【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
『アイツら何て厄介な物を!こんなのほぼミサイルじゃねぇか!』
『八つ当たるなら悪魔にしろ!──来るぞッ!!』
複数窓してる仮想モニターから俺等の阿鼻叫喚が聞こえてくる。未だ〝愛宕〟までは届いていないが、前列の艦は全力で迎撃態勢に移行、突撃してくる悪魔相手に一進一退の攻防を繰り広げていた。
「【アナライズ】してないから詳細は分からんが『突撃ダツ』とでも呼ぶべきかね」
「イヤらしい手よね。【突撃】【貫通】【自爆】の攻撃力極振り個体でしょ?アレ」
「たぶんな」
セリスと二人で眺めてる間にも次々と〝ダツ〟が前衛艦に突撃して爆発を繰り返す。【マハジオ】程度で殺せる儚い存在の割に火力が可笑しいそれは、確実に前衛艦にダメージを与えていた。
『くっそ!船の回復が間に合わん!』
『
『すまん!頼んだ!』
主にサルベージ船を改修した新潟艦が下がり、代わりに前衛へ〝
『────見えたッ!あのクジラが母艦だッ!』
『よっしゃ任せろッ!仮想砲身展開開始!』
後方に下がっていた新潟艦からモニターを白く染め上げる程のMAGが溢れ出る。それはすぐに搭載していた砲身の先へ魔法陣を描き始め、クジラへと砲身を伸ばすかの様に配置されていく。
『術研との共同開発した新術式を喰らえ!』
新潟艦〝三笠〟から放たれた砲弾は、魔法陣を潜り抜ける度に加速していき──敵大型悪魔に見事着弾。一撃で轟沈まで持っていった。
『よっしゃぁぁぁ!やっぱ時代は
『実弾と相性良いからなぁ』
『お前ら喋ってないで働け!砲身焼けてるからさっさと交換するぞ!』
『『『了解!』』』
慌ただしくなった〝三笠〟と入れ替わる様に戦艦組が動き始める。あれは──今回四隻参加してる〝金剛〟か。
「私は会ったこと無いんだけど、金剛ってゲーム通りの喋り方なの?」
「誰の嫁かによるかな。ルー語*1喋る奴も居れば普通の奴も居るし、明治浪漫も居るぞ」
「明治浪漫?」
「金剛の進水日が明治時代なんだよ。それの〝縁〟に引っ張られて古風な奴も居るんだ」
金剛の進水日は1912年5月18日。大正時代は1912年7月30日からなので、ギリギリ明治生まれのお婆ちゃんになる。
本人に言ったらたぶん泣くが。キャラ的にもギャン泣きしても可笑しくない。
「バリエーション豊富ねぇ」
「春風衣装の金剛は中々可愛いぞ?違和感も凄いが」
俺の中で金剛はルー語を喋る存在なので、大和撫子を体現されると頭がバグる。まぁ、うちのムラサキとアイが対等な関係なので、他の俺らの頭をバグらせているが。
そんな緩い会話をしている間に金剛四隻が攻撃開始。金剛
『私たちの出番ネ!Follow me!皆さん、ついて来て下さいネー!』
『Burning Looove!』
『行きましょう。撃ち方……始めっ!』
『もしかしてキャラ薄いの私だけ……?』
常識人ポジの金剛の背中には哀愁が漂う。とはいえ〝
「金剛三隻分の戦果を一人で叩き出してるわね」
セリスが呟いた通り、常識人金剛の強さはレベルが違っていた。
「他の金剛が二十から三十、一人だけ四十ぐらいか。星祭で見掛けないし、山梨組か?」
「新潟支部の気もするのよね。あそこって激戦区だし」
「あー……報告書読んでるけど、あそこは運命の収束地みたいな感じになってるよな」
「それを毎度撃退する支部長も流石よね」
「山梨異界潜らないで修羅勢クラスは素直に称賛するわ」
スライムだけ狩り続けても高位霊能者になれない世界でショタオジ監修の山梨異界を使わず、高位霊能者になれる奴は運命愛され勢だと断言出来る。
新潟の田舎ニキもそれは変わらず、何で生きてるの?という死線を潜り抜けている事は疑いようが無いんだが……
「何であんな金欠なんだろうな?高位霊能者なら金に困らんだろうに」
「不思議よね。貴方は別格にするとしても、他の修羅勢がそこまで金欠になった所を見たこと無いのだけど」
「実際、二体目の高級式神を作れる程度には稼げるからな」
「たぶん金札中心で支部を運営していて、田舎ニキが政治から距離を取ってるからだと思うわよ?── 一回下がるわ。総員、対ショック態勢!」
二人で首を捻っていると、愛宕ネキが指示を出しながら口を挟んで来た。ついでに〝愛宕〟が物理学を無視した動きでドリフトを決め、異界から距離を取る。……甲板の方から落水音が聞こえたな。
『人魚ネキ。適当な奴に回収の指示出しよろしく』
『近場に居たのですでに拾ってますよ。甲板に投げ返せば良いですか?』
『それで頼む』
そう返答したのと──ほぼ同時。
『うわああああ!?』
ドンッ!という軽い振動と共に何かが甲板に落ちてきた。出来る女は仕事が早いなぁ。
「落ち着いたみたいだから聞くけど、さっきの言葉はどういう意味なの?」
「そのまんまの意味よ?」
そこで一旦言葉を区切り、愛宕ネキが艦内に問題が起きてないか確認の指示を飛ばす。入れ替わりで〝高雄〟が前線へ出撃。〝扶桑〟は完全に空母になっていて、帰艦するロボ部への補給を行っているな。
「黒札の支部長ならちひろネキの所で各種手当ての申請が出来るのよ。条件は中々厳しいけれど新潟支部なら普通に通る筈だし、あのレベルの霊能者が金欠って事は自腹で支部を運営してるんじゃ無いかしら?」
「あー……金札じゃ存在自体知らないし、田舎ニキは申請出してないのか。そら金欠になるわな」
ちひろネキや他の幹部達と頑張って設定したんだが……使う側が理解してない以上、どんな仕組みも無用の長物か。
逆に言えば、どれだけヒーヒー言おうとも個人の財力で支えられるならそれが良いんだけどな。仕組みを使えば、山梨支部の意向に逆らいづらくなる。こればかりは銀行に逆らえない企業と同じだ。
「他にも知らない支部長はいっぱい居そうね」
「ただ知らなくても問題無い支部も多いんだよな。新潟も田舎ニキはヒーヒー言ってるけど、全体で見ればしっかり利益を出してるし」
「呉には勝てないけどね?」
「あそこは別格過ぎる。物理学でオカルトが吹き飛ぶんだが?」
前世より科学が進んでいる事は間違いない。終末対応の自販機は便利過ぎるし、バルキリーが出てきた時には心底驚いた。
「行き過ぎた科学は魔法と変わらないって言葉の意味が良くわかる技術力よね。終末後に対するアプローチの仕方は私達とは正反対だけど」
「岩手支部はオカルトによる繁栄って感じよね。セッツァーの教えられる知識的には当然の流れって気もするけど」
「いや、人類の守護者をどれくらいやるかの覚悟の差だと思うぞ?」
「ん?どういう事?」
首を傾げる愛宕ネキに対して少しだけ熟考。嫁達が煩くなりそうだが……丁度良いタイミングでもあるか。
「俺は禊を看取ったら周辺の整理して死ぬつもりだ。もちろん悪魔の元に行くつもりは無いし、英霊になるつもりも無い」
反射的に口を開こうとしたセリスの唇に人差し指を当て、言葉を封じる。式神としては納得出来ないだろうが、これに限って言えば受け入れて貰うしか無い問題だ。
ショタオジも
俺達はガイア連合なのだから、人類の救済手段はC寄りだろう。つまり、力を与えて好き勝手生きろとぶん投げる。
それ以降は知らん。自力救済が仏教よ。
「俺らが何時までも人類の守護者で居られる訳でも無いからな。だから今の内に〝種〟を撒いて、人類が自らの力だけで生き残れる様に手を打たないと不味いんだわ」
「それは分かるけど……」
「それにこのままだと
「終末後は政治、警察、軍、農家、漁師、商人、裁判官、科学者全て兼任する羽目になるものね」
同じく危機感を共有している愛宕ネキが嫌そうに呟いたのに合わせ、軽く頷く。
「だから育てられる内に育てるんだよ。今回のこれもその一環だしな」
「あぁ……だからこんな中途半端な段階で引くのね?」
セリスが納得した様子でポンッと手を叩いたのと同時。
『時間だ!総員、撤収!殿は修羅勢に任せろ!』
『『『了解!』』』
大船団が列を成して下がっていく。それと入れ替わる様に海中から良く見る顔が飛び出し、追撃を行おうとする悪魔達へ奇襲を仕掛けた。
「ここは俺に任せて先にいけッ!」
「なーに、すぐに後を追うさ!(事実)」
「いや、草」
「レベル三十前後だしなぁ」
「人魚ネキに歌わせるのは駄目なん?」
「ゲストのデモニカが十届くまでは駄目」
「ピンポイントは苦手なんですよね……」
雑談しながら悪魔を薙ぎ払うその力に船上組から感嘆の声が上がる。普段は見れない超越者の動きは、見世物としても良いらしい。
「そういえば、太平洋のど真ん中から何処へ帰還するの?」
「南鳥島だ。あそこはすでに国に話を通してガイア連合の太平洋支部化してるからな。補給も出来るし、島自体広がってるから驚くと思うぞ」
「へぇ……それは楽しみね」
「私も興味はあったんだけど、行くのは初めてなのよね」
「アメリカ方面行かないなら用事が出来る場所じゃ無いしな」
俺は〝地相〟を弄りに何度か行ったが、あそこ程、目を疑うような場所は無いと思う。ある意味ではメシア教のお陰なんだが。
「ま、存分に驚いてくれ。初見ならまず間違いなく驚くから」
「ええ。そうするわ」
セリスのその言葉に合わせて船が加速する。オカルト船らしく既存の艦艇では決して出すことの凄まじい速度でありながら、物理的な影響を最小限まで抑えられる辺り、オカルトはやっぱり無法だな。
◇