【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
今回はキリスト教に対して色々言ってますが、鵜呑みにしてはいけません。
書き手次第でコロコロ内容が変わる話なので、気になるなら自分で調べて結論を出すのが良いと思います。
しくじった。今の俺の心境は、まさにそれだ。
人間向けの掲示板サービスは無料のまま、時代が進めば無料広告を付けるか、広告無しの有料版を提供する予定なのだが、悪魔版の方がヤバかった。
ただでさえぼったくり価格で提供しているから利用者は少ないだろうと思っていたのに、予想以上というか名だたる悪魔達が利用しているのだ。
考えてみれば当然なのだが、力の大小を除けば人の数以上*1居るのだ。いわば全人類が顧客になったような物。
そのせいで日夜サーバーの増設とメンテナンスに追われる毎日。とはいえ月額利用費のマッカが月始めに膨大な量が届くからか、当主様が管理用の式神を作ってくれているのでそれまでの辛抱だが。
「とはいえこのままだと正規サーバーが作れないぞ」
「お困りかな?私で良ければ助太刀しよう」
声が聞こえた瞬間、全力で距離を取る。
「おいおい。かなり矮小な分霊とはいえアンタクラスが出てくるのかよ──
俺の目に映ったのは、黒髪で片目を隠した隻眼の妖艶美女*2だった。
ベルフェゴール。裂け目の主や始まりの王と呼ばれる地獄の君主階級の大悪魔であり、七罪の〝怠惰〟を司る者。
人の『発明』を手助けしてはその利便性で堕落させる悪魔として知られ、男を魅了する妖艶な美女として現れるという。……お前、それ〝色欲〟の領分じゃねぇのかよ。あれか?食って抱いて繰り返す生活は怠惰とでも言うつもりか?
……こほん。感情が昂ってしまった。本来の姿は牛の尾と捻れた二本角、さらに顎髭を蓄えた醜悪な容姿と書かれていたが、目の前の女と類似する点が一つも無いのだが?
さっきから思考が飛ぶな。俺は冷静では無いらしい。
(それも当然だろう、と言いたいがな)
あらゆる宗教には勤めがあり、それをサボる事を『怠惰』という。キリスト教で言えば、善行を積まず、ダラダラ生きる事を指している。そして俺も含む神職が最もやらなければ駄目な勤めは──
大きく息を吸って吐き出す。思考をリセットして、現状をそのまま受け入れる。
妖艶な美女の姿の元ネタはわかる。
ベルフェゴールにはキリスト教が生まれる前にユダヤ人が住むイスラエルの近くの異教の神だった説があり、旧約聖書において預言者モーセがイスラエルに移住する前後を描いた『民数記』に登場する。
詳細は省くが、その関係で妖艶な美女として描かれる事が多い反面、『地獄の辞典』では──
「便器に座る醜悪な悪魔、の筈なんだがな」
「ふふっ。神主に聞いた通り博識だね?間違ってないよ」
俺の言葉に微笑みを浮かべて返事をするベルフェゴールの言葉に嘘は無い。という事は、まさかコイツが──
「君の作業を楽にする為に作られた〝式神〟に宿らせて貰ったんだ。だからほら──」
ぼふん!と白い煙を上げて、妖艶な美女が一反木綿に変わる。
『あくまでも先程の姿は【変化】しただけさ』
再びぼふん!と煙が姿を隠し、
「おや?このサプライズはお気に召さなかったかな?」
「正直に言うが、性欲より先に恐怖しか感じてねぇんだわ」
劣化分霊で契約の主は当主様。これ以上の安全保障は無いぐらいだが、それでも相手は大悪魔。知識がある故にうひょー!おっぱいぶるんぶるん!なんて喜べねぇ。
「それは残念。でも、悪魔である私がルキフグスに頼み込んでまでここに来たんだ。役に立つよ?私はね」
「その点に関しては疑ってない。曖昧な〝夢〟に発想を与え〝形〟に変えて堕落させる。お前の【発明補助】の権能は世界を変えられるからな」
ベルフェゴールは〝悪魔に魂を売ってでも〟の悪魔の一人。同時にそれを嘲笑う〝ベルフェゴールの探求〟という言葉を世界に解き放った悪魔でもある。
この言葉をざっくり説明すれば、魔界で起きた論争の正解を知りに行ったベルフェゴールが『幸せなど存在しない』と結論付けた時のエピソードが元になっている。
つまり、この悪魔は──
「人間嫌いな筈のお前が何故俺の元に来た?来る事に固執した?言っちゃなんだが俺より上の存在は幾らでも居るだろう?」
当主を筆頭に俺より上の存在は幾らでも居る。日本国内では霊能力こそ高い方だが、海外にはそれこそ〝英雄〟も居る。わざわざ俺の元に来る意味が分からない。
そんな俺の思考を読んだのか、苦笑いしながらベルフェゴールが口を開く。
「確かに私は人間が嫌いだ。それを否定はしない。でも、同時に私は悪魔でもある。だからこそ私の成り立ちに人の関与は避けては通れない」
「人間の〝概念〟の塊だもんな、お前ら」
「そう。そしてね?私は──
「何を──いや、そういう事か。だからこそ俺なのか」
俺がコイツの興味を引いた理由。それは多くの者にとって馬鹿らしく、しかし当事者になれば、誰もが変えたいと望むもの。
「この姿が気に入らないなら私は幾らでも君の望む姿になるよ?娼婦の様に君の上で腰を振っても良い。〝今〟が最後のチャンスなんだ。私は
あぁ、だからこそ当主はコイツを式神に宿し、俺に寄越したのか。そうだろうな、コイツは少なくとも俺が〝願い〟を叶えるまでは〝絶対〟に俺を裏切らない。裏切れる筈が無い。
「お前が俺に望むのは────
ベルフェゴールは、ある意味では可哀想な悪魔だ。
先程、話題に上げた『民数記』では〝バアル・ペオル〟という名前の豊穣神として『モアブ王国』で祀られていた。要約して語ると、モアブ王国の美しい娘に誘惑されたユダヤ人が異教の神を共に崇拝した事が四文字の怒りに触れ、崇拝した者を処刑する様にモーセに伝え、モーセは
つまり、ベルフェゴールは自らの信徒を
俺は石長比売関係以外はどうでも良いが、ここまで書かれた神話を変えたいと望むのを悪いとは言えない。──少なくとも、俺達〝磐長の一族〟は。
「悪いが、俺とも『契約』を結んで貰うぞ」
「!良いよ!幾らでも結ぶよ──」
「但し、契約書なんてもんは使わない。代わりにお互いの崇拝する者の名に誓って貰う」
「……
怒りと共に噴出する魔力。それは俺との差を明確に表し、まるで龍の怒りに触れた蟻の気分だな。
「ちょ、大丈夫──」
「悪いな、
慌てて飛んできたと思われるハオ様本体を抑え、視線をベルフェゴールに向ける。
「お前はその程度の〝覚悟〟で神話を変えたいなんてほざいたのか?舐めてんじゃねぇよカスが!俺達一族の覚悟を侮辱するのもいい加減にしろ!」
全霊符完全展開。億から先を数えていない数の霊符を全て吐き出し、陣を展開する。
「最後通告だ。名を賭けて誓うか、大人しく帰るか。好きにしろ。──但し、それ以外は俺が
お互いに語り終えた。この沈黙を破るのは、殺し合いか、和解か。どちらに転んでも良い様に隙だけは見せない。
────それからどれくらい経ったのか。
「……私の、いや
ポツリとベルフェゴールが白旗を上げた。
「石長比売の名の元に俺も誓おう。ベルフェゴールとの『契約』を守ると」
全ての霊符を非活性状態にして、霊力で火を付ける。
今までの努力が一瞬で灰になるのを眺めながら、これからの事に灰色の脳味噌をフル稼働させる。
まずは石長比売とベルフェゴールを美女キャラに改変だな。株主やってる権力がアニメ、漫画、ゲーム業界に圧力を掛けるぜ。
無料サービスの恐ろしさを思い知るが良い!