【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「見事に負けたわ」
『『『あの流れで負けたのマジ笑う!』』』
模擬戦も終わり、そのままの流れで何時もの宴会へ。俺の回りには星杖ニキと殺り合ってテンションの上がった俺らと、同じく楽しんだ星杖ニキが酒を飲んでいた。
「正直、私の敗北ですよ。セツニキさんは手を抜いていたみたいですしね」
「出せる中の全力は出したんだけどな。時期が悪かったし、あの選択を選んだのは俺だ。素直に負けを認めるさ」
安酒を喉に流し込み、追加で緑茶ハイを作る。ガイア連合産の酒は美味しいが、少なくとも宴会で飲む様な大衆の味では無い。お徳用の焼酎をコンビニの薄い緑茶で割るぐらいが丁度良い。どうせ酔ったら味なんて気にしないしな。
「聞いて良いなら答えて欲しいのですが、どうして手を抜いたのです?」
「その刀、歴史的な名刀だろ?普段の俺らなら酸の雨やら降らせたりして容赦無く武器破壊を狙うんだが、終末に近いこの時期に狙う訳にも行かなくてな。初手〝魔天降臨〟も考えたが、それだとお互いに得るもんが無い。必然的にあんな形にしか
「あー確かに終末に向けて製造班も忙しいし、俺らと違って武器破壊は洒落にならんわな~」
俺らにとって武器とは壊れるまで大切に使う
その
「……成る程。だからグラ爺殿はあの様な申し出をした訳ですか」
「儂は戦いの場に余計な感情を持ち込みたく無いのでな。手前勝手なお願いになってしもうたのは謝ろう」
「いえいえ。貴重な経験でした」
イケ爺二人が盃を交わす姿を軽く横目で見ながら山盛りにされた焼き鳥を適当に引っこ抜く。……砂肝か。
ちなみに星杖ニキには連れの黒札が一人居るが、残念ながらレベル三十に届いておらず、本日は別行動となった。
星祭は連合の機密がたくさんあるという事もあるが、それより俺らが雑に振り撒いている霊圧が危険過ぎるのだ。なので涙を飲んで別行動にして貰っている。
「しっかし何時見ても物量戦はヤバイね。言いたかないけど、あれが出来るメシア教の凄さが良くわかるというかさ」
「それな。本来なら戦力の逐次投入は悪手だけど、無限に湧くなら最強の一手だわ。糞過ぎるとしか言えん」
「ワシらドレイン型なら理論上、無限に狩れるが、先に集中力が切れるしのう」
モグモグネギマを食べながらそう言ったのはシエラ婆だ。
「量が多過ぎて素通りさせちゃう天使も多くなるだろうしねぇ。防衛戦でやられたら堪ったもんじゃ無いわ」
「秋雨ニキたち大陸行った奴等の報告を読む限り、睡眠はおろかトイレすら行けないみたいだからなぁ」
「無双出来るのはゲームだけ!現実じゃ無理!」
『『『それな!!』』』
対処法が
「そういえばセツニキさんは何処に隠れてたんです?これでも【気配察知】には自信があったのですが、全く見付からなくて驚きましたよ」
「実はあの泥
本家ならトリオン器官という名の〝弱点〟もあったが、メガテン世界ではもちろん存在していない。
あの状況の俺を倒すなら、泥人形の相手をしながら泥──というかMAGを全て切り捨てる必要がある。
欠点は操作を誤ると肉体や精神が泥に溶けて死ぬ事。人間の肉体は魂の檻であると同時に、魂を守る盾でもあるのだ。そこらへんを軽視すると、現地デビルシフターの末路を辿る事になる。
「儂も初見では見破れなかったのう。コヤツはあの手この手でこういう事をしてくるから忌々しくも楽しい毎日じゃよ」
「良いですな。私も何時かはその様な毎日を過ごしたいものです」
「星杖ニキなら何時でも大歓迎だよ!!俺らは常に新顔との戦いに飢えている……!」
「霊格は俺らが上でも、剣術じゃ足元にも及ばないからなぁ」
「というか俺は負けたけどね!!」
「それはお前が油断したのが悪い。レベル八十は三桁にワンチャンあるってショタオジも言ってたじゃんさー」
「いや、まさか盾ごと切られるとは思わないじゃんよ!!」
「セツニキとの最後の切り合いで何を見てたん?」
「結界の補強に全力を振り絞ってた」
『『『お疲れ様です!!』』』
俺のはともかく星杖ニキの一撃は結界を切り捨てるには十分だったしなぁ。そらそうなるわ。
「あ、そういえばセツニキ。【無明】って何?てか磐長流に秘伝なんてあったの?」
「儂も気になるの。皆に見せたのは初めての技じゃろ?アレ」
焼き鳥を食べながら聞いてきたグラ爺の目は笑っていない。今まで手加減をしてきたのか──という訳では無く、単純に見たことの無い技への探究心っぽい。
何時までも強くなる為の〝飢餓〟を失わないのは流石としか言いようが無いな。追い掛ける側からすると糞ゲーだが。
そんなグラ爺に続いて酒を飲みながら口を開いたのは星杖ニキだった。
「私も気になりますね。相対した私以外はあの技の
「いや、秘伝と銘打ってるが、実際は失伝しそうな剣術だから教えるのは構わないぞ?それに──俺のはパチモンだしな」
「パチモノ?あの完成度で?」
「本来、あの技は霊力や術式を使わないんだよ」
俺が万能型という事も理由の一つだが、剣だけで生きるには多才過ぎた。今更、術を捨てて剣だけで生きられるかと言うと……厳しいとしか言えん。
「ふむ。
「剣に生きた四十四代目も
グラ爺に答えつつ再び焼き鳥ガチャにチャレンジ。……お前は──
「ベーコンアスパラだと!?貴様は豚だろうがッ!」
「俺なんてウズラの卵串だぜ!」
「それはセー……いや、肉無いからアウトか?」
「広義の意味では焼き鳥だよね。生まれてないけど」
「笑う」
焼き鳥では決して無い串を齧り、先程までは緑茶ハイだった気がする、氷が溶けて薄くなった水の様な酒で流し込む。
場末の居酒屋の味だな。大人の味でもある。
「話を戻させて貰うが、どういう技なんじゃ?」
「んー……簡単に言えば
どういう技と聞かれたら、そうとしか返しようが無いのが秘伝だ。
「カテゴリは何なの?剛剣や柔剣では無さそうだけど」
「魅剣は派手だけど見栄え重視だし、速剣じゃね?」
「待って古参勢!俺らその話知らないんだけど!」
「あ〜俺らも増えたし、知らない奴も増えたか〜」
「星杖ニキも知らないだろうし、そこから説明した方が良さげだな」
「お願いします」
一族の歴史は古い。それこそ日ノ本と同等の長さがある。そんな長い歴史の中では当然の様に〝鬼才〟や〝天才〟と呼ばれる英雄クラスが何人か生まれている。
その内の一人が四十四代目当主だ。磐長一族の剣の祖と呼ばれた御方となる。
この人は当時としては珍しく、当主となった後は自らの磨き上げて来た剣術を体系化する事に生涯を捧げた。一族で継承していく事を大前提として流派を組み立てた訳だ。
誰にでも使えて、誰にでも分かる剣術。それは長い時を越えて俺に受け継がれている辺り、その凄さは理解して貰えると思う。
そんな磐長流剣術は、基本的に〝剛柔速魅〟の四つに分類される。
剛は剛剣、柔は柔剣、速は速剣、魅は魅剣の略だ。
この中のどれかが最強という訳では無い。剛剣なら当時の日本人と比べて比較的恵まれた体格を活かした技が多く、柔剣なら崩しから入る技が多い、と言った感じで、自分にあった剣を学べと言わんばかりに用意してあるだけだったりする。
一応、当主なら全ての技を学びこそするが……全部使うかと言うとな?魅剣なんて見栄え重視の演劇剣術だし。
「────ってのが磐長流の基礎知識だ」
「成る程。基本的に霊力等を使わない現実に即した流派なのですね」
「磐長姫が地味だからなぁ。必然的に技も質実剛健になったんだと思う」
「説得力がスゲェ」
魅剣のカテゴリはどう考えても時の権力者に取り入る為の技だし、あれだけはなんつーか毛色が違う。
「今の説明だと秘伝は各カテゴリの最上位という印象を受けるんですが……
「気付くか。やっぱり」
「あれは理論で説明出来る類では無かったですし」
「ま、星杖ニキが想像してる通り、磐長流剣術の秘伝は四十四代目が
「才能って残酷……!」
「いや、残酷どころじゃないぞ?磐長一族の歴史で一人しか生まれてないってやばすぎだろ」
「黒札クラスの才能持ちは何人も生まれてるんだけどな。それこそショタオジクラスも居たと思うし」
「その割にゃ話を全く聞かない当主多くない?」
「黎明期の頃は生きるだけで精一杯だし、それ以降も飢餓と天災と戦乱の日本だぞ?戦国時代ですら五十まで生きられたら長生きと言われていたぐらいだ。普通は才能が開花する前に土の下に潜るわな」
『『『あー……』』』
建国から現在までたった約二七〇〇年しか無い日本の歴史で、昭和の当主である俺が二百を越える数字を背負ってるのだ。
前世と違って妖怪やら悪魔やらに殺される事もあったろうし、こっちの磐長一族は良く歴史を繋げたもんだ。