【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
人魚ネキがああなったのは俺らの責任だけど、ショタオジの理想的には間違ってないのが笑う
深層探索
息の吸い方を忘れそうな重圧。物理的な重さすら感じる殺意。草原と大海原がぶつかりあったと思えば、突如として海が爆発し、火山地帯を作り上げる。
煙に交じるシナモンの香りと、見知った霊圧。たぶん誠一郎ニキの領域だろう。
一秒前の光景が、一秒後には何一つ残らない。
ある時は悪魔の放つ破壊の力が原因で。またある時は誰かの領域に塗り替えられて。
理由は様々。だが共通しているのは、
ショタオジ曰く、これでも昔に比べて大分マシになったらしいが。昔は1m単位でバラバラだったみたいだからな。地獄かな?
「うへぇ……相変わらずの地獄絵図だねぇ」
「取り敢えず何時も通りかな?それとも別の手段を試す?」
「陣地塗り替えていくかー。拐われたら救出で」
「それじゃ、まずは──」
手前から片付けるか、と言い切る前に【強制転移】を食らった。
「あれはロンドン塔よね。霧に包まれた街──〝
素早く状況を確認したセリスが自らの考えを口に出す。その言葉を聞いたムラサキ達が周囲を警戒するが──
「わふぅ!!」
── ギンが警戒を促すが……一歩、遅かった。
「これだから深層は……!」
「ムラサキ喋らないで。傷に響きます!」
振り抜かれた刃の銀の軌跡から考えると有り得ない、まるで斬馬刀で切り裂かれた様な傷口を抑えながらムラサキが吼える。即座に駆け寄ったレティが治療を開始するが、呪詛混じりの斬撃は傷口を閉じる事を許さない。
「【
「【
「アイもギンも本職じゃないし、仕方ないね──ちぃッ!!」
カキンッ!という金属音を響かせ、オオマチが飛んできたナイフを大鎌で弾く。
「【気配察知】はっ!?」
「駄目だッ!全く分からんッ!!」
「ガルルッ!!」
俺達で行動する時、基本的に斥候の役目を担っているアイが不甲斐無さを噛み締めながら叫ぶ。
本職では無いから仕方ない事なんだが……本人が納得出来るかは別の話だからな。
「セッツァー。どうするの?私が塗り替えても良いわよ?」
「いや、この程度ならどうにでもなる。ムラサキを除く
「「「了解」」」
「わんっ!」
返事と共に三人が軽く息を吸い、集中。その隙を狙ってきた〝切り裂き魔〟の首を逆に刎ねる。……浅かったか。まぁ、良い。
「わおんっ!」
「…………!」
「悪いな。逃さん」
即座に離脱しようとした〝切り裂き魔〟の足をギンが切り裂く。そこへ霊符を投じ、結界で隔離。準備を終えた三人の魔法が発動する。
空間を飛び越え、結界の先で猛威を振るう疾風と氷結の最上位魔法は確かに仕事を果たし、〝切り裂き魔〟を切り刻んだ。
「これで終わり──だったら楽だったのに」
「領域が割れて無い以上、複数体居るんだろう」
〝切り裂き魔〟のドロップはナイフだった。【ミナゴロシの愉悦】を始めとするクリティカル系のスキルが取れる他、単純に性能が高い装備だが……残念ながら欠点がある。
この武器だけに留まらず、深層産の素材や装備は基本的に残留思念が物凄く
式神なら大丈夫では?と思うかも知れないが、ショタオジのセキュリティを万が一抜かれた場合、性格が即座に変わる。これはショタオジが断言したので間違いない。
とはいえ俺自身でも平気だし、
「しかし、イギリスか。嫌な場所だ」
ロンドン塔は英国の歴史を見守ってきた存在であり、様々な政争の舞台であり、空想から現実まで彩り豊かな事件の舞台として利用されてきた場所だ。必然的に悪魔の
「グリニッジ天文台*3があるかどうかが問題か」
「時空神が出てくるのは勘弁して欲しいわね」
「世界の時差の基準はロンドン*4だからな」
ほぼ確定した未来に溜め息を吐き出しそうになる。とはいえ警戒しない訳にも行かず、諦めて警戒していると──世界が
「やっぱり来たか。〝囮〟は俺がやる」
「「「「了解」」」」
「わんっ!」
嫁達が一時的に異なる次元に隠れる。完全に位相が異なるお陰で気配は感じない。それが準備完了を知らせる合図になるのだから、深層という場所の恐ろしさが良く分かる。
「ただで
鎌状に固めた【魂吸】を灰色に染まる地面に叩き付ける。手応えは八割。まぁ、十分だろ。そのまま【時間停止】に巻き込まれ──気が付いた時には、目の前の
「大丈夫?」
「おう」
ポーチから取り出した霊薬を飲み干し、地面に投げ捨てたガラス瓶を踏み砕く。その間にレティの治療で肉体を回復。次に備える。
「まだ割れないのか」
「ロンドンの持つ〝属性〟が強すぎるのかも知れません。深層の瘴気が流れ込んで、この領域を維持する存在が新たに湧いている気がします」
探知系権能を行使して周囲を探るアイの言葉に肩を竦める。
「やれやれ。ショタオジは良く正気のままこんな場所で戦い続けたもんだ。一人だったら心が折れてるぞ」
クロノスのドロップは壊れた懐中時計だった。【龍の眼光】を始めとする強力なスキルを抜ける素材だが、例に漏れず残留思念は油汚れよりベッタリ付いている。
「カイロス*5は来るかしら?」
「んー……先にぶっ壊しておくか」
【魂吸】を構え、霊力を流しつつ雑に振るう。その斬擊をムラサキが時計塔へと繋げ──見事、時計塔を真っ二つに切り裂いた。
「これで良し」
「いい加減、最初から壊せる様になりたいわね」
「これもギミックの一つだからな。斥候型が居なきゃ、初手から破壊はまだまだキツイだろ」
概念の〝依り代〟となった物体は、そこから湧いた悪魔を倒す度に強度が落ちていく。
最初に戦った〝切り裂き魔〟で説明すると、倒せば倒す程、術や魔法で周囲を覆っている〝霧〟を吹き飛ばせる様になる。
斥候型は初手からギミックバリアを剥がせると言えば、その重要度が分かるだろう。〝切り裂き魔〟の【ステルス】系スキルも見破れるしな。
「取り敢えず移動するか。その内、何かとかち合うだろ」
「了解。あ、ムラサキとレティはギンに騎乗する様に」
「仕方ないわね。この傷で無理しても迷惑掛けるだけだし」
「アサシン系の攻撃は本当に厄介過ぎます。私で癒せないって相当ですよ?」
「クロネキなら行けるのかしら?」
「行けるだろうが……さっきのはただの
先程の二体は分霊が宿っていた訳ではない。にも関わらず、この強さだ。
魔界から深層に流れ込む瘴気が俺らを好戦的な方向へ誘導するし、負に染まったMAGが傷の治りを阻害する。
真修羅勢は良くこんな場所をソロで探索出来るもんだ。全力で戦い続けるだけなら可能だが、とてもじゃないが探索なんて出来ないぞ。
「…………主様」
「────こっちも探知出来た」
通路を堂々と歩む強大な霊力。間違いなく悪魔だろう。しかも、正々堂々を貫ける様な強力な悪魔だ。
「アイとギンは周囲を警戒。オオマチとセリスと俺でやる。レティとムラサキは身の安全を優先しろ」
嫁達が静かに頷くのを確認した後、前方から来る悪魔に【魂吸】を構える。さて──何が来る?