【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
翌日。それなりに顔色の戻った禊に見送られ、取り敢えず山梨支部へ。
ちひろネキにアポを取り、各支部の現在の状況について教えて貰う。
「────って感じですね。」
「予想以上に問題無いな」
もうちょっと被害が出る予想だったが、これなら各自の努力だけで良さそうだ。
「私達としては
「GPゴリっと上がったからなぁ。星祭周辺はイワナガとサクヤが舞った*1から問題無いが、岩手の方はそれなりに目撃例が増えたらしい」
「こちらにも報告が上がってますよ。まだスライムにも満たないらしいですが、それも時間の問題だろうとショタオジに言われてます」
「一気に終末の気配が近寄ってきたなぁ」
「ええ。本当に」
探求ネキやカタリナネキのお陰で食料については心配してない。日本人の魂である米については新潟支部の田舎ニキと話を纏めてきた。
ヒノエ米とキクリ米のブレンドが星祭の終末後の飯になるだろう。
ちなみに岩手支部の鬼手神社*2にはエジプトのハトメヒト*3とアタルガディス*4を副祭神として祀っており、終末に備えて管理させてる異界で養殖させている。
オールブルー*5の〝概念〟をワンピースと共に広めておいたお陰で、必要な製作コストが下がって助かった。
流石に世界中の魚介とまでは行かないが、日本人に馴染みのある魚ぐらいは養殖出来ている。
日本神である〝
藁にもすがる思いの奴の方が、ガイア連合の利となる契約を結びやすいしな。
あ、もちろんハトホルも居るぞ。やはりパンとミルクを産み出せる権能は便利だ。
「──さて。日本の現状は良いでしょう。そろそろ本題に行きますか」
「事前に纏めた資料はすでに読んで貰えたと思うが、ハッキリ言って地獄だったぞ。終末の四騎士やらメルカバーやら大淫婦やらアバドンやらお前らいい加減にしろと言いたかったわ」
「良く【ハイ・アナライズ】で情報抜く余裕がありましたね?」
「星祭単独じゃ無理だった。山梨修羅連合だから何とか出来た感じだな」
その奮闘の結果、死者こそ居ないが全滅に近い疲労度になった訳だが。グラ爺ですら未だに異界に潜れてないぞ。
「神話の世界ですねぇ」
「深層より守るもんが多過ぎて厳しいわ。土地ごと吹き飛ばして良いなら楽なんだが、そういう訳にも行かないしな」
「ちなみに吹き飛ばして良いなら
「倒せる。ただ所詮は分霊で、次に送られてくる分霊が強くなるだけっつー糞仕様だ」
例えるならこちら側は〝切り札〟を切れる回数が決まってるのに、あちら側は無限コンテニューで対抗してくる感じだな。
だから火の粉を振り払う程度に留め、ついでに【マーキング】して逃げてきた。だから動向だけなら何時でも把握していたりする。
「厄介ですねぇ。この悪魔を倒したらハッピーエンド!だったら楽だったのに」
「それが出来るならすでにエンドロールか、エンディング後の話になってるぞ」
「デスヨネー」
ちひろネキと二人で溜め息を吐き出す。
これから活発になる悪魔達による被害に加え、虎視眈々とガイア連合の埋伏の毒となる気満々な多神連合。
宣教師ムーヴで核を撃ってくる過激派に、黒札の精子を狙う穏健派。
頼みの根願寺は懇願寺だし、日本神は日本神でそれぞれの思想で動いている。
恐山ぐらいか。ショタオジの役に立つ霊能組織は。
◇
海外の報告書をちひろネキに渡してムラサキを召喚。そのまま岩手支部に飛び、金山姉弟の分霊を受け取る。
その後すぐに宮城支部に飛んでレン子ニキと面会。悪魔召喚プログラムを利用して金山姉弟を渡した。
「気が付けば、凄く便利な世の中になったわね」
「スマホ一台あればレベル十までの悪魔を使役出来るって凄いよな」
ちなみに渡した金山姉弟はアースエレメントだ。あくまでも岩手からの中継地点としての役割であり、この悪魔自体には鉱脈を復活させる力は無い。
「殆んど魔界って言っても良い海外を見て来たが、地脈は案の定、酷い事になってた。たぶん日本でも同じになると思ってくれ」
「分かったわ。私も終末までにもうちょっとレベルを上げる予定よ」
「それが良いだろうな。日本が海外の様になると仮定すると、レベル十程度じゃ焼け石に水だった。少なくとも気軽に出歩く事は不可能だろう」
「まだ非覚醒者の俺達も多いのよね。彼らは大丈夫なのかしら」
「知らん。流石にそこまで俺の手は長くないぞ」
非覚醒者の黒札で救う価値があるとするなら、それは前世も子供の俺達だけだろう。
流石に前世で成人を迎えておきながら何もしない奴を養う余裕は無い。
「あ、そうだ。あの娘が会いたがってたわよ。時間があるなら会って行かない?」
「悪いが、これからすぐに岩手だ。支部同士の繋がりを深める為に新潟や長野にも行かなきゃならん」
「大変ねぇ……」
「ま、何時か出会えるだろ」
出された珈琲を一気に飲んで席を立つ。その動きに合わせてムラサキも立ち上がった。
「じゃ、またな」
「ええ。また」
レン子ニキに別れを告げ、ムラサキに【転移】を頼む。そうして見覚えのある岩手支部に戻ってきたら──
「おい、そこの餓鬼。痛い目に会いたくなきゃ黒札を寄越しな」
──
「聞こえなかったのか?お前の持つ〝
見た目は──スポーツとは違う
たぶん
「良いぞ。ほら、受け取れ」
「へへ……最初からそうすりゃ──ガァァァァッ!?」
懐から取り出した黒札を投げ付け、
「おいおい。
自動的に戻ってきたら黒札を懐に仕舞う。ところで黒札の責務ってなんだろうな?創設期から居るが、聞いたことねぇわ。
「て、テメェ……!俺に手を出してタダで済むと思ってんのか!?○○組が総出でお前を殺すぞ!!」
「へぇ……そりゃ良いこと聞いたな。──じゃ、先輩。潰してこい。下の人間の
「分かりました」
たまたま支部の受付に居た先輩が静かに出ていく。そして、男の側にはぬるりと現れた鬼手一族の男女が自身の獲物を男の首に当てていた。
「どうしますか?」
「最近知り合った黒札が面白い物を作っていてな?覚醒者用の刑務所を作ってたんだよ」
「ほう……それは凄い」
「覚醒者である以上がさつに扱っても壊れないし、人体実験の被験者として世の為に役立てるらしいぞ?」
「それは素晴らしいですね!」
「お、俺をどうするつもりだ!?」
「さぁ?運が良けりゃ生き残れるんじゃないか?」
会話する時間も無駄なので、ウォレスニキにLILINを送り、許可を取った上で【
大仏ニキと呼ばれるぐらい立派な人だからな。改心すりゃ許して貰えるだろう。たぶん。
「じゃ、後始末は宜しく。俺は行くわ」
「「ハッ!!」」
鬼手一族にこの場を任せ、愛宕ネキの元へ。その途中、出会った受付嬢達に頭を下げてお礼を言われた辺り、アイツは支部の厄介者だった様だ。
半終末になって慌てて駆け込む闇召喚士やアングラ組織が増えたとは聞いていたが、チェックが甘くなってるのかねぇ。……いや、メシア教がばら蒔いた悪魔召喚プログラムに早急に対抗する必要があり、ロクな準備も出来ない内にばら蒔く羽目になった負債みたいなものか。
「そこんとこどう思うよ?愛宕ネキ」
「残念ながら貴方に絡んだ彼は違うわ。組織ごと切る為に泳がせていただけだもの」
「ん?わざわざそんな事する必要があったのか?」
そう問い掛けると、愛宕ネキは苦笑いを浮かべた。
「岩手支部でも比較的古参の鬼手一族の紐付きだったんだけどね?配布された悪魔召喚プログラムを自分の〝力〟だと勘違いして騒ぎを起こしたのよ。で、ちょっと許すには問題が大きかったから切ることにしたの」
「成る程。って事は先輩を派遣しない方が良かったか?」
「たぶん無駄足になったと思うわよ?扶桑と親だった一族を向かわせたし。──はい、珈琲」
「さんきゅ」
渡された珈琲を一口飲んで喉を潤す。んー……美味い。というか俺の好みそのものだ。
そんな疑問が顔に出たのか、愛宕ネキが苦笑いを浮かべて〝カラクリ〟を話す。
「貴方の嫁に教わったのよ」
「……ムラサキ?」
「私達は主様の子を抱き、育てたいのですよ。その為ならば、ありとあらゆる手段を使う覚悟があります」
「自分で産みたいじゃ無いんだな。終末後にはたぶん産めるのに」
「「………………は?」」
まるで鳩が豆マシンガンを食らったかの様な顔を晒す二人に、呆れながらも続きを話す。
「物質世界から概念世界に移行する以上、セックスもたぶん肉体より魂同士の繋がりになるだろうからな。多くの神に子供を孕ませる逸話があるし、たぶん俺の子も産めるぞ?」
「……その情報って掲示板に流したら不味いですか?」
「俺が気付いてる以上、ショタオジも間違いなく気付いてるからな。それを話さないって事はそういう事だろ」
「分かりました。アイ達までで止めます」
取り出したスマホを高速で叩き始めたムラサキから視線を外し、未だに呆けている愛宕ネキヘ向ける。
「で、どうするんだ?諦めるのか?」
「……終末が来たら法律はノーカンよ!」
「さよけ」
「というか、セツニキは私達の男性観を壊したんだから責任を取るべきよ!」
「別に責任を取るのは構わないが、岩手支部を捨てられるのか?」
「…………無理ね」
「だろうな」
山梨在住の俺と、岩手在住の愛宕ネキ。どちらかが折れなければ、一緒に暮らす事は難しい。
それに正妻は禊だからな。この優先順位を変えるつもりは無い。
「はぁ……何処かにセツニキ以上の良い男は居ないかしら?」
「俺を高く見積もりすぎだ。俺以上の男は一杯居るぞ」
自慢する訳じゃないが、子育ては嫁任せ、男は働いて金を稼ぐという価値観が俺の中にはしっかりと根付いている。
これからの事を考えるとそれも悪くは無いんだろうが、こんな時代遅れの昭和な男よりマシな男は一杯居るだろう。
それこそ、ガイア連合の支部長達はオススメ出来るし。
「知り合いの良い男の側には
「……ガイア連合外はどうなんだ?」
「昔は人の事を孕ませ袋やアクセサリーと勘違いしてる男しか居なくて、今は権力にすり寄るハイエナばかりね。一般的な黒札は私の地位を恐れて近寄らないわ」
「oh...」
探求ネキも含めて女俺達は出会いに苦労しそうだな。大半の黒札達は別に要らないって言いそうだが。
「愛宕。安心してくださいな。私達は貴女を見捨てませんよ」
「ムラサキ……!」
「というか星祭で実際に子育ての手伝いをして知りましたが、人手は多いほうが間違いなく良いですし、母親も楽になります。……それなのに何で人間は大人数で子育てをしないんでしょう?」
「子育てや児童預かりが金銭の発生する〝仕事〟になっちまったからだな。その認識が蔓延したせいで、無償の善意を信じられなくなったってのが通説だ」
「後は信じられる人が居ない、教育方針が合わない、他人を家庭に招きたくない、辺りかしらね?」
「……成る程。そこまで分かっているのに状況を改善しないから、日本は少子化が進んだのでは?」
ポツリと呟いたムラサキの言葉に対して、俺達の中には返せる答えが何一つとして存在していなかった。
ようじょネキのクトゥルー戦に乱入するのも良いし、星杖ニキと戦って良い。半終末はネタが豊富だぜ!