【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
沼から泥が伸び、尖端を凝固させて星杖ニキを襲わせる。その合間合間に泥を触媒に斬撃を伝播させるが、成果はご覧の通り。
「────フッ!……この程度では私を殺せませんよ?」
『…………みたいだな』
会話してる間にも襲わせているが、全てを一瞥も無く薙ぎ払われている。反応速度も斬撃の鋭さも想像以上。掠り傷を増やす事は出来ても、致命傷には届かない。
現状の動きを見ると、俺の現在地に気付けていないと見て間違い無い。が、いずれ気付かれるだろうな。
何と言うか雰囲気がグラ爺や秋雨ニキそっくりだ。こと戦闘に関しては〝勘〟で正解を引き当ててきそうというか。
『んー……仕方ない。こちらから手を進めるわ』
────
沼地から泥の人形が次々と生えていく。一人から二人。二人から四人。一分も掛らず沼地一帯を覆い隠したそれは、右手に凝固した泥の剣を構え、星杖ニキに対峙する。
「……分身にしてはお粗末な姿ですね?」
『それがお望みなら変えてやるよ。──ほら』
────
泥人形の形が変わり、色が付いていく。気が付けば〝俺〟となった人形が勢揃いする。
『今にも動き出しそうな芸術品だろう?』
「……もちろん動くんでしょう?」
『当然』
増殖した〝俺〟が仲間を犠牲にしながら攻め立てる。一人の剣を受ければ〝俺〟ごと剣を振るい、切り捨てられれば足を掴んで妨害に回る。
四方八方からゾンビの様に襲い掛かる〝俺〟に対し、星杖ニキが取った手段は──多くの物理型が取るであろう選択だった。
「────【雲耀の太刀】」
たった一太刀。世界ごと切り裂く勢いで振るわれた銀閃が纏めて〝俺〟を切り捨てる。
万能属性全体攻撃か。射程としては他の修羅勢と比べれば常識の範囲内。視界一掃は出来ても、外周に生やした泥人形までは届いていない。
今まではそれで良かったのだろう。だが深層に行くには──いや、これは聞くべきか。
『星杖ニキに一つ尋ねたい。何処を目指している?』
「無論、剣の頂ですよ」
『その言葉に嘘は無いな?』
「この剣に誓って」
となると──先達としてやるべきは模擬戦じゃなく教導か。死合は最後だけで良い。
『了解。それじゃ星杖ニキには──
先程切り捨てられた〝俺〟が再び生える。そこへさらに術式を追加発動。
────
散ったMAGを回収し、即座に術式に回す省エネ術式。その最高難易度である深層産のギミックを追加する。
『人間の心理ってのは面白いもんでな?修羅勢と呼ばれるレベルになると、多くの人間は勘違いするんだよ』
「勘違いッ!ですかッ!?」
無限に湧く〝俺〟に対処しながらも、問いを投げ返せる辺りは流石としか言いようが無い。
同じ事を星祭の何人が出来るやら。山梨を含めても少数だろう。──その〝強さ〟が命取りなんだけどな。
『そう。勘違いだ。ショタオジと修羅勢が全力を出せば、メシア教に勝てるという特大のな』
「【雲耀の太刀】!それは当然でしょうッ!現に貴方はこれ程の力を見せているッ!」
出来る限り体力を温存しつつ最小限の動きで〝俺〟を切り払い、風刃を躱わし、泥の槍を紙一重で避け続ける。
対処が間に合わなくなった時に全体攻撃で一掃、仕切り直すタイミングは素晴らしい。
ついでに言えば、動きから無駄が省かれ、どんどんと磨がれている気さえする。──とはいえそれだけだ。
『星杖ニキが今、陥っている現状が対メシア教でショタオジが想定している状況であり、深層の日常だよ』
「………!」
無限に湧く
深層ギミックの一つである〝無限回廊〟は、この様な状況を平気で作り出す。
今回は〝核〟として俺が居るが、メシア教が放つ天使の群れや深層ギミックにそんな物は存在しない。無限湧きする悪魔を凪ぎ払いながら、メシア教なら天使を含む世界中の幹部達を根刮ぎ刈り取るまで。ギミックなら斥候型が解除するまでひたすら耐久戦となる。
大陸の英雄達は毎日襲い来るレベル三十の天使の群れの前に倒れた。俺ら修羅勢も〝無限回廊〟には何度も煮え湯を飲まされている。今回はそれの再現という訳だ。
幼女ネキに
星杖ニキにそんな仲間は居ない。否、本質が〝求道者〟である以上、
そうなる前に鼻っ柱を殴っておこうという訳だ。
「これは……!厳しいですね……!」
未だに動きは衰えず。襲い来る〝俺〟を泥に変える速度も変わらず。されど体は確実に疲れに蝕まれ、このまま行けば間違いなく飲み込まれるだろう。
同格のグラ爺や秋雨ニキなら強引に〝俺の群れ〟を越え、本体を殺せる。だが星杖ニキにはそれが出来ない。
才能という点では、グラ爺達と同格なのは間違いない。ただ、致命的なまでに霊格と経験が足りていない。
単純に不足しているのだ。高位術者との戦闘経験が。
────
「────!」
風刃に対処し、泥の槍に対処し、襲い来る〝俺〟を切り捨てた後の僅かな
剣を振り抜く直前に気付いたのは流石だな。残念ながら疲労の貯まった身体では止める事が出来なかったみたいだが。
拍手一回で術式を砕いてお片付け。再び市街地となった鍛練場をゆっくり歩き、星杖ニキの元へ向かう。
「授業はここまでだ。残った力を振り絞って全力で来いよ──若造。地面の味を覚えたくなかったらな」
「……この試合を始める直前、グラ爺殿に〝助言〟を貰ったんですけどね。その言葉の意味が良く分かりましたよ」
ボロボロになりながらも立ち上がり、刀を上段で構える姿は手負いの獅子──いや、〝龍〟と呼ぶべき程に雄々しく、放たれる殺気は研ぎ澄まされた一本の刃の様に鋭い。
「確かにこれは──〝糞爺〟と呼ぶべきですね。私の柄ではありませんが」
「くくっ。若い奴等が情けないのが悪い。俺程度は越えられて当然なんだ。悔しかったら勝って見せろ」
「ええ。そうさせて貰います」
大きく息を吸い、深く吐き出す。たったそれだけの動作で息が整い、練り上げられた霊力が全身に行き渡る。……これだから天才は嫌いなんだ。
「行くぞ」
「いつでも」
剣を上段に構える星杖ニキに対し、左肩を向け、剣を寝かせて構える。
居合い抜き──では無く、〝脇構え〟と呼ばれる歴とした構えの一つだ。
僅かな隙を逃さぬ様に息すら止めて隙を伺う。ここまで来たら後は実力勝負。負けるつもりは無い。故に全力を尽くす。
────勝負は一瞬だった。
「磐長流・秘伝剣術其の壱──【無明】!」
「妙法蓮華経──【神技一閃】!」
血霞が舞い、大地を汚す。交差した銀閃は勝者と敗者を明確に分けた。
片方は上下を斜めに裂かれて地に伏せ、もう片方は血糊を払って納刀する。
この死合の勝者は────