【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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終末へのカウントダウン6

 

「お久しぶりですね。本日はどの様な御用件です?」

 

「久しぶり。ちょっとKSJ研究所に繋いで貰いたくてな」

 

「んー……メシア教関連ですか。最近は人が良く()()()みたいですね」

 

 

 煩悩に染まっている筈の才女は即座にこちらの求めを看破し、スマホを操作してアポまで取ってくれた。

 

 

「相変わらずだな」

 

「【房中術】は相手を理解しないと効きが悪いですから。えっちな沼に沈める為にも鍛練を怠った事はありません!」

 

 

 グッ!と拳を握り締めるミナミィネキ。才能を無駄遣い──いや、逆か。才能をフルに発揮する為に努力しているが、方向性がすっ飛んでると言うべきだろう。

 

 VIP用の個室に案内され、サキュバスと軽く戯れながら待つこと数十分。お目当てのカズフサニキがやって来た。

 

 

「久しぶりだな。仮面ライダーレイプ」

 

「黒歴史を掘り起こすの止めません?」

 

 

 カズフサニキの〝裏〟の顔を知る人間が良くやる定番ネタを振り、良いリアクションが返ってきたので着席を促す。その後はサキュバスを追い出して軽い近況報告を交わし、本題に入る。

 

 

「国内のメシア教の動きが知りたいんだ。過激派、穏健派両方のな。報酬も常識の範囲内なら幾らでも出すぞ」

 

「太っ腹ですね。……情報を渡すのは構いません。報酬も御得意様価格で構いませんよ。ただ、どうして求めるか聞いても大丈夫です?」

 

「んー……」

 

 

 さて、どうするかな。

 

 

「正直言えば、知らないままの方が良いと思うぞ?」

 

「メシア教に対してKSJ研究所(ウチ)がやってる事を理解した上で知らない方が良いと?」

 

「ああ。今回の件は俺の想定通りなら胸糞案件で終わるからな」

 

 

 もっと早くから手を打っておけば、という後味の悪い結末になるだろう。最初の舞台が海外だった以上、後の祭としか言えないが。

 

 

「……そんなにヤバイんですか?」

 

「失踪事件の原因次第だな。野良悪魔やメシア教による牧場素材の回収だったらKSJ研究所や正義感の強い黒札に情報流して話は終わりだ。問題なのは()()()()()()場合なんだよ」

 

「何かしらの神話や伝説再現をしていると?」

 

「そうだ。俺の予想通りだった場合、日本は終わるぞ。アッサリな」

 

「…………!」

 

 

 そこまでの話だと思っていなかったのか、カズフサニキが唖然とした表情で冷や汗を流す。

 

 

「ここから先の話を聞いたら、たぶんお前は一生後悔する。だから情報だけ渡して満足してくれ。その後は忘れた方が身のためだ」

 

「……セツニキは後悔しないんですか?」

 

「後悔するさ。でも、誰かがやらなきゃ行けない汚れ仕事なら、それは長生きした年寄りの仕事だろ。若い奴等と違って墓も近いしな」

 

「そうですか。……分かりました。情報は渡します」

 

「さんきゅ。助かるぜ──」

 

ですがッ!……ですが、代わりにセツニキの想定している()()を教えて下さい。ここで聞いておかないと、俺は絶対に後悔すると思うんです。手伝うなんて我儘は言いません。ただ、知りたいんです。お願いします!」

 

「………………はぁ」

 

 

 瞳の奥に宿る〝意思()〟を見る限り、折れる事は無いだろう。……こういう連中だからこそ、知る必要は無いと思うんだけどな。

 

 

「聞いて後悔するなよ。──カズフサニキは()()()()()()()()()って知ってるか?」

 

「あの物語の?」

 

「そう。あの物語のだ」

 

 

 〝ハーメルンの笛吹き〟は間違いなく実際に起こった歴史的な事件であると同時に、無数の物語や仮説が存在するバリエーション豊富な()()としても有名なドイツ・ハーメルンに伝わる話だ。

 

 簡単には説明すると、物語はハーメルンの街に大量発生しているネズミの被害に頭を悩ませた街の住人が一つの決断をする所から始まる。

 

 彼らは悩みに悩んで、ネズミを全て駆除した人間に金貨百枚入った袋を一つやろうと大々的に募集を掛けたのだ。

 

 そこに現れたのが──物語の主役でもある色とりどりな奇抜な衣装を着た笛吹きの男。

 

 

 後に〝ハーメルンの笛吹き男〟と歴史に残る存在だ。

 

 

 彼は依頼を受けてすぐに笛の音でネズミを操り、ヴェーザー川*1に飛び込ませて溺死させた。

 

 そして見事、仕事を終えた〝笛吹き〟は報酬を貰う為に住人の元へ向かうのだが……住人は余りにもあっさり問題解決した彼に報酬を支払う事を渋る。

 

 

 その代償が──百三十人もの少年少女の失踪。

 

 

 渋られたその日の夜に笛の音で子供を操り、踊らせながら街の外へ連れ出したのだ。

 

 ここから先は様々な結末に分岐する。興味があるなら調べて見ると良い。暇な時間を潰せるぞ。

 

 

「……確かにあれには〝笛吹き〟を〝悪魔〟とした物語もありましたね。ですが、その程度なら良くある事では?」

 

「問題なのは数ある物語の一つでな。この話は黒死病(ペスト)の比喩なんじゃないか、って説があるんだ」

 

 

 わざわざ説明する必要があるか微妙な所だが、念のために説明すると、黒死病は中世ヨーロッパ時代に発生した伝染病だ。

 

 ユーラシアと北アフリカで猛威を振るった伝染病で、発生時期は1346から1353年。総死者数は7500万-2億人。

 

 この病が原因で、ヨーロッパは1500年まで1300年代の人口を回復できなかったと言えば、その恐ろしさがよく分かるだろう。

 

 余談になるが、感染経路はクリミアからの奴隷船に生息していたクマネズミに生息していたノミという定説は古い。前世で知った最新の研究結果によると、人間に生息しているノミやシラミから感染拡大したそうだ。

 

 

「奇抜な格好の男はペスト医師を表し、物語の子供は感染者を表す。〝ハーメルンの笛吹き〟はその隔離のシーンを物語にした……でしたか」

 

「住民を()()()()と呼ぶのは別に不思議な事じゃないだろう?」

 

 

 四文字なんて信徒全員我が子と言い切るし、組織の構成員を我が子と呼ぶボスなんて上げれば切りが無い程度には居る。

 

 そこらへんの細かい言い回しは、何が正解なのか未来人には確かめようが無いし、知る術も無い。その時代に生きていない俺らでは、あくまでも考察する程度の事しか出来ないのだ。

 

 

「……もしかしてセツニキが警戒してるのって──」

 

「すでに()()()()()()()()、罪も無い被害者を纏めて焼き払う(殺す)しか無いんだよ。終末前のこの時期に、無数の病人を抱える余裕なんて何処にも無いからな」

 

「………………!」

 

 

 俺の想定する()()を理解したカズフサニキが言葉を失った。何度も止めようと言葉にしようとするが、組織の運営者故にそれしか方法が無い事を聡明な頭脳で理解してしまう。

 

 過激派への復讐。穏健派の膿掃除。彼らのKSJ研究所は復讐者の組織だ。それ故に彼らは決して()()()()()に手を上げたりしない。彼らにとって被害者とは、救いの手を差し伸べる存在だから。

 

 今回の件は、場合によっては()()()()()を生きたまま処分しなければならない可能性がある。

 

 情で見逃せば、日本で感染拡大(パンデミック)が起こる可能性があるのだ。幾らガイア連合が大きくても、終末後の世界に要看護の人間を連れていける訳が無い。必然的に取れる選択肢は処理一択となる。

 

 

「知らないままの方が良かったろ?」

 

「……いえ。知れて良かったです。何も知らないままだったら、俺はセツニキに酷い言葉を投げたかも知れないですし」

 

「俺は気にしないけどな」

 

「俺が気にするんです」

 

「さよけ」

 

 

 真面目だなぁ、カズフサニキは。

 

 

「急いで帰って資料を纏めてきます。受け渡しはムラサキさん経由で大丈夫ですか?」

 

「おう、それでよろしく」

 

「分かりました。では、失礼します」

 

 

 一礼して去っていくカズフサニキを軽く手を振って見送っていると、入れ替わる様にミナミィネキが入ってきた。

 

 

「自殺する前にここに来てくださいね?立ち直れるまで癒して上げますから♪」

 

「実はそれについて心配してないんだよな」

 

「……むしろ()()()()()()()()()()()()()感じです?」

 

「分かるか?」

 

「長い付き合いですからね」

 

 

 やっぱ気付く奴には気付かれるか。もうちょっと隠す努力をした方が良いのかねぇ。

 

 

「まぁ、いざとなったら一緒に色欲に溺れましょう!セツニキなら大歓迎ですよ!!」

 

「その時は頼むわ」

 

「はい♪」

 

 

 溺れる為にも頑張るとしますか。セリス達に怒られそうだけどな!!

 

 

 

 

*1
ドイツ中部の中低山地から、北ドイツ低地へ北に向かって流れる川。

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