【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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暁の水平線に勝利を刻み込め!2

 

 

 地脈が世界的にLAW属性に染まりつつあるという事もあり、半終末に突入した世界では、海外はもちろん日本ですら天使がゴキブリの如く湧く様になった。

 

 その影響で天使素材の市場価格は大暴落しており、黒札は当然として、金札ですら中位天使の素材を使った霊装を安く購入出来るぐらい素材は過剰供給となっており、このままでは現地霊能者達が命を賭けて端金を稼ぐ日々を送る羽目になる事が各支部からの報告で判明した。

 

 そういう時、市場から素材を買い取って消し去り、価格を吊り上げるのも星祭の仕事な訳で。

 

 

「大量に余った素材を〝アークエンジェル〟由来のまま昇華しまくってな?それを固めて石状にした物を席に置いて、名前から見た目を引っ張ってるんだ」

 

「だから私でも聞いたことのある船になったのね……」

 

 

 アークエンジェル。正式名称はアークエンジェル型強襲機動特装艦・1番艦だったか。

 

 ガンダムSEEDに登場する船の一種で、近接格闘性能が可笑しいマリュー・ラミアス艦長と逸般人の操舵手により、何度も撃墜されそうになりながらも物語を駆け抜けた比較的知名度の高い船だ。

 

 このメガテン世界ではその名が〝厄い〟という事もあり、長らく話題にすら出されなかったが……

 

 

「ロボ部と兼任してる修羅勢の嫁がマリューでな。ずっと嫁の為に作りたい作りたいって五月蝿かったから、術式(真・女王艦隊)の検証ついでに作ってやったんだよ」

 

 

 〝厄〟を振り払う為に七十まで霊格を上げ、必要な知識を学び、漸くショタオジから制作許可が下りたってのもある。一番の理由は報酬の発生しない〝散歩〟して貰う為だが。

 

 

「今更疑ってないけど大丈夫なの?」

 

「圧縮してる最中に何度か降りてきたが特に問題無く潰せたし、メシア教との〝縁〟は切ってあるからな。余程の事が無い限りは大丈夫だ」

 

 

 気にせず圧縮を続けていたら分霊ごと塗り潰せる事が判明したのは嬉しい誤算だった。

 

 面白がって修羅勢で遊んでたら降りて来なくなったが。〝縁〟を切ってまで避ける徹底ぶりだ。

 

 ちなみに高位天使が下りてきたところで実は何の問題も無かったりする。〝アークエンジェル〟は修羅勢の船だ。当然、高位程度では話にならない。

 

 四大天使が降りてきたらワンチャンありそうなんだが……アイツらはアイツらで、メシア教の為にしか降ろさないだろ。

 

 

「余程の事……」

 

「言いたい事は分かるが諦めろ。ショタオジですら完璧には無理なんだから、俺らにはどうしようも出来ねぇよ」

 

「貴方ですらそんな状態になったものね」

 

 

 心配の〝色〟が濃い視線を向けてきた愛宕ネキに対して、肩を竦める事で応える。

 

 霊格は半分まで封じられたし、スキルや権能も封印された。常に怠さがあるし、身体は熱を保っている。

 

 メガテン世界(この世界)で弱る事は、普通なら絶望的な状況だ。けれど俺は別にソロプレイヤーじゃない。困ったら仲間を召喚するだけで大抵の問題は解決出来るし、ガイア連合はそれが出来る組織だ。

 

 

「愛宕ネキとイチャコラ中失礼しまーす。敵勢力発見しますたー」

 

「了解。オペレーター、各艦に情報リンク開始。ついでに中央にマップ出してくれ」

 

「了解」

 

 

 返事と共に艦の中央に円形状の三次元仮想モニターが展開される。現在地から敵までの距離はおよそ二十海里。kmに直すと、約37kmだ。

 

 

「術式からサポートを受けてるとはいえ、凄まじい索敵距離だな」

 

「脳内処理の負担軽減もしてくれるし、斥候担当としては船下りたくないです!」

 

「気持ちは分かるが愛宕ネキが死ぬぞ」

 

「あ、やっぱり〝核〟役にはデメリットあるんだ?」

 

「一週間ぐらいなら問題ないが、常に魂に負荷が掛かってるのと同じ状態だからな。一応、術式にはリミッター付けてるが、それに頼る様なら素直に撤退した方が良いぞ」

 

「ちなみに何時間?」

 

「72時間」

 

 

 稼働テスト自体は俺がやった。ダメージチェックや限界稼働時間の設定は医療班とショタオジに任せたので、まず間違いない時間の筈だ。

 

 会話している内にも中央の仮想モニターにポツポツ赤い点が増えていく。赤い翼は敵航空ユニットを表し、赤い魚は敵海中ユニットを指している。海上の戦力は赤い船のマークだ。

 

 術式の演算処理のお陰で総数の計算はすぐに終わり、仮想モニターの右上に赤い点の個数が表示される。数にして約千体。これで前哨戦なのが笑えるな。

 

 

「翼3魚2船5か。情報をそのまま追加送信(情報リンク)()()の指示が出るまで即応態勢だ」

 

『『『了解』』』

 

 

 先程までの緩い雰囲気から一転、真剣な表情で動き出した俺らを見て、先程まで呆れていた観戦武官(ゲスト)が目を丸くする。

 

 悪いな、ガイア連合はこんな組織なんだ。

 

 ちなみにこの船の修羅勢は俺と嫁達しか居ない。ロボ好きは赤城や加賀(空母)に機体込みで乗り込み、他の奴等は最も難易度が高い海中に飛び込む予定だ。

 

 ヤバくなったら動き出す予定だが、たぶんそんな事態に陥らないだろう(フラグ)

 

 

「戦術リンク来ましたッ!表示します!」

 

 

 目の前に小型の仮想モニターが現れ、作戦の詳細が画面全体に表示される。今回の総大将とその右腕が必死に考えたであろうそれは、奇を衒わず、悪く言えば物凄くシンプルだった。

 

 

「……まぁ、この人数ならこれだわな」

 

「特に捻る必要も無いしね。私達は素人だし」

 

 

 高度な柔軟性によって臨機応変に対応──では無く、最低限の行動指針はもちろんある。というか、複雑な動きをさせたら絶対事故る事を()は理解している。

 

 そんな素人集団が出来る集団戦なんて一つしか無いだろう?

 

 

「セツニキさん。上から秘匿通信来てますけど、どーします?」

 

「着信拒否で」

 

「了解しました」

 

 

 オペレーターが通信を切ると、即座に秘匿通信に反応が。この速さ……俺じゃなければ見逃しちゃうね。

 

 仕方無く通信に出ると、目の前の仮想モニターには金髪のイケメンとやる気の無さそうな二人の男の姿が。

 

 

『セツニキ。やってくれたな……!』

 

『見た目と違って俺らに軍才なんて無いんよ……!』

 

「おやおや、何を仰るやら。ラインハルトニキとヤンニキ*1のお二人が無才なんて、この場に居る誰一人として信じませんよ?」

 

『『この野郎……!』』

 

 

 ギリィッ!と蟀谷(こめかみ)に血管を浮かび上がらせ、拳を握り締める二人にニヤニヤした笑みを返していると、横から愛宕ネキが口を挟んだ。

 

 

「真面目な話、貴方達二人しか対軍バフ持ちが居ないのだから仕方ないじゃない。ああいうバフって強力な分、前提条件が厳しいし」

 

『いや、グラ爺が持ってるだろ!しかも俺等より強力なヤツ!』

 

『そうだそうだ!人柄的にも総大将やれるじゃん!』

 

「グラ爺のバフは少数精鋭用だからお前らの霊格が足らんのよ。他の修羅勢のバフもな?」

 

『だったら人魚ネキや探求ネキは!?あの二人なら問題ないだろ!?』

 

「海に落ちた奴の救出がメインだし、バフのカテゴリが違うからお前らの仕事は変わらんぞ?」

 

 

『『うがー!!』』

 

 

 例えるなら、攻撃力アップとスキルダメアップとクリダメアップみたいな感じだ。あの二人が使う支援スキルは別に役職縛りとか無いタイプだし、必然的に条件が必要な二人を上に置くしか無い。……それに。

 

 

「諦めろよ。隣で()()()()()が泣いてるぞ」

 

 

 嫁が連合艦隊旗艦向けなのが悪いわな。

 

 

『それを言われるとなぁ……』

 

『セツニキに破片取ってきて貰ったから引き受けたけど、正直、胃が痛いです……』

 

「安心しろ。いざとなったら修羅勢が何とかしてくれるから」

 

「反則よねぇ。本来ならどうしようも出来ない水中でも普通に動けるし」

 

「それに二人のバフの性能を考えれば、上に置くしか無いよね」

 

「それな」

 

 

 艦内に居る岩手支部の面々が口を挟むのも分かるぐらい、ラインハルトニキ達のバフは桁違いの性能だったりする。

 

 

『いや、俺もゲームなら絶対に使うよ?でもセツニキ達を差し置いて上に立つのは精神的に辛いんよ』

 

『俺らってレベルこそバフのお陰で高いけど、修羅勢には遠く及ばないからね?』

 

「レベリングに有用なスキル持ちなのが悪い。ソシャゲならお前ら二人〝人権〟だろ」

 

 

 ラインハルトニキのスキル【信賞必罰(しんしょうひつばつ)】の効果は、自身の部下が活躍すれば活躍する程、取得経験値がブーストされるスキルとなっている

 

 逆に失敗すれば取得経験値が下がるデメリットが存在するが、余程馬鹿な事をしない限り滅多に引っ掛る事は無いので、所謂〝出し得〟と呼ばれる部類のスキルとなっている。

 

 その相方、ヤンニキが持つスキル【陣頭指揮】は、指揮に従う全ての人間にバフが掛かるという、とてもシンプルなスキルだ。

 

 だがその効果は絶大で、他のバフとは別枠で掛かるという事もあり、使える状況なら無理矢理使用条件を整えてでも絶対に使うべき、ガイア連合内でも希少なぶっ壊れスキルとなっている。

 

 両者ともスキルのお陰でレベルを上げられた──と良く口にしているが、当然そんな事は無い。

 

 というか、スキルがどんなに良くても部下が居なければ効果を発揮しないのだから、修羅勢と呼ばれるレベルまで着いてきてくれる人間が居る奴が使えない理由(ワケ)が無い。

 

 俺らのせいで麻痺してる奴も多いが、レベル十、二十、三十の壁はそう易々超えられる物では無いのだから。

 

*1
どちらも田中芳樹作 銀河英雄伝に登場する主役級の見た目を持つ黒札。元ネタ通りの才能を持つが、中身は一般俺達。実は岩手でも山梨でも無く、新潟のロボ部だったりする。(押し付け)

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