【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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深層探索12

 

 

「そろそろ落ちるけど……何というか手応えが無いね?」

 

「一応、敵もボスらしく再生してるけど……ここまで押し込めるもんなのか?」

 

「って言っても、全力でやればこんなもんじゃね?」

 

「んー……確かに何時もと違って残霊力とか気にして無いからなぁ」

 

 

 度重なる氷結系スキルの連打により、深海の半分は大氷河に変わった。放出したMAGの属性()が強すぎて異界を侵食したのだ。

 

 そんな光景を生み出す存在が言う〝手応えが無い〟程、普段なら信頼出来ない物は無いんだが……ここは異界、人間(俺たら)の常識では測れない世界。

 

 

「どするー?調べる?」

 

「いや、暇な間に調べたんだが何も無いぞ?」

 

「俺らじゃ気付けない可能性もあるけどな」

 

「斥候型のお主らが気付けないならこの場の誰も気付けんじゃろ。それよりセツニキ達の負担を減らす為に狩るべきでは無いか?」

 

「悩ましい所じゃの。先程から儂の【直感】が警鐘を鳴らしておる」

 

 

 グラ爺の言葉に他の【直感】持ちが同意の声を上げていく。何か見落としがあるのか……?

 

 

「んー……【峰打ち】──は駄目か。物理耐性取られちゃうし。様子見ながらギリギリまで削る?」

 

「取り敢えずそうしよっか──ってオイッ!」

 

「まじかよッ!!」

 

 

 ポセイドンが醜悪な表情で嗤い、自らの胸に槍を突き刺す。その行いは容易く〝核〟を貫き、ポセイドンを()()()()()()と思われる人間?の死体に変えた。

 

 軍を率いていたトップが自殺。その有り得ない行動に付き従う様に俺が押さえていた雑魚達も抵抗するのを止め、次々と重力に押し潰されていく。

 

 深海の維持が不可能となり、元の宮殿(オリュンポス)に景色が切り替わる事に戸惑いつつ、次の試練に備えるが……

 

 

「……何も起こらない?」

 

「自殺とはいえ倒したのに?」

 

 

 俺らの戸惑い通り、何も起こらない。それどころかポセイドンを倒した事により、残りのボスへと続く〝門〟が現れている。

 

 

「取り敢えず、次の試練まで回復しとく?」

 

「そうしようか。どれだけ休憩出来るか知らんけど」

 

 

 不完全燃焼のまま各自で霊薬を流し込み、ついでに神道系の結界を張って回復力を底上げ。食料はまだまだあるし、装備の手入れも出来た。

 

 完全とは言えないが、万全の態勢を整えた頃には優に三十分程過ぎており、俺らの警戒心も自然と薄れていた。

 

 

「何も……無かったね?」

 

「えっと……先進んでみる?」

 

「いや、まだ終わってないみたいだぞ。【脱出】は使えない」

 

「神話的には従者が馬に喰われて、ぶちギレたヘラクレスが馬に主だった王様を食わせるんだっけ?」

 

「確かそう──って馬は?」

 

「セツニキの式神が──って、え?」

 

 

 疑問の声を上げた俺らの視線を追って、その先に目を向けた瞬間、何故ポセイドンが醜悪な笑みを浮かべたのかを理解した。

 

 

「やられた……!」

 

 

 世話を任せていた式神に同化している、クトゥルフ産の馬の様な存在(モノ)。この場合、()()()()()()()()()()()()だ。

 

 見立ての術式的にも、神話再現的にも、何一つ不備の無い完璧な状態。それはそのまま強制力となる。元々俺らより高位だった存在が行った儀式だ。裏技も何もかも通らないと見た方が良い。

 

 

「この場合って……」

 

「たぶんセツニキが……〝人喰い馬〟になってると思う……」

 

「だろうな。式神と俺との間には誤魔化し様の無い繋がりがある。儀式が成立してる以上、俺が〝人喰い馬〟だ」

 

 

 灰色の頭を活性化させ、この後に辿るであろう末路を考える。

 

 ディオメデスの人喰い馬のラストは二通り。一つはヘラクレスからゼウスに捧げられるが、ゼウスは人を食った事を理由に受け取り拒否。ヘラクレスに野に放つ様に命じ、集めておいた猛獣に襲わせて殺す。

 

 もう一つはヘラの神馬となり、アレキサンダー大王の時代まで血筋を残すルートだ。こちらは文字通り、ヘラの所有物となる道となる。

 

 

「……どう考えても俺はここまでか。京四郎ニキ達がヘラを殺しておいてくれて良かった。まだ道が残ってる」

 

「……どうしようも無いの?」

 

「正規の手段で行われた儀式ってのは厄介でな?糞面倒な代わりに完成したら覆す手段が無いんだよ」

 

 

 だからこそ世界各地で様々な霊能組織がメシア教に刈り取られた。一つ、二つの儀式を止める事は簡単、十でも頑張れば、三十辺りなら命を賭ければどうにでも出来る。

 

 だが百を止めるのは無理だろう。もし止めたとしても、千の儀式を止める力は誰にも無い。

 

 世界は数の暴力に負けたのだ。個を殺す事は出来なくても、群を支配すれば、世界は牛耳れる。だからこそメシア教はこの世界の覇者となったのだ。

 

 

「セツニキが〝愛されていた〟って事かの?」

 

「どうだろうな。もしかしたら俺らの中なら誰でも良かったのかも知れん」

 

「……確かに。セツニキ一人を狙うなら機会は多いしのぅ」

 

 

 自慢じゃないが、式神と離れて行動した回数はガイア連合の中でもトップクラスだ。俺を殺す(愛する)機会なんて幾らでもあっただろう。

 

 そんな無数にある好機では無く、人数の揃った所を狙って来た事を考えると、〝運命〟とやらの狙いは──

 

 

「……たぶん、そういう事なんだろうな」

 

「…………?どういう事?」

 

 

 首を捻る俺らの視線を集め、推論を語る。

 

 

「俺らは()()()()訳じゃない。他の黒札から修羅勢とショタオジを引き剥がす為の()()()だ」

 

「つまり、他の人間へ試練を課すためにこんな事になったの?」

 

「たぶんな。もちろん俺らを狙ったのも嘘じゃないんだろうが……良くてサードプランぐらいじゃないか?」

 

「メインは何処かの黒札。その為に生け贄(俺ら)を使ってショタオジの目を引き付ける為にS案件を引き起こしたって事か。ふざけてるなぁ」

 

 

 本当にな。巻き込まれ事故で殺されそうなんだが?

 

 

「でも、セツニキが〝人喰い馬〟にされた事は変わってないよ?どうするん?」

 

「誰か一人〝門〟を潜ってくれるか?潜れなかったらたぶん俺がデュオメデスを喰らう必要がある」

 

「了解。じゃ、俺が行ってみるね」

 

 

 俺らの一人が次のボスへと続く〝門〟に触れる。が、当然の様に弾かれた。ここのギミックを巻き込んで強制力を発揮してる辺り、やってくれたなとしか言えん。

 

 

「駄目っぽい。ついでに解除も破壊も不可能かな。概念が今までで見たこと無いぐらい〝硬い〟や」

 

「了解。それじゃサクサクと食べるか」

 

 

 異形の死体を食べさせる為に式神を近付けるが、さも当然の様にデュオメデスの死体に取り込まれた。

 

 諦めて【存在吸収】を放ち、全てを喰らう。喰らったMAGが肉体を、精神を、魂すら汚染しようと蠢くが、その全てを【清浄の祈り】で消し飛ばす。──これでゼウス(ボス)戦に行けるなら多少は楽だったんだが。

 

 

「さも当然の様に試練の続きとかふざけんな!」

 

「しかも次の〝門〟閉ざされたし!」

 

「少しは加減しろ馬鹿野郎!」

 

 

 どうやら殺せるなら殺したいという意思に変わりは無いらしく、普通に第九の試練が始まった。

 

 

 

 

 ヒッポリュテの帯強奪は楽だった。すでに死んでいるヘラの役目は俺の擬人式神がやり、子作りに関してはスケベ部に封印されていたエドニキ作〝小型転移門〟を使って確保しておいたクトゥルフの精子を転送。条件を満たした事によって襲ってきたアマゾンの女王を惨殺して終わった。

 

 原典と違うのは、誰もクトゥルフと混じったヒッポリュテを殺した事を後悔しなかった事だろう。

 

 ゲリュオン退治に関しては語る事が無い。原典でもネメアの獅子の腰巻きを巻いただけのヘラクレスに殺されてるし。強いて言えば、毒殺したという事ぐらいか。

 

 黄金の林檎は神話通りアトラスの代わりに俺らの力自慢がバフ込みで背負い、その対価として取ってきて貰った。

 

 その後は背負い直すから一時的に背負ってくれと頼み、断られたのでボコボコにして無理矢理背負わせた。

 

 物理を解禁した俺らにとっては雑魚だったな。

 

 

 そして──最後のケルベロスの捕獲。

 

 

「いい加減死ね!っていう熱い意思を感じるね」

 

「ほぼ全てに【完全耐性】を得たケルベロスの初手が【自爆】とか許されんよ」

 

「オリュンポスごと吹き飛ばせればオッケー!った考えなんだろうね」

 

「ま──だったら消し飛ばすだけだけどな」

 

 

 右手に構えるはショタオジと共に作り上げた切り札。

 

 左手に構えるはカヲルニキと共に作り上げた切り札。

 

 それを合わせ──さらに一枚、俺の〝切り札〟を重ねて発動。

 

 

S.O.R(スピリット・オブ・ラグナロク)

 

 

 正真正銘、俺の持つ最高火力。他力本願を恥ずかしがる俺らには出せない、()()()()()()()()()()()はケルベロスをオリュンポス(ギミック)ごと消し飛ばし、次へと続く〝門〟を強引に開く。

 

 瓦礫すら残らず、大空に投げ出されたのも束の間、落下するより早く大空に立って周囲を眺める。無数の魔法陣に維持されている結界。性質は──〝未来確定〟か。また厄介なモノを。

 

 

「何というか凄いね。こんな時じゃなかったら感動したかも」

 

「じっくり解析したいのは山々なんだが──時間切れみたいだな」

 

 

 未来で存在が確定している以上、過去で何をやっても()()()()。その証拠に再構築されたオリュンポスが俺らを包み込み、再び異界に取り込んだ。

 

 

「たぶん俺は別の場所に飛ばされる。ゼウス戦はお前らだけで頼むわ」

 

「とっとと片付けてセツニキを助けに行くよ。……死なないでね?」

 

「生き残る事だけならガイア連合最強はたぶん俺だぞ?」

 

「……そうだったね」

 

 

 儀式が成功した以上、俺が喰われる事で終わる事は確定している。そして、壊れるまでは〝未来確定〟は解けない。

 

 俺らと共に餓死するか、それとも俺一人の死で終わらせるか。考えるまでも無い。

 

 

「セリス。俺の持つ霊符を全部渡しておく。たぶん遅くなるからアイや禊に宜しく」

 

「帰って……来るのよね?」

 

「死ぬつもりは無いぞ」

 

 

 泣きそうなセリスの頭を優しく撫で、ついでにオオマチとムラサキの頭も撫でる。レティは抱き締めてきたので、軽く抱き締め返す。

 

 

「ギン。泣き虫共を頼むな」

 

「わんっ!!」

 

 

 一番最初から共に生きてくれたギンを軽く抱き締め、別れを告げる。そんじゃまぁ──行きますか。

 

 

 

 




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