【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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終末へのカウントダウン7

 

 

 カズフサニキは事態の深刻さをしっかりと受け止めてくれた様で、別れたその日の夜にはムラサキ経由で資料が送られてきた。

 

 国内の過激派、穏健派含むほぼ全ての動きを把握していたらしく、詳細な資料からはKSJ研究所の努力の跡が垣間見える。

 

 ただ、そのせいで──いや、お陰でと言うべきか。俺の予想以上に事態は進行しているらしく、もはや()()()の可能性すら見えてきていた。

 

 

「この糞忙しい時に厄介な事をやりやがったもんだ」

 

 

 世界の終わりまで人類同士で足を引っ張り合うとか馬鹿じゃねぇの。

 

 

「ずっと不思議だったのだけど、過激派はどうやって日本に入ってきてるの?神主が沿岸部に結界を張ってるのよね?」

 

「んー……理由は幾つかあって、その内の何個かは仕方が無い部分もあるんだよな」

 

「例えば?」

 

「過激派の大半は覚醒者なんだが、穏健派の大半は非覚醒者なんだよ。だから【洗脳】するのも大した手間じゃないし、成り代わるのも楽なんだわ」

 

 

 ついでに言えば、過激派は【洗脳】する事に躊躇いが無い。アイツら滅びないかな。

 

 

「成る程。穏健派が沿岸部の入国管理を行ってる以上、どうしても抜ける過激派が出てくる訳ね」

 

「かと言って俺らに任せる訳にも行かないからな。初手【洗脳】なんてしてくる馬鹿を相手にしてたら何人やられる事やら」

 

 

 黒札の大半は三十にも満たないし、後期合流組は覚醒すらしてなかったりする。

 

 星祭総出で行ったとしても、日本の沿岸部を全て監視するのは現実的に考えて不可能。不審船に強行突破された事に()()()()()可能性を無くせるだけでもマシだと割り切ってるのが現状だ。

 

 

「他にはどんな理由があるの?」

 

「日本は義務教育でキリスト教伝来の過程を学ぶ関係で、見立ての術式が成功しやすいっつーオカルト的にキツイ歴史がある。特にオランダから出国されると、鎖国の時でも貿易を続けていた関係で通り抜けられる可能性が高い。航路も安定するしな」

 

「アメリカからの難民船が黒塗りなのも同じ理由だったりするのかしら?」

 

「ああ。ショタオジの結界によって鎖国状態になってる日本に辿り着きやすくなるなら、黒塗りにするぐらい大した手間じゃない。そら穏健派も染めるわ」

 

 

 ちなみに仏教系の神も不法入国しやすい。これは日本の歴史的に避けようが無いので、ガイア連合の幹部も早々に諦めて割り切っている。

 

 代わりにそれ以外の多神連合所属の神や人間は、基本的にショタオジが許可しなければ、辿り着けない程度には難攻不落の結界だったりする。

 

 山梨だけならメシア教も多神連合も容赦なく防げる結界を張れるんだけどな。日本は狭いようで広すぎるのだ。

 

 

「後は長崎の出島だな。あそこは鎖国中にもオランダと中国との貿易拠点になっていたせいで、オカルト的にも〝玄関口〟になってる。その関係で中国から流れてくる奴等が多くて、あっちじゃ苦労してるみたいだぞ」

 

「関西より西は支部も派出所も少ないから監視の目も足りてないのね」

 

「残念ながらな」

 

 

 雑談中にも手を動かす事は止めず、国内のメシア教の動きに照らし合わせながら重要拠点を割り出していく。

 

 メインはもちろん過激派。一応、味方の筈の穏健派も、過激派の【洗脳】の事を考えたら〝白〟にならないのが辛い。

 

 確か前世で調べた時は、国内のキリスト教徒は約190万人だった筈だ。メシア教穏健派が多数流入しているから、現在の総数はもっと増えていると考えるべき。

 

 となると──最悪を想定するなら、強襲するべきは()()()()()()()()()()じゃない。ガイア連合の支部がある地域から掃除するべきだ。

 

 

「もう犠牲が出る事を割り切るしか無い段階か。本当に糞過ぎる」

 

「私達に任せても良いのよ?私達式神は貴方以外の人間に対して動く感情は小さいもの」

 

「それをやったら自分を許せなくなるから却下だ。前世でも俺は自分に恥じない生き方をしたし、それを今世でも変えるつもりはねぇ」

 

「そう。それなら全てが終わった後、全身全霊で慰めてあげなきゃ駄目ね」

 

「楽しみにしてるよ」

 

 

 一般人なら鬱になりそうな感情を察知したセリスとその様な会話を交わしていると、部屋の扉が数回叩かれた。

 

 

「セッツァー様。当主様がお見えです」

 

「ショタオジが?」

 

「何の用なのかしら?」

 

「分からん。まぁ、会って話せば良いだけか。──通してくれ。鍵は空いてる」

 

「畏まりました」

 

 

 扉越しに女中に指示を出して数分後。

 

 

「やぁ、セツニキ。久しぶり」

 

 

 最近の忙しさからか、少し窶れた様子のショタオジがやって来た。

 

 

 

 

「御茶請けは十勝支部から送られてきた〝白い恋人〟よ。鮭とばは宴会で消えたから無いわ。では、ごゆっくり」

 

 

 セリスが机の上にお盆に乗せた珈琲とお茶菓子を置いて部屋を出ていく。それを見送り、視線を戻したショタオジがポツリと呟いた。

 

 

「セツニキの式神って俺を敬わないよね。血縁関係は無いけど、親の様なもんなのにさ」

 

「いや、お前の分身もお前の扱い雑だろ。終末前に図書館に缶詰にされてるって聞いたが?」

 

「引き継ぎ資料をしっかりしてくれって怒られちゃった」

 

 

 引き継ぎ資料……ね。

 

 

()()()には気を付けろよ?じゃないと俺らが魔界侵攻始めるぞ」

 

「それを止めて貰う為に今日は来たんだよ」

 

「無茶言うな。一人二人ならともかく組織として動かれたら止めようが無い」

 

 

 創設期の様にレベル差があった時代ならどうにでも出来た。人数が少ないから意思疏通も出来たしな。

 

 だが今は無理だ。俺を知らない奴も多いし、俺()知らない奴も多い。

 

 そもそも別件で動くから終末時に山梨支部に居ない可能性すらある。俺には無理だろう。

 

 

「もちろんセツニキだけじゃないよ?話の通じる古参には話を通しているし、幹部にも伝えてある。俺が言いたいのはソレに協力して欲しいって事さ」

 

「それなら……何とかなるか?」

 

 

 修羅勢を止めるのは簡単だ。準備にゆっくり一年掛けて、魔界侵攻計画を主導すれば良い。

 

 成功したらそれはそれで良いし、失敗しても第二次侵攻作戦を企画すれば良いだけだ。

 

 問題なのは……

 

 

「支部長クラスは終末後の忙しさに殺されるだろうから良いとして、お前ガチ勢は流石に止められんぞ。俺も馬に蹴られて死にたくない」

 

「え、俺にガチ勢なんて居るの?言っちゃなんだけど、頼られはしても俺に恋してる様な俺達なんて知らないんだけど?」

 

「修羅勢にも何人か居るぞ?お前の狂信者に、自分より圧倒的に強い男に組伏せられたい願望持ちに、お前の恋人になれば終末後も楽に生きられるっつー打算持ちまで一杯な」

 

「……普通の娘は居ないの?」

 

「普通の娘は修羅勢にならんし、お前と距離を置くだろ。神様みたいな全能者なんだし」

 

「デスヨネー」

 

 

 がっくりと項垂れるショタオジを尻目に、白い恋人を一枚剥いて口に運ぶ。個人的にチョコ味よりホワイトチョコの方が美味しいと思う。

 

 チョコの方も悪くは無いんだが……何というか特別感が無いんだよな。

 

 

「何とかならない?」

 

「図書館に詰めてる分身をお前そっくりに弄って対応させるしか無いんじゃないか?表向きは()()()()()状態にしておけば一般黒札なら気付かないだろ」

 

 

 乙女の直感が働いたら知らん。というか俺にもどうしようも出来ん。

 

 

「修羅勢の方は?」

 

「そっちは俺が止める──っつーより、時間を稼いでおく。最低で一年、最高でも三年ぐらいは何とかなる……筈だ」

 

「えー。そこは断言してよ~」

 

「無茶言うな」

 

 

 修羅勢になるだけあって、どいつもこいつも才能に満ち溢れてるんだぞ。時間さえ許せば、カヲルニキクラスの奴も居るんだ。

 

 むしろ最低一年稼げるだけでも褒めて欲しい。

 

 

「はぁ。終末が近いって言うのに頭を悩ませる事が多くて嫌になるなぁ」

 

「ホントにな。俺もこれから一仕事しなきゃならねぇし、ここでサボったら間違いなく【未来予知】からズレるから仕方ないっちゃ仕方ないんだが……」

 

「何?また何か終末案件拾ってきたの?」

 

「ほれ」

 

 

 先程まで纏めていた資料をそのままショタオジに渡す。読み進めの速度に応じて眉間に皺が寄り、読み終わる頃には頭を痛そうに押さえていた。

 

 

「〝ハーメルンの笛吹き〟から『ペイルライダー』とか過激派頑張りすぎじゃない?」

 

ヨハネの黙示録(終末)の四騎士はこの時期が一番()()()()()からなぁ。普段なら無理でも、この程度の俗説で喚べるぐらい召喚条件がゆるゆるなんだろ」

 

「楽観視するには情報が集まってるし、()()()の事を考えるとセツニキの仕事になっちゃうか~……。セツニキは大丈夫なの?どう考えても汚れ仕事になるけど」

 

「無理でもやるしか無いだろ?終盤でコケて今までの努力が水の泡になるのは勘弁だし、他の黒札に任せられる案件でも無い。だったら出来る俺がやるだけだ」

 

「貧乏クジを望んで引かなきゃ行けない立場かぁ。俺も似たようなもんだけど、切り捨てる対象を選ぶ立場は辛いよね」

 

「ホントにな」

 

 

 万を生かす為に千を犠牲にする選択なんて、本来なら個人で抱える様な問題じゃない。国やそれに準ずる組織が抱え、判断を下す問題だ。

 

 この世界で言えば、ヤタガラスが判断を下し、ライドウが実行するべきだろう。

 

 まぁ、そんな事が不可能だと言うことは、ショタオジと合流してから嫌と言うほどに味わったけどな!

 

 

「やめやめっ!このままだと暗い話に引き摺られるし、明るい話題に変えよう!!何か無い!?」

 

「んー……あ、そういえば試作品出来たぞ」

 

 

 霊符から取り出し、机の上に置いたのは──科学とオカルトの融合した特殊な()。それを受け取ったショタオジはワクワクしながら銃を掲げ、じっくりと【霊視】を使いながら眺めていく。

 

 

「…………凄いね、コレ。今までの悪魔召喚術式を踏襲しながらも、良くもまぁこんな形に纏め上げたもんだ」

 

「銃と同じで引き金が()()なるのが欠点なんだよな。戦うより逃げた方が良いのに、中途半端に戦える様になるから選択を間違える奴が増える気がしてる」

 

「いやー大丈夫じゃないかな?ガイア連合以外だとマッカに余裕無いだろうし〝切り札〟に落ち着くと思うよ?」

 

「だと良いがな」

 

 

 人間は賢く、そして愚かだ。故に(いと)おしい──霊能の根幹に引っ張られた。油断も隙も無いな、本当に。

 

 

「…………大丈夫?」

 

「大丈夫だ。終末が来たら三大欲求に溺れて人間性を取り戻す予定だしな!──それまでは持たせて見せるさ」

 

「そっか。……終末来たら三徹ぐらいゲームやろうぜ!俺もいい加減遊びたい!!」

 

「良いな!ギルニキとか幹部呼んで派手にやるか!!」

 

 

 真面目な話はここまで。これからは終末後の遊ぶ予定を決める時間だ!

 

 

 

 

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