【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
でも同じ作品から引っ張るのもな〜って悩みも出てくるという
社務所の庭に季節外れの桜が咲き乱れる。腐っても本霊に限り無く近い分霊と言うべきか。木花咲耶姫*1はそれほどの力を持っていた。
とはいえ忖度はしない。何故なら推しでは無いからだ。だから俺は軽く幻影を自身に掛け、スーツ姿となって机の上で手を組んだ。
「えー木花咲耶姫さん。それでは面接を始めますね」
「えっ?えっ?」
「まず、当社に貴女がもたらせる利益を教えて下さい」
「えっ、あの……?」
ぼそりと減点1と呟く。ぶっちゃけた話、ここから出せないので出来レースなのだが、木花咲耶姫にとっては良く分からないうちに減点を食らった形となる。
「あ、あの!富士山の御神体やってます!」
「ほう。それは凄いですね」
「はい!私、凄いんですよ!」
むふーと胸を張る木花咲耶姫は好きな人なら好きだろう。確かに美しいという神話に恥じない美を持っている。──だが。
「それは当社に役に立ちますか?」
「えっ?」
「私達も慈善事業では無いので。ただの御神体というだけなら、この机の上に置いてある信玄餅でも良いんですよね」
「えっ、あ、あの……火!火の神やってます!凄いですよ!」
「ほう……」
意味ありげな視線を当主様の分身*2に向けると、庭に降りて──
「【■■■】」
スピリット・オブ・ファイアもどきを召喚。その姿を唖然として見ている木花咲耶姫に追撃する。
「彼は当社が誇る日の本一の火の使い手です。貴女の火は彼を越えられますか?」
「し、信仰が集まれば……」
「現状では貴女に投資する利益が我が社には無いのですよ。今回はご縁が無かったという事で──」
「ま、待ってください!山!あ、後、酒造の神でもあります!後、権能も一杯あります!」
「ほう……酒造の神ですか」
「はいっ!富士の水を使った美味しいお酒が作れます!
物凄く惹かれる。が、まだ折れる訳にはいかない!
「ですが我々はビジネスをしている。貴女はその対価に何を求めますか?」
「この神社の主祭神に成れたら良いな──」
「木花咲耶姫様の今後のご活躍を──」
「じょ、冗談です!行くところが無いので匿ってください!メシア教に追われるのも封印されるのも、もう嫌なんです!」
「では、こちらの契約書にサインをお願いします」
スッと立ち上がり、当主様が契約書を木花咲耶姫の手前に置く。契約の恐ろしさを理解しているのか、ちゃんと霊視まで使って確認した木花咲耶姫は机の上に置かれていた筆で
「契約はここに締結されました。貴女の当社での活躍を期待してます。──あ゛ー疲れた。禊~宴会の用意よろしく」
パンパンッ!と手を叩き、外で待機していた巫女達が次々と料理を運ぶ。それを眺めながら速攻で酌んだお酒で喉を潤す。カァーうめぇな。
「わざわざこんな凝った事せんでも良かったんじゃない?」
「入社面接を受けた奴はわかると思うけどな。神だからって理由で免除されるのが許されないぐらいキツイんだよ、アレ」
「うへ~俺はやった事無いけどそんなにキツイの?」
「まず面接に辿り着くまでがキツイし、胃がやべぇぞ。気の弱い奴は雰囲気に飲まれて実力の一割も出せねーな」
かと言って慣れるまで繰り返すのも辛い。周りが次々と職を見付ける中、取り残されていく感覚は地獄すら生温い。まぁ、俺は速攻で起業したから面接する側に回ったが。
「あ、あの~」
「んあ?なんだ木花咲耶姫──長いっ!サクヤで良いか。なんだサクヤ?」
「私、ここに居ても良いんですか?」
「良いも何も俺達は〝契約〟を守るぞ?なぁ?」
「契約破棄した時のリスクは普通にあるしねー」
俺達が木花咲耶姫と結んだ契約は、そこまで難しい物では無い。敢えて言うならサクヤが星祭神社の指示でちゃんと働いてる内は、俺達にメシア教からの護衛と養う義務が発生するぐらいだ。
これを破ればお互いにかなりのリスクを負う事になるが……実はリスクを背負ってるのは星祭神社の面子だけ。
何故なら当主様は契約の立会人なだけであり、サクヤが結んだのは星祭神社とだからだ。
その代わりとして木花咲耶姫を星祭神社の配神として祀る契約なのだが……たぶんサクヤは当主様と結んだと思っている。俺達から言うことは決してないが。
「でも、まだ働いてませんよ?」
「お前、流石の俺でも正月から働かせる鬼畜じゃないぞ……?」
「あっ……」
完全に気付いて無かったらしい。まぁ、封印されてりゃ日付感覚も無くなるか。
「七日まで仕事は無しだ。世話係の巫女は付けてやるが、自分の事は自分でやるように。まぁ、暫くは大目に見てやるから頑張りな」
「はいっ!頑張ります!」
ニコニコと笑いながら返事をするサクヤを見て思う。神話の美女は伊達じゃねぇな、と。
◇
一日空けて二日目。相変わらず俺は酒に溺れて……居たかったなぁ。取り敢えず身嗜みを整え、外に出る。拝殿には相変わらず人がゴミの様に集まっていて、本殿の方にも喧騒が聞こえてくる。
多くの人間が正月を満喫している中、俺は一人裏山へ向かう。実は星祭神社の裏山には星霊神社の正門前に出る獣道がある。とは言ってもサクヤを匿う事になった関係で、通れるのは俺と禊の二人だけになったが。
富士山という日本最高峰の霊地を手に入れたからか、木花咲耶姫という山の神を配神とはいえ祀ったからか。
裏山の木々は立派な霊樹となり、草花は見事な霊草化しているが、今日は無視して星霊神社へ向かう。
それから暫くして、ようやく星霊神社に辿り着いた。相変わらず森の奥深くにあるとは思えない立派な佇まいに圧倒されるが、それなりの回数を通っていると、我が家の様な安心感が出るのはどうしてなんだろうな。
拝殿の清掃をしていた都に軽く挨拶をして、この神社の神主に会いに行く。目的はそう──
「御年玉貰いに来たぜ!」
「君、どう考えても僕より前世長生きしたよね!?」
「I'm 四歳児!I'm 四歳児!」
相変わらず出会う度にふざけてる気もするが、俺達の会話はこんな始まりが多い。一頻り騒いで、満足したらスッと本題に入る。
「いやな、巫女達にやった式神を俺も頼みたくて来たんだわ」
「式神?君に必要無くない?てか自分で作れるでしょ?」
「俺のなんだが、俺のじゃないんだよなぁ」
「どういう事?」
首を捻る当主様に向けて、寝る前に考えた事を思い出しながら語る。
「これからも俺は日本中を動き回る事になると思うんだが、これから作る組織の奴の大半は犬神なんて持ってないだろ?移動で苦しむんじゃないかな、と」
「でも、それは仕方なくない?
「帰りはな。行きは
「あー……」
「人集めの初回ぐらいは【
「成る程ねぇ……」
俺の言葉に一理感じたのか、天井を見上げながら考え始める当主様。そんな当主様の言葉を待ちながら、ネコマタの入れてくれた御茶を頂く。
「俺の式神は基本的に恐山系の術で、ザックリ説明すると霊草やら秘薬やらで身体を作って、求める性能に応じて憑依させる雑霊を変えるんだけど……どんな奴を憑依させるつもり?」
「【アナライズ】向けの
「完全にサポート向けだね。【念動】はコダマで良いとして……【聖域】はともかく【転移】か。正直【転移】は空間系の神の分霊をシバいて、その素材でスキルカード作った方が楽なんだよね」
「俺でもシバけそうなの居るならハムハムするぞ?」
「ハムハム?」
「ゲーム用語。日夜多くのゲーマー達が出るまで狩るから実質百パーを合言葉にする時の宣言みたいなもんだ」
「そりゃ出るまで狩るなら百パーだよね?」
「まぁ、そうなんだが……」
何て説明すれば良いんだろうな、これ。他に美味しい物が落ちる訳でも無い敵を永遠に狩り続けるあの空しさをこれからやると宣言する時の空元気というか何というか。やった事無いやつに説明しづらいなぁ。
「何か説明が難しそうだし、ここにネットが繋がった後にでも教えてくれれば良いよ」
「悪いな、言語化するのが難しかった」
「俺も早くゲームしたいわ。そういう話に混じれないのって結構辛いもんあるし」
「ポケ──この話はやめよう。それで【転移】系は何かあるか?」
「女神縛りで日本限定【転移】になるけど、
「
「一体一億って言ったら出せるの?」
「汚い金で良けりゃ出せるぞ?綺麗な金なら五千万ぐらいまでならいける」
「待って四歳児。稼ぎすぎじゃない?」
「世の中が汚いと力こそパワーになるからな。詳しく説明すると共犯者になるから言えないが、時間と共に俺の資産は増えていくぞ?」
「恐ろしいね転生者」
「ホントにな」
本来ならそんな〝表〟に迷惑を掛ける存在を取り締まるのが、葛葉でありヤタガラス、各地の名家なんだが……まぁ、現状は機能してないわな。
「現金は良いや。それより異界の鎮圧を手伝ってよ」
「無茶言うな。俺程度じゃ刹那の速さで死ぬぞ」
呆れ気味にそう言うと、不気味な笑みをこちらに向けてきた。
「星祭の子達もそれなりに強くなったからね。鍛錬用の異界、階層増やしておいたよ!ついでに君用の階層もね?」
「あー富士山全域の霊脈を抑えたから制限掛けられるだけの余力が出来たのか」
「同時に悪魔化する瘴気が増えて異界も活発になったけどね……」
疲れたように溜め息を吐き出すが、俺は知っている。
「まぁ、わかった。二ヶ月ぐらい依頼料代わりに異界へ行くわ。ドロップは集めて渡せば良いか?」
「安物は良いや。レアとマッカだけ頂戴〜」
「了解」
帰り際に俺から取れるだけの素材を取って貰って式神の素材として渡し、星祭神社に帰宅。
完成は一週間後と言っていたが、その前に一度潜るかな。
ギンも鍛えたいし、鈍った腕の錆落としと行くか。次は負けたくないしな。
主人公が貧乏神社の神主になる前の前職は社長でした。
色々設定はあるんですが、出すかどうかはその日のノリ次第です。