【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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深層探索9

 

 

 MAGが収束し、展開された灰色の海に降り立つ。辺りを眺めれば、神話通りの吐き気を催す光景が。

 

 

「主様。初手から全力で行きますか?」

 

「いや、確認が先だ。ステージが上がる毎の上昇量の把握、ついでにたぶん追加されるであろう糞要素の確認をしたい」

 

「糞要素?まだ上があるって言うのかい?」

 

「俺なら間違いなくやる事があるんだわ。それによっては殺す手段を変えなきゃならん」

 

 

 【完全耐性】は別に良い。殺す方法なんて腐る程あるし、最悪、斥候組が剥がすだろう。──ただ一つ懸念があるとすれば、本当に得るのは()()()()()()()、という問題だ。

 

 

「────来ます」

 

 

 ムラサキの注意とは裏腹に、悪趣味な水面は揺らぎもしない。だが振動は確実に伝播し、地中から何かが現れる予兆を知らせる。

 

 

「…………随分、悪趣味なヒュドラだね」

 

「クトゥルフだからな」

 

 

 大量の人の頭部で竜を形作っていると表するのが適正か。それが九つ、ギリシャ神話の影響を受けて現界している。

 

 倒し方が神話通りしか受け付けないなら【火炎属性】は必須。ネメアのライオンを【爆発属性】で片付けられたからその可能性は低いが……さて、どうなる事やら。

 

 

「取り敢えず切り落としてくる。お前らは回避優先な」

 

「「了解」」

 

 

 一歩で踏み込み、二歩で駆ける。【縮地】を使うまでも無く、素の身体能力だけで近付き、わざわざ【祝福(コウハ)】で作り上げた刃を振り抜き、その首を纏めて切り落とす。

 

 

「即座に生えてくるか。流石クトゥルフ」

 

 

 【霞駆け】を発動。さらに【空間殺法】に繋げ、トドメに突き刺した刃を暴発させ、【マハコウガオン】で吹き飛ばすと、流石に再生速度が鈍った。とは言っても、十秒程度だが。

 

 

「無理矢理削りきる事は可能、強度はレベル六十の悪魔と同じぐらい。まだまだ俺らの相手じゃないな」

 

「■■■■■──ッ!!」

 

 

 どんな状態異常が乗っているか分からず、そしてどんな状態異常が乗ってても可笑しくない噛み付きを躱わし、一旦大きく距離を取る。追撃してくる首を結界で防ぐが、深層用の結界とはいえ割るのに頭部六つ分のスキルが必要な事を考えると、火力もそこまで上がってないらしい。

 

 少なくとも即死する事は無くなったので、適当に首を避けながらムラサキ達の方へ視線を移すと、あちらはオリュンポスらしい()()が広がっていた。

 

 

「毒自体は──そこまで強く無いわね。精々猛毒レベルよ」

 

 

 灰色の海を紫色に染め、明らかに体に悪そうな紫煙を【ハイ・アナライズ(観察)】しながらムラサキが呟く。

 

 

「無限湧きっぽい動きの蚯蚓子竜(みみずこりゅう)も一撃だね」

 

「蚯蚓子竜?」

 

「ワームに翼が生えた姿だし、的確だと思うけど?」

 

「……確かにそうね」

 

 

 毒沼から飛び立つのは、目が腐っていても〝龍〟と見間違える事は無いと断言出来る程に醜悪な空飛ぶ蚯蚓。

 

 円形の口にびっしりと生える小さな牙は恐ろしいというより気持ち悪い。ほんっとにクトゥルフって感じだわ。

 

 当たらない事を理解出来ないのか、九つの首が俺を食らい尽くそうと空から降ってくる。もはや目を瞑っていても避けられる程度の攻撃に警戒を割く必要すら感じず、攻撃を誘導して()()()に仕上げていく。

 

 俺は芸術にも詳しいんだ。だからこんな芸術を作り上げる事が出来るんだな、これが。

 

 

 

「タイトルは──『三つ編みヒュドラ』かね?」

 

「ここまで気持ち悪い芸術は初めて見ました」

 

「趣味が悪いを通り越して精神科に通う必要があるんじゃない?」

 

「俺もそう思うわ」

 

 

 大量の苦悶の表情で龍の首を作り上げてるだけでも悪趣味なのに、灰色の粘液──スライムに良く似た首を三つ編みにして三本に纏め、それをさらに纏めて一本にさたせいで、頭部は人間の頭部でハスコラを作ったかの様な気持ち悪さだ。

 

 

「■■■■■──ッ!」

 

「怒った……とは違うな。面倒だから自切(じせつ)したか」

 

 

 不自然な程に鋭利な断面でヒュドラの首が切り落とされ、切り落とされた断面から新たな首が生えてくる。

 

 クトゥルフ的にもギリシャ神話的にも可笑しくない挙動だが……クトゥルフクオリティは伊達じゃない。

 

 

「切り落とされた首の方も動いてますね」

 

「あっちが()()()みたいだね」

 

 

 クトゥルフ風味のヒュドラに新たなMAGが注ぎ込まれ、塗り替えられる様に姿を変える。灰色の海を汚す様に広がったのは──毒々しい紫色。九つの頭部もちゃんとした竜の頭だった。

 

 

「どうします?」

 

「取り敢えず離してくれ」

 

「じゃ、アタシがやろうか。──【サイコキネシス*1】」

 

 

 空間に手を翳し、オオマチが偽物のヒュドラを遠くへ吹き飛ばす。だが首がブチブチと千切れて飛んでいくだけで、灰色の海から新たに九本生えてくるだけに留まった。

 

 

「げ。もしかしてこの海が本体?」

 

「核とか絶対無いぞ。クトゥルフだし」

 

 

 〝アイツ〟を見れば分かると思うが、クトゥルフは基本的に全部が本体だ。敵対的な存在には敵対的な存在をぶつけるのが最適解と言われる程、討伐する事は基本的に不可能とされている。

 

 俺らの技量的に無理矢理送り返す事は可能なんだが、想定通りなら使えない。というか使()()()()()()()()

 

 こんな雑魚相手に【完全空間耐性】を渡すのも馬鹿らしい。

 

 

「さて、どうするか。手札は一杯あっても、切る順番をミスれば詰む気がするんだよな」

 

「では〝正規品〟の方を退かしてみますね。──【サイコキネシス】」

 

 

 ムラサキが念動魔法で毒のヒュドラの方を吹き飛ばす。こちらは灰色の海と繋がっていないのか、素直に本体ごと吹き飛んだ。

 

 

「あっちを処理してくる。こっちの足止めは任せた」

 

 

 背後から返事が聞こえる頃にはヒュドラの胸元に飛び込み、祝福属性の刃を振り抜いていた。

 

 とはいえこれで死ぬようならヘラクレスの試練にされていない。案の定、再生され、何事も無かったかの様に【ポイズンブレス()】を吐く。

 

 

「自身に回復、相手に毒。理屈は分かるが、生物的にそれはどうなんだ?」

 

 

 一時期流行った属性爆弾による自傷は有用性こそ頭で理解していても、出来る様になるまでそれなりの鍛練時間が必要だった。

 

 

 本能が忌避するのだ。自傷という行為を。

 

 

 悪魔だから、で片付く問題なのかも知れないが、それを躊躇わず行った目の前のヒュドラは、果たして生物的な意思を持っているのかね。

 

 

「────ッ!」

 

「こんな至近距離で叫ぶなよ」

 

 

 悪態を吐きながらも距離を取り、繰り出される【毒かみつき】を避ける。九連続で同じ行動を繰り返すヒュドラからは、やはり生物としての意思を感じない。

 

 何というか頭の悪いAIを相手にしてる気持ち悪さだな。しかも、賢くない。

 

 この程度が続くなら、正直()()()()()に与える試練としては落第だろう。例え敵の能力が百倍になろうが、相手にならないと断言出来る。

 

 

「ま、そんな甘くは無いわな」

 

 

 ムラサキ達の足止めしているクトゥルフヒュドラの方に動きがあった。

 

 爆発的なMAGの活性化と共に、人頭の口が開き──

 

 

『『『【ダムドラオン】』』』

 

 

──灰色の海全てが大爆発を引き起こす。

 

 

 空高く舞い上がった海は空中で結合し、再び気味の悪い竜の頭を逆さのまま生み出す。それはそのまま()()()()()()()()()()()()()()

 

 変わりに大地は毒沼に汚染され、水を得た魚の様に暴れまわっていた。

 

 

「主様。もしかして嫌な予感って〝コレ〟の事ですか?」

 

 

 即座に【転移】でやって来たムラサキが尋ねる。それに軽く頷き、空を見上げる。

 

 

「俺ならそうするからな。【完全耐性】だけじゃ生温い」

 

 

 【完全吸収】や【反射】じゃないだけマシなんだろうが……糞みたいなギミックだと言う事には変わり無い。

 

 

「って事は──試練の最終段階は十三属性振り回してくるの?」

 

「双子ニキ(兄)みたいな動きをしても驚かんぞ」

 

「全属性使えたら創世クラスも行けそうですね」

 

「勘弁してよ~……ただでさえ厄介なのにぃ!」

 

 

 うにゃー!と雄叫びを上げ、頭をガシガシするオオマチの手を取って止める。変わりに告げるのはもっと最悪な事実だ。

 

 

「石化や誘惑、混乱に即死、毒に封魔。使って大丈夫だと思うか?」

 

「…………厄介過ぎない?」

 

「あ、だからヒュドラを引き離したんですね」

 

「ま、そういう事だ」

 

 

 取り敢えず知りたい事は知れたし、トドメを刺すとしようか。俺達に修羅木綿を借りて両方とも圧縮すりゃ潰せるだろうしな。

 

 

 

 

*1
念動系最上位魔法。……魔法?

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