【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
宮城から帰るついでに岩手支部に立ち寄り、今度は愛宕ネキ達と打ち合わせる。
愛宕ネキの神社で奉る
愛宕神社系列の本社は京都なので、愛宕ネキの神社近くの異界に封じられた火産霊命は分霊なのだが、それでも主祭神は主祭神。
不在の主祭神の代わりに現在進行形で働いているイワナガヒメの扱いをどうするか、本人も含めて話し合う運びとなった。
「では、私は主祭神への引き継ぎが終わり次第、鬼手一族の祭神と成ろう。それで問題無いだろう?」
「貴女はそれで良いの?今まで私達の手助けをしてくれたのに、切り捨てられる様な扱いになるのよ?」
「愛宕。貴様は甘く、優しいな。だが神を舐めすぎだ。この国の歴史
相変わらず岩手の石長比売は男前だな!流石、俺の主祭神だぜ!
「……そう。それなら貴女の申し出を有り難く受け取るわ」
「うむ。では我はゲームに戻るとしよう」
「今は何のゲームやってんだ?」
「鉄拳だな!時々ゲーセンにも行くぞ?これでも有名プレイヤーなのだ」
「現世を満喫してるな」
「星祭の
「さよけ」
ウキウキ席を立ったイワナガヒメを見送り、愛宕ネキと向かい合うと、感心とも飽きれとも取れる様な声色でポソリと呟く。
「星祭のイワナガ様と違い過ぎるのよね。うちのイワナガヒメ様」
「まぁ、うちのイワナガから本霊に情報行ってるだろうし、ガイア連合に都合の良い性格の分霊を降ろしたんだろう」
「そのお陰で助かってるから何とも言えないけど、神様なのにあんな風で良いのかしら?」
「本霊が
「それを言うならサクヤ様はどうなのよ」
「霊峰富士の主祭神だぞ?イワナガとは格が違い過ぎるし、こっちはそもそも他の日本神なんて気にしないだろ」
前世だと天照より信仰されてそうな富士の神で、桜が象徴花であり、儚く散りそうな美女で、全国に無数に存在する浅間神社の元締めだ。
ハッキリ言えば大半の天津神に知名度で負けないだろうし、それはそのまま神頼みした時に頭を過る神の名と成る事を意味している。
つまり、信仰心が凄く集まる。
ガツガツしてない男が女にモテる様に、信仰心に餓えていない神へ信仰心が集まるのは世の習い。
基本的に余裕が無い時に神へ祈るのに、その相手が自分より余裕の無い、餓狼の様なギラギラした眼だったら祈る側も萎えるだろう。
「何というか神様も大変ね」
「芸能界みたいなもんだからな、神の世界って。神の中には信者相手に
「……その内、信仰心の為に動画サイトで脱ぐ神様を見る事になるのかしら?」
「全裸ダンスが芸風の女神が居るぐらいだし、追い詰められたら躊躇わずに脱ぐぞ。アイツらはそういう生態の生き物だ」
「何て嫌な未来なのかしら。滅べば良いのに」
心底嫌そうに顔を歪める愛宕ネキを宥める様に口を開く。
「実際、黒札の嫁に使われてない神はガイア連合と〝緣〟を繋ぐ為なら靴すら舐めるだろうが、アイツらはアイツらで生き残るのに必死なんだと思えば良い。それを無様だと笑ったら、終末後に鬱になるぞ」
「…………はぁ。そうよね。終末後に溢れる難民の数を考えれば、神の無様を笑えなくなる状況になる事は火を見るより明らかよね」
「俺らにも余裕がある訳じゃない。救う人間、見捨てる人間をしっかり分けて考えないとキツいぞ」
「私は故郷を守りたかっただけなのに……」
その言葉に掛けてやれる言葉が見付からず、思わず天を仰ぐ。やっぱ糞だな、この世界。
◇
岩手支部から戻り、今度は輜重兵予定の探求ネキを捕まえて打ち合わせだ。とは言ってもお互いにやるべき事は把握しているので、事前確認は今回だけとなる。
最終確認は解放作戦の前日に行い、不足分を予備物資から補充するだけだ。
「日に日に集まる物資の量を見ると、何処と戦争する気なのか、とか考えません?」
「深層から襲い来る悪魔の量的に戦争でも間違ってないけどな」
「一人辺りのノルマが軽く千体越えますからね」
「高火力範囲技持ちが雑にブッパして、生き残りを首刈り戦術する事が最適解になるとは……」
魔界に近いと言う事で、ほんの僅かな〝繋がり〟から悪魔化するのには驚いた。
大地があったら大地の神が生まれ、剣を悪魔に振るえば、その時に発生した火花から〝炎〟を起源に持つ悪魔が誕生する。
雑な繋がりを辿って降りて来る分霊が一度暴れれば、容易く
あの世界を闊歩する真修羅達は流石過ぎる。俺も
「当日は遅刻確定ですか」
「岩手の火産霊神を解放した後、金華山の二柱を解放して話し合う必要があるからな。最悪、暴力から始まる交渉術が火を吹く予定だ」
「神様相手でも変わりませんか」
「どんだけ神殺しをやったと思ってんだよ」
メジャーな悪魔に留まらず、深層に湧く悪魔は大半が神の名を冠した勝手に分霊になった奴ばかりだ。
そういうのを薙ぎ倒して生きている以上、今更神だからと言うだけで敬う心は存在していない。元々存在してないがな!
「それもそうですね」
「まぁ、自称石長比売が湧いた事には驚いたがな。思わず本霊を呼び出す所だったぜ」
「悪魔のいい加減さを舐めてましたね。岩から生まれた山の女神だから石長比売です!が許されるとは」
「ベルフェゴールも愚痴ってたな。自称ベルフェゴールが多過ぎて最後の詰めが出来ないって」
本霊が分霊を派遣して自称分霊を刈るとかどんな世界なんだよ。初めてその話を聞いた時、鳩が豆鉄砲食らった様な表情になってた自信があるぞ。
「何というか悪魔には悪魔の苦労があるんですねぇ」
「大陸のコピー品撲滅に苦労してる高級ブランドを見てる気分だぜ」
「根絶出来ないという点では同じような物では?」
「種族が違っても同じ悩みを抱えている事を笑うべきか、それとも嘆くべきか」
「人間からの影響を受ける以上、人間の持つ善徳や悪徳も引き継ぐ存在──だと定義すると、悪人が多すぎますか」
「悪として定義される奴の扱いに悩みそうだ」
「確かに」
お互いに苦笑いを一度浮かべ合った後、表情を真剣な モノへと戻す。お互いに忙しい身の上なので、満足に駄弁る時間すら惜しい。
「じゃ、また前日に」
「また前日に」
やる事はまだまだたくさんある。頭を空っぽにして戦う為に当日まで頑張りますかね。
◇
禊に暫くしたら深層に篭る事を伝え、その足で製造班へ。目的は修羅勢用の高級回復薬の量産だ。
流石に女神や薬神等のヒーラー系高位悪魔の
唯一の救いは承太郎ニキのお陰で【龍の眼光】の解析が進み、薬瓶程度には流用可能となった事か。
これが間に合っていなければ素材を現地に持ち込み、戦場の流れ弾に注意しながら調薬する必要があった。
どう考えても俺も含めて製造スキル持ちは戦線離脱してたな。じゃないと、間に合わなかっただろうし。
それと平行して霊符や呪符の量産に入る。魔眼の一族と共に託された世界各国の知識をフル活用するのはもちろん、足りない分は山梨の図書迷宮に潜って知識を漁って来た。
俺の術師としての性能が二割増しになった事を考えれば、悪くは無い選択だったと思う。流石にこの領域まで来ると、短期間じゃレベルを上げれないしな。
ちなみに合間合間に修羅勢との模擬戦を挟み、実戦の〝勘〟って奴は維持している。その途中、グラ爺がどう考えても覚醒したとしか考えられないレベルの権能を振るってきたので、俺も対抗して権能を覚醒させてみた。
ただこの権能、正直使えない。
いや、正確に言えば、俺の権能じゃ無いので
まさか一族の歴史と一緒に霊才まで継承するとはな。暫くしたら
「……ま、配られた手札で頑張るのは何時もの事だ」
一度だけ大きく溜め息を吐き出し、再び準備に戻る。今回の作戦はショタオジの想定する終末対策において、かなり重要な役割らしいからな。
全力を出して失敗したならともかく、手を抜いて失敗したら俺が俺を許せなくなる。
その事を考えれば、この忙しさも許容範囲内だ。願わくば、この苦労に見合う成果が得られん事を。ってか?
────それから数ヵ月後。
ついに【天樹山】攻略が始まった。