【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
赤。朱。紅。そんな美しい色では無い。
深紅?いやいや、この〝赤〟には深みなんて存在しない。
世界を真っ赤に染めたのは、ただの〝赤〟だ。
大海原には決して存在してはいけない〝赤〟だ。鮮やかな熱帯魚が持つ美しい〝赤〟では断じてない。
ルビーの様な輝きも、血の赤黒さすら無い────ただの〝赤〟だ。
「ぶっつけ本番だったが、行けるもんだな」
「そうじゃのう」
他の俺らが絶句している世界で。その
まるで縁側に座ってお茶を飲んでる様な気楽さで。引き起こした事態を嘲笑う様に笑みすら浮かべて。
「名付けるなら【原初の赤】かね」
「【創世の赤】でも間違っておらんじゃろ」
「うーん……いっそ厨二病に走るか?」
「ふむ。悩ましい所じゃな。効果としては【概念吸収】の
「まぁ、そうだな」
効果としては至って単純、効果範囲内にある〝赤〟を全て吸収しただけだ。正確に言えば、
早い話が世界を構築する色の三原色から〝赤〟を奪ったのだ。だから──術式の範囲内に横たわるネフィリム達の骸には〝青〟と〝黄〟と〝緑〟しか存在しない。
「…………いやいやいやいや!?即興で何て術式作ってんの!?」
再起動した双子ニキ(兄)が慌てて叫ぶ。術式の知識がある故に、俺達が何をやったのか正しく理解したのだろう。
「実は即興じゃないぞ?これは磐長の術式だからな」
「じゃのう。歴代当主の一人が考えた
「ちょっと待って。え?こんな術式あった?」
「お前も知ってる筈だぞ?俺らが良く使う【増幅】の術式を悪用した物なんだから」
術式の威力を上げる為の補助術式。それがこの術式の正体だ。
やった事は簡単。シエラ婆が全能力を解放してネフィリムからMAGを吸収。それを俺が【増幅】してシエラ婆にMAGを戻し、再び吸収。また【増幅】する。
それを何百も繰り返して必要値までMAGを集め、最後にレベルドレインの一段上の〝概念〟を吸収する──の上を行く、〝理〟を吸収する為の術式を発動した。その結果が目の前の光景だ。
「待って。何でシエラ婆生きてんの?それと【増殖】はあくまでも周囲のMAGを集めるだけで、こんな現象を引き起こせる規模は集まらない筈だよ」
「双子ニキ。俺は売られた喧嘩は高値で買う主義なんだ」
「それは知ってる」
「なら、分かるじゃろ?ワシも、グラ爺も、セツニキも。可愛い弟子達に
「えーっと……えっ!?ちょっと待って。そんな事出来るの!?」
「Wenn du in den Abgrund schaust, schaut der Abgrund auch in dich hinein.」*1
「立場逆じゃん!!」
「俺と〝縁〟を持った方が悪い」
シエラ婆が負う筈の負担をちょっかい掛けてきた〝
段階ごとに術式を起動するのが面倒だったが、ドレイン系の術者なら理論上は不可能では無いのだ。
霊力の操作難易度は指数関数的に跳ね上がるけどな!世界を救うのは大変だが、滅ぼすだけなら簡単なのだ。別に俺らは悪魔と違ってMAGが無くても生きていけるからな。
『まさかその言葉を言う側になるとは……ラスボスはセツニキだった……?』
「探究ネキは共犯な?結界で区切ってくれてるお陰で俺でも何とかなったレベルなんだ。これが全世界対象だったら〝大災害〟引き起こして終わったぞ」
『終末自体は呼べるんです?』
「メシア教如きが出来て、俺らに出来ない訳が無いだろ」
何時だって壊すのは簡単なのだ。作ることはその数十倍難しいし、維持するのは数百倍難しいが。
「…………セツニキィィィ!!殺す気か我ぇ!!」
「ヤバさ感じて即座に海に逃げて正解だった……!僅かでも食らったら終わってた!!」
「ネフィリムよりギミックより総大将が一番怖ぇよ!!」
「馬鹿だなぁ。あんな糞みたいな予兆を舐めて逃げない奴は死んだ方が幸せだろう?つまり──俺は悪くない」
『『『一辺死ねやッ!!』』』
海上まで逃げていた俺らから放たれる馬鹿みたいなスキル。それら全てを〝赤〟で防ぎ、そのままMAGを奪う。
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁァァァ!!!」
「くっそッ!!術者に時間与えるとクソゲーしか始まんねぇ!!」
「大人しく殴られろやッッ!!」
「断る。弱い方が悪い。──それより構えろ。
戦場から〝赤〟を退かすと、そこには二五体のネフィリム達が無傷で立っていた。どいつもこいつも星や運命の力を感じる〝金色〟を纏って共食いしてやがる。
始まりはアメリカを落としたメシア。大規模異界を汚したのはクトゥルー。それに対処する為にガイア連合が動く羽目となり、面白半分で首を突っ込んだのが〝運命〟や〝星の意思〟なのだろう。
「〝赤〟でも削れんか」
「儀式系の術式ってのは厄介でな?伝承や神話の流れを組み込むと、途端に〝強制力〟が発生するんだよ。代わりに終了条件はハッキリしてるし、してない奴は破っても問題無い事も多いから対処は楽だけどな」
分かりやすいのは〝こっくりさん〟か。儀式の途中で切り上げると不幸が降り注ぐが、儀式の終了条件はキッチリ決まっている。
大体のホラーだと『お帰りください』に対して『いいえ』とコインを動かすが、覚醒者パワーで無理矢理送還すれば問題無いしな。
素人がやるのはオススメしないが、所詮は
四文字に【メギドラオン】を撃ってこいとか命令すると自分から社に帰ってくれるぞ!こっくりさん自体が簡易契約書も兼ねてるからこそ出来る裏技なので、無知な奴がやると自分のMAGを吸われ過ぎて死ぬけどな。
「つまり、ギミックが次の段階に進んだ訳か?」
「そうだな。──
ネフィリムの血肉が残った時点で〝再利用〟の可能性は考えていた。コツコツ抜いていた【解析】で得た情報を合わせれば、次のギミックの仕組みを読み解く事は容易い。もちろん干渉するよな。干渉しない理由が無い。
「…………〝赤〟の原材料となった二五体のネフィリムが不足したのか」
「そう。そして
視線をグラ爺達の海上戦に向ければ、儀式を発動する為の魔法陣に引き込まれるシェムハザ達の姿が。
『ふざけるな……!ふざけるなふざけるなふざけるな!!こんな終わりなんて認めないッ!認めてなる物か!!』
仮想モニターの先でシェムハザが引き寄せられながらも全身で苛立ちを表し、無駄な抵抗を試みる。それに対して無情の言葉を告げたのはグラ爺だ。
『お主らも、儂らも。所詮は遊戯の駒じゃった。唯一の違いは────指し手の悪辣さかのう』
◇
「言われてんぞセツニキ」
「正直グラ爺がそれ言うなら、俺は毎度理不尽な駒に苦しめられていると言いたい」
「毎回死闘だもね。セツニキとグラ爺の決闘」
「冥王と武神のハイブリットは反則だろう。今回抑えてるが、全力出すとパッシブで【即死のオーラ】纏うチート持ちだぞ」
お陰で相殺しながら戦う苦労を毎回してるぜ。糞が!
◇
「指し手だと!?俺は俺の意思で動いているッ!!俺の上に指し手なんて居ないッッ!!」
「なら、お主がうちの総大将に負けたんじゃな」
この世の未練を断ち切ってやると言わんばかりに切り捨てたグラ爺が一対の剣槍を構える。だが相対するシェムハザにそんな余裕なんて存在せず、顔を憎しみで歪めてグラ爺を睨む程度の事しか出来ない。
────そんな緊迫した空気をぶち破ったのはシンジニキだった。
『目標をセンターに入れてスイッチッ!──なんてしないでシュートッ!!』
『ポストッ!』『『『郵便で~す!』』』
初号機が豪快なオーバーヘッドキックを決め、ラミエルを魔法陣に叩き込んだのだ。
それに続くように蛮ニキ達も糞みたいな小技を連打する。
『下段小キックに【
『【ザン】を拳に宿して小パンチッ!!』
『頭脳派の俺はここでシャーマン魔法レベル2の【プッシュ】を発動するぜ!』
『『ロードス島戦記だと……!?』』
ふざけていても、その効果は確かな物だった。
『こんな結末を齎した貴様らは許さんぞガイア連合ゥゥゥ!!再び現世に舞い戻り、必ず貴様らを殺して──』
アラキバが魔法陣に吸い込まれ、術式起動の為のMAGに還る。他の天使長達はすでに吸い込まれている。残るはグラ爺が相手をしているシェムハザだけ。
『……せめてもの情けじゃ。貴様は儂がMAGに変えてやろう。あの様な終わり方は嫌じゃろ?』
『くそっ……!くそがぁぁぁぁぁ────』
叫ぶシェムハザの首をグラ爺が刎ねる。大気に還る筈のMAGは魔法陣に吸われ、糧となる。
これで術式が起動──はしないよな、やっぱり。
「魔法陣近くに居る奴は距離を取れよ?足りない二十五匹分のMAGを掻き集め始めるぞ」
注意を促した直後に魔法陣が再び吸引を再開。俺らが距離を取り始めたのと同時に、俺の方も動く。
「そんなに欲しけりゃ返してやるよ。──ちょっと過剰気味だけどなぁッッ!!」
「悪人顔が似合うのう、お主」
〝赤〟をそのまま魔法陣に叩き込み、過剰配給による破壊を狙う。目的は──半分だけ達成と言った所か。