【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
掲示板に情報を上げて暫くすると、星祭の拠点から人の気配が消えた。深層に潜れる者達は少しでも実力を上げる為に異界へ潜っており、未だ辿り着いて無い者達は消耗品の素材を取りに異界へ潜ってくれている。
俺も嫁の仕事先に特務が入るかも知れないとぼかして伝えに行ったり、修羅勢から提供のあった素材を製造班と共に加工したり、下層最奥に用意したショタオジの別荘を要塞化したり、寝る間も惜しんで準備に明け暮れていた。
そんな中、何とか時間を作って宮城支部に飛ぶ。目的は日本神解放に伴う打ち合わせだ。
事前に支部長グループでアポイントを取ったからか、すぐにレン子ニキ*1の元へ通された。
その途中、良い趣味してる*2小さな黒札の嫁につい視線が向いてしまう。
「だが俺は悪くねぇ!そうは思わないか?レン子ニキ」
「気持ちは分かるけど、あの子の嫁にそういう視線を向けないで頂戴。教育に悪いわ」
「残念だ。あの小さな黒札からは同志に成れる波長を感じたのに」
「……もしかしてセツニキ気付いてない?」
「いや?あの娘が電話越しに叱った子なのは気付いてるぞ」
どれだけ肉体的な傷を癒そうとも、魂に刻まれた傷の
「それならどうして……」
「お前が思ってるよりあの娘は強いぞ?たぶん俺よりもな」
何というか内蔵されてる〝運命力〟が桁外れに違う。たぶん別の物語の主人公だろう、あの娘。その内ロケットの様にカッ飛んで行く未来しか見えねぇ。
「セツニキよりも……?」
「前世の記憶に引っ張られてる俺より、今世を全力で生きてる奴の方が強いのは当然だ。だから心配するなとは言わないが、過保護になってもあの娘の為にならんぞ?」
「そう簡単には割り切れないわよ」
「だよな~」
見た目は幼女だし、面倒見の良い奴ほど心配になるのは当然だ。むしろ俺みたいなロクデナシぐらいだろう。対等な転生者として扱う奴は。
「──っと、そろそろ本題に入るか。お互い暇じゃないしな」
「そうね。……事前に渡された資料は読んだけど、やっぱり宮城支部では厳しいわ」
「神とはいえ悪魔だからな。ショタオジ的にもNGだそうだ」
かなり昔の話だが、岩手支部の金鉱山を甦らせる話をしたと思う。今回はその要である金山毘古神と金山毘売神の二柱についての話し合いだ。
石巻市にある金華山黄金山神社が未だに霊能組織だったら話は早かったのだが、残念ながらすでに〝裏〟から足を洗っており、このままだと開放したとしても二柱を奉る場所が無い。
宮城在住の神社系俺達に託すという話も出たが、金鉱山を甦らせるにはそれなりの霊格を持つ分霊を降ろす必要がある為、必然的に俺達に要求される霊格も相応に高くなってしまう。
平均レベル十五の宮城支部では引き受けられる人間が居らず、じゃあどうするか、というのが今回場を設けた理由だ。尤も、取れる手段はそう多くないが。
「一番手っ取り早いのは高レベルの黒札を他所から引っ張ってくる事だな。全ての問題が解決する最高の一手だぞ」
「最高の案ね。不可能って事を考えなければ、だけど」
「新潟の様に黒札を引き寄せられる〝売り〟が無いとキツいよな」
「岩手はどうなの?」
「あそこは元々黒札に頼らない霊能組織を立ち上げて防衛させる予定だったんだが、ガイア連合の動きに合わせて動いていたらメシア嫌いの聖地になったな」
「羨ましいわね……本当に」
こればっかりは運としか言いようが無い。メシアと手を組む未来が来るとは思わなかったし。
「一応、愛宕支部長管理下でも気仙沼の
「終末後はたぶん地殻変動で地脈切られるからそれまでの間だけだぞ。期間限定の資金源として使うならそれでも良いと思うが」
「財政的にはそこまで困ってないのだけど、あれば防衛力を強化できる訳だし、悩ましいわね」
人差し指を頬に当てて首を捻るレン子ニキは下手な女より可愛く見える。とはいえ俺の好みから外れるので、残念ながら女として──
「ん?」
「?どうしたの?」
「宮城ってパン一の野生のリンク*3が居るのか?」
思わず二度見した俺は悪くねぇ。
「………………県内の霊地管理者よ」
「〝流れ〟を肌で直接感じとるタイプか。どうせなら褌履けば良いのに」
視覚補正って凄いよな。パン一だと変質者だが、褌なら日本男子でごり押せる。身体を鍛えてないと許されないが。
「待って。さも当然の様にパン一が普通みたいに話すの止めて?」
「五感の内、触感を重視する奴は大抵脱ぐしなぁ。流石にパン一は居ないが、際どい衣装の奴はそれなりに居るぞ?」
それこそ古の戦士♀のビキニアーマーを着てる奴も居る。恥じらい?奴は最前線において要らない子になったのだ。
というかグラ爺や秋雨ニキですら脱ぐ。真剣勝負をする時は大抵上半身裸だし。
「慎みって大事だと思わない?」
「命より大事か?それ」
「価値観が違い過ぎる!!」
「まぁ、それが武で生きる奴とそれ以外の差だわな」
俺も昔は良く全裸になったもんだ。最近でも普通になるが。というか深層の雑に放たれる権能が糞過ぎる。
装備破壊を当たり前の様に行うな。破壊耐性を上げると普通の耐性の方に穴が出来るし、製造班も俺らも未だに頭を悩ませてるんだよな。
まぁ、装備の数値に悩むのはハクスラの宿命みたいなもんだし、怨嗟の声を上げながらも楽しんでるが。
叫んで感情を発散出来たのか、レン子ニキが御茶を一口飲んで仕切り直す。それに合わせて俺も思考を戻し、宮城の問題に切り替える。
「あの娘の事を考えると、長期間
「補助金辺りか。まぁ、妥当だな」
「最悪、気仙沼は切り捨てる事を想定した上で支部の運営すれば問題無いと思うのよ。他の支部の様な高レベルの黒札が生まれる事を期待するのも違うしね」
「実際、現状だと金山は財源の中心に据えるのは危ないから間違っちゃいないと思うぞ?金華山の二柱がこちらの指示通り動いてくれるか不明だしな」
「でも、ある程度の勝算があるから企画したのでしょう?」
「いや、多少の我が儘は聞いてやるつもりだが、こちらの限度を越えた場合は切り捨てるつもりだぞ?鉱脈は欲しいが、無理なら無理でイワナガに頼めば産み出せるし」
終末後に現在の文明をそのまま維持出来るとは思っていない。維持する努力こそするが、一度滅びを迎える以上、取捨選択が大事となる。
一年かけて二柱を説得するより、一年かけて稼いだマッカをイワナガに積んだ方が楽だしな。
ガイア連合という組織の視点で見れば、鉱脈はとてつも無く魅力的だ。しかし俺個人で見ると、所詮は代替可能な入手経路の一つに過ぎないのだ。
心の底から望むぐらい本当に欲しいなら、ソイツが二柱の我が儘に付き合えば良い。少なくとも俺は御免だ。
「聞けば聞く程、一人は悪魔召喚士が欲しくなるわね」
「世界中の霊能組織が時の王に排斥されず、名家や貴族と成れたのは、必要な技能を必要な時に提供出来たからだ。そういう意味では当時の王達も、今のレン子ニキと同じ気持ちだったんじゃないか?」
人間を雇う以上、社会の仕組み的にどう頑張っても教育費用や給料は発生する。それを前提として考えると、必要な時だけ必要な技能を持った悪魔を使役する悪魔召喚士は、今で言う人材派遣会社みたいな物だったのだろう。
傾倒し過ぎると自国の文明の発展が遅れ、人の力だけで築き上げた他国に滅ぼされる訳だが。
「何時の時代も、何処の組織も、使える人材が欲しいという想いは変わらないって訳ね」
「まぁ、それが組織ってもんで、長の悩みってやつだな。ずっと付き合って行かなきゃならんもんだから早めに配られたカードで対処出来る様にするか、配られるカードの〝質〟を上げるように手を打った方が良いぞ」
「セツニキはどうなの?」
「俺は御意見番っていう最高のポジションだぜ!」
「殴りたいその笑顔……!」
組織の運営方針に口を出せ、人材集めは人任せに出来る最高のポジション。それが御意見番だ。
影響力は政治力次第だし、いざという時の権限が無いので、己の無力を嘆く事も多いが。
ちなみに責任を背負わないで好き勝手やりたい!って奴は、そもそも御意見番に選んではいけない。
あくまでも組織運営に有益な人間を選ぶ必要がある訳だな。ただの無責任な口煩い外野の意見を聞くだけなら掲示板で良いし。
「ま、終末までまだ時間があるんだ。ゆっくり考えて宮城支部の為になる選択を選べば良いさ」
「そうね。じっくり検討する事にするわ」
御茶で喉を潤すレン子ニキを見ながら先程の黒札について思考を働かせる。
宮城支部の鍵はあの娘だろうな。何というか宮城の現状を良くも悪くも変える気がするわ。
◇