【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「全員この場から離れろッ!」
緩い空気を一瞬で飛散させ、俺らが一斉に距離を取る。集合したのはムラサキとレティが待機している通路だ。そこで神道系の結界を張り、回復速度を向上させる。
────ドクン、ドクン。
「セツニキッ!何が起きてんの!?」
「………………」
俺らの言葉を半ば無視する形で懐から取り出した
「…………やられた。そうだよな、俺ららしく無いよな」
継続か、撤退か。即断するのに迷う様な状況で、継続をやんわり選ばせる程度の【思考誘導】。クトゥルフ系統の【精神汚染】が常時展開されていただけに、別口の【思考誘導】には気付けなかった。
その為の桃源郷であり、修羅道なのだ。そこで学んだ俺らが、こんな危ない橋を渡る訳が無い。
そんな俺らが戦いを選ぶ程度には
「全員、星祭の護符を頭に当てろ。それで理解出来る」
間に合うか?……いや、間に合わせるしか無いか。
この場に居る全員が頭に護符を当てる。それだけで、
「……まさか俺らが
「運命力が無い事が自慢だったのに……!」
「取り敢えず【
様々な方法でこの場からの離脱を試みるが、残念ながらすでに遅かった。いや、すでに場が整ったからこそ〝違和感〟に気付けたんだろう。
「諦めて戦うしか無い、か」
「戦うのは好きなんだがのう。
「俺もだ」
剣を取る理由に自分の意思以外の物は要らない。ここに居る者達にも、それだけは叩き込んでいる。
助けたかったら助ければ良い。見放したかったら、見放せば良い。責任を誰かのせいにしないなら、築き上げた〝力〟をどう使おうが、個人の勝手だ。
「取り敢えず俺が単機で出るわ。お前らは休憩で。流れ弾だけ注意な」
「後半参加組は余力あるよ?」
「敵の姿もギミックも分からぬまま、意志疎通出来てない内に戦うのは馬鹿のやる事だろ」
「確かに」
ある程度の予測は立っているがな。ベースはオリュンポス、そこにクトゥルフ混ぜ、俺らへの〝試練〟にするならば、十中八九〝ヘラクレスの試練〟だろう。
ネメアのライオン、レルネのヒュドラ退治、ケリュネイアの魔鹿の捕獲、エリュマントス山のイノシシ捕獲、アウゲイアスの家畜小屋の掃除、ステュムパリデス沼地の怪鳥退治、クレタ島の牡牛捕獲、ディオメデスの人食い馬退治、ヒッポリュテの帯強奪、ゲリュオン退治、黄金の林檎入手、ケルベロスの捕獲。
この中の幾つかがクトゥルフと入れ換え……になる程度だと楽なんだが。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクンドクンドクンドクン────!
準備を終えたか?と問い掛ける様に早くなる鼓動。巨大な魔法陣が展開され、目映いMAG光がミミックを包み込む。
【解析】は── 一部だけ通ったか。
★Show me you can overcome it. The Gaia Union's Black CardNow, the trial begins.
効果:ヘラクレスの十二の試練の再現演目。
試練をクリアされる度に【完全耐性】を獲得
試練をクリアされる度に【ステータス上昇】
最終試練はReturn everything to nothing
どう考えても糞ゲー臭しかしねぇ。
「【ハイ・アナライズ】持ちは解析、斥候組はヤバそうな雰囲気漂う最後のギミック解除優先!他は回復に努めろ!」
最後に指示だけ飛ばし、意識をミミック
箱を内側から強引に裏返された様な、無茶苦茶な挙動。バケツをひっくり返した様な勢いで溢れ出る黒と茶と緑の混じったスライムの様な触手。
それらが絡み合い、一つに纏まっていく。
「獅子の姿。……ヘラクレスの十二の試練で確定か」
「■■■■■──!」
獅子の姿と言ったが、厳密には獅子の姿をした〝触手の塊〟だ。人の欲望をかき集めた存在であるミミックらしく、時折体表に浮かび上がる顔は欲望に塗れた人間の
微弱な【精神汚染】を放っているし、流石はクトゥルフだな。
「──おっと」
振り下ろされる腕を躱わすと、床に叩き付けられた腕が触手に戻り、さらに追撃してきた。
切り払う事は簡単、むしろ先程のミミックよりも劣化している。ただ俺の〝
「お前らッ!深層の悪魔が雑魚の時に考えられる最悪を上げてけッ!」
「ダメージ蓄積型反射!」
「一定以上の属性ダメで耐性変化!」
「討伐後に変身して超強化!」
「憑依乗っ取り!」
「道連れ!」
どれもこれも有り得そうで困る。
「ダメージの通りはどうなん?貫通抜きでも通りそう?」
噛み付きを避けると、口が裂けて
「むしろ弱点を突いてるぐらい通る。違和感がスゲェ」
「ギミック確定ですね、分かります」
二足歩行で立ち上がり、前足二本と顔が触手に戻る。
取り敢えず【
それから暫く触手獅子と戯れて居ると、
「セツニキ!ソイツは与えたダメージが最も多い属性に対して【完全耐性】を得るらしい!【万能属性】も対象内だっ!」
待ち望んでいた情報が降ってきた。何と面倒なギミック。というか
俺の魔眼もそう卑下にするもんじゃないが、やっぱり勝てない物は勝てないのだ。万能型だし。
頭を切り替え、目の前の獅子について考える。初戦という事もあり、たぶん現在は全属性が弱点。
なら、出来るだけ俺らが使わない様な属性で倒すべきか。
「お前らに見せてやるよ。僅か二作品*1にしか登場しなかったレア魔法を──!」
懐から取り出した一枚の霊符を触手獅子に投擲。一枚から
その万を越えた霊符全てが
「〝魔法再現・ダムドラオン〟」
呪符から目映いばかり光が放たれ、オリュンポスを揺るがす程の大爆発。もちろん震源地に居た〝ネメアのライオン〟は消し炭だ。
────First stage cleared. After granting resistance, move on to second stage.
直接脳内に叩き込まれたかの様なアナウンス。その余りの無法さに顔をしかめつつも、取り敢えず俺らの待機場まで下がり、次に出てくるであろうヒュドラに備える。
「普通のヒュドラが出てくると思うか?」
「〝深きもの〟の嫁の方だったら良いね!たぶん小神の方が出てくるだろうけど」
「特徴のない灰色の粘着質の海に何千もの頭部が浮き沈みしている姿だっけ?」
「
「なんだよ原形質って!」
「クトゥルフの理解出来るけど想像出来ない感よ」
「まさにクトゥルフ」
『『『それな!』』』
ヒュドラの身体にある頭部は、ヒュドラに吸収された犠牲者の頭部、だったか。
頭部だけで生かされており、酷い苦痛を湛え*2、唇には静かな悲しみを浮かべ、こけた頬に涙を流しているらしい。
犠牲者は人間ばかりでなく、怖ろしい怪物のものや鳥、爬虫類、奇怪なもの、石でできたもの、金属でできたもの、植物生物など様々で、そのどれもに共通しているのは、
生物はともかく無機物にまで苦痛を与えている辺り、マジでクトゥルフ。何となくじゃないと理解出来ない文が多すぎる。
「セツニキ。次はどうする?後続組は参戦出来るよ」
「どうせ十二回蘇るだろうし、行けるところまでマイナー属性で埋めて行くつもりだ。最後らへんは死闘になるだろうしな」
「了解。一応、準備だけはしておくね」
「頼んだ。──っと。ムラサキ、オオマチ。悪いが付き合ってくれ。次は【念動】で締める」
「畏まりました」「りょーかい」
ふわりと俺らを飛び越し、二人が隣に立つ。
アイが間に合うと良いんだが。間に合わなかったら──まぁ、覚悟だけは決めておくかね。
という訳で本番だぜ!