【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
『安心したかね?』
「育ててきた街を焼かずに済んだからな」
長い時間掛けて育ててきたが、悪魔化ウイルスが蔓延するならぐらいなら、俺は躊躇わず岩手を焼いただろう。山梨支部を守る為に手段を選ぶつもりは無い。
『医学が幾ら進歩しようとも、菌は絶えず進化する。それを忘れ、兵器として使えると考えるが故に人類は終末を呼ぶのだろうな』
「政治家にならずに人を愚かだと語るのは傲慢らしいぞ。文句があるならお前が人を正しい方へ導け。それが民主主義国家の正しいあり方だそうだ」
『良い言葉だ。誰の言葉かな?』
「親友の政治家だ。俺はアイツ程の馬鹿を他に知らん」
戦後の日本という貧乏クジを引いた事を誇る様な馬鹿だった。でも、アイツの作り上げた時代を穏やかに生きた俺に文句などある筈も無い。
正しく、アイツは政治家だったんだろう。
『君は恵まれているな』
「他人を羨むなら努力が足りんぞ。世の中の大抵の事は努力でどうにでもなる」
『君の様な若い子がそれを言うのか』
「悪魔に殺され掛けても諦めずに戦い続けて来たんだ。その結果として今の俺が居るんだよ」
前世を思い出してから今日まで、惰性を貪った事は一度も無い。そして、それはこれからも変わらない。変えるつもりも無い。
前世で
ちなみに時計ストップはショタオジを床ぺろさせたら止まる予定だ。何百年掛かる事やら。
『私も君の様に生きていれば彼女を救えたと思うかい?』
「目を閉じて胸に手を当てて自分に聞いてみろ。少しでも後悔があるなら努力不足だ」
『…………』
俺の指示通り胸に手を当て、老人が目を閉じる。後悔の無い人生なんて存在しない。だから問いに意味は無い。
大切なのは精一杯生きた自分を受け入れる事だけだ。それ以外は全て些事となる。
『後悔はある。無念もある。だが何度同じ人生を繰り返そうとも、私は同じ生き方をするという確信もある』
「さよけ。ま、来世では精々頑張れや」
『君は来世があると思うのかね?』
「間違いなくあるぞ。何せ
『……そうか。それは良いことを聞いた。次の人生では彼女を幸せにするとしよう』
「おう。頑張れよ」
俺の言葉に満足したのか老人が樹の中に取り込まれていく。入れ替わる様に現れたのは中東風の顔立ちをした青年だった。〝核〟を掲げた体勢は変わらず。何時でも殺してくれて構わないという意思表示かね。
『初めまして。
「初めまして。俺がお前らの望んだ黒札らしいぞ」
『知っているよ。岩手支部に出した依頼に細工を施したのは私の魔術だからな』
「さよけ」
他の
『私に聞きたい事があるのだったな。私に答えられる事なら何でも聞いてくれて構わないぞ』
「過激派の取り逃しは居るのかってのと、お前がレギオンに取り込まれた経緯だな。実力的にここに辿り着ける事は疑ってない。だが過激派に裏を掛かれる様な腕じゃない筈のお前が取り込まれている事が腑に落ちねぇ」
『まずは前者について答えよう。私が襲撃した時点で館の内部に居た過激派は全て処理した。何人か偶然外に出ていて取り逃した者も居るかも知れないが、最低でもレギオンシフターを作っていた研究者は全て処分出来ている筈だ』
「それはお前らの記憶からの情報か?」
『うむ。幹部クラスは定期的に我々を視察していたからな。我々も顔を覚えていた』
闇召喚士が殺した過激派の顔と、レギオン達が見た事のある研究者の顔を照らし合わせたのか。
多少は漏れも出ているかも知れんが、現状だと最高の結果だな。
『後者に関しては語るまでも無い。私は漸く奪われた〝想い人〟の遺体を取り戻せると、喜びの余り何の対策せずに触れてしまっただけだ』
「…………さよけ」
遥々中東から極東まで奪われた遺体を取り戻す程に愛してたんだ。それを笑う事は出来んな。俺でも前世の嫁の遺体を奪われたら同じ事をする自信がある。
『聞きたい事は以上で終わりか?』
「ああ。もう十分だ」
『そうか……』
ベレッタからマガジンを抜き、特殊弾を詰め込んだマガジンと入れ換える。衛宮切嗣*1の起源弾を真似して生成されたこの銃弾は、皮肉な事に目の前の存在に対して無類の強さを発揮する。
これも
『うむ。決めた』
その言葉に顔を上げると、真剣な二つの目が俺を見詰めていた。
『少年。もし宜しければ一族の
「そんな時間がお前らにあるのか?今でこそ正気を保っているが、魂を犯す痛みは想像を絶する。永遠には耐えられないだろう?」
むしろ耐えてる現状こそが異常だと断言出来る。比較的慣れている俺達修羅勢ですら、魂に傷をつけられると一時的に動きが止まる。止めてしまう。それぐらい耐え難い痛みなのだ。
『確かに私達が正気で居られる時間は残り僅かだろう。だからこそ、私が私である内に託したいんだ』
「……ハァ。方法は?」
『一族には瞳から瞳へと知識を継承する術式があるんだ。それを使う』
「中東系で〝眼〟に自信あり。邪視、邪眼、魔眼。確か青い瞳の持ち主は故意に呪いを掛けられる伝承があったな」
『博識だね。君の予想通り、僕達は〝眼の一族〟と呼ばれていた。これでも魔眼作りの専門家として広く知られていたんだよ?』
「さよけ」
取り敢えず石長比売の霊符を使って
「こっちは準備良いぞ。ついでにお前ら全員の名前も送れ。墓に刻んでやるよ」
『『「■■■■■■──ッッ!?」』』
「うるせぇ。落ち着け」
『済まないッ!皆の喜びが僕の制御を上回ってしまった!』
「気にすんな。人として弔うのは俺のエゴだ」
死後の平穏ぐらいは祈ってやるよ。
『そうか。……それじゃ行くよ』
目の前の青年の瞳が青く染まっていく。大空の様に明るく、深海の様に深い青。そこから俺の左目に蒼白い光が伸び──繋がった。
青年の一族が紡いできた歴史。シュメール文明から続く太古の記憶。時代を全力で生きた者達の誕生から終わりまでが流れ込んで来る。────って、オイ。
「お前らの名前は良い。俺が望んだ事だからな。
『済まない。相乗りされたみたいだ』
北欧を筆頭に世界各国様々な魔術師の知識が流れ込んで来る。というかどんだけメシア教は暴れてるんだ。三桁を越える歴史が流れて来てんぞ。
──それから暫くして。
俺と目の前の青年を繋ぐ光が弱くなってきた。どうやらそろそろ終わりらしい。
『……君は本当に強いな』
「ま、歴史の重さは背負い慣れてるからな。ところで他にやるべき事はあるか?無いならこのまま終わらせてやるが」
『いや、大丈夫だ。これ以上は未練になってしまう』
「さよけ」
光が完全に消えると、青年の隣に老人も出てきた。その左右に全く同じ見た目の遺体がある違和感が凄いが、たぶんそれがレギオンの制御端末なのだろう。
『最後に君と出会えて良かったよ』
『私も
「さよけ」
二人がレギオンの〝核〟を俺の前に突き出す。血をひたすら凝縮した色合いの
「Ich kann nicht anders, Junge. Ich habe dich in eine Rolle gezwungen, die mir nicht gefiel.」*2
「تۆش وەک ئێمە نابیت. "دۆڕاو" مەبە کە نەتتوانی ئەو کەسانە بپارێزیت کە پێویستە بیانپارێزیت.」*3
「Don't worry. I'm strong. I'll survive to the end of hell. ──See you in the next life.」*4