【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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終末へのカウントダウン11

 

 

「話の途中にすいません。あの、セッツァーさん。鬼手神社で現在祀っている方々では駄目だったのですか?」

 

「今回は生け贄達の治療にそれなりの権能を使って貰うつもりなんだ。残念ながらこの神社の信仰の対象(シンボル)として祀ってるエジプト神では霊格が足りん」

 

 

 この神社で祀ってるエジプト神は本霊に信仰心を届ける事だけに特化している。実務はCOMPで契約している分霊で十分であり、権能を行使出来る霊格の存在を常駐させるのは危険だからだ。

 

 今回、降ろした分霊は逆に権能に特化している。代わりに一度使えば魔界に還ってしまう様に【リカームドラ】を弄った術式を組み込んであり、無駄に現世に滞在する事は出来ないし、させるつもりは無い。だから治療の前に話し合いをしているという訳だ。

 

 

「ま、お前の役割は鬼手一族の当主としてそこに居る三神を抱えるだけだ。将来的には悪魔との交渉も自身で行える様になって貰うが、まだ早いしな」

 

「分かりました。皆様、話を折ってしまい、申し訳ありませんでした」

 

 

 ペコリと頭を下げたアズマから視線を外し、再び悪魔達と向き合う。

 

 

「そういう訳で、これが俺の考えている基本契約だ。神同士のMAGの受け渡しに関しては俺が見届け人となって契約を結ぶ。日本神側はCOMPを介して追加契約を結ぶ代わりにこの神社の副祭神となる事を認める。他に何か質問はあるか?」

 

「今回、我々エジプト神側の持ち出しが多い。それに対して補填は無いのか?」

 

「んー……正直これから得るMAGで黒字になると思うが、気になるなら持ち出し分を完済するまでの間、信仰心(MAG)の割合を十割にしておくか?」

 

 

 視線を日本神側に移すと、その意味を正しく理解した木花咲耶姫が頷いた。

 

 

「構いませんよ~。天宇受売命様と保食神のお二方には私が補填しておきます~」

 

「……済まんな」

 

「いえいえ~。エジプト神話の御三方にはこれから信徒が世話になるので~」

 

 

 終末後の食料事情を考えると、ハトホルの嘆願は無下に出来ない。それを正しく理解している辺り、流石は浅間系列のトップと言うべきかね。

 

 ちなみに保食神は棚ぼたを喜んでいるぐらいにはマイナーな神であり、天宇受売命は木花咲耶姫と同じMAG富豪側の神だ。

 

 全裸ダンスの知名度と、踊ってみた動画のバズりはそのまま芸能信仰に繋がる。利益の為に多少の不利益を被るぐらいでは揺らがない強さがある。

 

 

「他に何か無いか?俺も忙しいから契約の変更は受け付けないぞ?」

 

「私達は問題ありません~」

 

「私達も大丈夫だ」

 

「じゃ、契約書に署名を頼む」

 

 

 手早く巻物を広げ、六神にサインさせる。他の人型の奴等とは異なり、嘴に筆を咥え、達筆を披露するフェニックスには笑うしかない。

 

 

「俺っちはやれば出来る凄い鳥www」

 

「やろうと思えばな」

 

「これは厳しいwww」

 

 

 ふざけていても優秀だから困る。何気に黒札の信徒を確保してる*1エジプト神だしな。

 

 

 

 

 治療自体はすぐに終わった。二つの肉袋に枯れ木が付属していただけの生け贄は、常識的な爆乳ブロンド美女に代わり、餓えて今にも共食いを始めそうな大陸産生け贄は、人並みに動けるぐらいのしっかりとした身体を取り戻した。

 

 これから日本語を叩き込まれ、本当に助けてくれた神を知らないままエジプト神達の〝へそくり〟を生産する為だけの人生だが、生け贄として死ぬよりマシだろう。たぶん。

 

 そんな訳で後始末をアズマに任せて【転移】する。目的地は神奈川県の三浦半島。横須賀に程近いこの場所を選んだ理由は二つ。

 

 一つ目は黒船が来航した場所、と言えば分かりやすいか。

 

 鳥取の過激派拠点から押収した資料は尻を拭く紙にすらならないゴミだったが、KSJ研究所から送られてきた追加情報を元に調査を進めた結果、残る二匹の終末の騎士の内、勝利を司る『ホワイトライダー』の召喚ポイントとして〝アタリ〟が付いた場所だ。

 

 日本を開国させた()()()()()()()()()()()()()だしな。アメリカ産メシアが『ホワイトライダー』を呼ぶなら、ここ以上に相応しい場所は無いだろう。

 

 広島や長崎も候補だったが、呉支部のお膝元で過激派が暗躍出来る訳が無いし。

 

 二つ目は〝神奈川支部〟の存在だ。何やら問題を起こしまくってる支部の様だが、ショタオジが除名してない以上、一人の黒札として扱わねばならないのは組織人の辛いところ。

 

 新潟の『レッドライダー』は新潟支部への影響を抑える為に最優先だったし、飢餓を司る『ブラックライダー』は終末後の事を考えれば語るまでも無い。

 

 俺個人としては『ホワイトライダー』より『ペイルライダー』を先に潰したいのだが……有象無象の無数の死者よりも、ただ一人の黒札を優先するのがガイア連合だ。

 

 ついでに言えば『ペイルライダー』を何処で呼ぶのか〝アタリ〟すら付いてないという悲しい理由もある。

 

 

「貴方やカズフサニキが見付けられないぐらいメシア教の情報管理って凄いの?そんなイメージ全く無いのだけど」

 

「何というか今回はあちらが()()()()()()()()っぽいんだよな」

 

「……もしかして高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に動いてるの?」

 

「まず間違いなく。このゴミを見る限り、そうとしか考えられん」

 

 

 鳥取の過激派をあの世にリリースする代わりに俺の手元に生け贄召喚した資料をセリスに手渡す。

 

 最初は真面目に。次第に呆れに変わり、最後には深い溜め息を吐き出すセリスを見て、苦笑いが溢れる。

 

 

「凄いよな。主の威光を知らしめる為に日本で四騎士を呼んでやろうぜ!方法は各自で考えてね!……で、成功してるんだぜ?」

 

「メシア教内の四つの派閥が好き勝手やっていて、なんでこんな高確率で成功するのよ……この資料を見る限り、ロクに情報共有すらしてないじゃない」

 

「終末が近い上にすでに呼ばれてるっつーのがデカイ。本来なら『ブラックライダー』はともかく『レッドライダー』は呼べない筈だ」

 

 

 というか、あの程度で呼ばれて堪るか。生け贄に使った脳缶に興奮剤を投与、さらに電極ぶっ刺して闘争本能を刺激してMAGを産み出していたが、普通ならそれで現れるのは闘神系列の筈だ。

 

 本霊が分霊を送り込んだとしても、たぶん日本の仏教系列や神道系列の分霊に割り込まれる方が早い。単純に距離が遠すぎるのだ。欧州と極東(ここ)ではな。

 

 

「……ちょっと待って。もしかして『ペイルライダー』を呼ぼうとしているメシア教徒は()()()()()()()()()()()もあるの!?」

 

「って、俺は思ってる。KSJ研究所の執念と情報網から逃れられる訳が無いっつー信頼から来る推測になるが」

 

 

 穏健派の英雄(汚い忍者)を引き入れ、探究ネキにも伝があるKSJ研究所から逃れられるなら、そもそも俺がこんなにも手際良く襲撃出来ていない。

 

 直前で止めたとはいえ、アイツらは『レッドライダー』の情報管理には成功していたのだ。少なくともガイア連合内で気付ける可能性があったのはKSJ研究所だけだった。……というか、行き当たりばったりな作戦を把握しろと言う方が無理だ。俺達は神様じゃねぇんだぞ。

 

 

「無能な働き者に豪運が付くとこんな感じなのね」

 

「対処する方にしてみれば、ふざけんなと叫びたくなるわな」

 

 

 計画自体が()()()()バレず、その為の準備すら()()()()バレず、儀式の為に人間を動かして漸く捕捉出来るという名探偵泣かせの案件だ。

 

 何が恐ろしいって、ショタオジやくそみそニキの占術すら掻い潜ってるんだよな。KSJ研究所が存在していなかったら対応が後手に回り、今頃日本の半分は終わっていたと思う。

 

 

「────っと、やっぱり来たか」

 

 

 未だ常人には見えない、水平線の遥か彼方。【遠視の魔眼】で捕捉したのは──四隻の蒸気船。御丁寧に掲げる星条旗の星の数は当時に合わせて三十一。カリフォルニア州が増えた時の国旗*2か。

 

 黒塗りの船を守る様にドミニオンが群れを成している以外は普通?の船団だが、その最奥の甲板には()()()()()()()()が鎮座していた。

 

 どうやら今回は強制戦闘らしい。イベントバトルかな?

 

 

「どうするの?」

 

「こっちから向かって潰す。というか、そうしないと沿岸部に張ってる結界を割られる可能性がある」

 

 

 今の日本は鎖国している様な物だ。見立ての儀式を行う条件は見事に満たしてしまっている。

 

 俺達の敗北条件は自身の死と、蒸気船の東京湾侵入の二つ。それさえ防げば良いので、最低でも蒸気船は沈めれば何とかなる──筈だ。

 

 

ムラサキやギン(他の子)達は呼び戻さなくて大丈夫かしら?」

 

「戦力的には呼び戻したい。が、優先順位は『ホワイトライダー』より『ペイルライダー』の方が高いから無理だ」

 

「絶対に見付からないと思うけど?」

 

「俺もそう思う。でも万が一を考えるのが俺の仕事で、俺の役割だ」

 

 

 会話しながら海を走り、陸地が見えなくなったところで〝女王艦隊〟を展開。そのまま過激派の船に向かって全速で走らせる。

 

 南鳥島では出来なかった〝女王艦隊〟の本当の使い方ってヤツを見せてやるぜ!

 

 

 

 

 

*1
ブロウタス様作 ガイア連合武器密輸課の日常 の不死鳥推しネキ。後輩ちゃん。

*2
1851年7月4日から七年間使われた国旗。ペリー来航は1853年7月8日に浦賀に入港。つまり、ペリー達は日本に来る四日前に船の上で独立記念日を祝っていた計算になる。

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