【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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暁の水平線に勝利を刻み込め!6

 

 

 異界攻略二日目。

 

 

『結局、これが一番早いと思います』

 

 

『『『それな!』』』

 

『『『爆雷は嫌だって言ったじゃないですかッッッ!!』』』

 

 

 ラインハルトニキのおふざけに即座に反応するのは、流石黒札と言うべきか。駆逐艦や軽巡洋艦からバラ撒かれた【麻痺爆雷】が海中に居る黒札ごと海域を焼く。

 

 それでも死者が出ないのだから、海中組の練度が恐ろしい。

 

 

「良いんですか、あれ」

 

「自衛隊だけで海域を守るにゃ爆雷は必須だからな。海中組には苦労させるが、巧い使い方を探らなきゃ駄目なんだよ」

 

 

 乗艦した船の船長である高雄ネキにそう返しつつ、爆雷の成果をモニター越しに眺める。……上手く行ったな。

 

 

『ゲストに通達。海面に浮いてくる悪魔へ掃射開始。弾薬はケチるなよ』

 

『『『了解』』』

 

 

 デモニカ部隊が自衛隊に正式採用されている日本版UZIと名高いM9*1を構え、引き金を引く。ちなみにガイア連合が9パラを愛用しているのは、初期の頃は重火器の所持を許されていなかったからだ。

 

 ガイア弾の威力を考えると、別に大口径じゃなくても良いしな。大切なのはオカルトの方の火力だし。

 

 

「昨日とは随分戦い方を変えましたね?」

 

「ゲストや黒札のデモニカが獲得出来たスキルがちょっと一般向けじゃなくてな。俺みたいな近接オッケーな修羅勢ならともかく、近距離は嫌って奴も多いし、今日は射撃系と状態異常狙いで異界攻略だ」

 

「一応、超大型異界なんですけどねぇ」

 

「山梨から五十人以上来てるからなぁ。あの程度ならそこらへんの異界と変わらねぇわ」

 

 

 俺達は強く成りすぎたんや……!なろうなら暗殺からの復讐スタート待った無しの状況だ。ショタオジを暗殺出来るかという問題は見ないことにする。グラ爺みたいな常駐戦場タイプも無理だな。

 

 何てことだ。物語が盛大に始まらねぇ。

 

 

『Hey setu!これからの予定を教えて』

 

『質問の意味が分かりませんね。総司令官も貴方でしょう』

 

『声真似巧くて草』

 

『ハルトニキ*2は馬鹿だなぁ。セツニキの使い方が違うぜ』

 

『ほう?では、見本を見せて貰おうか』

 

『うむ。ここは任せて貰おうか』

 

 

 モニター先で不適な笑みを浮かべるハルトニキに対し、自信満々といった様子の俺ら。正直、滑ると思うが……それ以上に一言言わせてくれ。

 

 

「スゲー無茶振りされてるんだが?」

 

「セツニキさんって優しいですよね。突然の無茶振りに対してその返答ですし」

 

「滑っても俺は美味しいからなぁ。地獄湯のセッツァーさんは許されないが、俺は長男だから許されるし、耐えられた。次男だったら駄目だった」

 

「長男すげぇ」

 

 

 話に割り込んだ艦橋に居る俺らとゲラゲラ笑っていると、漸く準備が整ったのか、俺らが口を開いた。

 

 

『Hey setu!これからの予定を教えて!!!』

 

『勢いで押しきろうとした馬鹿を異界に投げ込んで探索させるつもりだ』

 

 

『『『おーけーBOSS!』』』

 

『ちょ、ま──ぎゃぁぁぁ!』

 

 

 瞬時に修羅勢に囲まれ、遠くに見える異界へ向けて肩パルト(射出)される俺ら。それを見送った後、表情を真面目な物に戻してモニターと向かい合った。

 

 

『これで異界の情報抜けるだろ。面倒だったら三日目に艦砲射撃で潰す。楽そうだったら陸戦隊派遣な』

 

『つまり、今日一日パワーレベリングか』

 

『予定外の事が起これば話は変わるが……占術はどうなってる?』

 

問題無し(オールグリーン)

 

『だそうだ』

 

『了解。陸奥達に砲撃させながらバフをばら蒔く仕事に戻るとしよう』

 

 

 通信が切れ、仮想モニターが閉じられる。わざわざSFチックなエフェクトを入れたせいで、実は性能が一段階下がってるんだよな、これ。

 

 慢心も油断もしてるが、それでも何とかなるぐらい暇な戦場だ。深層のミミックが可笑しすぎただけなんだが。

 

 それから暫く一進一退の攻防を繰り広げ、危なくなった奴等のフォローの為に修羅勢を何度か動かしただけで終わった。

 

 余りにも暇過ぎてマーメイド達に魚を取らせる余裕すらある戦場は、深層に染まりそうな修羅勢を人間に戻すのには丁度良い。

 

 最近のコイツらは少し危険な兆候が出ていたしな。

 

 

「あ、セツニキさん。暇ならちょっと質問良いですか?」

 

「構わないぞ」

 

 

 珈琲を飲みながら優雅に読書タイムを満喫していると、高雄ネキが細かく艦を動かしながら尋ねてきた。

 

 最低限のマナーとして本に栞を挟み、高雄ネキと向き合う。ついでに喉を潤す為に珈琲を一口。

 

 

「私達は霊能の根幹によって覚えるスキルの傾向が決まりますが、ゲスト達に渡してるデモニカは違いますよね?高級式神とも違いますし、何か秘密があるんですか?」

 

「デモニカのブラックボックスはショタオジが組んだから俺も詳しくないんだが、一応こうだろうなって仮説はあるぞ?」

 

「聞いても大丈夫です?」

 

「裏取りはしてないし、しないつもりだから信じすぎるなよ?」

 

「了解です」

 

 

 軽く艦橋を軽く見回すと、こちらに聞き耳を立てている奴が何人か居た。〝高雄〟の装甲を抜ける様な悪魔は居ないし、暇なんだろう。

 

 まぁ、聞かれても困る話じゃないし、このまま話すか。

 

 

「デモニカが経験値(MAG)を蓄積するまでの仕組みは式神や悪魔と同じだと思うんだが、そこから先の処理の仕方がたぶん違うんだよ。分かりやすく言えば、手に入れた経験値(MAG)を機械を通して〝最適化〟してるんだ。だから手に入れた経験値(MAG)によって覚えるスキルが変わるんだと勝手に思ってる」

 

「私達や悪魔も努力すれば適正外のスキルを覚えられますが、その〝努力〟に補正が掛かってるという認識で合ってます?」

 

「どちらかというと得手不得手が無い、が正しい。例えば俺なら火炎属性のスキルが絶望的なんだが、デモニカなら関係無いのは確認済みだしな」

 

 

 代償のせいで深層に潜れず、かと言って適正レベルの下層や修羅道は狩り飽きた。そんな俺のここ最近の暇潰しは、デモニカを使った実験だった。

 

 【アギ】をセットしたデモニカを纏い、上層で暴れまわって(遊んで)ショタオジに怒られたりもした。それでもめげずに頑張ったお陰で【アギラオ】を修得、デモニカの性質を把握した形となる。

 

 デモニカを脱いだら一切使えなくなったのには笑った。あくまでも【アギラオ】を覚えたのはデモニカであって、俺では無かったらしい。

 

 

(……どう考えても()()()()()()()()()()()()()()()()状態なんだよなぁ。本当に大丈夫なのかね、コレ)

 

 

 ショタオジが黒札にも配布した以上、最低以上の安全は確保されてるんだろうが……式神移植よりも〝厄い〟匂いがプンプンするぜ。

 

 

「セツニキさん?」

 

「おっと、悪い。考え事してた。それで?わざわざそんな事を尋ねた理由があるんだろ?」

 

「……やっぱり分かります?」

 

「高雄ネキは素直過ぎて読みやすいからなぁ」

 

 

 愛宕ネキもそうだが、喜怒哀楽がハッキリしていると言うか。無意識のサインを把握出来るぐらい長い付き合いだと言うのも、読みやすい理由の一つか。

 

 

「皆さんにそう言われた事は一度も無いですよ?」

 

「そりゃそうだろ。愛宕ネキや扶桑ネキもそうだが、仕事中は〝女の顔〟じゃなくて〝大人の顔〟だし」

 

 

 氷の微笑や鉄仮面とまでは言わないが、人によっては仮面を被っていると気付けるぐらいには感情が()()()んだよな。

 

 

「セツニキー?それが本当なら俺達岩手支部の面子が悲しい事になるんだけどー?」

 

「アタシはセツニキの言いたいことが分かるかも。休日とか一緒に遊びに行く時は普通に感情が表に出てるし」

 

「私もだらけてゆるゆるな姿見たことあるなぁ」

 

「男から見ると、高雄ネキ達は高嶺の花の印象しかないわ」

 

「だよな。例外はセツニキと一緒に居る時ぐらい」

 

 

 男女で反応が割れてる辺り、最低限の警戒心は持っていたらしい。中々ガードが硬い事で。

 

 

「いや、皆さん?私達は大人なんですから切り替えぐらい普通にするでしょう」

 

「俺はまだ子供ですぅ!」

 

 

『『『嘘だッッッ!!』』』

 

 

 終末前後で二十歳になれそうだが、残念ながら成人式は出来ないだろうな。俺も袴履いて単車でダイナミックエントリーしたかったんだが。

 

 

「取り敢えず逸れた話を戻すとして、何か問題でもあったのか?」

 

「いえ、逆にメリット?になるんですかね?私達幹部の艤装に【エナジードレイン】が生えたんですよ」

 

「あー……成る程」

 

 

 愛宕ネキ達の武器型高級式神(艤装)は何度も改良を繰り返し、初期の頃とはほぼ別物と断言出来るぐらい科学とオカルトの申し子の様な物になっている。

 

 今回の異界討伐に合わせ、新潟艦との通信の為にデモニカ技術を組み込んだのだが、どうやらそれが良い方に転がったらしい。正に棚からぼたもちとでも言うべきかね。

 

 

「艤装は武器型式神ですから入れようと思えば入れられますが、魔剣の様な属性が無いのに突然生えたので……」

 

「怖くなって相談したかったと」

 

 

 コクリと頷く高雄ネキ。見た目が絶世の美女なだけあって、そのシンプルな動きで周囲の男の視線を吸い寄せる。

 

 

「んー……問題無いと思うが、一応帰還したらチェックするか?」

 

「御願いします。愛宕達にも連絡しておきますので」

 

「あいよ」

 

 

 俺だと科学方面が弱いから野生のブーストニキでも湧かねぇかな。残念ながらペルソナ関連の方にドナドナされて行ったので望み薄だが。

 

 というか、半終末に突入してから支部長や派出所の管理者クラスの人間は忙しすぎてなぁ。もはや秒読みと言って良い終末対策に追われてるので、気軽に遊びに誘えねえ。

 

 

 

 

*1
ガンマニアから酷評されている事でも有名。弾の入手のしやすさを考えると、自衛隊ならこんなもんだと思う。防衛費少し前まで削られまくってたし。

*2
ラインハルトニキの事。名前が打つの面倒だった。

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