【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
再びミミックに接近し、振り下ろされる武器を避けながら京四郎ニキと意見を交わす。
「短期決戦は無理っぽいね。【鎧通し】に貫通乗せてチマチマ削るわ」
「俺は何とか状態異常を通してみるか」
「じゃ、そういう事で」
取り出した呪符に【即席付与】を施し、投擲。全部乗せが通れば楽なんだが、そんな期待はしないし、出来ない。狙うは毒付与。通れば、逃げ回るだけで倒せるし。
「〝
呪符が燃え、現れるのは多頭毒竜を模した〝死毒*1〟の竜がミミックに襲い掛かる。
ゲーム的に言えば、一ターンに三割程削れる毒なんだが──
「
「五十ぐらい上の存在だし、残当か」
──【ベノンザッパー】
「〝水晶結界・楔石〟」
ばら蒔いたスフェーンを砕き、石に込められた〝概念〟を結界と混ぜ合わせて展開。ダイヤモンドを凌駕する屈折率が美しい壁がミミックの魔剣から放たれた【ベノンザッパー】を防ぐ。
その隙に京四郎ニキが【鎧通し】を叩き込み、〝防御力〟と〝耐性〟の概念を削っていく。これクラスの悪魔と戦うのは三度目だが、今回は何日掛かるやら。
それからどれくらい戦っていただろうか。
セリスやオオマチも参戦させ、振り回される武器を何本か任せながらひたすら削る。
ムラサキは撤退の為に【
どうやら遠距離絶対許さないマシーンだったらしい。
「くっそ!この山をスプーンで削ってる感覚が精神的にキツイ!」
「それな!相性が悪すぎる!」
──【カタストロフ】
殺意満点の一撃を大きく横に躱わす。そのまま壁を蹴って突撃。
「【鎧通し】!」
【存在吸収】にさらにスキルを乗せて切り裂く。状態異常は何一つ通らなかった。たぶん蛮ニキでワンチャンあるぐらいだと思う。そんな事を頭の片隅で考えていると、ムラサキから【念話】が来た。それと同時に
『主様。援軍が到着ですよ』
「ヒャッハー!【フルブレイク】だぜ!」
「つるはしニキかッ!」
「おうッ!援護に来たぜッ!」
岩手支部の期待の星であり、破壊神系の権能持ちの俺ら。古参故に使用武器はネタ扱いされる事も多い鶴嘴だが、こういう物質系に対して最強クラスの破壊力を誇る頼れる仲間。
「他の奴等もすぐに来るぞ!」
「朗報だなッ!全員耐久戦にシフトするぞ!」
「「了解」」「わん!」
主軸をつるはしニキに移し、俺達は援護に回る。出来るだけ攻撃に集中出来る様に武器を弾き、受け流し、スキルを相殺していく。
そこへさらに高速で接近する、頼もしい援軍がやって来た。
「【グングニル】ッ!」
──【グングニル】
膨大な量の霊力を圧縮した槍同士の切っ先がぶつかり合う。勝ったのは──グラ爺の【グングニル】だった。
「ふぅ。援軍参上じゃ」
「うっへ、あれに撃ち勝てるのか~」
「
「負けも多い最強だがの」
言葉を交わしてる間にも様々な高位スキルが乱舞する。だが初期の頃とは違い、攻撃が分散している事に加え、主軸がステータスを
「【フルブレイク】!【ガードブレイク】!【ステータスブレイク】!【オールブレイク】!ヒャッハー!その綺麗なクリスタル、全部採掘してやんよ!」
「ヒュー♪そこに痺れる憧れるぅ~♪」
「儂も負けてられんのう!」
セリス達を含めた総勢十人でミミックを囲み、無数の武器を防ぎながら削っていく。
京四郎ニキの口から軽口が出てくる程度には余裕が生まれてきた。つるはしニキのお陰でダメージが通る様になった。このまま行けば、倒す事は出来る。
問題なのは瀕死時の暴走と最後の一撃かね。
「セリス、オオマチ。〝切り札〟用意」
「「了解」」
「ちょ、セツニキ!二人抜けはキツイって──うおッ!」
「【権能破壊】」
泣き言を漏らしたつるはしニキとミミックの間にも割り込み、叩き込まれた【モータルジハード】を迎撃。体格差、ステ差によって僅かな間しか拮抗出来なかったが──これで良い。
「貰ったッ!──【月影の太刀】!」
「【斬鉄剣】ッ!」
京四郎ニキとグラ爺の刃がついに闇を凝縮した様なミミックの触手を切り落とす。
すぐに落とした魔斧を蹴り飛ばし、拾わせない様に遠くへ送る。
「やっと一本か。先は長いねぇ」
「つるはしニキのお陰でダメージが通るだけマシだろ」
「惚れても良いんだぜ?」
「「惚れた!」」(野太い声)
「ごめん。鳥肌立ったから止めて──うおわ!?危なっ!」
取り敢えず結界を割り込ませて体勢を立て直させる。
「全く……戦闘中にふざけるなんて言語道断だぞ!」
「「セツニキもふざけてたよね!?」」
「知らんな。俺のログには何も残ってない」
ふざけながらも触手の二本目を切り落とす。……聖鎚か。
「このまま寄越せと何度思った事か……!」
「ドロップ以外MAGに還るからねぇ。ミミックの中に詰まっていた金貨が消えて泣いた俺が通りますよ」
「儂もオーディンの分霊が持ってる槍が欲しかったのう」
「ちょ、上位陣可笑しくない!?対応するだけで精一杯なんだけど!何で雑談する余裕あるの!?」
「「「慣れ(じゃの)」」」
攻撃の頻度的に言えば、グラ爺が一番激しい。次点で京四郎ニキとつるはしニキ、俺の順番になる。
俺への攻撃が緩いのは、与えてるダメージが少ないからだろう。驚異と見なされていない訳だ。ムカつくが、この面子だと正しい判断だわな。
それから暫く戦い続け、敵の霊力が半分を割った辺りで新たな動きがあった。
「全員警戒!たぶん領域だ!」
ミミックを中心に広がっていく黄金。金貨の山に突き刺さる宝剣。川すら融解した黄金で作られたそこは、ひらりひらりと舞う金粉も込みで、人の〝欲望〟を具現化させていた。
「ムラサキッ!」
「【ハイ・アナライズ】!……【七罪・強欲】です!」
その言葉を聞いた瞬間──
「七罪系の汚染は不味いって!」
「せめて拮抗まで持ち込まんと行かんか!」
「つるはしニキは温存しとけ!俺らで何とかする!」
「悪ぃ!助かる!」
──つるはしニキを除く全員が領域を展開した。
俺の〝蓮の咲き誇る水上に浮かぶ寺院〟
グラ爺の〝魂すら凍り付く冷たき冥界〟
京四郎ニキの〝骸が転がる和風街〟
そこに嫁達の領域が混ざり合い、ミミックの展開した黄金世界を押し退ける。
七罪は俺達が人間である以上、絶対に防げない精神汚染の一種だ。
憤怒、傲慢、暴食、色欲、怠惰、嫉妬、強欲。
人間なら誰しもが持っている欲望。それを極限まで
七罪系の名を関する【精神汚染】は精神の改竄等では無く、集合無意識からの
この広い世界、七罪に溺れてる者も多いだろう。そんな奴等がそうなるまでに至った経緯を体験させ、堕落させる。それが【七罪】の仕組みだ。
その性質上、精神力勝負になる──訳では無く、自身の持つ善徳でしか対抗出来ない。
忍耐、謙虚、節制、純潔、勤勉、感謝、慈善。
〝黒札〟にそんな物があるとでも?(暴言)
「────この人数で漸く拮抗かよッ!」
「流石は深層!強者が多いのう!」
「セツニキッ!俺は領域破壊にまわるッ!」
「了解ッ!こっちは任せろ!── 一分だけ時間くれッ!」
『『『了解ッ!』』』
遠距離無双を誘発させない程度に距離を取り、術式準備。霊符からばら蒔くのは無数の鉱石と──〝切り裂き魔〟の戦利品。
鉱石を灰に変えて〝鉱物〟の概念を抽出。さらに〝切り裂き魔〟のナイフを灰に変えて〝
それを鶴嘴型に変化させた【存在吸収】に付与して準備完了。後は叩き込むだけだ。
「これでも食らっておけッ!──【パーマネンス】!」
乱雑に繰り出されるスキルを潜り抜け、鶴嘴を叩き込む。つるはしニキが領域の対処に向かった以上、時間経過と共に解除されるデバフを固定化するしか無いからな。
ついでに言えば領域に霊力を持っていかれているので、長期戦は不可能。ここで押し切るしか無い。
「死ぬ前に殺すぞッ!」
『『『応ッ!!』』』
返事と共に一人一人〝切り札〟を切っていく。俺もオオマチに【次元断】を使わせ、俺自身も被弾覚悟で【存在吸収】を振り回す。
殺るか、殺られるか。
今日の深層探索はこれで終わりだな。これ以上はたぶん無理だ。