【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
糞みたいなギミックに嵌まってから数日後。俺は未だに失った物資の補充に追われていた。
「〝奥の手〟の作成は無理か。どちらも忙しそうだ」
終末対応のパソコンを操作しながら、二人から届いたLILINを見て溜め息を吐き出す。
切り札を使った事は後悔していない。連戦に次ぐ連戦によって、俺らドレイン持ちはともかくとして、他の俺らは霊薬中毒になる危険水域まで行っていた。
当然、あのままだらだら戦っていたら全滅の危機もあったので、使うべき場面だった事は間違いない。
「セリスに預けた霊符も──全滅か」
「……御免なさい。頭に血が上って後先考えずに暴れたわ」
「主様。私達も同罪ですので……」
「あぁ、勘違いさせたか。怒ってないから安心しろ」
本当に怒ってないのだ。消耗品を多用する以上、道具の枯渇は常に起こり得る事なのだから。
「ま、暫くは休業だな。俺もそうだが、お前らも精神的に不安定だし」
素質の無い〝時間加速〟を使った代償は数日経った今でも続いている。別に命に係わる程の問題では無い。ただ睡眠時間が物凄く不安定になり、常に睡魔に襲われているだけだ。
だが数日寝たきりになる姿は今のセリス達の不安を大いに煽るらしく、寝て起きたら全員がべったり張り付いている事も多い。
代償を何とかする手段もあるし、本当にそこまで心配する必要は無いのだが。
「身体は大丈夫なの?」
「死にはしないが……たぶん終末に間に合わん。暫くお前ら頼りになりそうだ」
〝時間加速〟の為に許容量を大幅に越えて霊力を確保した影響で、今の俺の霊器はボロボロだ。
動くのが辛いと言うほどでは無い。常に微熱と倦怠感に襲われる風邪の様な症状が出てる程度で済んでいる。
大半の負担を〝この星〟に押し付けた甲斐があったな。ざまぁみろ、運命とやら。
「念のため【
「見たところで面白いもんは見れないと思うぞ?」
「それでも御主人様の現状を知らないよりマシですから」
「さよけ」
力を抜いてムラサキの【ハイ・アナライズ】を受け入れる。ぶっちゃけた話、素で抵抗出来ないんだけどな。
★人間 <ナナシ> Lv50(100)*1
耐性・封印中
スキル・レベルドレイン 封印中
権能・封印中
「大半が封印中……ですか」
「永遠って訳じゃないし、身の丈に合ってない力の行使の後って事を考えると、かなりマシな結果だな」
「そうなんですか?」
「霊能を失う可能性もあったし」
スキルロストや権能ロストぐらいは覚悟していた。それが封印止まりなんだから、俺としては万々歳な結果だ。日頃の鍛練を真面目にやってて良かったぜ。
「……あのさ。これってぶっちゃけ意味無くない?主って術者だからスキルにも権能にも頼ってないじゃん」
「むしろ
「それなら一安心──とは言えませんね。霊格が五十まで下げられてますし」
「まぁ、深層や下層には行けんわな」
遊ぶなら中層の最奥かね。下層の序盤も行けるとは思うが、事故がちと怖い。
「そう言えばキャノとロタは大丈夫ですか?ガブリエルの自称分霊を名乗るだけあって、今の主様より高位になってますよね?」
心配そうな表情で尋ねてきたのはアイだ。
「アイツらは旅館の守護者として旅館と契約してるから問題無いぞ。ギンは式神にしてるし、煙々羅は今の俺でも押さえられる。というか霊格自体は下がってないんだよ」
「と言うと?」
「今の俺はレベル五十分までしか霊力が回復しないだけなんだわ。それ以降に貯蔵される霊力は借金の返済に回されてるって言えば分かるか?」
「……成る程。未来の自分から霊力を借りた感じですか」
「獣自体は無限湧きだったから時間さえかければ幾らでも霊力自体は掻き集められたんだが、術式起動の為の初期霊力が足りな過ぎた」
連戦に次ぐ連戦。それを何とか切り抜けた俺では、術式を起動するだけの霊力すら残っていなかった。元々体調が万全な時でさえ重かったコストだ。そら足りん。
「術者以外の霊力では使えない様に仕込んだ〝
「強力な呪符を誰でも使える状態で持ち歩く方が怖いからな。こればっかりは仕方ないさ」
四六時中警戒するのは不可能だし、俺も人間だ。ミスぐらいする。その〝もしも〟で奪われた呪符が世界を滅ぼす可能性がある以上、これから先も〝安全弁〟は外せない。
その分キャパを食われるから霊符の性能が下がるので、出来れば使いたくないというのが術系の本音になる。
「よし、霊薬の発注完了」
昔と違ってPCで発注出来るし、決済も出来る。黒札専用サイト様々だぜ。
ちなみに霊装も安物なら発注出来るぞ。俺らクラスの霊装は無理だが。
「あ、新刊出てるか見て良い?」
ニョキッと俺に胸を当てながらオオマチがPC操作し始めると、負けじと他の奴等もPCに群がり始めたので一旦離脱。換気扇の下に置いてある椅子に座り、そのまま煙草に火を着ける。
「別にこっちで吸っても良かったのに」
「いずれお前らが子供を産んだら側で吸えなくなるしな。その為の練習みたいなもんだ」
「産ませてくれるの?」
「断る理由も無いしなぁ」
コンロに置いてあるコップにインスタントコーヒーをぶち込み、お湯を注ぐ。個人的にお湯とミルクの割合は3:7が好きだ。砂糖は要らん。……うん、美味い。
「何人までなら大丈夫なんだい?アタシ達も赤ちゃん用品の備蓄しておいた方が良い?」
「オムツやらミルクやら教材やらは旅館に備蓄してるし、千人産みたい!とか馬鹿な事を言わないなら特に何もしないでも大丈夫だ。やって損はしないけどな」
備蓄の切っ掛けになったのは探求ネキだ。身近な彼女が子供を産んだ事で俺らも将来の事を考え始め、修羅勢の資金力でベビー用品を備蓄し始めた。
一時期、世界中の市場から消し去る勢いで掻き集めたので、少なくとも今代で不足する事は無いと思う。次代からは布オムツになりそうだが。
「他の人達が居る場所では口に出来ませんが、私達式神にとっては終末が待ち遠しいです」
「そうね。人類には悪いけど、主様との子供は欲しいし」
自室という事もあり、
その仕草にムラっと来るのは仕方が無い。とはいえ身体が怠すぎて襲う気にゃならんが。
「星祭の子供達*2の様に私達の子供も学校に通わせて上げたいけど……終末後だと厳しいかしら?」
「探求ネキが学園作るらしいし、そこに通わせれば良くないか?俺が死んだ後でも探求ネキは生きてるだろうから〝縁〟があって困るもんじゃないだろ」
学園長かその嫁に性癖を破壊される気がするが。いや、俺の子供だからイワナガか?
初恋は複数居る母親の誰かか巫女だろう。下手すれば俺らの嫁かも知れん。何というか楽しみだな!
男だったら思春期に悪魔しょうかんにご案内だな。女だったら母親に任せる。前世でもそうだったが、父親は娘に干渉し過ぎて嫌われる。それなら一歩引いて見守るぐらいが丁度良い。
娘が欲しければ俺を倒してみろ!とか言っちゃうと、黒札の娘は男と結婚出来なくなるしな*3。
「探求ネキさんの所なら死ぬまで飢える心配は無さそうだし、子供の事を考えるなら理想的だねぇ」
「他の支部も教育機関を作ってるが、終末後も飢えないってのは強みだよな」
吸い終えた煙草を灰皿に投げ捨て、珈琲で渇いた喉を潤す。前世と変わらず、酒、煙草、珈琲、女は常世のストレスを忘れさせてくれ、栄養ドリンクは体力が回復していると
若い奴らは嫌悪するだろうが、世の中にはこれらが無いと生きられない悲しい生物が居るのだ。──そう、
サラリーマンだ。
ちなみに栄養ドリンクが初めて日本に現れたのは、高度経済成長の真っ只中の1962年。ここまで言えば勘の良い奴は理解して涙を溢すだろう。
最初から社畜を働かせる為のポーションなんだよ。栄養ドリンクは。
「やっぱり急成長は良くないな、うん」
「……?いきなりどうしたの?」
「何でもない。気にすんな」
手をひらひらセリスに振って話を切り上げる。コイツらには縁の無い話だし、黒札の中には未だ〝思い出し発狂〟する奴も少なくない。
世の中には思い出さない方が良いことも多いのだ。下手すれば瘴気が集まって悪魔化するし。
「あ、教育機関で思い出した。星祭の子供達の〝
「先生と言えばレックスとアティ*4なんだよ。異論は認めない」
「そんなに強弁する程なの!?」
「おう。俺らの総意だからな」
特にアティはヤバい。造形や中身も含めて最強過ぎる。抜剣覚醒後の姿も含めてヤバい。
知らない奴は人生の八割損してるぜ。
◇