【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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岩手支部の看板娘4

 

 

 十八時に予定していた実験は全て終了。その労いも兼ねて、実験に関わっていた奴等を連れて市内の焼肉店へ。

 

 ここは半終末のせいで仕入れが滞り、閉店した焼肉店を岩手支部が買い取った派出所の一つだ。結界を始めとするその他諸々を張り、式神(マヨヒガ)遠征で暮らしている黒札の一人を雇われ店長に置き、その下に鬼手一族の傷病者を置いている為、実は一見さんお断りの店だったりする。

 

 まぁ、この場に居る面子は全員〝顔パス〟なんだが。

 

 

「以上で御注文は宜しいでしょうか?」

 

「おう」

 

「では、ごゆっくりお待ち下さい。ドリンクはすぐに御持ち致します」

 

 

 片腕を無くした奴が片足を無くした奴を支え、厨房の方へ歩いていく。人件費は二倍。普通の店なら無理だろうが、俺達は天下のガイア連合。この程度の人件費は誤差に過ぎん。

 

 

「彼女達、明るくなったわね」

 

「セツニキさんに相談して正解でした。無償で施す訳にも行かなかったので……」

 

「人間、僅かにでも希望があれば頑張れるもんだ」

 

 

 傷病者対策として岩手支部で作っている義手や義足の値段はそこそこ。俺達にとっては端金でも、彼女達にとっては大金となる。もちろん、その両親や一族にも。

 

 これが鬼手一族の当主や幹部、エースならまだしも、彼女達の代わりは()()()()()()

 

 必然的に義手や義足は後回し──下手すれば回って来ない様な境遇に置かれ、これからの人生に絶望していた訳だ。それを愛宕ネキからの報告で知り、即座に新しく派出所(焼肉屋)を開店、新しく雇用を作り出した。

 

 今ではご覧の通り、手足が無い以外は普通の店員として働けている。

 

 

「全員を助けられる訳じゃないのは覚悟してるんだけどね。岩手支部の為に働いてくれた人ぐらい助けたい気持ちは常にあったんだけど、私じゃ施す以外の方法が分からなくて」

 

「お前が自分を切り分ける〝アンパンマン〟になる前に相談してくれて良かったよ。〝貴族の義務(Noblesse Oblige)〟の精神は大切だが、岩手支部長のお前と、彼女達では価値が違い過ぎる」

 

 

 人間の価値は平等だ。なら、それ以外の()()が個人の値段を決める。金でも良いし、力でも良い。地位もその内の一つだし、技能や知識もその内に入る。

 

 

ガイア連合が助けられる枠(方舟の大きさ)は決まってんだ。選民主義に染まれって訳じゃないが、決断の足しにはしろよ」

 

「ええ。多くの一般人(見捨てる命)の上に生きてる事を忘れるつもりは無いわ」

 

 

 何となく場が暗くなった時、丁度良くドリンク()が来た。その内の一つを黒札が奪い取る様に横から手を伸ばしてイッキ飲み。

 

 ガンッ!と机に叩きつけた後、ふざけた様子で口を開く。

 

 

「さーせーん!シリアス突入するのやめて貰えますぅ?俺、もう頭が肉!酒!帰宅後に嫁!で埋まってるんでッ!」

 

「いや、お前勇者かよ……」

 

「いやさ。うちの支部チョーが一般人(パンピー)見捨てるのは俺達の為な訳で、だったら責任は俺らにもある訳じゃん?それなら岩手支部の黒札全員で割り勘して背負うべきだろ!焼き肉代はセツニキさんの奢りだけどなッ!」

 

「言いたい事は分かるが……」

 

「俺は勢いで言ったからわかんね!」

 

 

『『『オイッ!!』』』

 

 

「いや、俺シリアス駄目なんよ!ラブコメ世界で生きたかったんよ!」

 

「それは分かる。この世界糞だしな」

 

 

 ワイワイ騒がしくなる黒札達。最初からここで暮らしていた奴も居るし、居心地が良くてここに居着いた奴も居る。もちろん、メシア教徒が嫌いで流れてきた奴も居るだろう。

 

 

「それでも、皆がお前を支えようとしてくれるって事は、お前の今までの努力は間違っちゃ居なかった様だぞ?」

 

「…………えぇ。そうみたいね」

 

 

 ポロリ、と愛宕ネキの瞳から涙が溢れる。それを目敏く見付ける俺達。

 

 

『『『あーッ!セツニキが支部長泣かせた!』』』

 

 

「いや、泣かせたのは俺じゃなくてお前らだろ?」

 

 

『『『なん……だと……』』』

 

 

 取り敢えずポケットから取り出したハンカチで涙を拭いてやり、そのまま手渡す。

 

 

「オイオイオイ。これは罰としてサンチュと白米抜きの刑だな」

 

「待ってセツニキッ!おじさんにそれは辛いッ!!」

 

「私は平気。若いから!若いからッ!

 

「前世だったら?」

 

「死んでました」

 

「笑う」

 

 

湿った空気を吹き飛ばす様に、再びワイワイ騒ぎ出す俺達。俺もその空気に便乗しながら酒を飲み、肉を摘まむ。

 

 

「前世では禁止になった生レバをにんにく醤油に浸けて一気食い!そして白米を掻き込むッ!!」

 

「俺はユッケを選ぶぜ!」

 

「そういやガイア連合産の生肉ってどうなの?」

 

「実は前世より安全らしいぞ?というか【浄化】が無法過ぎる」

 

「やはり異世界転生で【生活魔法】はチートなんや……!」

 

 

『『『それなッ!』』』

 

 

「製造で余った端材から作れるからコスパ最高だよな。アガシオンにも入れられるし」

 

「適当に全属性集めて作るから落差凄いけどな」

 

 

 食事中なので話には入らない。とはいえ話を聞いてない訳ではないので、頭は動かせる。

 

 例えば、星祭産の【生活魔法】のスキルカードは【マハ】クラスも同時に修得する──というより、全属性の【マハ】を修得出来るスキルカードのオマケに【生活魔法】が付いている。

 

 氷結属性が濃い新潟支部産の【生活魔法】は【冷凍】が強く、さらに【ブフ】も覚える。逆に【種火】が物凄く弱い。火を着けるのに何度も発動する必要があるぐらい弱い。

 

 【錬金術】で素材の均一化を行えば良いだけなんだが……そこまでするスキルカードでも無いから、品質にばらつきがあるんだよな。

 

 

「スキルカードと言えば〝水上航行〟は行けるのん?」

 

「暫くはハンドメイドになりそうかな?スキル持ちはまだ居ないから血肉を利用出来んし、封入も無理だろ」

 

「愛宕ネキ達が覚えたとしても、手伝って貰う訳にも行かんしなぁ」

 

「製造班から生け贄(製造者)出すしか無いかねぇ」

 

「艤装のテスターやってたし、アタシがやっても良いけどさ。流石にあの荒天は無理だよ?」

 

「あれは【荒天適応】とか別スキルが生える気がするわ」

 

「いや、あれ【体幹】でカバー出来るっぽいぞ?だから【体型維持・努力】とセットで突っ込めば何とかなるんじゃない?」

 

「アタシ、人間なんだけど?」

 

 

『『『あっ……』』』

 

 

 丁度良いので一度箸を止め、口の中の物を飲み干してから口を開く。

 

 

「山梨で開発したテスタメント*1使えば、三ヶ月ぐらいで【体型維持・努力】に内包されてるスキル取れるぞ?【体型維持・努力】に特化してる廉価版も出てるしな」

 

「えっ!あれって正規品出てるんですか!?」

 

「おう。束ネキとか女性製造班が血眼になって開発したからな。流石のショタオジも女性の美に賭ける執念には勝てなくて、安全確保の為に酷使されてたぞ」

 

 

 もちろん俺やエドニキ──というか古参勢も駆り出された。というか晴彦ニキとか専門外の高位製造スキル持ちは全員捕まった。

 

 お陰で一週間という短さで廉価版が販売出来る環境が整ったんだよな。

 

 

「も、もしかして幹部勢がここ最近綺麗になったのって……!」

 

「支部長権限で確保済みよッ!!」

 

 

 泣いてすっきりしたのか、高らかと宣言する愛宕ネキ。目元はまだ赤いが、悪い涙じゃないからな。この場に居る奴等も空気を読んで指摘しない。

 

 

「使用感はどうですかッ!?私、ダイエット続いた事無いんですけど!」

 

「平日は辞めた方が良いわね。起きても疲労が残るわ」

 

「効果はどれくらいで体感出来ますか!」

 

「三日もあれば出来るわよッ!ついでに姿勢とかも良くなるから身体のラインも綺麗になるわッ!」

 

 

 食い気味に愛宕ネキ達の元へ移動した女製造班に席を譲り、酒を持って男の元へ向かう。もちろん、席は喫煙席だ。

 

 

「相変わらず食事中は喋らんね。セツニキ」

 

「ちゃっかり食後の一服までする席取りなの笑う」

 

「まぁ、セツニキだしなぁ」

 

 

 好き勝手喋る俺達の会話をBGMに肉を焼き、米を食らう。やはり肉は良いな!十勝支部で御馳走になったジンギスカンも良かったが、やはり牛と豚は外せない。

 

 日本の誇るB級グルメを終末後に生かす為に動くか……?いや、流石にそこまで手を広げられんか。

 

 

「そういや岩手支部って終末時の対策って何かしてるん?新潟は畑のキクリ米で水田結界張るらしいけど、岩手支部はそんな事やってなかったよね?」

 

「あー……馴染んでたから気付かなかったけど、お前って流れだったんだな。岩手支部はもう()()()()()よ」

 

「え、そうなん?」

 

「うむ。県税注ぎ込んで県内のジュネスと派出所を繋いで、それを道祖神を利用した術式で固定。イワナガヒメ様の製作した〝杭〟使って半永久の結界張ってる。ちな、管理は鬼手一族な」

 

「国民の血税投資はずるない?」

 

「まぁ、うちらは初動が早かったってのもある。セツニキが名家を纏めてくれて、メシア教を追い出してくれたから邪魔する奴等も居なかったし」

 

「ほえ~……」

 

 

 ふぅ、満足。後は肉を摘まみに酒で良いか。

 

 

「追加で注文頼むが他に頼む奴いるかー?」

 

「あ、俺も緑茶ハイお代わりする~」

 

「俺もコーラ頼もうかな」

 

「酒じゃないん?」

 

「帰って嫁と運動する予定だから」

 

「あ~それじゃ仕方ないね。ヤッてる最中に気持ち悪くなったら嫁が可愛そうだし」

 

 

 男だけの集まり故に気軽に飛び出す下ネタ。それを聞き流しながら呼び鈴を鳴らして注文を頼み、煙草に火を着ける。

 

 次の実験は約一ヶ月後。これは愛宕ネキ達の予定との兼ね合いで動くことは無い。

 

 メシア教の為の艤装型デモニカに関しては、岩手支部の製造班が受けている依頼なので手伝う必要が無い。

 

 あくまでも俺は愛宕ネキ達の艤装式神の改造がメインであり、それ以外は管轄外な訳だ。そのデータを流用しようと構わないが。

 

 暇になる一ヶ月の予定を頭の中で立てていると、追加した注文がやって来た。

 

 それを一番近くに居た黒札が受け取り、机に置いていく。

 

 さて……ムラサキ達に迎えを頼んだし、今は酒を楽しみますかね。

 

 

 

 

*1
UBW修得の為に開発した専用デモニカの正規名称。元ネタはとある科学のインデックス。仕組みは違うから原作勢から文句は出ているがスルー。

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