【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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ガイア連合山梨支部製造班ホビー部3

 

 

「ついに完成したな……!」

 

「長く辛い戦い*1でした……!」

 

 

 たまたま製造班に来ていたミナミィネキと喜びを分かち合い、目の前の作品を見て、何度も頷く。

 

 久々に会った──という程でも無いが、共同作業で何かを作り上げたのは久々だった。フラワーロック(大人の姿)だが。

 

 

「ただいま戻りま──おわっ!?サキュバスが等身大になってるっ!?」

 

「「おかえりなさい」」

 

「ミナミィネキも居るし……一体何があったんです?」

 

「最初は暇潰しにフラワーロック(エロ)の完成度を高めていただけなんだよ」

 

 

 【ファイナルヌード】は無理だとしても、スイッチ一つで【誘惑(マリンカリン)】ぐらいは発動させたいな、と一人でコツコツ頑張っていた。

 

 

「そしたらミナミィネキが突然やって来てな?」

 

「最初はセツニキの霊圧を感じたので、帰る前に挨拶しようとしただけなんですよ。でも扉を開けたら面白そうな事をしていたので……」

 

「一緒になって遊んでしまったと?」

 

 

 製造班の問いにコクリと頷き、等身大人形に視線を流すミナミィ。

 

 

「どうしても許せなかったんです……肌の見た目詐欺が!性的部位の作りの甘さが!!何より……明らかに端材で作られた手抜き感が!!!

 

「あー……セツニキ、そこらへんに転がってるもんで作ってたもんね……」

 

「真面目に作るもんじゃ無いし……」

 

 

 ちなみに初代はミナミィネキに上げた。受付のカウンターに乗せるらしい。

 

 

「製造も出来る高位霊能者って、やっぱ詐欺だよね。ショタオジもそうだけど、ぶっ飛び過ぎじゃない?」

 

「私はこっち関係の為に頑張りましたけど、セツニキは最初から色々出来てましたもんねぇ」

 

「お前らはたぶんそんな体験出来ないだろうが、前世の老後ってマジで暇なんだぞ。神社関係や一族を息子に任せてから毎日夏休みだヤッター!って喜べたのは半年ぐらいだった。そら霊能除く色んな事に手を出すわな」

 

 

 俺の場合、一族の歴史があったから太古の技術の再現資料には事欠かなかったし。お陰で日本民俗の権威だったし。

 

 

「そんなにです?」

 

「小銭握って駄菓子を悩んでる時が一番楽しかったって言うか、毎日が休みなせいで、休みの日の晩酌とか祝日に合わせての旅行計画とか全部が陳腐になるんだわ。何時でも行けちまうからな」

 

「あー……俺、それは何となく分かるかも。前世ニートだったから今より生活は楽だった筈なんだけど、納期に追われながら休日に好き勝手製造するのが楽しみになってるし」

 

「毎日同じプレイじゃ飽きますからねぇ。やはり刺激が無いと!」

 

 

 グッ!とガッツポーズ決めるミナミィネキ。会った時はまだ普通の女学生だったんだけどなぁ。

 

 

「っと、そろそろ帰らなければ。本当にこの等身大人形も貰って良いんです?」

 

「おう。名物人形にでもしてくれや」

 

「では、有り難く」

 

 

 抜き身のまま脇に抱え、一礼したミナミィネキが去っていく。

 

 

「ミナミィネキ、良くアレをそのまま持ち運べるなぁ……言ってくれれば布とか用意するのに」

 

「恥じらいはある筈なんだが……漢らしいよな」

 

「ですね」

 

 

 二人で顔を見合わせ、苦笑いを浮かべる。とはいえ話し合う事はまだまだ残っているからな。もう一仕事と行きますかね。

 

 

 

 

 偵察用の簡易式神──最終的にカスタムロボ*2にする事に決まり、取り分だけ決めて後は任せてきた。

 

 俺がやった事と言えば、素人が【五感同調】する為の霊符の作成とそのレシピの公開、及び安定生産する為に鬼手一族を紹介した事ぐらいだ。

 

 術者なら簡易式神で偵察する為の【五感同調】は基本技能なんだが。玩具として売り出す以上、修行も無しで使えなきゃ意味が無い。

 

 ちなみに別売りのパーツを切り替える事で、素人でも簡単に攻撃スキルや耐性スキルを入れ換える事が出来る。欠点は人形サイズなので、アイテムを拾う事が厳しい。

 

 まぁ、あくまでも偵察用の玩具だし、こんなもんで良いだろう。頭に札を張り付けた黒札が、異界前で座禅を組む光景が広がる気もするが。

 

 

「お帰りなさいませ。すぐに珈琲をお入れしますね」

 

 

 星祭りの旅館に帰宅すると、禊が出迎えてくれた。何やら報告があるらしく、少し前から部屋を掃除しつつ待っていた様だ。

 

 

「それで?話って?」

 

 

 淹れてくれた珈琲で喉を潤していると、表情を真剣な物に切り替え、禊が告げる。

 

 

「ナナシ様の配下の方からの定時連絡で上がってきた情報なので、裏取りはまだ行えて無いのですが……世界的に()()()()が多くなっているみたいです」

 

「海外はほぼ終末だったから不思議じゃないか……何か気になるのか?」

 

「こちらを」

 

 

 机の上に置かれた資料に目を通す。失踪しているのは、主にガイア連合の支部や派出所から遠い、または置かれてすら居ない国か。争った形跡は有ったり無かったり。ここらへんは第一報告だから仕方ない。

 

 

「微妙なラインだな。幾つかは悪魔に襲われて喰われただけだろうが、争った形跡も無く、食事時にそのまま消えたと思われる場所もあるのか」

 

「カヲルニキ様の〝宿敵〟と思われる方の目撃情報も幾つか確認されています。もし違うなら黒札の方の可能性も考えられますが……」

 

 

 新たに机の上に置かれた写真を見ると、そこにはAPP18以上ありそうなイケメンの姿が。間違いなく〝アイツ〟だろう。

 

 

「撮影場所は──オーストラリアのトゥーンバ*3か。厄介な所だな」

 

 

 取り敢えず写真や資料をスマホで撮影してカヲルニキに送信。後で正式に整えた資料も送らなきゃな。

 

 

「そんな厄介な場所なのですか?」

 

「ホラースポットとして有名な場所は〝アイツ〟が好き勝手しやすい土壌が整っちまってるんだ。分かりやすく言えば、馬鹿に核兵器のスイッチを持たせてる様なもんだ」

 

 

 〝噂〟がある場所はシナリオフックに使いやすいからな。カヲルニキと遊ぶためなら世界中何処にでも湧くし、本当にどうしようも無い。

 

 さらにメシア教のせいでほぼ終末状態だ。今までとは比べ物にならない〝シナリオ()〟が撒き散らされてるだろう。

 

 

「お手伝いに向かいますか?ペルソナ使いなので参加権利もありますし、それなりに役立つと思いますが」

 

「国内の霊能組織がガイア連合に駆け込んでるこの時期に表向き()()()()の神主代行となっているお前は動かせん。というか、動かしたらショタオジが死ぬ」

 

 

 根願寺やメシア教穏健派、自衛隊辺りの終末後も戦力として数えられる組織ならともかく、一山幾らの組織の為にショタオジの時間を割いてる余裕はガイア連合にも、世界にも存在していない。

 

 その為の星祭神社で、その為の石長比売と木花咲耶姫だ。まさかここがダミーとは誰も思わないだろう。

 

 これでも山梨第二支部のお陰で楽になったんだけどな……あっちは天津神の何柱と幹部が常駐してるし。

 

 

「……儘ならないものですね。当主様には早く次代をお願いしたいのですが」

 

「ま、お互い高位霊能者で、死ななきゃ若さなんて幾らでも取り戻せるんだ。ゆっくり待とうや」

 

 

 ショタオジも終末が来るまではそんな余裕も無いだろうし。

 

 

「私も女ですから。早く旦那様との子を天から頂き、母になりたいです。他の巫女の幸せそうな表情を見ると、どうしても焦ってしまいます」

 

「…………ふむ」

 

 

 席を立ち、反対の席に座っていた禊を後ろから抱き締める。そして耳元にそっと囁いた。

 

 

「子供が出来たら快楽に溺れる事は出来ないぞ?だから今は今を楽しむと良い」

 

「あっ……」

 

 

 ここからは大人の時間だ。拝殿に帰るのは遅れるだろうが──まぁ、巫女達には我慢して貰おう。

 

 

 

 

 事後の痕跡をシャワーで洗い流し、ついでに部屋を浄化。人の生活の痕跡を掻き消して新築の匂いに変えてしまうので、実は()()()事は即バレする。こればっかりはどうしようも無いが。

 

 禊を神社まで送り届け、帰り道の森の中で一休み。それなりの大きさの広場にある大きな岩に腰掛け、煙草を取り出そうとして──止める。

 

 

「……秋雨ニキか。気付かなかったぞ」

 

「ふふふ。漸くセツニキの察知を抜けられたな。私も強くなったものだ」

 

 

 ゆらりと気配が現れる。場所は──目の前の大木。そこに背中を預ける秋雨ニキの表情は、とても嬉しそうだ。

 

 

「勝率的な意味ではすでにボロ負けなんだがな」

 

「グラ爺と殺り合う時とは違い、〝奥の手〟を使って貰えんのだ。勝ち誇る事は出来んよ」

 

「手を抜いているつもりは無いぞ?」

 

「分かっている。セツニキにとってのライバルはグラ爺だからな」

 

 

 初見殺しを行うのはグラ爺相手と決めている事もあり、秋雨ニキと殺り合う時はネタバレしている事が多い。

 

 それでも普通なら対応出来ない筈なんだがな。そんな生半可な手段を使ってないし。

 

 

「毎度違う〝ネタ〟を仕込むセツニキもそうだが、それを初見で突破するグラ爺もグラ爺だ。そこに混ぜて貰えない事が少し寂しく感じるよ」

 

「流石の俺も二人分の〝ネタ〟は用意出来ねぇよ。というか、俺としては()()()グラ爺と並べる秋雨ニキが羨ましいわ」

 

「隣の芝生は青いからな」

 

「全くだ。俺の芝生は枯れてるっていうのに」

 

 

 霊能の根幹が本人の気質とズレている事は珍しく無い。相手より霊格さえ高ければ問題無いが、今の俺らは昔とは違い、対等な存在だ。流石の俺も一方的に勝てるなんて余裕は一切無く、全体で見れば、俺の強さは中堅と言った所だろう。

 

 若者の成長に喜びこそ感じるが、そこに嫉妬は無い。先人は越えられる為に居るのだ。それを弁えず、若人の成長を阻害するなら老害に成り下がる。

 

 

──老兵は死なず、ただ去るのみ。

 

 

 役割を終えた者が舞台の上に立ち続ける事は許されない。次代に主演を譲り、観客となるぐらいが丁度良い。

 

 

「思えば遠くまで来た物だ。優秀な先達に導かれてここまで来た。漸く見えてきた頂きは未だ遠く、だが手の届かぬ場所では無い」

 

「……今日は随分感傷的だな。何かあったのか?」

 

「ショタオジから極秘の指令を貰ってな。私が代表でお別れを言いに来たんだ」

 

 

 スマホを確認するが、ショタオジからの連絡は無い。

 

 

「ショタオジはセツニキに率いて欲しかったのだろうが、私が止めさせて貰った。何時までも甘える訳には行かないからな」

 

「────中華戦線か」

 

「ああ。星祭と山梨の希望者で()()()()をしてくる。日本を守る為に他国の戦場を地獄に変える、人として最低な行為を行ってくるつもりだ」

 

 

 言葉とは裏腹に秋雨ニキの声に震えは無い。……覚悟は決まってる、か。

 

 

「お前らがわざわざ手を汚さなくても、俺に任せれば済む話だぞ?」

 

「修羅と呼ばれようとも修羅に堕ちるつもりは無い。だが()()に重荷を背負わせて笑うクズには成り下がりたくないのだよ」

 

「…………さよけ」

 

 

 止めようと思えば止められる。渡航手段を抑えれば良いだけの話だし、泳いで渡ろうとするなら手足を切り落とせば良い。

 

 だがそれは悪手だろう。覚悟の決まった戦士を引き留められるのは、好感度の高いヒロインだけだ。

 

 

「取り敢えず参加者全員にこれを配っておけ。ショタオジの心労を抑えられる為にな」

 

「これは?」

 

「グラ爺にすら見せてない磐長一族の秘術を書いた霊符だ。最低でも後で()()が出来る様になる」

 

「…………有り難く」

 

 

 秋雨ニキが渡した霊符の束を懐に仕舞うのを確認した後、吸うのを止めていた煙草に火を着ける。

 

 弟子や子供の巣立ちの時は何度経験しても不安になる。それが例えソイツに必要な事だとしても、納得出来るかどうかは別の話だ。

 

 

「生きて帰ってこいよ。ショタオジが一人でパーティーゲームする事になるからな」

 

「それは責任重大だ。……安心してくれ。一人も欠けずに帰ってくるさ」

 

「期待してる」

 

 

 全く……本当にこの世界は糞過ぎる。

 

 

 

 

*1
作成時間15分

*2
ニンテンドー64の対戦型ゲーム。作者はバーティカルガンが好きだった。

*3
クイーンズランド州南東部にある都市。町全体がホラースポットとしてオカルト界では有名な場所。

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