【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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体調悪くて寝てたせいでストックがぁぁぁ!

完結まで毎日更新が厳しくなりました。


岩手支部の看板娘8

 

 

「正直な話、大陸の仙人共の考えは間違っちゃいないんだよな。勝てないから逃げるという選択は正しい。それを否定した先にあるのは〝共倒れ〟の世界だし」

 

「共倒れ?人類の敗北では無く?」

 

「悪魔が自身でMAGを精製出来ない以上、行き着く先は星を食い尽くしてバッドエンドだぞ?何故か悪魔の多くは自分だけは大丈夫だと思ってるがな」

 

「メシア教の様に牧場したらどうなんです?」

 

「多少の延命にはなるだろうが……お勧めはしない」

 

 

 そもそも前提が間違ってる。この世界に永遠なんて物は存在しない。質量保存の法則は()()の考え方であって、オカルト的な存在である悪魔には関係無い。

 

 その大前提を間違えてるのに、さもそれが当然の様に考えるから人間牧場なんて馬鹿な真似が出来る。

 

 人類と星が産み出せるMAGは有限なのに、それを自ら減らして緩やかな自殺を行ってるのだ。頭が悪いとしか言いようが無い。

 

 

「魔界にせよ仙境にせよ、基準をこの星に置いてるなら、星のMAGが枯渇=消滅は決して避ける事の出来ない運命になる。まぁ、そうなる前に人類が死滅して、引き摺られる様に悪魔も滅び、メシア教待望の救世主が現れて二週目が始まるかも知れんが」

 

「その頃には流石に私も生きてなさそうです」

 

「俺も三度目の人生は御免だな」

 

 

 二人で苦笑いを浮かべ、出された御茶で喉を潤す。先程から聞き耳を立てている人間が居る事は把握している。だが終末が来る事が確定している以上、もはや人間には手の打ちようが無いのだ。

 

 何もかも遅すぎた。後はその場その場の対処療法で延命するしか、人類が生き残る手段は存在していない。

 

 

「ま、未来の話は未来の俺らに任せて、今の俺らは今の話をしようかね」

 

「予想されていた事ですが、厄介な事になってますねぇ」

 

 

 パサリと読み終えた資料を机に投げ捨てる。書かれている内容を簡潔に説明すれば、核ミサイル迎撃による海域汚染及び神クラスの存在が権能を振るった代償についてだ。

 

 もっと分かりやすく言えば、太平洋に大規模な異界が発生した。穏健派が確保したアメリカからの亡命者を運ぶ為にも討伐せねばならないが、地元組織ではどう頑張っても不可能。

 

 海上戦の難易度は呉支部が証明したので、多くの黒札達も難色を示している。というか穏健派の為に働きたい人間がそもそも居ない。

 

 幹部勢が貧乏クジを押し付けあった結果、追加ジュネスと引き換えに岩手支部が引き受ける羽目になった、というのが、俺がこの場に居る理由となる。

 

 

「幽霊船、海魔、世界大戦の亡霊。多神連合の残留MAGから発生した各神話の魔物達に自称分霊か。国際色豊かだな。死ね」

 

「海域は荒れに荒れ、嵐と吹雪と流氷が入り交じり、雷雲と竜巻が発生しては大津波が起きる素敵な異界ですか。大人しく死んでください」

 

 

 真面目な話、どうするんだコレ?

 

 質も量も神話の見本市になってるし、海上戦は霊格が高ければ何とかなるってもんじゃねぇぞ。

 

 ハッキリ言ってショタオジが海域ごと焼くのが正解なんだが……アイツはアイツで自衛隊と米軍と何かやるっぽいから動けないんだよなぁ。

 

 

「取り敢えず情報を整理しましょう。無理なら無理と言えるだけの情報があれば、幹部勢を黙らせられますし」

 

「先手必殺と言わんばかりにジュネス建設の為の資材や人間を送り込まれたけどな。何ならあっちの会議が終わった瞬間から建設が始まる勢いだぜ」

 

「ここまでやったんだから解決しろって圧力を感じますよねぇ」

 

 

 再び二人で溜め息を吐き出す。幹部勢の計画に必要なのは分かる。だけど、もう少し手加減して欲しい。

 

 文句を言っていても仕方ないので、アイと二人で海上戦が出来そうな戦力をピックアップ。メインは新潟のロボ部だろうな。出来れば呉支部からも引っ張りたいが、噂では中華戦線に出張るとか何とか。

 

 秋雨ニキ達の定時連絡から漏れ聞こえた情報によると、あちらはあちらで天気が天使時々核だからなぁ。

 

 何処もかしこも地獄かな?メガテン世界(じごく)だったわ。

 

 

「岩手支部もギリギリまで報酬を張ってくれてますし、自衛隊から物資の提供も受けられますので、数字上ではありますが艦隊戦は行けそうですね」

 

「問題はやっぱ報酬が安い事か」

 

「穏健派の為の任務という事を理由に富豪俺達(スポンサー)が全速力で逃げましたから……ギルニキ様ですらこの額ですよ?」

 

「会社持ちは悪名高いメシアと懇意にしてるって思われた時点で終わるからな。ほら、資金提供の名目が人道支援になってるぜ」

 

 

 こんな小技を使わなければならない程、メシア教との繋がりは会社にダメージが入るらしい。さもありなん。

 

 終末後の貴族階級になりそうな黒札にそっぽ向かれる可能性があるからな。まともな思考回路持ってるなら距離を取る。俺でもそうする。

 

 

「そういえば、メシア教から戦闘部隊は来ないのですか?」

 

「あー断った。ただでさえ少ないスカウター破壊組が来なくなるし」

 

「戦場を共にする事すら嫌ですか」

 

「今回は海上戦だし、天候も最悪。こっそり魂を持ち帰られる事を考えるとな?」

 

 

 溜め息混じりにそう答えると、アイが呆れた視線を俺に向けた。

 

 

「……私達、同盟組んでるんですよね?」

 

「不思議だよな。同盟相手が世界で一番信じられねぇ」

 

 

 地獄への道を善意で舗装するメシア教と、悪意を持って突き落とす多神連合。

 

 どちらがマシかと言えば、悪意を持ってやってくる多神連合だ。何せ殴れば解決する。

 

 メシア教を殴ったらガイア連合側の〝借り〟となるから本当(ホント)にやってられん。

 

 

「何時もみたいに星祭から持ち出しますか?」

 

「提案したけど断られた」

 

「当然でしょ。もう終末まで秒読みなのに、返せる当ての無い借金は出来ないわよ」

 

 

 呆れた様子で話に混ざってきたのは愛宕ネキだ。どうやらあちらの話し合いは終わったらしい。

 

 

「何処になった?」

 

「宮古市ね。広さだけならかなりのモノ*1だし、海と山を同時に利用出来るのはデカイわ」

 

「了解。後でイワナガに頼んでおくわ」

 

「宜しくね」

 

 

 愛宕ネキから渡された資料を元に建設予定地を星祭に送信。地鎮祭は岩手のイワナガヒメでも行けるが、終末後にも繋がる道とする為には星祭のイワナガクラスの力が必要となる。まぁ、地脈を繋いで道を補強するだけなんだが。

 

 ついでに鬼手一族にLILINを送り、副祭神として降ろして貰ったヤマに道祖神としての側面を強化した分霊を頼む様に指示を飛ばす。

 

 鬼手神社*2も気が付けば国際色豊かになったな。

 

 主祭神にイワナガヒメ、副祭神にヤマ、ハトホル、金山姉弟だし。

 

 

「ところで進捗はどんな感じなの?」

 

 

 アイと顔を見合わせ、タイミングを合わせて口を開く。

 

 

「「進捗ダメです」」

 

「ちょ、ちょっとっ!あんなに話し合ってたじゃないっ!!」

 

「いや、中層クラスの依頼報酬じゃ海上戦は割に合わないんだよ。人数入れば良いってもんじゃないしな」

 

「星祭の暇な方々に〝散歩*3〟して貰う予定ですが、それでも想定される異界の規模を考えると厳しいです」

 

「そんなに不味いの……?」

 

 

 不安そうな表情の愛宕ネキに悪いが、残念ながら深く頷くしか無い。

 

 

「荒れた天候の上での戦闘は厄介なんてもんじゃない。これは経験談に基づく話になるが、レベル三十程度だとレベル十程度の活躍が出来たら御の字だ」

 

「それに落水した時のカバーにも経験が必要なんです。濡れた服って愛宕ネキ様の想像以上に動きづらいんですよ?」

 

「……だから追加でジュネスなんて依頼だったのね」

 

「ま、そういう訳だ」

 

 

 愛宕ネキも実戦を知らない訳じゃない。むしろ支部長の中では高レベルだろう。

 

 だが悲しいかな、海上戦の経験を持ってるのは呉支部と新潟と修羅道を経験した奴ぐらいだ。それ以外の奴等は陸戦の延長線上でしか考えていない。

 

 

「最悪の場合、星祭(俺ら)が始末する。だけどこれも良い経験だからな。他の奴等と相談して頑張ってくれ」

 

「……私の貯金で貴方に依頼するのはアリかしら?」

 

「要件にもよるな。俺に丸投げする様な依頼なら断るぞ?」

 

「──────をお願いしたいの」

 

「…………へぇ。取り敢えずどんな風にしたいか言ってみな」

 

 

 愛宕ネキの考えによっては術スレが動くな。

 

 

「まだ思案の段階だけど、貴方と岩手支部で開発した〝女王艦隊〟をベースに──によって性能を変動させる感じでお願いしたいの。そうすれば私や高雄達以外の岩手支部の黒札も戦力に数えられるでしょ?」

 

「成る程。着眼点は悪くない」

 

 

 いや、むしろ俺が作ろうとしていた〝女王艦隊〟より使い勝手が良いな。被害の分散という面でも悪くは無い。

 

 

「了解。依頼料はこれくらいだが大丈夫か?」

 

「一夜付き合うからもう少し安くならない?」

 

 

 その言葉に聞き耳を立てていた外野がぎょっとした視線をこちらに向けてくる。さっきから愛宕ネキの胸に釣られていたから気持ちは分かるが、下半身に正直過ぎだろ。

 

 そんなんじゃサキュバス系列に喰われるぞ。文字通り肉体ごと。

 

 

「あの、セツニキ?流石にスルーされると恥ずかしいんだけど?」

 

「あぁ、すまん」

 

 

 ポフポフと愛宕ネキの頭を軽く叩き、そのままぐしゃぐしゃ頭を撫でる。

 

 

「ちょ、ちょっと!せっかくセットした髪が崩れるじゃない!?」

 

「発情する方が悪い。後、自分を安売りし過ぎだぞ?お前の価値はそんな安くない」

 

「安心して頂戴。セツニキ以外には言わないから」

 

「さよけ」

 

 

 お互いに好意はあるし、男女の関係になっても可笑しく無い程度には長い付き合いだ。

 

 残念ながらお互いの最優先対象が違うので、男女の関係になる事は少なくとも愛宕ネキが支部長を辞めるまで無いだろうがな。

 

 

「二割引いてやる。確認が取れ次第、作業を開始する」

 

「分かったわ。帰ったらすぐに振り込むわ」

 

 

 この中途半端なムラムラは──アイで発散するとしますかね。

 

 

 

 

*1
実は東京二十三区より広いらしい。

*2
鬼手一族の本拠地。元々の名前はあるが、もはや誰も呼ばない事で有名。

*3
つまりタダ働き。

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