【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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終末へのカウントダウン2

 

 

 長い生の中で、ただ(ひた)向きに剣を振るった人間のみが辿り着く、一種の頂きが垣間見える太刀筋。容赦なく首を狙い、心臓を狙い、手足を切り落とさんとする変幻自在の刃。

 

 目の前で(つるぎ)を振るう初老の老人には、どうやら()()()()ってもんは無いらしい。

 

 やれやれ。老体を虐めやがるぜ。

 

 

「────そこです」

 

「残念。外れだ」

 

 

 意図的に作った隙を()()ごと切り捨てられ、さらに追撃の一撃が飛んでくる。フェイントもダミーも、まるで引っ掛かりはしない。見抜いている──というよりは気にしていない感じか。

 

 噂に聞いたグラ爺の亜種という評価は間違っていないらしく、現在は同格という事もあり、万能型の俺では埋められない格差を感じる。

 

 

「見事な物です。私の太刀筋が見えているのですか?」

 

「いや?実戦経験()だぞ」

 

「それでここまで防ぎますか……!」

 

 

 感嘆の声を上げているところ悪いが、こっちにそんな余裕は一切無い。何とか剣型に構成している【レベルドレイン】で防いでいるが……徐々に掠り傷も増えてきたし、そろそろ良いのを貰いそうな気がする──

 

 

「──っぶねぇ!?殺す気か!」

 

「あっさり避けておいて何を……!」

 

 

 大きく剣を弾き、距離を取る。あのままインファイトで戦っていたら遠からず死んでいたのは間違い無い。

 

 ハッキリ言ってレベルの低いグラ爺だろう。修羅勢(観客)達もその事に気付いてる様で、さっさと死んで代われ的な圧が凄い。

 

 とはいえ俺は未だ先達として何も見せていない。だから──ここからは()()としてお相手しよう。

 

 

「これでも近接戦闘には自信があったんだけどな。最近は他の修羅勢との勝率も悪いし、老兵は黙って去るべきかねぇ」

 

「思ってもいない事を口に出すのは辞めた方が良いですよ?貴方の目には諦めが見えません」

 

「さよけ」

 

 

 こちらへ踏み込むその一瞬を先取りし、霊符をぶん投げる。

 

 

「────ッ!」

 

 

 それを星杖ニキが切り捨てた瞬間、辺り一帯を閃光が覆った。

 

 

「……警戒はしていたのですが」

 

『甘いぜ若造。レイテや硫黄島は一瞬の油断が死に繋がったぞ』

 

 

 そこらへんのビルに張り付けた式神から音声だけを届けつつ、山梨産アイテムであり、ガチャの外れ品の中では一番の()()()アイテムをばら蒔く。

 

 

──正式名称・対悪魔逃走様煙玉。

 

 

 一般黒札には『トラフーリ玉』と呼ばれるこの煙玉は修羅勢御用達の最強アイテムとして名高く、その効果は単純にして明快。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 デビルシフターや嫁式神を除き、悪魔は基本的にMAGで構築された体で動いている。その前提条件は高位分霊でも逃れる事は出来ず、ゲーム後半に出現する悪魔ですら【トラフーリ】で逃げ切れてしまう。

 

 それは現実となったこの世界でも変わらず、【トラフーリ】持ちの逃走率は異界の主を除いてほぼ100%だ。

 

 その結果に山梨の製造班や古参修羅、さらには図書館探検隊やショタオジですら疑問に思った。何故【トラフーリ】を使えば()()()()()()()と。

 

 そこから研究がスタートし、十数年もの歳月を経て、半終末に入った辺りで漸く俺達は答えを得た。

 

 一度知ってしまえば、誰もがそうだよね。と言うだろう。

 

 そんな単純な事に気付かなかったのは、悪魔に人型が多かったのも大きい。覚醒者として視認出来るが故の勘違い。それを調べるまで気が付かなかったのだ。

 

 結論から先に言おう。デビルシフターや嫁式神を除いて、アイツら悪魔は()()()()()()()()()

 

 目に見える部位も、耳に見える部位も、全てが嘘であり、この世界を〝第六感〟でしか見ていないのだ。

 

 だからこそ第六感による感知妨害(トラフーリ)を使われると獲物を見失う。そりゃそうだよな。人間に例えるなら、肉体の五感を奪われる様なもんなんだから。

 

 

「取り敢えず──召喚(コール)

 

 

 磐長式の悪魔召喚術で『ギリメカラ』を簡易召喚。音に気付いた星杖ニキが煙幕ごと切り捨てようと剣を振るい──常人には分からない程の僅かな停滞の後、そのまま切り捨てた。

 

 

「剣が触れた直後に【貫通】を入れたか。これだから物理型(天才)は」

 

 

 万能型なら多少のダメージを負った後に【貫通】を付与出来る。魔型なら最初に気付けなければ反射出来た。その僅かな差が才能であり、星杖ニキはその才能に溢れてるらしい。

 

 

「…………トラップ撒いて陣地作りかねぇ」

 

 

 正面から殺り合うのは愚の骨頂。勝つだけならドレインを駆使して持久戦を挑めば良い。

 

 だがそれは敗北と同義だ。相手が悪魔ならまだしも、手合わせならお互いの〝経験〟にならなければやる意味が無い。

 

 そんな事を考えていると、全身に悪寒が走った。判断は一瞬、もはや五体投地に等しい程に体勢を低くすると、壁に使っていたビルが真っ二つに()()()()

 

 

「この煙玉はすでに一度ブーストニキに使われてましてね?悔しかったので必死に対策を考えましたよ」

 

 

 即座に左目の【透視の魔眼】を起動する。……未だ俺の居場所には気付いていない。だが炙り出す手段は持っている、か。

 

 

『グラ爺もそうだが、星杖ニキも容赦ねぇな。これが実戦だったらどうするつもりだ?』

 

「セツニキクラスの悪魔が相手なら、街一つ潰して倒せれば御の字でしょう」

 

『否定出来ねぇ』

 

 

 霊符から特殊な〝柄〟を取り出す。今は柄しか無いこの剣の名は──風刃。ブーストニキとノリで作った深層産の〝玩具〟の一つだ。

 

 

「おや?そろそろ再開で宜しいので?」

 

『余り情けない姿を見せると、観客席から乱入者が出るからな』

 

「それはそれで楽しそうですね」

 

『地面の味を味わった後にでも──楽しめば良いさッ!!』

 

 

 十本の風の帯をそのまま()()させる。四方八方から飛ばした斬擊は即座に迎撃された。だがその僅かな時間が欲しかった。

 

 

────【新宮藺沢浮島植物群落(しんぐういのそうきしましょくぶつぐんらく)蛇の穴(じゃのがま)

 

 

「これは……!?」

 

 

 星杖ニキが驚いている間にも先程まで市街地だった鍛練場はその姿を変え、足元に広がる沼地が巨大なビルをズブズブと飲み込んでいる。

 

 

『瞬時にビルの上に飛び上がる判断力の高さは流石だな』

 

「領域……という存在は風の噂で知っていますが、貴方の領域はこの様な見た目では無かった筈です。一体どういうカラクリですか?」

 

『敵に説明するかよ──と言いたいところだが、すでにグラ爺に使った事のある術式だし、仲間に隠す様なもんでも無い。少しだけ講義してやるよ』

 

 

 って言っても、そこまで難しい話じゃないんだが。

 

 

『領域と呼ばれる技能は結局のところ【異界作成】と大差無いんだ。勘と経験で無意識の内に維持する為の情報処理するのが領域。地道な努力と精密な術式。そして神魔と同等レベルの霊力操作で行えば【異界作成】になる。だから()()()()()を再現する事も理論上不可能では無いし、文字通り戦闘特化の領域なんて物も望むがままに作る事が出来る訳だ』

 

 

 探究ネキはやろうとしてないだけで出来ると思う。早い話が『壺中天地』の中では無く、外に異界を作れば良いだけだし。

 

 欠点はもちろん安定性に欠ける事だ。一週間ぐらいなら特に何もせず展開した時の余力で維持できるが、作物を育てられる程の長期間を維持する事は出来ない。

 

 というか頭が爆発すると思う。【マルチタスク】で計算しながら環境構築なんて長々とやってられるか!

 

 

「……成る程。確かにこの領域は貴方の為の戦闘領域の様だ。近接を得意とする私に不利な要素が多く、唯一残された足場も心許ない。ですが──」

 

 

 当たり前の様にビルから降りて、星杖ニキが沼地の上に()()、刀を構える。

 

 

「これでも、下層にはそれなりの頻度で行っていたのですよ」

 

『まぁ、修羅勢なら所持していて当然の技能だしな』

 

 

 水の中で戦えませんでは許されないし、毒沼や溶岩の上を足場に出来ないと、そもそも足場が無い場所すら多くある。

 

 【リフトマ*1】を使う奴は見掛けないのに、何故か()()()は多いんだよなぁ。

 

 ま、今はどうでも良い話だ。

 

 

『さて。長々と語ったが準備は良いか?』

 

「ええ。お陰様で」

 

『それじゃ────』

 

 

 『「殺り会おうか(ましょう)!!」』

*1
地形ダメージを抑える魔法。たぶん修羅勢は常時【オートリフトマ】状態になってる。じゃないと死ぬし……

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