【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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旅行の土産と分霊の繋がり

 

 

「こ、こほん。それでセツニキ。今日は何か用事でもあるのかしら?それとも金山姉弟の分霊に問題でもあった?」

 

 

 聞こえなかった事にして話題を変える愛宕ネキ。その気持ちは良く分かるので、俺も迷わず話に乗る。

 

 

「愛宕ネキ、高雄ネキ、扶桑ネキの時間を一日ばかり貰いたいんだわ。それを伝えるために戻ってきた」

 

「一日も?しかも三人同時?」

 

「半終末突入直後に俺ら修羅勢は世界中の支部を回って補給物資を運んだって話は聞いてるか?」

 

「ええ。支部長グループで話題に上がったし、海外支部から報告が上がったから知ってるわよ」

 

「なら話は早いな。その時にな、色んな場所から〝お土産〟を持ってきたんだわ」

 

 

 コトリ、と机の上に置いたのは、ぱっと見ただけでは誰しもが首を傾げるであろう金属片。

 

 

「霊的にそれなりの力がある破片みたいだけど……?」

 

()()()()()の破片だ」

 

 

 ちなみに素潜りで取ってきた。高位霊能者は人類の範疇には居ないのだ。

 

 

「へぇ……そう聞くと親近感が湧くわね」

 

 

 金属片を手に取り、掌の上で弄る愛宕ネキ。その姿から名残惜しくも視線を外し、ムラサキに持たせていた鞄から資料を取り出して机に置く。

 

 

「イワナガを一日連れ回して実験した結果、その程度の破片の量で【水上()()】のスキルが手に入るっぽいんだ。いざという時に海路で逃げられるし、せっかくだからどうだ?ってお誘いだな」

 

「んー……三人同時に予定を空けられるかしら?ちょっと待って頂戴。予定表を見てみるわ」

 

「おう。今すぐって訳でも無いからゆっくりでいいぞ。俺も少しスマホ弄るわ」

 

 

 愛宕ネキに断りを入れてからスマホのロックを解除。メモを開いて予定を眺めていく。

 

 サクヤ経由で霊山同盟から文通の申し出*1が一件、ダメンズ同盟*2出資の名馬の子供達を預ける為に馬ニキとの交渉が一件。

 

 大型ターミナルの設置に関しては星祭、岩手支部共々すでに申請済みだ。星祭は最悪の場合、山梨第一に駆け込めるので順番的には後回しだが。

 

 その為の予算は先払いしてあるから問題無いとして……他の支部が設置する時の為の予備資金を用意しなきゃ駄目か。

 

 運用については大蔵省に丸投げで行けるか……?いや、丸投げで行こう。運用まで口を出すと、異界に潜る時間が無くなる。

 

 こんな状況になってなかったら関西方面の視察に行きたかったんだが。現状だと京都出身の俺達に帰省を促した*3ぐらいしか関わりがない。

 

 呉支部が遠いなぁ……参考になりそうだから一度は行きたいんだが。

 

 

「セツニキ。来週の日曜日なら何とか出来ると思うわ。それ以降だと……来月になるわね」

 

「了解。それならまた日曜日に来るわ」

 

 

 それまでの間に予定を消化だな。まずは──霊山同盟の件から処理するか。何か後回しにすると大変になる予感がするし。

 

 

「まぁ、メシア教がミサイル打ったら直ぐに戻らなきゃ駄目なんだけどね」

 

「多神連合がもう少し信頼出来るなら楽なんだが……」

 

「メジャーな名前が多いけれど、人格──()()()としては信頼出来ないわよねぇ」

 

「あーそういや愛宕ネキは火産霊神の付き添いで神様会議に参加したんだっけか」

 

「セツニキが 来 な か っ た 時にしっかり参加してましたよ?」

 

 

 にっこり微笑んでいる筈なのに、何処か寒気を感じる美しい微笑みを浮かべた愛宕ネキ。その額には見事なまでの青筋が浮かんでいた。

 

 

「いや、ちょっと待て。イワナガは向かったんだろ?それで何でキレるんだ?」

 

「イワナガ様もサボったからよッ!!というか大半の黒札がサボったせいで、私がどれだけ小言を言われたか……!」

 

 

 うがーッ!!とキャラ崩壊している愛宕ネキに見付からない位置でスマホを弄り、送信。返信はすぐに返ってきた。

 

 

武蔵改二(偽):今の私は皆様のお陰で天照様より強力な分霊になっているんですよ。気軽に参加出来る訳無いじゃ無いですか。

 

賭博師:そのせいで愛宕ネキにキレられてるんだが?

 

武蔵改二:嫁の機嫌取りは夫の仕事ですよ

 

 

 いや、まだ嫁じゃないんだが。

 

 とはいえこのままにしておくのもアレなので、全力で御機嫌取りを遂行する。

 

 

「ほら、愛宕ネキの大好きなハーゲンダッツ(ダッツ)のバニラだぞ〜」

 

「子供じゃないんだから……そんなもので機嫌が取れるとでも?」

 

「食べないのか?」

 

「食べる」

 

 

 という訳で、二人でアイス休憩に入る。一応、冷凍庫に高雄ネキ達の分も入れておいたので、今すぐ帰ってきても安心だ。

 

 

「で?そんなムカつく事があったのか?」

 

「色ボケ共のセクハラ発言に、国津神が力を持ってる事をチマチマ突いて来る天津神。槍玉に上げようとしていたイワナガ様達が揃って欠席したからって私はサンドバッグじゃないのよ!!」

 

「ほーん……それなら次の神様会議にはイワナガ連れて参加しようかな」

 

「ホント!?」

 

「纏めて叩き潰して上下関係を教える良い機会だと思わないか?」

 

「前言撤回するわ。止めて頂戴」

 

 

 国防戦力が目減りしちゃう、と言葉を締める愛宕ネキ。

 

 

「ミサイルが来ないなら素直に喜べたんだけどね」

 

「思考が完全に支部長の考え方になったな。昔はおっぱいがデカいだけの小娘だったのに……」

 

「そりゃ成長もするわよ。ガイア連合が創設されてから十年は経ってるんだし。……んーおいひい♪」

 

 

 機嫌は治ったみたいだな。やはりダッツは偉大だぜ。ちなみに隣では同じ様にムラサキが抹茶味を楽しんでいる。

 

 コイツもコイツで、大半の神より良い生活を送ってるせいで色々と文句を言われた口だったりする。

 

 愛宕ネキより苛ついてないのは、俺がバッサリ何神か切り捨てたからだろう。

 

 やはり権力は偉大だ。八百万も居るお陰で切り捨てたところで痛くも痒くも無いしな。

 

 アイスを食べ終え、追加で珈琲を一杯貰う。口の中に残る甘さに丁度良い苦さの珈琲に舌鼓を打つ。

 

 こういう細かい気遣いをしてくれる愛宕ネキの事は大好きなんだけどな。残念ながらお互いに背負う者が多過ぎる。

 

 

「じゃ、そろそろ帰るわ。またな」

 

「ええ。また」

 

 

 別れを告げ、ムラサキと共に星祭へ帰還する。さて、サクヤを探さないとな。

 

 

 

 

「私は構いませんよ~?手紙書くだけですし、そこまで苦労する事でも無いですから~」

 

「よし、言質は取った。じゃ、頼むわ」

 

 

 世界各国の神々からのお手紙。山の様に積み上がったそれを見て、ひきつった笑みを浮かべるサクヤ。

 

 

「さ、流石に多過ぎじゃないですか~?」

 

「お前は日本で一番有名な神だからな。手紙一枚で繋がりを得られるなら幾らでも書くだろ」

 

「うぅ~!さ、流石にこの量は無理ですよぅ~」

 

「だろうな」

 

 

 霊符から出した手紙を全て仕舞い、代わりに選別しておいた手紙を取り出す。

 

 

「お前に返信して欲しいのはこれぐらいだ」

 

「んん~先程よりはマシですが~それでも多いですねぇ~……」

 

「各国の神話の最高神の嫁の数を考えれば、こうなるのは仕方ないから諦めろ。まぁ、すぐに返信しなきゃ行けない訳でも無いし、上から順にやってくれれば文句無いぞ」

 

「上から順番……やけに御姉様の名前が多いですね?」

 

石長比売を信仰する奴に悪い奴は居ねぇ。古事記にもそう書いてある」

 

「書いてないですよぉ~」

 

 

 俺のログには何もないな。

 

 

「そういえば御歳暮やお中元は何を渡すんですか~?星祭神社に特産品なんて無いですよね~?」

 

「マッカ」

 

「…………へ?」

 

「だからマッカだぞ☆」

 

「いやいやいやっ!確かに多くの神が欲しいものですけど、流石にそれは不味いでしょう!?」

 

「安心しろ。ちゃんと粗品の下に詰め込むから」

 

「そういう話じゃ無いですよぅ~!」

 

 

 必死に止めようとするサクヤに対し、全力で信玄餅の下にマッカを詰め込むフリをして弄ぶ。

 

 見た目だけは良いから反応も楽しいな!

 

 

「セッツァー様。そこらへんにしてあげてくださいな」

 

「お、お姉ちゃん……!」

 

 

 知らぬ間にやって来たイワナガに感謝感激と言った様子で抱き付くサクヤ。それに対してなすがまま溜め息を一度吐き出し、イワナガは続きを口にする。

 

 

「どうせこの件も利用するつもりなのでしょう?」

 

「当然だ。暫くはジュネスで適当に買った物を送るつもりだが、終末後はその〝繋がり〟を利用してマッカで支援する形になると思う。ガイア連合としても協力的な神が沈むと面倒だからな」

 

 

 敵対的な神に漏れると面倒なので、これぐらい〝緩い〟繋がりを利用した方が楽なんだ。

 

 何でアイツだけ!って言われたとしても、終末前から御歳暮を送りあった仲だし。で終わる。

 

 

「せ、政治……!季節の挨拶すら政治に使われてる……!」

 

「私と同じ石長比売の優先順位が高いのは私情ですか?」

 

「もちろん。──と言いたい所だが、残念ながら違う」

 

 

 首を横に振り、イワナガの言葉を否定する。純粋な気持ちで推し活出来ないのは悔しいが……諦めるかべきだからな。流石に。

 

 

「悪魔召喚プログラムを突っ込めば、終末後でも機械が使える事は確定してる。だが一度壊れたらそれまでだろ?」

 

 

 元々は製造班に置いてあるだけだった石長比売の加護台は、現在ではそれなりの普及率を誇っている。

 

 海外の状況が終末後の生活をリアルに教えてくれたという事もあり、終末後に稼働予定のターミナルの付属品になるだろう。それぐらい早期の普及を望まれている。

 

 終末後に壊れた機械を修理する事は、黒札以外は基本的に不可能だろうしな。だったら石長比売の加護はばら蒔いた方が効率が良く、支部の為になるという判断だ。

 

 

「はい!はい~!私の加護も役に立ちますよ~!」

 

「いや、お前は自分の信徒の事だけ考えてろよ……」

 

「確かに。第一に信徒の事を考えない神は見捨てられますよ?──セッツァー様に」

 

「み゛す゛でないでぇぇぇ!!」

 

「うおっ!?──ふんっ!」

 

「きゃん!」

 

 

 いきなり飛び付いてきたサクヤを受け止め、そのまま床に転がす。見た目は好みなんだが……イワナガ程じゃないんだよな。

 

 

「日本一の美女なのに……!日本一の美女なのに……!

 

「銀髪褐色になって出直してこい。そうすりゃ大切に扱ってやるよ」

 

 

 まぁ、今のサクヤに不満なんて無いんだが。

 

 

 

 

*1
ボンコッツ様作 霊能者、鷹村ハルカは改造人間である。 の私が神話的ブサイクなのはどう考えてもニニギが悪い のお話。やっと拾えた……!

*2
飲む!打つ!買う!+嫁式神を楽しむおっさん連合。

*3
塵塚怪翁様作 『俺たち』閑話集 の半終末における古都京都の情景その1 のお話。書いて貰ってから使えるまで長過ぎた(笑)

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