【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
試行錯誤を繰り返し、ひたすら女天使作りに邁進する。時には意見を交わし、時には性癖で争い、手を取り合いながら励んでいると、先に素材の方が底を突いた。
「後ちょっとなのにぃぃぃ!」
「あれだけあった素材が全部無くなるとは……!」
「どうする?ここで辞めておく?」
「いや、それはそれで悔しい。術系に後は任せて、俺達は狩りで良いんじゃね?」
「じゃ、吸光の塔狙いで異界潜るかー」
「りょ。じゃ、準備してくるわ」
ぞろぞろと魔型以外の俺らが第十鍛練場を去っていくのを見送りつつ、魔型同士で実験レポートを交換する。
「やっぱ黄金比は最高だぜ!*1オカルト的にも強いから安定して結果が出せる!」
「問題は胸を盛ると余裕で崩れる事だよな」
「ロリ巨乳最高なのに……!」
「ロリはひんぬーだろjk」
「あん……?」「お……?」
「喧嘩するなら別の鍛練場行けよ?タダでさえ少ない素材を吹き飛ばされたら洒落にならん」
「ちっ……!今日の所は許してやんよ!セツニキに感謝するんだな!」
「そりゃこっちの台詞だっつーの」
全く……性癖は争いになるからノータッチのルールだろ。まぁ、簡単に譲れないからこそ性癖なんだが。
気を取り直してレポートを読み込む。流石は魔型というべきか痒い所に手が届く実験も多くやっていたみたいだ。
「身体だけで見ると獣顔が安定してるな。レベル二か三になるが、顔さえ変えておけば女体でも堕天しないみたいだぞ」
「俺の性癖に合ってますねぇ!」
「レベル三までだわ」
「四まで行ける」
「五は獣姦になるしなぁ」
「まぁ、個人の性癖は理論が完成したら好きにすりゃ良い。問題なのは俺らに望まれているレベルが一って事だ」
レベル一はほぼ人間と変わらぬ容姿で、それに耳や尻尾等が付いている程度のケモ度だ。俺らが女天使に求めている姿でもある。
レベル二は顔の輪郭が少し獣っぽくなり、手足も獣化し始める。
レベル三は獣顔の二足歩行する人間サイズの生物となり、レベル四は完全に二足歩行する獣、分かりやすく言えば二足歩行する喋るレッサーパンダに良く似た存在だと思えば良い。
レベル五はそのまんまの状態だ。注意点はペットとして愛しているでは無く、
「言うのは簡単なんだけどなぁ」
「実際、理論を組み上げる側の苦労って物をですねぇ!」
「ミナミィネキから情報貰った方が早い気がする……!」
「ここまで来たら自力で作りたくない?」
「店的にも公開はNGだろうしな」
俺らは趣味でやってるが、ミナミィネキは商売だ。流石にその〝種〟を教えてとは言えん。
「んー……俺ら的には天使の翼が生えた女の子なら良いんだよね?別に【ハマ】や【讃美歌】が聴きたい訳じゃないし」
「お?何か思い浮かんだ?」
「ハーピィ……っていうか鳥から行けないかなーと」
「一応、大量に余って
「もう無くなったじゃん──って言いたいけど、どうせまた貯まっちゃうかー」
「地脈がLAWに片寄ってるからねぇ」
世界的にメシア教の侵略が進み、影響は日本にも出始めている。
過激派が支配していた地脈は昔からLAWに染まっていたが、最近だと土地神の居る場所すら油断するとLAWに染まる。
イワナガヒメがゲームやる暇が無くなったと愚痴ってたぐらいだからな。余り良い傾向じゃないだろう。
「……ん?待った。鳥はアリじゃない?」
「というと?」
「天使と相性が良くて、堕天を止められそうな鳥居るじゃん」
「〝鳩〟か。……いや、これ悪くないどころか最高かも知れんぞ」
「お?来ちゃった?」
「たぶん間違いなく」
一旦そこで言葉を区切り、頭の中で話す内容を纏める。
「〝鳩〟はキリスト教だと聖霊が姿を借りた上にノアの方舟でオリーブの枝を咥えてきた逸話持ち、分かりやすく言えば〝良い知らせ〟を運んでくるシンボルとして扱われている。
ギリシャ神話だとアフロディーテのシンボルで、美と性欲の女神だから必然的に清楚と淫乱が両立するぞ。ついでに〝鳩〟は多産だから兎と同等レベルで年中発情期に近い生態でもある。故に〝色欲〟とも相性は悪くない」
余談だが余り良い意味が多くない塔のカードに描かれている〝鳩〟がオリーヴの実や枝を咥えているのは、破壊からの再生を示している事が多い。
杯のカードに描かれている場合は聖霊が姿を変えている姿であり、注ぐワインや水は祝福の意味がある。
まぁ、タロットカードは意味も分からず真似されてるカードも多いので、全てに当て嵌まる訳じゃないが。
「ちなみに日本だと源氏──というより武士の神である八幡神の使いだ。一応この場合も平和の象徴なんだが、意味としては現実的な秩序になるぞ」
「現実的な秩序?」
「力無き秩序に価値は無いだろ?」
「あー……警察みたいなもんか」
軽く頷き、正解の意思を伝える。
「んー……俺らの次の方針としては〝鳩〟の羽根でも拾いに行く感じかな?」
「俺の伝使うか?」
「伝なんてあるの?」
「山梨や岩手の名家の中に伝書鳩育ててる家が結構あるんだよ。そこから羽根を貰って来れると思う」
「おー……それじゃセツニキに羽集めは任せて俺らは乱獲組に合流するか」
「了解。一旦解散だな」
「中居さんに伝言頼んでおくかー」
「ついでに掲示板に書き込めば完璧だな」
「おっけー。掲示板に書き込んでおくわ」
雑談しながら鍛練場を片付け、最後に浄化を放つ。使う前より綺麗にするのは当然。一流は日々の生活にすら輝きがあるのだ。
◇
最近やけに在庫が補充されるブフストーンを当初の予定していたバリオン作りの為に買い占め、伝書鳩を飼育している名家に連絡を取る。
元々〝鳩〟のオカルト的な要素を結界や封印に転用していたらしく、それなりの数があるとの事で霊装とマッカを対価にあるだけ買い取った。
結界や封印の管理については結界杭について教えておいた。というか存在を知らなかったらしい。
お前らの為に作ったのに何で知らないんだ……!と思わなくも無いが、良く良く考えると、作った時は名家との仲は微妙な間柄だったわ。セツニキ反省。
「む。セツニキか?丁度良かった」
「ん?こんな所で会うとは珍しいな」
名家から鳩の羽根を貰った帰り道。運輸科でバッタリギルニキと出会った。立ち話も何なので、ジャンニキの店に向かう。
適当に注文し、軽く近況を語った後、注文の到着と共に話は本題へ。
「自衛隊と協力関係を結んだ後、それなりの数の黒札が増えたんだがな。やはり地方勢が多く、ジュネスの誘致を求められる事が多いのだ」
「ガイア連合の大蔵省としては断りたい感じか?」
「その判断がオカルト素人には難しいのだよ。新潟なんていきなり石油が湧いた*2のだぞ?」
「あー……何か旧式の海軍船*3を蘇らせたり派手に動いてるよな。あそこ」
ロボ部や船好きもかなりの人数が移った筈だ。やはり石油や天然ガスの産地という事実は大きい。終末後もある程度は期待出来るだろうし。
「正直な話、
「今までの功績を考えれば、ギルニキとギルニキが守りたい奴等の安全は確保出来てるだろ?いっそのこと誰かに任せても良いんじゃないか?」
「我にもプライドはあるのだよ。終末後には役に立たんかも知れんがな」
「さよけ」
ガイア連合自体が富豪ニキネキ達の〝成果〟だと思うが、魑魅魍魎蔓延る経済界で生きてきた人間だ。身体が動く内は
「んー……うちで確保してる占術師を派遣する。人数居ないから富豪俺達の間で巧く回してくれ」
「助かる。ところで実力はどうなんだ?」
「海外のアングラ組織で働いていた奴なんだが、株取引で派手に暴れていたからな。金儲けに関してはお墨付きだ。……欠点は不運を予言出来ないって事か」
「おいおい。それは大丈夫なのか?」
「メシア教の侵略を察知出来ず、大赤字を出してアドリア海に沈められる所を拾い上げたんだが、その時の事がかなりトラウマになったみたいでな?言い付けは絶対に守るし、それ以外の事は
「……不運に関しては我らがフォローすれば良い訳か。フハハハッ!良い、良いぞ!腕が鳴るな!」
「あ、それと俺らも深層に行ける様になったから大抵の問題はショタオジが解決出来るぞ。元々ショタオジの願いの一つに日本防衛もあるし、黒札に対する融資なら緩くてもカバー出来ると思う。最悪、俺がマッカで補填するしな」
「ふむ。了解した」
珈琲を飲み干し、ギルニキが伝票を持って席を立つ。
「行くのか?」
「うむ。仲間達と打ち合わせをせねばならんからな」
「気を付けろよ。最近は色々物騒だからな」
「星祭からの護衛以外にも多数の霊能者を雇っている。それに例え死んだとしても、セツニキが動いてくれるのであろう?」
「おう。ギルニキ達が死んだら苦労するからな。例え魔界に魂を持ち逃げされようとも、追い掛けて奪い返してやるぜ」
「ならば我に恐れる物は何もない。──では、またな」
去っていくギルニキを見送り、少し冷めたポテトを摘まむ。油っこくなった舌を珈琲で洗い流し、俺もジャンニキの店を出た。
◇