【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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暁の水平線に勝利を刻み込め!5

 

 

 南鳥島。

 

 東京都小笠原村小笠原諸島の所属するこの島は、本州から1,800km離れた日本国の最東端とされている場所だ。

 

 日本列島の東側に南北に走る日本海溝を隔てた唯一の島であり、現在は一般住民はいないが、防衛省、国土交通省の職員が常駐している──と、されていた。

 

 

「アメリカに近く、また日本に属する事で、日本の地脈に干渉出来る土地として過激派に占領されてたんだよ。この場所はな」

 

 

 一般人は立ち入り禁止で、観光目的で訪問することは不可能。つまり、僅かな日本国民(イエローモンキー)をどうにか出来れば、どれだけ派手に仕出かそうと問題無い土地。それが南鳥島という島だった。

 

 始めてきた時は天使()臭くてキツかったな。防衛庁からの依頼で攻め滅ぼしたが、忍び込むのも面倒だったし、二度とやりたくない。

 

 

「それが今では()()になったのはどうして?」

 

「狩人ニキがアメリカの救済に全力を出したせいで、終末後に稼働予定の〝ターミナル〟の為に霊脈の維持が必須になってな?ここを落とされると東回りに輸送するのがキツイって事もあって、木っ端な神に褒美(人参)ぶら下げて任せてるんだ」

 

「だから鉄の壁の中に街があって()()()()()の坩堝になってるのね」

 

「そういうこった」

 

 

 セリスと二人でガイアらしい街を歩く。左を見れば北欧の街並みが広がり、右を見ればギリシャっぽい彫刻の神殿が置かれている。

 

 他にもメジャー神話からマイナー神話まで幅広く混ざり合っており、正に〝カオス〟と言って良い様相を呈している。

 

 もちろん、そこに居る人種も様々だ。メシア教が世界規模で宗教弾圧をしたせいで大国から小国まで様々な国から難民として流れてきた者達が住んでおり、いずれ元の土地を取り戻そうと宗教の枠を超えて〝高位霊能者(ブラッドスポーツ)〟に勤しんでいる。

 

 日本としては難民を国内に入れなくてハッピー。

 

 多神連合としては黒札には劣るが、そこそこの霊能者がいずれ信徒となる人間に成りうる〝種まき〟をしてくれてハッピー。

 

 ガイア連合としては霊脈維持を安値でやってくれてハッピーの一石三鳥の案だ。

 

 ちなみに難民の男女に人権があるかと言うと……そこは察してくれ。人食いこそ許されていないが、死ななきゃ何をしても許される程度には、ここは〝カオス〟の色に染まっている。

 

 そんな島を管理しているのは、日本のポセイドンと名高い綿津見(ワタツミ)だ。大山祇神(オオヤマツミ)と〝種売り〟を取り仕切る為の宇迦之御魂神(ウカノミタマ)の両神も居る。

 

 この三神は基本的に中立で、その報酬として式神ボディと黒札による信徒への種付け優先権が与えられている。

 

 その代わりこの様な僻地で好き勝手言いまくる多神連合の馬鹿()共の相手をしている訳だ。ここまで報酬を積んで漸く引き受けてくれたのだから、多神連合の面倒臭さは伝わったと思う。コイツら纏めて〝滅ッ(めっ)!〟ってしてぇわ。

 

 

「何と言うか日本神も大変ね」

 

「日本神は日本神で、ガイア連合の弱体化を望んでるけどな。ショタオジが死んだ時に反旗を翻す奴等も居るんじゃないか?」

 

「つまり、所詮は悪魔だと」

 

「そういうこった。──っと、着いたな」

 

 

 本州に残っていた明治時代の建築をそのまま移設した旅館に二人で入り、美女だが何処か生気の欠ける式神とやり取りを交わして予め借りていた部屋に入る。

 

 東方三人組は新潟艦を始めとする実体持ちの補給の手伝いに駆り出されており、愛宕ネキたち艦長は綿津見達へ挨拶しに島で一番大きな神社へ向かった。

 

 俺の様な一般黒札は明日の作戦まで自由行動となっているので、ひと足お先に宿へ来たわけだ。

 

 備え付けのお茶をセリスが煎れて運ぶまでの間に、霊符から次々と私物を取り出して行く。今回の作戦期間は何もなければ三日、最長でも一週間の予定だ。

 

 単純に異界を閉じるだけなら修羅勢がバンザイ突撃を決めるだけで終わるが、終末後を見据えたレベリングも兼ねている。

 

 ゲスト達のデモニカの成長は、ガイア連合の設立理由である()()()()()()為に必須だからな。それを理解している運営陣としては、ここで余裕を稼ぎたいのだろう。

 

 ちなみに氷船の乗員達に配られるMAGは一律だったりする。仕組みを簡単に説明するなら【房中術】の応用で、イメージとしては大型のデモニカに皆で乗り込んでいると思えば良い。

 

 もっと細かく説明するなら、一度氷船に撃破した悪魔のMAGを貯蔵して【房中術】で分配してる訳だ。

 

 ちなみに【房中術】はミナミィネキが組んだ。精密さに関して言えば、ショタオジを凌駕しているので……ハッキリ言えば〝女王艦隊〟の術式で一番完成度が高い。本当に何者なんだろうな、あの人。

 

 

「ナナシはこの後の予定は決まっているの?」

 

「防衛省の方に顔出してデモニカの成長確認と弾薬の手配だな」

 

「そう。それならまだ着替えない方が良いわね」

 

「やる事無いだろうし、自由行動でも良いぞ?」

 

「今の貴方を護衛しないで何時護衛するのよ」

 

「いや、レベル五十は大抵の奴より上だからな?」

 

 

 修羅勢の中に居ると分かりづらいが、レベル三十でもガイア連合の中では上澄みとなる。中華の英雄が六十前後って話もあるし、五十は低い数字では無い。

 

 ついでに言えば、俺は術式を失った訳でも無いので、二十ぐらい上の悪魔程度なら()()()範囲内だ。領域は使えないが。

 

 

「そもそもの話、私達式神は黒札の護衛なのよ?置いていく方が可笑しいのよ」

 

「本音は?」

 

「他の式神達みたくずっと側に居たいわ」

 

「さよけ」

 

 

 愛されてるなぁ、俺。

 

 

「ま、そういう事なら一緒に行くか。暇でも文句言うなよ?」

 

 

 そう言った俺に対し、セリスはポーチからスマホを取り出して見せ付ける。

 

 

「科学は守らなきゃ駄目よね。これさえあれば何時間でも潰せるし」

 

「俺も黒札だから否定できねぇわ」

 

 

 最近のスマホって凄いよな。リメイク一杯出てるし。

 

 

 

 

 鋼鉄で閉ざされていた門が開き、自衛隊員の敬礼を受けながらセリスを連れて奥へと進む。俺の敬礼は帝国陸軍式なのだが、大戦中あれだけ仲の悪かった両軍は自衛隊となった際にそれなりに歩み寄れたらしく、特に気にする様な視線は無かった。

 

 要塞と化した南鳥島の港全域は全て自衛隊の所有地となっており、ここには多神連合は一切入る事は出来ない。

 

 その為の結界も張ってあるし、告知もした。それを無視して侵入しようとした神達がどうなったかは……まぁ、言うまでもないわな。

 

 

「エリート市民が煩くなりそうな光景ね。9x19mmパラベラム弾(9パラ)以上の弾薬も普通に量産してるじゃない」

 

「迎撃用のオカルト混じりの対空ミサイルも作ってるし、デモニカも作ってるぞ。国内じゃ作れない武器(アンノウン)の生産拠点だからな。ここは」

 

「日本国憲法という物は知ってるかしら?守ると便利よ、あれ」

 

「知ってるぞ。全部把握してると金策の際に抜け道が分かりやすくて便利だよな」

 

「ここに居る以上、自分達も同じ穴の狢ですけど……凄い会話してますね」

 

 

 話に紛れ込んだ警察官と自衛隊員(ゲスト)に敬礼されたので、二人揃って敬礼を返す。キッチリ返されるとは思ってなかったのか、鳩が豆鉄砲を撃たれた様な表情になったのが印象的だった。

 

 取り敢えず自己紹介を行い、そのまま案内された先で端末を弄る。見せて貰うのは──デモニカの成長データだ。

 

 

「結構伸びたな。ただ、目覚めたスキルが黒札(俺ら)の影響を諸に受けてるのが問題と言えば問題か」

 

「【房中術】の影響も強いわね。ドレイン系は強いけど、銃をメインに使う自衛隊向きでは無いわ」

 

継続戦闘(けいせん)能力が高まったのは嬉しい誤算ですが、出来れば射撃系スキルが欲しかったですね」

 

「所謂半終末に突入するので前からガイア連合におんぶにだっこですし、我が儘なのは理解してるんですが……」

 

「俺らの代わりに矢面に立ってくれるんだ。幹部勢はその為の経費だと割り切ってるし、グダグダ言う奴は口だけだから気にすんな」

 

 

 レベル十で折れた黒札は自衛隊へのデモニカの普及に伴い、自分を越え始めたゲスト達に嫉妬してるからな。レベル二十の奴等はそこまで上げる苦労を知ってるので、余程の馬鹿以外はむしろゲスト達の努力を称賛している。

 

 異世界物で定番のステータスは、努力や才能が諸に出る。それ故に()()()()()()()()()()()()の奴等の発言力は、日に日に落ちていってるのが現状だ。

 

 古参なら嫁遠征で二十ぐらいにはなってると思うが、後期合流組で低レベルの奴等はフォローしようが無いんだよな。

 

 霊才がある身でありながら、努力する事を怠ってる訳だし。

 

 

「んー……明日は射撃とデバフだけに絞って見るか。今回の面子的にデモニカの成長方向を誘導しても余裕だろうし」

 

「海中の悪魔が厄介よね。あれさえ無ければ、人魚ネキ達を氷船のスキル(スキルカード)として使えるでしょう?」

 

「爆雷ばら蒔いても効果薄かったからなぁ」

 

 

 むしろ海中組から海が荒れて迷惑だったとの()()()()表明された。修羅勢が暴れてるから余り関係無いと思っていたが、修羅勢(脳筋)の分際で周囲に配慮していたらしい。まぁ、戦闘中に仲間の視界を塞ぐ馬鹿は修羅になれんか。

 

 

「弾薬や兵站は予想より消耗が少ないな。何でだか分かるか?」

 

 

 戦闘データを眺めてる最中に涌いた疑問をゲストに尋ねると、二人は顔を見合わせて意志疎通した後に口を開いた。

 

 

「自分は〝愛宕〟に乗船して作戦に参加しましたが、MAGの消費量より回復速度の方が上回っていたので、魔法持ちには魔法使用を指示しました」

 

「自分も同じ指示を部下に出しましたね。国民の血税を無駄打ちせずに済むならそれに越したことは無いですから」

 

「間違いなく貴方のスキルの影響ね」

 

「だろうな」

 

 

 そらデモニカにドレイン系のスキルが発現する訳だ。

 

 

 

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