【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
個人技を〝技術〟に落とし込む事は太古の昔から人類が繰り返し
この作業の最たるモノは機械化だろう。
ボタン一つで職人芸の再現に挑んだ者達の努力が、今の現代社会を支えている。そこに神や悪魔と呼ばれる存在の〝力〟は無く、代わりに数式と物理法則の名の元に行われている訳だ。
そのせいでオカルトと機械は基本的に相性が悪いとされているのだが……【接続】のスキルはその大前提を覆す。
元々はゴーレムや人形使いなど、神の真似をして物質に魂を与えて使役した術者が始まりだと思う。
それが長き時を経て〝スキル〟として認められ、【死霊術師】や【道士】や【錬金術師】を構成する一部となったのだ。
その事実は喜ばしい事であり、祝うべき事だという思いは変わらない。人類の努力が〝世界〟に認められた訳だからな。
だが人類の文明が進むに連れて、酒場の笑い話では済まない洒落にならない問題も発生してしまった。
たぶんこのスキルは悪魔召喚プログラム関係の技術として使えてしまう。
そして海外に潜ませた〝友達〟の話を統合すると、メシア教はすでに作り終えて実戦配備を始めた気がする。
スティーブンの様な
もしかしたらそれ以外の理由かも知れないが、この世界に生きる者として一言だけ言わせて貰いたい。
気軽に終末に繋がる要素を持ち込むのは止めろ。世界はおもちゃ箱じゃねぇんだぞ。
「セツニキ、手、止まってんぞ」
「……悪い。最悪な未来が想像出来ちまってな」
「セツニキって【予知】系統の確率どれくらいだっけ?」
「一割」
「世界、終わったな」
「一割は引ける数字だもんな」
雑談しながら黒鎧の術式を弄っていく。ここ数ヶ月、人魚ネキの休暇に合わせて何度か実験した結果、どうやら人魚ネキの【呪歌】は
どちらかと言うと〝魂の共鳴〟に近く、歴史に名を残す美術品を見た時の反応に似ていて、正規の方法では再現するのは難しい事も分かった。なので〝裏ワザ〟を使う事にする。
「鎧を着た人間の五感に与えられる情報をこちら側で操作して、人間の精神を夢の世界に送り込む。この技術が完成すれば、
「実際、修羅勢は人魚ネキのお手伝い有りで遊んでなかったっけ?」
「サバゲーとSASUKEで遊んだな。その時は人魚ネキの個人技で何とかして貰ったが、リアルに
現実でスポーツを行った事のあるヤツなら分かると思うが、肉体を想像通りに動かす事は難しい。
だからこそ練習を繰り返す事によって〝最適な動作〟を身体に刻み込む必要がある訳だ。
その大前提を覆すのが天才と呼ばれる一部の人間であり、極論を言えば、理論上、彼らは適切な筋トレだけで世界を獲れる。……ガイア連合にはゴロゴロ居る気もするが。
「よっし!調整終わったぜ!」
「こっちも人魚ネキの歌声のインストール終わったよ~」
「じゃ、実験再開と行きますかね」
黒鎧を着込み、全身の力を抜く。ゆっくりと流れ出した人魚ネキの歌声に耳を澄ませ、心地良い気分のまま目を閉じる。
「脳波異常無し。精神接続問題無し。安定域で進行確認」
「夢幻空間構築開始を確認。10%……32%……67%……基準数値に到達。数値は尚も上昇中」
「理論上の安定領域である80を越えたら報告を」
「了解。──77%……80%
「了解。それじゃ行ってらっしゃい」
その声と共に意識が薄れ、一度意識を失った。
◇
夕焼けと、歯車と、雪原と、屍の混ぜ合わさった様な世界。人魚ネキ本人の歌から連れて来られた時とは違い、遠くの景色の一部は破かれた様な姿となっており、本家との違いをまざまざと教えてくれる。
夢の世界。一言で言えばそれだけで済んでしまう世界だが、この世界は人間が形成している集合無意識の中から『UBW』という言葉を聞いて連想される〝情報〟を引っ張り出して構築しており、今の世界の様に複数の情報が混ぜ合わさる事は避けようが無い。
それに対する〝答え〟として、人魚ネキは集合無意識内にある無数の〝情報〟の中から黒鎧を着ていた三人と俺の〝情報〟のみを引き出して構築したわけだ。
だからこそキッチリ別れていた。本人は無意識でそれを行ったというのだから〝才能〟という物は恐ろしい。
「じゃ、そろそろ始めますかね」
世界に満ち溢れる属性は
「MAGを集めて~剣を錬成──いや、これは違う」
途中まで集めていた剣の因子を大気へ還す。俺とした事が油断した。後に続く同盟の為にも、生半可な事をする訳には行かないんだった。
「────
剣の丘に刺さる、誰かの想像した〝剣〟を左目の魔眼で解析。
「────憑依経験、共感終了」
その剣を思い付いた体験や当時の思考──つまり、誰かの〝
何、遠慮するな。この世界が人間の集合無意識で出来た夢の世界である以上、他人の〝
その対価としてお前らの夢を形にしてやっただけだゾ☆
「────
生成されて空中に浮かぶ無数の剣。大多数は何かのアニメや漫画を元にした〝黒歴史〟の産物だが、中にはチラホラ
草薙剣*1、デュランダル*2、虎鉄*3、日月の双刀*4、ボウイナイフ*5、グラム*6、アダムスの鎌*7、村雨*8。
どうやら集合無意識から引っ張り出した〝剣〟の情報に混じっていたらしい。これ、後で修正しないと駄目か。
どう考えても〝
とはいえこのまま〝剣〟を浮かべておくのもあれなので、複製した剣を
「────
そして発射。中には銃弾にするには向いていない形状の武器も多数あったが気にしない。原作でも同じ事をしていたし。
「……まさかの結果だな。常識が通じねぇ」
〝雑音〟を破壊した結果、何故だか知らんが
「つまり、俺は夢の掃除屋な訳か」
宜しい。夢の世界よ。〝雑音〟の貯蔵は十分か?
アーチャーニキ達ほどでは無いが、俺の主夫力はそれなりだぞ。
◇
微睡みが全力で俺の四肢を引っ張る感覚を振り払い、閉じていた目をゆっくり開く。
全身を襲う気怠い疲労は、あちらの世界で頑張った証。何一つとして覚えていないが。
「お疲れ様。中で何やってたのか知らんけど、たぶんセツニキのお陰で夢幻空間の構築率が
「その結果なら
「頑張れば出来そうじゃない?」
「いや、俺が
「確かに。あ、今回の夢幻空間のデータはコピーしておいた。次からはダブルナインスタートになると思う」
「って事は、後はショタオジにデータ提出して認可待ちか」
「人魚ネキとの比較もして欲しいし、二人の予定がすぐに会うと良いんだけどねぇ」
「人魚ネキは頼めば何とかなりそうだが、ショタオジは厳しいだろうな。ペットボトルとオムツを履かせるか真剣に検討してるらしいぞ」
「人権んんんんんん!!」
幹部勢の
アメリカの方がキナ臭いし、そろそろ本格的に動かないと駄目かね。
「よっし!チェック完了!データ上は特に問題無いけど、念のために二、三日は安静にしててね」
「了解。報告は任せて良いか?」
「大丈夫だよ。エドニキが他の製造班の報告と一緒に上げてくれるって言ってたし」
「幹部特権か。目を通すだけなら早そうだな」
実は一般黒札の俺から報告書を出すと、後回しにされ易かったりする。ここらへんは〝組織〟としての体裁を保つ為にちひろネキや幹部とちゃんと話し合って決めたので、そう簡単には覆らない。
緊急時のホットラインはしっかり確保してるが。俺が知ってるのはくそみそニキだけだが、一部の一般黒札も持っている。
与えられた理由はもちろん
俺も中々な遭遇率だが、それでもガイア連合だと下の方なのが笑う。田舎ニキとか厄を引き寄せまくってるらしいし。
「それじゃ俺は帰ってアーチャーニキ達に指導してくるわ。お疲れ様」
『『『お疲れ~』』』
実験室を退室し、一人星祭に向かって歩いていると、携帯が〝緊急事態〟を告げる
スマホを取り出してロックを解除する。画面一面に現れたのは危険を知らせる
「米国メシア教に潜伏していた秘密結社【ダゴン密教団】が大規模破壊工作に成功。
同国マサチューセッツの大都市にて、超巨大悪魔【邪神・クトゥルー】の召還に成功、か」
終末の足音が聞こえる。