【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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終末へのカウントダウン13

 

 

 俺達が不利な状況のまま戦況が硬直する。ありとあらゆる手段を使い、隙を作っても、セリスの踏み込みが半歩足らないのだ。────そして白騎士はそれを見逃す程、甘くなかった。

 

 

「やはり戦場に来る女は娼婦だけで十分よの。貴様もそうは思わないか?──〝銀髪鬼〟」

 

「まぁ、上に立つ人間なら一度は考えるよな」

 

「セッツァー!?」

 

 

 裏切られた様な表情でこちらを向いたセリスのフォローに霊符を投げ、陰陽結界を展開。その直後、無数の【石化針】が結界に着弾する。……油断も隙も無いな。

 

 

「軍を率いれば分かるが、生理の調整が厄介でな。薬で抑えてもパフォーマンスが下がるし、正直言えば男だけの方が楽なんだよ。風紀を管理するのも面倒だからな」

 

「然り。多くの信徒達もそれについて頭を悩ませていた。にも関わらず、教育を受けると女は戦場に立ちたがる」

 

 

 片手を上げ、白騎士が戦場を止める。セリスへの揺さぶりの為だろうが、その時間は俺らの味方。こちらも霊薬を煽り、煙草に火を付けて一息つく。

 

 

「知っているか、銀髪鬼。戦場に立つ気概を持つ女子は貴族の娘しか居らんのだ。市井の娘はそもそもその発想自体が浮かばぬからな」

 

「だろうな。愚民化政策は国としては下の下政策だが、国防の観点だけで見るなら賢い選択だ。平時は兵站や兵器の生産に従事し、国から与えられた女以外の娯楽を知らず、命令に従順な男だけで構築された軍隊。男の居ぬ間に家を守り、子を育む女。率いる王が真の意味で賢いなら、他は王の意のままに動く手足で良い。手足に頭が付くと、途端に権利を主張し、五月蝿くなるからな」

 

 

 煙を吐いて、こっそり煙々羅を召喚(コール)。大地を通して海へ運び、最終防衛ラインを敷いておく。

 

 今まで多くの嫁式神を見てきたが、ここまでショタオジの過保護が影響する例は初めて見た。……いや、違うか。

 

 セリスが従順な式神という枠から少し外れ、()()()()()()()と言うのが正解か。

 

 偽りの愛が本物に変わり、それ故にショタオジの過保護にプラスして本人の意思が乗っている。そりゃ無意識下の動きに影響が出るわ。

 

 

「ククッ。中々どうして。敵である貴様が一番話が分かるとはな。我が愛すべき生け贄(信徒)達はそこを理解せぬ。欲を持つ(兵士)等、使う側からすれば面倒以外の何者でも無いというのに」

 

 

 そこでわざと言葉を区切り、セリスに嘲笑を向ける。続く言葉は予想出来るが、敢えて止めない。止める必要が無い。

 

 

「貴様なら分かるだろう?否、身に染みている筈だ。連れてきた()がくだらない〝感情〟に侵され、肝心な場面で働かないのだから」

 

「っ…………!」

 

「……………」

 

 

 唇を噛み締め、血が滲む程に拳を握り締めるセリスの手を取り、ゆっくりと(ほど)いていく。時間稼ぎはここまで。準備は終えた。

 

 

「セッツァー……?」

 

「ホワイトライダー。確かにお前の言う通りだ。その考えは何も間違っちゃいねぇよ。──だけどな?」

 

 

 唇を意識して三日月に歪め、嘲笑を白騎士に向ける。

 

 

「それは雑魚の考えだ。弱者の考えだ。真の王なら人の正負両方を愛し、包み込み、慈しむ。何故なら──()()()()()()()()()()()()

 

 

 兵士が一人一人が意思を持っていようが、真の王なら纏め上げて勝利するだろう。

 

 民が学び、どれだけ好き勝手生きようが、真の王なら束ねて上手く使い、国を繁栄させるだろう。

 

 

「語るに落ちたな、小物が。この場で断言してやるよ。お前はどれだけ霊格が高くなろうとも四文字やルシファーの様な存在には成れない。成れる訳が無い。全てを受け入れ、愛す余裕も無く、全てを受け入れ、楽しむ余裕も無い。そんな小物が上に立てる程──この世界は優しくないぞ

 

「貴様……!」

 

 

 激昂した白騎士が即座に弓を構え、矢を放つ──直前、急に動きを止める。代わりに向けてきたのは、愚か者を見るような目と、隠しきれない〝喜〟の感情。

 

 

「──ふぅ。まだまだ精進が足りんか。子供の戯れ言で感情を揺さぶられるとは……主の背は遠いな」

 

「敬ってないくせにこういう時だけ名前を出す辺り、お前は間違いなくメシア教の悪魔だよ」

 

「何とでも言うが良い。すでに我の勝ちは──」

 

 

 遥か後方で大爆発が巻き起こり、白騎士の言葉を遮る。巻き上げられた海水が雨となり、降り注ぐ中で──分かりやすく()()を教えてやる。

 

 

海兵隊(マリーンズ)を見せたのは失敗だったな。それさえなければ見逃していたかも知れん」

 

 

 当時の〝黒船〟は()()()()()船だけだった。だが、現代では()()にも警戒が必要な事を子供でも知っている。

 

 そして俺は第二次世界大戦を生き抜いた人間だ。兵站を運ぶ船を世界で一番()()()()()()の軍人だった男だ。

 

 

潜水艦には怨みがあってな。対処方法は百八式まである」

 

「……楽になれると思うなよ。精々、自らの言動を我が愛馬の中で嘆け」

 

 

 殺意の〝色〟に染まった膨大な量のMAGが白騎士の全身から吹き出し、空間を陽炎の様に歪める。

 

 

 弱者なら、それだけで死んだだろう。

 

 常人なら、それだけで生死をさ迷っただろう。

 

 強者なら、己の死を覚悟しただろう。

 

 賢者なら、大人しく(こうべ)を垂れただろう。

 

 

 だが修羅勢(俺ら)は違う。

 

 

 敵の強大さに文句を言いながらも喜び、死闘を楽しみながら文句を言うだけだ。

 

 

「セリス。お前は煙々羅の援護に行け。ハッキリ言って邪魔だ」

 

「……ッ!……分かったわ……」

 

 

 大人しく下がったセリスの方へは視線を向けない。そんな余裕も無い。──何より敵に失礼だ。

 

 

「じゃ、殺り合おうか」

 

 

 文句があるなら殺り合えば良い。最後まで立っていた奴が勝者(正しい)。馬鹿でも理解出来る単純なルールに支配された世界。

 

 

 それが──戦場ってもんだ。

 

 

 

 

 降り注ぐ【ヤブサメショット(矢の雨)】をカードを投げて対処しつつ戦場を駆け抜ける。

 

 合間合間に飛んでくる【ゴッドアロー(白騎士の攻撃)】は【存在吸収(レベルドレイン)】を複数個ぶつけて逸らす。というかスキルに制限を食らってる現状だと、それぐらいしか対処が出来ない。

 

 そんな圧倒的な不利な戦場だが、戦況に反して俺の心は踊っていた。

 

 

「楽しいなぁオイッ!!」

 

「この……化け物めが……!」

 

 

 見渡す限り、敵、敵、敵──

 

 地を埋め尽くす勢いで増え続けるヴァーチャー(アメリカ軍)に、大戦時に見掛けた船から最新の艦まで揃った軍艦の群れ。

 

 容赦なく艦載機が空を舞い、仲間諸とも爆撃を繰り返しながら、アメリカ陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)がナイフ片手にエントリー。

 

 その全てを薙ぎ倒し、奪った霊力を大地に注ぎ込み、再び〝獲物〟に向けて疾走する。

 

 

「何なのだ貴様はッ!本当に人間なのかッ!?」

 

「人間だぜ!正真正銘──ただの人間だッ!!」

 

 

 空にばら蒔いたカードをそのまま操り、周囲を切り刻む。ついでに【レベルドレイン】をダーツ型に変えてばら蒔いておく。

 

 奪った霊力で新たな剣を生み出し、擬人式神を憑依させて〝自我のある剣(魔剣化)〟して好き勝手させる。

 

 

「お前ら悪魔は傲慢だよなッ!人間はお前らが考えている程か弱い存在じゃないッ!お前らを〝糧〟として生きていける存在だッ!」

 

「そんな訳があるかッ!」

 

 

 痺れを切らした白騎士が【物理ブロック】をばら蒔き、ついでにヴァーチャー達に【マカラカーン】を使わせる。……うむッ!

 

 

「万能属性万歳ッ!!」

 

 

 多少の被弾は問題ない。殺られるより先に殺れば良いのだ。それがドレイン系俺達の真骨頂。

 

 

「死ぬぜぇ!俺を見たメシア教徒は皆死んじまうぜぇ!!」

 

 

 手に持っていた剣を大鎌へと変え、周囲を凪ぎ払う。さらにそのままクルリと回転させ、大地を耕す様に振り下ろして風刃の術式を起動。

 

 

 斬擊を伝播させて大地に刻んだのは──〝מה חודר(貫くモノ)

 

 

 大地を槍に変えるだけのシンプルな術式だ。

 

 

「そらッ!避けて見せろよッ!!」

 

「ぐおっ────!?」

 

 

 大地が瞬時に剣山へと変貌する。避けきれなかった者達の末路は様々だ。モズの早贄*1となったモノも居れば、ギリギリ避けて手足が千切れ飛んだ者も居る。

 

 白騎士すら無傷とは行かなかった様で、馬の後ろ足が吹き飛んでいた。まぁ、すぐに治ったが。

 

 

「何故だッ!何故貴様は我が軍勢に襲われて生きている!!何故大人しく死なない!?」

 

 

 飛んでくる【ゴッドアロー】を避け──ずに切り落とす。ノリでやったが、出来るもんだな。

 

 

「お前は知らんだろうが、俺には似た戦場を駆け抜けた経験があるんだよ。()()()()()()()()、ハッキリ言ってヌルゲーだぜ」

 

 

 軍の訓練を真面目に行っていたとはいえ、当時の〝儂〟は何処にでも居る普通の人間だった。そんな身で終戦まで駆け抜けたのだ。

 

 兵站不足を恐れる必要も無く、銃の暴発を恐れる必要も無く、糞みたいな上官も居なければ、守りたい部下も居ない。

 

 逃げるしかなかった空爆や艦砲射撃は自力で防げるし、腸をぶちまけても瞬時に回復して戦闘を継続出来るのだ。

 

 これで何を恐れろと?前世と比べれば遥かに恵まれた環境なのに。

 

*1
モズと呼ばれる鳥は、捕まえた獲物を縄張り内の枝に突き刺す習性がある。

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