自身より上位の存在へ救いを求めた。だから過激派、穏健派と分かれていても、その本質は変わらない(同じ)。彼らは目先の救いに縋るしか無いんだ。──すでにルビコン川を渡ってしまっているからね』』

 

「カエサルかよ」

 

 

 とはいえ納得もある。一番最初に頼った上位存在(悪魔)が悪かっただけで、もしショタオジに救いを求めていれば、この世界は人間大勝利の可能性もあったのか。

 

 

「一応、聞いておく。過ちに気付いてやり直せる可能性は何度もあったろう?それをしなかったのは何故だ?」

 

 

『『()()()()()()()()()。未だにさ』』

 

 

「ま、そうなるわな」

 

 

 前世日本人(転生者)にとって宗教とは胡散臭く、にも関わらず社会的には強者の地位に居る事が多い怪しい組織。

 

 政治家との汚い繋がりや賄賂等、悪い側面ばかりテレビで放送される組織だが、本来の役割は〝弱者救済〟──つまり、民衆の為の物。

 

 荒野を切り開く勇気は無く、暗闇を進む意思も無い。

 

 力、金、権力、地位。この世に存在する様々な暴力を振るわれる立場の弱い人間。

 

 そんな人間が逃げ込む場所として、また王の様な強者に意見を伝える組織として求められ、生まれるのが宗教の原点だ。

 

 分かりやすく言えばスイミー*1だな。宗教に求められているのはそういう役割な訳だ。

 

 メシア教に当て嵌めてみると、たぶん漠然と黒札達が感じていた違和感の正体が分かるだろう。

 

 メシア教徒や下位天使自体は赤い魚なのだ。だからこそ、終末を何とかしてくれると主が言った〝スイミー(救世主)〟を求めた。

 

 だが彼らの祈りは世界に届かず、やって来た〝スイミー(上位天使や教会上層部)〟はずる賢く、汚く、醜かった。

 

 それに気付いていても、群れから離れて一匹の赤い魚だけで生きるには〝捕食者(危険)〟が多く、もはや従わなければ生きられない状態となってる訳だ。

 

 そらレギオンの中の過激派も怒りより呆れるわな。何せ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「敗戦国から連れてきた生け贄にしてはやけに貯水槽に居る脳味噌(人間)が多いとは思っていたが……アイツらの大半はアズライールに救いを求めた()()()()()な訳か」

 

『『歌い文句はこの地獄の様な世界を捨て、主が待つ天国へ向かおう!だったらしいよ?残念ながらここの過激派が求めていたのは違う上位存在だったけどね』』

 

「メシア教徒の中でも求める〝救世主〟が違う訳だ。そら外部から見たら訳が分からん組織になるわな」

 

 

 お互いに赤い魚という事は分かっているからこそ、メシア教としては纏まる。そこから過激派、穏健派に別れ、さらに別々の〝救世主〟を掲げて動いているのだ。

 

 そら穏健派は過激派と違うと言い張る訳だな。事実、求める〝終末を越える方法(救世主)〟が違うのだから間違ってはいない。

 

 一部の黒札が〝救世主〟と見なされるのも、そこらへんが理由かねぇ。今まで信じてきた〝救世主〟よりも、新しく現れた黒札の方が〝救世主〟として魅力的に映ったんだろう。

 

 尻軽と言うには単独で生きられる強さが無く、信仰が軽すぎると言うには今まで信じていた〝救世主〟が弱すぎた。

 

 そこへ力の伴った新たな〝救世主(カモ)〟が葱を背負ってやって来たんだ。そら祈りの向ける先(信仰の対象)とするには十分過ぎる。

 

 

メシア教(お前ら)が何を望んでいたのかは分かった。手段はともかく、目的に対して真剣だったという事は認めよう。許すかどうかは別だけどな」

 

『『……優しいね、君は』』

 

「信仰先は自分で選ぶ物ってのが持論だが、境遇次第で無理な事も理解している。その上で何か言える程、恥の無い人生なんて送ってないさ」

 

 

 禊も似たようなモノだしな。代々受け継がれてきた一族の信仰先よりも、命の危機を救った俺を信仰先に選んだ。

 

 俺と禊の間に〝愛〟が無いとは言わんが、何時死ぬか分からないこの世界で俺との〝繋がり〟を求めるよりも、俺の宣言通りショタオジの子供を待つと言い切ったのは──まぁ、そういう事だろう。

 

 

『『僕達は君が羨ましい。君という〝救世主〟を見付けたこの国の人間が憎らしい。この世界に自分の足だけで立てる君が羨ましくて、妬ましくて、憎くて、尊敬して、その庇護下に居る者達が殺したいぐらい憎くて、その未来を願うぐらい僕らの代わりに幸せになって欲しい』』

 

 

 レギオンらしいと言うべきか。多重人格特有の矛盾した無数の言葉を吐き出し終えると、ドリアード♂が大きく息を吐き出す。

 

 

『『……ふぅ。ごめんね?感情の奔流に流されかけちゃった』』

 

「むしろ良くそこまで理性を保てるもんだ」

 

『『君達ガイア連合のお陰でもあるかな?僕達の中には鋼の錬金術師のファンが多いんだ』』

 

「まさかの父親方式*2かよ」

 

『『こんな身体になるとは思っていなかったけど、人生、何が良い方に転がるか分からないもんだね』』

 

 

 やはり漫画は最強のチートなのか?学べる知識が役に立ち過ぎる*3だろ。

 

 

『『さて。他に聞きたいことはあるかい?』』

 

「悪魔化ウイルスと闇召喚士の最後だな。特に悪魔化ウイルスに関しては出来れば詳細な情報が欲しい」

 

『それなら()では無く、()()に任せる事にしよう』

 

 

 ウゾウゾと肉の大樹が蠢く。警戒はしているが、MAGの動きから攻撃はほぼ無いだろう。

 

 常人なら発狂しそうな光景を数分待っていると、背中合わせのドリアードがパカリと割れ、その中から血と粘液に塗れた、〝核〟を掲げている体勢のドイツ系老人の姿が。

 

 

『初めまして、と言うべきかな?少年。この館の主だったモノだよ』

 

「あの日記や資料に書かれていた奴か」

 

『それを知っているなら説明は短く済むな』

 

 

 右腕の肘を抑え、右手の人差し指で側頭部を叩くのは生前の癖か。記憶を漁るルーチンがある奴には天才が多く、生前は苦労したもんだ。

 

 十に満たない秒数で考えが纏まったらしく、目の前の老人体が続きを口にする。

 

 

『端的に言おうか。君の予想は()()()だ。取り込まれた僕達の中には最近まで人間だった(生きていた)研究者も居る。その者からの情報だから間違い無いだろう』

 

「理由を聞けるか?」

 

『もちろん。まずメシア教が開発した悪魔化ウイルスに再現性は無い。どうやらペイルライダーが持ち込んだ〝権能〟にカオス(混沌)の因子を組み込んで当たりを引いただけの様だな』

 

「他のメシア教徒が持ってる可能性は?」

 

『無いと断言しておこう。君達ガイア連合の中に神の炎を操る青年が居るだろう?彼に保管庫を焼かれたみたいだ。そして、逃げるようにこの場所へ行き着いた様だぞ』

 

 

 少年では無く青年……カヲルニキか。調査能力的に見ても、漏らしは無いだろう。

 

 

「感染や増殖はどうなんだ?」

 

『それも心配しなくて大丈夫だ。悪魔化ウイルスは感染者を変異させた時点で死滅する。増殖能力も組み込んだカオス因子が許さなかったみたいだ』

 

「許さなかった?」

 

『増殖する仕組みがあったら混沌では無くなるだろう?』

 

「確かに。再現性があるなら秩序だな」

 

 

 後でショタオジやカヲルニキに裏取りする必要はあるが、ウイルスの拡散自体は無さそうか。

 

*1
真っ赤な魚の群れの中で、ただ一匹、小さく賢い黒い魚が巨大な魚のフリをして捕食者を追い払う話。

*2
ネタバレになるのでザックリした説明になるが、言葉は最強の剣であり、盾でした。

*3
効果には個人差があります。

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