【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
攻撃系の〝切り札〟を切ったお陰で、戦闘自体は俺らの優勢のまま進んでいる。
特にオオマチの【次元断】は多分10%ぐらい持っていった。空間系は敵味方共にこれがあるから困るな。最後まで油断出来ねぇ。
オオマチを一旦下がらせ、代わりにアイを投入。もう一発【次元断】を撃たせようとした所でミミックの方に動きがあった。
「…………うわ」
「ここに来てそれは辞めろ。マジで辞めろ」
「これは誰が
「京四郎ニキだろ」「セツニキだね!」
「「………………あぁん?」」
「仲良しじゃのぅ」
お互いに眼力を込めて睨み合う。が、すぐに振り下ろされた武器によって視線を切られた。
「真面目な話、これどうなってんの?」
「クトゥルフが悪さしてんだろ」
「しかし……見た目相応に厄介だのう」
突如としてミミックの口から漏れてきた触手が暴れまわり、粘液が飛び散る。触手自体は対処可能、だが切り落としても即座に再生する。
バラ撒かれる粘液も厄介だ。オリュンポスの石材を溶かす程に強い酸性。俺らの武器を溶かすには十分だろう。
「取り敢えずお前に生活魔法チートを見せてやるぜ!【洗浄】!」
「いや、セツニキ。幾ら何でも──」
「何という事でしょう。あんなにヌチャヌチャだった触手がピカピカに!」
「マジだ!」
【洗浄】や上位互換の【浄化】は体表の〝穢れ〟を払う魔法だ。粘液も例に漏れず、対象内となる。
しかもレジストは不可能。粘液は本体とは別判定だからな。
──【暴れまくり】
粘液を剥がされた事に苛立ったのか、今までグラ爺に向いていたヘイトが全て俺に向く。触手と武器の見事なコラボレーション!……所詮は物質系の悪魔だな。
「ひゃっはー!このチャンスに【霞一閃】!」
「【ラグナロク】」
隙だらけとなったミミックに二人が大技を叩き込む。そこで漸く二人の存在を思い出したのか、そちらに意識が向いて動きが鈍ったので、今度はこちらから攻める。
「【モータルジハード】」
──【モータルジハード】
結果は相殺。あれだけ能力を下げてもステータス負けか。万能型の悲しい所だ。
「よっし!後半分!」
「「「了解」」」
少し視線をそちらへ向けると、力の限り暴れるつるはしニキの姿が。あそこまで好き勝手黄金世界を破壊するのは楽しそうだ。
あっちに回れる余裕なんて無いけどな!
領域の維持をしつつ敵の猛攻を潜り抜け、少しづつ削っていく。言葉にすればそれだけで終わるが、実際はかなりキツイ。
音速を越える速度で振り回される触手。何かにぶつかる度に潰れ、ばら蒔かれる粘液と同じ性質の体液。
武器を振り回す黒い影の様な触手も健在で、武器持ちの触手からは権能化されているスキルが放たれる。──そして。
「セツニキ。ちょっち不味いかも」
「……残り何割だ?」
「体感三割切ったかな。このペースだと間に合わないや」
周囲の瘴気を吸収しているあちらと違い、こちらの霊力は有限。霊薬を飲もうとすれば今以上の猛攻に晒されるせいで、俺以外はロクに回復出来ちゃ居ない。
「グラ爺は?」
「六割じゃの。先程からスキルを渋って持たせておるが……このままだとつるはしニキの頑張りが成果を結ぶ前に切れるのう」
「さよけ。……取り敢えず口開けろ」
霊符のお陰で権能化の領域に辿り着いた【
──【カタストロフ】【カタストロフ】【カタストロフ】
「セツニキッ!」
「何とかするッ!」
最初に放たれたのは、聖剣を持つ触手の【カタストロフ】だ。これは落ち着いて射程外に一時的に逃れて回避。
二擊目の【カタストロフ】は魔槍と思われる黒い骨と人の腕が絡み合い、獣の牙が刃を形作る槍から。これに関しては結界を多重展開して直撃を避ける。
そして、最後の一撃。悪趣味な鎌から放たれた攻撃に対応するも間に合わず、避けるには体勢が悪かった。だから俺が取った行動は──必然的に〝痛み分け〟を狙う為の前進だった。
「ッッ────!」
左半分を
「御主人様ッ!」
「動くなッ!」
即座に【
〝切り札〟が残り二枚しか残ってない以上、後衛の位置でヘイトを取る様な行動をさせる訳には行かない。
カウンターの全体連打に耐えられる様な手段が残ってないのだ。
「京四郎ニキ、ギンとチェンジ宜しく」
「悔しいけど了解。距離取って回復してくるよ」
「グラ爺はもうちょい付き合ってくれ」
「了解じゃ。気張るとしようかのう!」
スキルに頼らず、己の武技を磨いてきた故に行える連擊。敵の猛攻を越える猛攻で封殺するその技は、攻めの極致と言うべき領域。
そんな暴れまわるグラ爺をフォローしながら隙を見て攻撃していると、京四郎ニキと入れ替わる様に飛び込んできたギンが領域を展開する。
「アォォォォォンッッ!!」
周囲が雪と闇に覆われ、空には淡く輝く満月が顔を出す。何度見ても美しいと思うこの領域こそ、ギンが俺と共に辿り着いた領域だ。
「とはいえじり貧過ぎるな」
「人数が欲しいのう」
切り払い、受け流し、相殺を狙い、切り込む。頭を下げ、後ろに飛び、触手の上を駆け抜けて武器を振るう。
時々放たれる後衛への一撃はセリスが防いでくれている。〝切り札〟を切ったムラサキは深く目を閉じて回復に専念、オオマチはアイの代わりに背後から来る雑魚の相手で手数には含めない。……仕方ないか。
『アイ。ちょっくら離脱して俺らを集めてきてくれ。それまでは何とか持たせて見せる』
『…………了解しました』
念話で指示を出すと、不満と心配を混ぜた様な声色でアイが了承。この場を離れていく。
一人減った分、勢いの増す敵の領域。ギリギリで持っている霊力消費がさらに加速する。
とはいえ勝つ為には勝負に出なきゃ行けない場面だ。修羅勢と呼ばれ、ここまで来た奴等なら本能で理解している。
だから不満の声は上がらず、各自精一杯自分の出来る事をこなしていく。
事態が好転したのは、グラ爺の霊力が切れるギリギリのタイミングだった。
「ワシ、参上!」
「へーい!グラ爺!アンタの弟子が助けに来たぜ!」
「俺ら基本的にセツニキとグラ爺の弟子では?」
「俺は山梨どぅぇぇぇす!二人にはお世話になってるから弟子だけど!」
『『『それなッ!!』』』
次々と駆け付けてはミミックに飛び掛かり、グラ爺や嫁達の代わりに領域を展開する
その先頭でコイツらを率いていたのは、もちろんシエラ婆だ。
「ほれほれ!グラ爺はさっさと下がれ!ワシが代わりに暴れるからの!」
「ではお言葉に甘えるとしようか。流石に儂も限界が近いからのう」
「ちょっと待て。俺は?」
『『『ドレイン持ちに人権はぬぇ!!』』』
「解せぬ」
まぁ、何時もの事なんだが。
「ちなみに聞くけど、余力はどれくらいで?」
「体力は全快、霊力は九割残ってるぞ」
『『『これだからドレイン持ちは……!』』』
先程の致命傷のお陰で微妙に違和感は残っているが、どうとでもなる範囲だ。
意識を切り替え、現状の最善手を打つ為に指示を飛ばす。
「
『『『了解!!』』』
最初に突撃したのは、シエラ婆だった。
「ふはは!ワシの攻撃はセツニキより痛いぞ!──【フルムーン*1】」
──【モータルジハード】【カタストロフ】
「温いわぁ!」
吠える様に叫び、敵からのダメージを半ば無視しながら追撃の【デスタッチ】。奪った霊力を回復に回してさらに追撃。
「俺も行くぜ!【突撃】からの──【突撃】!」
「【刹那五月雨切り】!」
「【渾身擊】!」
「【ファイナルヌード】……俺は男だがな!!」
「前世女でも無いのに何で使えるんだろうね……【メガトンレイド】」
「自衛隊ニキと同じなんじゃね?【ゴッドハンド】」
そこから先は特に説明する事は無く、盛り上がりも無かった。人数が揃った事によって領域はすぐに割れ、その後の総攻撃で見事に敵を削り切り、想定されていた最後の一撃も守護神系がキッチリガード。
戦闘終了後にレティを始めとする医神や薬神が回復に回り、持ち込んだ霊薬を飲み、携帯食料を齧り、和気藹々とドロップ品の話をしながらポセイドンをどうするか話し合う。
そんな俺らを霊薬を飲みながら眺めていると──
────ドクン。
──MAGに還るだけの悪魔から