【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
異界の中へ投げ込んだ俺らが持ち帰った情報を元に、ラインニキたち艦長組が明日の為の作戦会議を行っている裏で、俺はセリスを連れて自衛隊の整備室にお邪魔していた。
「本来なら減俸物だが、最近の自衛隊は融通が効いて助かるわ」
「高潔のまま生きるには悪魔が強過ぎますし、ガイア連合からの
「多神連合がもう少し弁えてくれるならこんな事しなくて済むんだけどなぁ」
「神様らしい神様が多いですからねぇ」
苦笑いを浮かべながら
自衛隊が重巡洋艦迎撃戦をやるとは欠片も思えないが。どちらかと言うと、ブーストニキが作成した電脳異界で遊ぶ為のデータになる気がするな。V.O.B使うミッションで巡洋艦撃墜する奴が原作にもあったし。
「やはり黒札の方々は素晴らしいですね。何度か共同任務があったので実力は把握していましたが、数値として出されると、その凄さが良く分かります」
「愛宕ネキは上澄みだからなぁ。下手な神の分霊より強いし、何よりガイア連合内でも珍しい人格者だ。そういう意味では、お前らは上司ガチャでSSRを引いたとも言えるな」
「やはり一般の黒札の方は違うんですか?」
「七割は善良な一般人、一割が悪人、残りが俺らみたいな
雑談しつつ艤装に備わっている〝魂の器〟を左目の魔眼で確認していく。
微弱な反応──をかなり超えた、ハッキリした意思の存在を感じるが、こちらのアプローチに対して反応しないのは流石と言うべきか少し悩む。
あくまでも自分は装備であり、愛宕ネキ達の剣であり、盾である事に誇りを持っているらしい。故に語らず、そこに在る。
武具系付喪神の性質は大抵こんなもんだが、コイツらは持ち主が死ぬと大抵闇落ちして妖刀とかになるんだよな。呪いの艤装だと……装備した人間を深海棲艦化するのかね?
「我々は接する機会が多いので把握していますが、上層部や他の場所ではガイア連合に旗降りを頼みたい者達が多いみたいですね」
「素人にやらせたところで巧く行くはずが無いのな──よし、整備完了」
「我々の認識ではセツニキさんはオカルト一辺倒だと思ってたんですがね。いやはや機械弄りの腕も見事なもんだ」
一緒に整備していた整備班の班長の言葉に周囲にいた隊員達が頷く。
「ガイア連合は黒札の互助組織だから技術交換は積極的に行ってるんだ。俺の場合、教える技術が多かったからその恩恵もデカかった感じだな」
ブーストニキやエドニキには世話になった。そのお陰でCOMPぐらいなら自分だけで組み上げられるし、弄れる程度には学んでいる。
まぁ、封魔管や霊符の方が使いやすいんで、スマホを異界で動かす為にしかプログラムは使ってないが。
「その技術を我々にも教えて欲しい──というのは高望みですかね」
「岩手駐屯所の奴や岩手県警の人間ならまだしも、他は厳しいとしか言えんわな。一応、無差別にばら蒔かれると銃より危険な技術だし」
今回の作戦に参加しているゲストは、実は岩手の自衛隊と警察だけだったりする。他の場所だと命令系統が変わるので、参加させるにはお互いの信頼度が足りなかった。
終末が近いのにそんな状態で大丈夫かと問いたいが、未だにオカルトを信じない人間も居る以上、俺達にはどうしようもないんだよな。精々一人で多く次代に繋げ、文明の為に頑張って貰うしか無い。
「自分もオカルト関係の事件を何度か担当しましたが、現場の酷さも犯人が取る手段も危険の一言では済ませられないレベルでしたね」
「過激派か?」
「いえ。
「ばら蒔いた悪魔召喚プログラムの適合者か」
「仕方ないとは頭では理解してるんですがね。被害者の遺体を見ると、もうちょっと何とかなったんじゃないかと考えてしまいます」
「爆発する前に
「大丈夫ですよ。まだ、耐えられます」
メシア教がばら蒔いた天使召喚プログラムに対抗してガイア連合がばら蒔いた悪魔召喚プログラムは、多くの人間を救うと同時に多くの人間を不幸にしていた。
世界情勢や終末後の事を考えると、それ以外の選択肢は殆ど無かったに等しいが……その答えが被害者を納得させられるかと言うと、まぁ、無理だろう。
遊び半分で【誘惑】され、結婚を誓い合った人間を自らの手で生け贄に捧げた奴も居るし、【
悪魔にすら通用する状態異常を非覚醒者に使うとどうなるのか。それはショタオジの厳しい修行が証明しているんだ。そんな凄惨な現場を見て尚、職務を全うしている岩手県警の者達には感謝の気持ちしか無い。
自然と会話が途切れ、整備作業の音が虚しく響く。
物語の様にコイツを倒せばハッピーエンド!なんて単純な結末は存在せず、むしろ魔王を倒した後の荒廃した世界から俺らの物語は始まる。そこで必死に生き抜くのが本編な訳だ。
現在はその為の前日譚、原作前の時間軸。
現状の打開を望む者と、未来を見据えて備える者の意見が異なるのは当然だ。悪魔と言う名の
それに反論するのは簡単、力で黙らせるのも簡単。だが彼らはその手段を選ばず、黙って罵声に耐えるつもりだ。──否、今も表に出せない事件に対して口を噤み、黙って耐えている。
「……儘ならないな、本当に──っと。悪い、席をはずす」
「分かりました。後片付けはお任せください」
一言断って席を立ち、整備場の外へ出る。建物と建物の狭い通路に向かい、壁に背中を預けながらスマホを見ると、そこには愛宕ネキの名が。
『もしもし、セツニキ?』
『おう、俺だ。どうした?何か問題でも起きたか?』
『起きたと言えば起きたわね。ちょっと強行偵察で持ち帰った情報が悩ましくて、少し相談したいのよ』
『了解。何処に向かえば良い?』
『陸奥にお願い。待ってるわね』
『あいよ』
通話を切り、スマホを仕舞う。明日で終わらせるつもりだったんだが……こりゃ無理かねぇ。
◇
「…………マジかー」
差し出された調査報告書を軽く流し読んだ第一声。思わず頭を抱え込みそうになりながらも何とか堪え、溜め息を吐き出す。
「いや、そうだよな。多種多様な神のMAGに、アメリカから
「だよなー」
オフモードのハルトニキが相槌を打ち、その隣でヤンニキが帽子を脱いで天を仰ぐ。愛宕ネキ達艦長組も嫌そうな表情を隠しもしない。
「取り敢えずヤンニキはイナバニキを抑えて
「分かった。……それで足りるか?」
「それ以上、長引くようなら撤退だろう。もしくはショタオジに焼いて貰うしかねぇよ」
「まさかこんな〝ギミック〟になってるとはなー」
投げ込んだ俺らが看破した異界のギミックは、悪魔が弱いからこそ許されるレベルで糞だった。
「主も雑魚も変わらず一としてカウント。一匹倒すごとに異界から一滴分の水が減り、零になったら討伐完了。総量は不明、異界内は深海なので突入は非推奨。ここまで糞な異界は深層ですら滅多に無いぞ」
「滅多にって事は時々あるんだ……」
「深層だからな」
似たようなギミックで〝千人切り〟や〝一騎当千〟は確認されている。前者は無限湧きかと思うぐらいに大量発生する悪魔を薙ぎ倒し、千匹狩ると次の部屋へ進む権利を得られるスイッチ式。
後者は
どちらも出現する悪魔のレベルは深層クラスの雑魚より少しだけ弱い程度で余り大差無く、普通に分霊も降りてくるので死闘になりやすいギミックなのだが……不思議と俺らからの評価は低くない。
理由は二つ。一つ目はレアドロがやけに出る。それこそ市場破壊出来そうなぐらいボロボロ出る。
二つ目は単純に戦えば良いからだ。ギミックの性質上、わざわざ神話再現する必要も無く、出てきた悪魔を切り捨てるだけで条件を満たせる。
降りてくる分霊も闘神や武神が多いので、頭を空っぽにして戦いを楽しめばクリア出来る。もちろん、命懸けだが。
「異界の主ですら一カウントって事は一回討伐したのか?」
「おう。試しに潰したぞぅ。レベル七十程度だったから瞬殺したけど、即座に蘇ったから大人しく撤退したわ」
「なんだった?」
「ダゴン。もちろん複数の神話混じりだぞ☆」
「分かってたが糞過ぎる」
〝ダゴン〟は笑えるぐらい複数の神話に名を残す神であり、元々は古代パレスチナでペリシテ人が信奉し、ガザとアシュドッドに大きな神殿があったと聖書に記載された大地の豊穣と関係の深い神だ。伝承によってはバアルの父とされている神でもある。
ヒエロニムス*1がウガリット語の〝Dgn*2〟をヘブライ語の〝
多くの例に漏れず、旧約聖書はイスラエル人と敵対するペリシテ人が崇拝する神を悪神とする事が多く、ダゴンもその流れで悪神とされているが、コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』においては地獄のパンの製造と管理を司るパン管理長の座に就いているとされ、詳しく知っている人間にはとっては原点回帰、浅い知識しか知らない人間にとっては下半身が魚の海神がパンを焼くという意味不明な文となる事でも一部では有名だ。
そんな〝ダゴン〟が現在進行形で地脈の真上に居る〝クトゥルー〟の影響を受けていない筈が無く……
「ゲストや五十以下の黒札はたぶんSAN値チェック入るぞい☆」
糞だろ、この世界。