【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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深層探索許可書

 

 物語において、後始末という退屈な作業は基本的に描写される事が無い。読者が読んでいて退屈という致命的な理由もあり、商業紙では許されないのだ。

 

 悲しい事にこの世界は現実なので、主人公達が死んだ後にも物語は続いている。今頃輪廻の中で転生待ちしているであろうレギオン達に変わり、後始末を担当するのは生者である岩手支部と俺な訳だ。

 

 結界を解除する前に異界が崩壊した影響を調べ、悪魔化ウイルスがレギオン達の想定を超えて進化していないか慎重に確かめ、資料の回収漏れが無いかを確認し、使えそうな霊具や霊的素材を代金として押収し、そこまでやった後に占術で最終チェックを行う。

 

 ここで〝凶〟が出たらもちろんやり直しだ。今回はショタオジもくそみそニキも捕まらなかったので、ガイア連合から派遣された占術使いがやって来たのだが……霊格不足で占術道具を破壊されたので、山梨へ返却しておいた。

 

 最終的に〝Talk〟で何とかしたとは言え、ここはレベル五十の異界だぞ。生半可な奴で占えるかよ。

 

 ちなみに俺の占術の的中率は一割。論外だ。強敵かどうかなら九割なんだけどな。

 

 

「どうするの?」

 

「封印処理して高位占術師待ちだ」

 

 

 という訳で多重封印術式(マトリョーシカ)を展開。いつぞやのレギオンと同じ処理を行い、土地ごと封印しておく。

 

 後始末はまだ続く。今回働いてくれた鬼手一族に対して報酬*1を支払い、被害者支援の為に予算の編成。さらに()()()を取り扱った貿易会社へ鬼手一族の追跡者(ストーカー)を派遣。白か黒かハッキリさせる。

 

 販売会社は黒だと思うが、運送、輸入した会社は白だろうな。じゃなきゃ俺なら毎回仕入れ先に別の会社を挟むし。

 

 

「基本的に本人の意志を尊重。記憶処理を行っても良いですし、戦う為の牙が欲しいなら鬼手一族に投げれば良いですよね?」

 

「それで構わないわ」

 

「意志の無い奴等はどうするんだ?」

 

「生命維持装置に繋ぐのもタダじゃないしな。鬼手一族の術者に擬人式神憑依させて、日常生活を送らせておけば良いだろ」

 

「そんな事も出来るのか……術者ってのは恐ろしいな」

 

「黒札の嫁がそういう仕組みだろうに」

 

 

 擬人式神は人間に都合の良いMAG製のAIみたいなもんだしな。

 

 予算を組んだら今度は現場と交渉になる。魂の損傷を癒やすには長い時間が必要だ。その間の世話も含めて鬼手一族に任せる訳だが、何時目覚めるやら。

 

 最悪、終末後は覚悟しないと駄目か。

 

 

「被害者の介護の件、承りました。鬼手一族としても在野の覚醒者が手に入りますからね。諸手を上げてとは行きませんが、不満は少ないと思います」

 

「一応、引き取り手になった家には全額とは言えないが補助金出るから申請する様に。忘れたら全額自腹だぞ」

 

「はい。忘れずに伝えておきます」

 

 

 鬼手一族の当主様(扶桑ネキ)との話し合いが終わり次第、一度星祭に帰宅。自室でPC叩いて報告書を作成。

 

 まずはショタオジや幹部に提出する用の事件の全容を書く。そこから〝生命の樹〟をバッサリ切り捨てた各支部長への通達を兼ねた報告書に改変する。

 

 最後は研究室の内容をバッサリ切り、セリス達のルートと話を繋げ、()()()()()()()()()だった事に事実をねじ曲げる。

 

 興味本位で過激派の研究を引き継がれても面倒だしな。黒札(俺達)には善人以外の人間も多く居る以上、隠す情報と表に出す情報は選別するべきだ。

 

 隠した情報をショタオジが公開するなら別に文句は無いが。黒札に過保護なショタオジが許可を出すと決めたなら、それは()()()()()()ショタオジが動いて解決するから大丈夫な問題にランクアップする。つまり、悩むだけ時間の無駄になる。

 

 完成した書類を封筒に入れ、修羅勢用の受付へ。そこでちひろネキに書類を渡す。

 

 

「あの、セツニキさん?私、幹部じゃないんですが?」

 

「えっ。ちひろネキが幹部じゃなかったら誰が幹部なんだよ?」

 

 

 貢献度で言えば、ちひろネキを越える人間ってギルニキ達ぐらいしか居なくないか?

 

 

「そっくりそのままお言葉をお返しします」

 

「俺は悪名も稼いでるからなぁ」

 

 

 非覚醒者黒札をガイア連合の中で一番差別してるからな。黒札だから特別だと思いたい俺達から嫌われるのも当然だ。

 

 ショタオジですらせめて覚醒して式神持とう?って方針なので、変えるつもりは今のところ無いが。

 

 

「私とか一部の非覚醒者が特別扱いされてるのも気に入らないのでは?一律同じ扱いをすれば──」

 

「組織の役に立つ人格者を優遇しないで組織が育つと思うなよ……!」

 

「完全に経営者目線ですねぇ」

 

 

 そんな会話をちひろネキと交わした後、製造班に立ち寄り、進歩を聞いた。

 

 

「倉庫の方は何とか完成した。セツニキが居ない間に素材を移したんだが大丈夫だったか?」

 

「構わないぞ。調査の完成度はどんなもんだ?」

 

「こんな感じだな」

 

 

 差し出されたタブレットを受け取り、確認する。

 

 

「イレギュラーを除けば中域まで埋まってるのか」

 

「修羅勢の凄さを舐めてたぜ。製造班としては依頼完了でも問題無いぞ」

 

「最奥の素材表は未完成だが良いのか?」

 

「扱える人間の方が育ってないんだよな」

 

「その問題もあったか」

 

 

 少しだけ悩んだ後、受注者としての結論を口にする。

 

 

「最後に派手にやってくる。それで依頼終了な」

 

「おっけ。式神の素材(報酬)の方は用意してあるからついでに伝えといてくれ」

 

「了解」

 

 

 星祭への帰り道の途中、スマホで掲示板を開き、書き込む。

 

 

5566:賭博師

 

最下層到達者の暇人募集@∞

 

参加資格:最下層到達したショタオジの試練を受けた奴

 

終了期間:分霊狩りを終えるまで。

 

 

ショタオジの分身が防衛戦行ってる場所に拠点を作り、長期間活動予定だ。

 

製造班からの依頼もついでに行うから暇人かもん。

 

 

 

 

 

 自室で戦闘用装備に着替え、ありったけの保存食や霊符や呪符、さらには拠点を作るための素材を収納。

 

 準備完了して異界の前に行くと、星祭の修羅がすでに待機していた。

 

 

「さっきの今で随分集まったな」

 

「深層へ行きたい奴ばかりだからのう」

 

「ワシもいい加減三桁の大台に乗りたい」

 

『『『それな!』』』

 

 

 古参ほど上がりにくくなってる現状、さらなる狩り場を望むのは別に可笑しい事では無いか。

 

 

「じゃ、行くか。今日から暫く寝かさないぞ★」

 

「上等!湧き待ちしてやんよ!」

 

「リスポン狩り!リスポン狩り!」

 

 

 意気揚々と門を潜る俺達と共に俺も進む。岩手県で溜め込んだストレスの捌け口となるが良い!

 

 

 

 

「何というかセツニキ達は本当に予想を越えていくねぇ……」

 

 

 呆れと称賛の混じったショタオジの声。それは俺達の成果であり、覚悟の結果でもある。

 

 

「依頼完了って事で良いんだな?」

 

「出来れば許可を出したくないけどね。結果を出されたから仕方無いじゃん」

 

 

 嫌そうな顔のショタオジの指先に光が集まり、光弾となって俺達を貫く。各自が持っている〝黒札〟に吸い込まれる様に消えたそれは、待ち望んでいた許可の証。

 

 

「これで後ろの結界を抜けられる様になるよ。ただ、今すぐは認めない。一週間の休養と装備を整えた後なら自由だけどね」

 

 

 視線を後ろに向ける。……ショタオジの意見に反対の奴は居なさそうか。

 

 

「分かった。それじゃ俺達は帰るわ。拠点は好きに使ってくれ」

 

「権能駆使して温泉まで作るとはね……幾らなんでも満喫し過ぎでしょ」

 

「これから先、確実に必要な拠点なんだから整備するのは当たり前だろ?」

 

「どれだけ潜るつもりなのさ」

 

「俺は定期的に戻るつもりだが、一部の奴はこっちが住居になるんじゃないか?」

 

「儂は少なくともそのつもりじゃの。少なくとも三桁に乗るまでは籠るつもりじゃ」

 

「私もグラ爺と同じだな。まだ世界に余裕がある内に力を付けておきたい」

 

「グラ爺も秋雨ニキも変わらないね」

 

「漸くショタオジの爪先が見えてきたのだ。指示には従うが、止まれはせんよ。なぁ、皆の者」

 

『『『おうっ!』』』

 

 

 グラ爺の言葉に老若男女の星祭と星霊神社の修羅達が熱の籠った返事を返す。

 

 この雰囲気に水を差すのも気が引けるんだが……止めないと駄目か。このまま勢いで深層へ向かいそうだし。

 

 

「おう、熱心なのは良いがとっとと帰還しろや。俺らクラスの装備を点検出来る製造班の数は限られてる。早く行かないと祭に乗り遅れんぞ」

 

 

『『『!!!』』』

 

 

 即座に周囲に居る先程まで()()()()()奴等と仲間割れを始める俺ら。

 

 

 足を刈り取りに行った者。即座に離脱して【脱出(トラフーリ)】の魔法陣に飛び込む者。

 

 文字通りの命を賭けたデッドヒートを繰り広げながら、俺らが去っていく。

 

 それをショタオジと二人で一歩下がった位置から眺めていると、隣のショタオジが視線をこちらに向けないまま口を開いた。

 

 

「で、急いだ理由は?セツニキは足止め賛成派だったじゃん」

 

「本体に渡した岩手支部の情報は降りてきてるか?」

 

「ちょっと待ってね。……あーそういう事か」

 

 

 納得と同時に溜め息を吐き出したショタオジに適当な飲み物を投げ渡し、俺も自分の分の珈琲を開ける。

 

 

「どう考えてもGPの上昇と共にショタオジの出撃(S案件)が増えそうなんだよな」

 

「この外法を使えば現状でもレベル五十クラスを呼べるもんね」

 

「流石にこれはイレギュラーだと思うが……無いとは言い切れん」

 

「一度起きた以上、二度目を想定しない訳には行かないか」

 

 

 二人揃って重い溜め息を吐き出す。これが再現不可能ならここまで想定する必要は無いんだが、悪魔化ウイルスに使われたカオス因子がどの程度の分霊なのか不明なのが痛い。

 

 カオスの性質上、レベル一桁でも()()()()し。

 

 

「いざって時に潜れるのと潜れないのとじゃ自由度が変わるからな。お前には悪いが、ちょっと急がせて貰った」

 

「正直、ここの拠点も含めて助かる事は間違い無いんだよね。俺一人だと建てる必要もあんま無かったけど、無いよりあった方が良いしさ」

 

「だろうな。初めて来た時は石床の上に何も敷かないで寝てたし」

 

「それは忘れて欲しいなぁッ!」

 

 

「だが断る」

 

 

 虚無の瞳のまま結界を維持しつつ、抜けようとしてくる悪魔に脳死で魔法を放っていた(ブッパしていた)光景は早々忘れられるもんじゃない。

 

 

「仕方無いじゃん!本体は楽しそうに上で生活してるしさぁ!」

 

「気持ちは分かるが、幾らなんでも酷過ぎだ。俺らの一部が母性発揮するぐらい虐待されてる子供みたいな姿にしか見えなかったぞ」

 

 

 だからこそ最低限ショタオジの分身が、人としての生活を送れる様に拠点を整えたんだが。維持は分身の出す思業式神に任せられるし。

 

 

「反省してるよ。……これからはこっちの俺も楽しめそうだしね」

 

「まぁ、暫くは戦力外だろうがな。俺も含めて一年もすりゃ使える様にはなるだろ」

 

 

 飲み終わった缶珈琲を腕力で圧縮する。

 

 

「ん、行くのかい?」

 

「俺も準備しないとな。じゃ、また一週間後に会おう」

 

「分かった。楽しみにしてるよ」

 

 

 前を向いたままショタオジに手を振り、【脱出】の魔法陣に乗った。

 

 久方ぶりの外の日差しは俺の目を細めるには十分な光量を持っており、思わず手を(かざ)していると──

 

 

「セツニキ!何かガイア連合が大変な事になってた!」

 

 

──ガイア連合を揺るがす程の大事件が()()()()()という知らせが飛び込んできた。

*1
大量の星祭初心者セットとマッカ。

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