【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
岩手県宮古市。世界三大漁港の一つとして数えられる三陸・金華山沖に程近く、ご当地グルメの瓶ドン*1はもちろん、どの季節に来ても必ず美味しい海産物に巡り合える事で有名だ。
鮭、わかめ、ほや、ウニ、アワビ、サンマ、
他にも色々な思い出はあるが、一番は何かと問われたら、牛乳瓶にみっちり詰め込まれているウニだろう。
初めて売られている光景を見た時の衝撃は、今でも鮮明に覚えている。
そんな海鮮物豊かな場所をお供のアイと共に歩く。暇潰しついでの観光兼下見と言った所か。相手方の準備が出来るまでの時間潰しだ。移動は一瞬だしな。
「──で、あれが有名な〝がっかり島〟と呼ばれる岩場だ」
島と呼ぶには小さい、良くある海に浮かぶ岩場。それ以上の感想を抱かせないその姿は、名前の通りと言うしか無い。
「名前からして残念臭が漂ってますね」
「
「ほう?」
「他の周辺海域では取れるアワビがあそこではサッパリ取れないらしくてな?だから〝がっかり島〟と名付けられたって説があるんだ」
「アワビは美味しいですからね。私としてはそちらの方が納得出来ます」
「だろ?」
続いて【転移】して向かったのは浄土ヶ浜だ。剣ノ山、賽の河原、血の池など、仏教に登場する地獄の名称と同じ名の付いた観光名所を巡り、最後に隠形で隠れて〝青の洞窟〟とも呼ばれる八戸穴へ侵入する。
「綺麗ですね……」
「何で青いのか。科学的には解明されて居るが、そんなもんは些事だよな。本当の〝美〟ってのは解明して尚、人間を惹き付けて止まないもんだ」
「見る時間帯によって、隣に立つ人によって。完全では無い〝不完全〟だからこそ科学を越えるんでしょうね。常に同じ景色では、どれほど美しくても飽きますから」
「美人の身体は飽きないけどな」
「これでも飽きられぬよう努力してるんですよ?」
「知ってる」
このまましっぽりアイを連れてホテルに向かいたいが、残念ながら、そろそろ仕事の時間だ。
どれほど体調が悪くても、すでに定まっている日程はそう簡単には変えられない。社会に一度でも出れば分かるが、大人の世界はそうして回っている。
景色を名残惜しみつつも【転移】して貰い、滝沢市にある岩手駐屯地に飛んだ。
「遅れたか?」
「いえ、時間通りよ」
すでに着席している愛宕ネキが引き締めた表情のまま俺達を迎え入れる。
この場に居るのは、岩手県警のトップ、岩手駐屯地の責任者、そして轟ニキ達を始めとする岩手の政治家達に権力者達。
早い話が、岩手県の未来を担う者達が勢揃いしていた。
「まずは名乗っておこうか。ガイア連合山梨第一支部所属のセッツァーだ。コイツは俺の式神のアイ」
「宜しく」
外向けの冷たい微笑を向けて牽制。そして
正直言えば【転移】だけで十分なんだけどな。まぁ、後押しにはなるだろう。
それから軽く自己紹介を行い、わざわざ予定を調整してまで集まった
「まずは新しいジュネス建設予定地の話し合いか。それに関してはお前らに任せる。俺は口を出すつもりは無い」
「話し合いが終わるまでの間、貴方はどうするの?」
「提出して貰った報告書を確認するつもりだ。余程の事が無い限り俺の想定内で推移するだろうが、何事にもイレギュラーは付き物だからな」
深層とか深層とか深層とか。後は深層とか。
「じゃ、未来の為に頑張ってくれ。──行くぞ、アイ」
「畏まりました」
部屋の隅に持ち込ませた椅子に座り、アイと二人で資料を読み込む。自衛隊と警察に配ったデモニカの稼働率、損傷率、予備パーツの在庫、費用対効果。
ついでに戦闘を繰り返した事によって覚醒した人間達への訓練経過を確認。さらに岩手支部から上げられた報告書も読み込み、マヨヒガの増設を検討。
「思ったより覚醒者の数は増えてますね。……才能に関してはどうしようも無いですが」
「現状だと十越えが一人か。やっぱメインはデモニカだな」
固定値は正義だ。ダイスの神様もそう言っている。式神移植がもう少し簡単なら楽なんだが。
「岩手支部は霊山同盟から石長比売様繋がりでデモニカを確保しやすい分、他の支部よりマシですね」
「雑魚は訓練次第で何とかなる事を
「最悪、シキオウジロボが起動するまでの時間さえ稼げば、普通の悪魔ならどうにでもなりますからね」
「どうにでもならなかったら滅ぶだけだしな」
ビクッ!と聞き耳を立てていた何人かが身体を震わせる。立場上、海外の現状を詳しく把握してるだろうし、危機感は人一倍あるんだろう。
残念ながら慰めの言葉は掛けられない。運が無かったとはいえ、俺らですら死にかけたという事実が重すぎる。
「終末後の一般人向けの仕事は農業一択ですか」
「海鮮類の値段が跳ね上がりそうだ。まぁ、海魔の彷徨う海で漁なんて出来る訳無いんだが」
「レベル三十でも十の海魔に負けますからねぇ」
人間は水中で動ける様に作られていない。つい最近、深海に叩き込まれた気もするが。
「一応、マーメイドやサハギン辺りを雇用して取らせるって方法があるにはあるんだが……」
「対価の事を考えると、安くはなりませんね」
黒札ならMAG支払いは余裕だが、霊才の無い人間には中々酷な話。他の条件でも受け入れてくれる奴は居るだろうが……ハトホルの〝便利な女*2〟っぷりを考えると、三枠の内の一つは使えなくなる。
残り二枠を魚の為に使えるかというと……まぁ、厳しいわな。
「役割分担をすれば良いのでは?と言いたい所ですが、人間関係に亀裂を入れる事が大好きな存在も多いですし、人類に救いは無いですねぇ」
「結局の所それなんだよなぁ」
役割分担で漁に特化した存在にする事は可能だ。守る事に特化した悪魔のラインナップにする事も出来る。
問題になるのは、抵抗手段を持たない〝恐怖〟に耐えられるかどうかだ。隣人を信じられるかとも言う。
何処かの水柱さんが言った様に生殺与奪権を他人に任せるな!という奴だな。それが出来るなら、終末後も海鮮類は取れると思う。
「改めて見ると、ハトホル様の権能が強すぎますね。選ばない理由がありません」
「鬼手一族の基本悪魔になるぐらいだからな。下手すれば、終末後には四文字クラスになるんじゃないか?」
「セクメト、イシスと同一視されてる関係で殺戮の女神の顔と豊穣神としての顔も持ち合わせてますから……下手すれば、COMPに入れられる三枠ともハトホル様になるのでは?」
「普通にあり得そうだ」
美の女神としての側面も持ち合わせているから、人間に受け入れられやすい容姿になるだろうし。
「多神連合産のシェルターでは信仰を認められないでしょうし、メシア教のシェルターも同様だと考えると、食料不足から他のシェルターと戦争になりそうですね。飢餓は人を獣に変える欲望ですから」
「どうしてこうなったって幹部達が頭を抱えてたな。俺らは別に世界の守護者にも管理者にもなりたくなかったのに、気が付けばその地位に居たし」
「根願寺が
「それな」
メシア教に根切りにされたのが全ての原因なんだが、先に霊能を表の戦争に持ち込んだのは日本側だ。
それを踏まえて考えると、陰陽寮が馬鹿だったとしか言いようが無い。別にヤタガラスでも良いが。
負けそうになってから介入するなよ。やるなら開戦前から動けや。
「退魔弾の量産については問題無し。強いて言うならガイア連合製より劣化する事と、またハトホル様が手を伸ばせそうな事ですか」
「鉱山の女神でもあるからな。ただ、これに関しては金山姉弟もイワナガヒメも居るから代用が効く。一強にはならんと思うぞ」
「組織ならともかく、個人なら不要になりますか」
「豊穣と違って鉱山だけだと使い道がな。加工する為の施設を維持する必要もあるし、採掘するにも技術が居る。楽観視は出来ないが、ある程度はガイア連合が把握出来るだろう」
「では、警戒するべきは〝火薬〟の方ですか」
「そっちは諦めるしか無いわな。抜け道が多すぎる」
魔界魔法とカテゴライズされている【ダムド】は悪魔の方が主流だし、内政チートでお馴染みの硝石は鉱脈を何処にでも作成可能。
火山の神なら硫黄を作りたい放題だから、無煙火薬の精製もそこまで厳しい事では無いから頭が痛いな。
別に科学的に精製する必要は無いのだ。概念を抜いて混ぜ合わせ、MAGに〝火薬〟属性付与すれば済んでしまうのだから。
それだけでも対策するのが面倒なのに、
火薬草やニトロダケ等のモンハン系の素材から、ハクネツ鉱石等のアトリエシリーズ。
FFシリーズのボムなんかは有名だし、他にもまだまだたくさんある。これ全部に対処しろってのは無理ゲー過ぎる。
「皮肉ですねぇ。人類は自ら引き起こしてきた争いの歴史に呪われますか」
「銃の悪魔が自然湧きしてAKをドロップ!その武器を装備して敵対シェルターを襲撃しよう!もしかしたらハンドグレネードも手に入るかも!?」
「銃の悪魔が簡単に狩れたら武器の過剰配給待った無しですね」
「武器を管理していた場所は無限湧きする可能性もあるし、それを助長する悪魔も多い。人類の未来は明るいな!」
「闘争の炎で照らされますからねぇ」
武器を過剰配給するポストアポカリプスはクソゲー。食料生産を邪魔するだけで殺し合いに発展するぜ。