【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
俺にとっては今日の始まりを知らせる夜明け。〝狼〟にとっては──この世で見る最後の夜明け。
限界まで戦う為に燃やした魂は、すでにショタオジクラスの人間でもどうしようも無いぐらい燃え尽きていた。
「まさか、お前らと夜明けを眺めるとはな」
懐から煙草を取り出して火を付ける。それを羨ましそうな視線で眺める〝狼〟。残念ながら鋼鉄の身体に煙草を吸える機能は無い。今から改変する事は可能だが──その前に世界に還る方が早いだろう。
────何も分からず、気がつけば電池になったクソッタレな人生だったが……最後の最後で
「そこらへんの割り切りの早さは流石軍人と言うべきね」
────俺達は罪は背負うが、抱えたら潰れる職業だろう。
「だな」
煙を空へ向けて吐き出し、再び吸う。全力を出した後の一服は格別だ。今までと違うのは──〝戦友〟と宴会出来ない事だけか。
もはや神の力を以てしてもどうにもならない事を考えていると、隣に立つ〝狼〟がポツリと尋ねてきた。
────最後に一つだけ教えてくれブシドー。
「なんだ?ガンマン」
────俺達は……私達は神に裏切られていたのか?
「………………」
ガイア連合に所属している俺達なら『そうだ』と答えそうな質問だ。だが俺の見解は違う。とは言っても、俺だけの言葉では説得力が無い。……仕方ねぇ、動かすとするかね。
────おい、糞鳩。いい加減働けや。
────君は本当に容赦無いね。
────テメェは俺の祀神じゃねぇからな。
────僕を悪魔扱いするのは君達ぐらいだよ。
呆れた様な〝声〟と共に空が輝く光を放ち始め、ニ匹の天使が舞い降りてくる。それを確認した後、再び〝狼〟と向き合った。
「アイツらメシア教はキリスト教の名を借りた新興カルト集団なんだよ。厄介な事にキリスト教徒を〝同志〟と勝手に思ってるし、言い張ってる異端者なんだ。だから四文字はお前らを裏切ってないし、その証拠に──ほら」
翼を羽ばたかせ、地上に降り立ったのは──
メタトロン。
「四文字直々にお前らの運搬役を派遣してくれてるだろ?本来の役割じゃない──〝自分の代理人〟をな」
────ああ、そうだな。俺/私達の信仰は間違っていなかった……!
メタトロンに連れられ、無数の魂が天へ昇っていく。それを見送り、静かに黙祷を捧げる。──あばよ、戦友。来世でまた会おう。
◇
セリスと合流し、煙々羅を送還。何時もなら落ち込んでいるセリスのフォローをしておくタイミングだが、残念ながらそんな余裕が今の俺には無い。
ホワイトライダーに時間を掛けすぎた。最後の一騎に間に合うかね。
頭の片隅で最悪の想定をしつつもスマホを取り出し、ムラサキと連絡を取る。
『俺だ。こっちの討伐は完了した。そっちはどうだ?』
『えっと……それが──』
スマホ越しに伝えられた内容は俺の想定外であると共に、自身が知らぬ間に傲っていたことを突き付ける。
だからこそ──心の底から笑った。
怪訝な視線を寄越すセリスを気にせず、心の底から大声で。
『──主様?』
『いや、すまん。嬉しくてな』
この世の全ての不幸を一人で対処する事は出来ない。俺以上の存在であるショタオジすら
『取り敢えず、俺もそっちに合流する。お前らは隔離結界を維持したままヤバそうなら介入してやれ』
『了解しました』
通話を切り、スマホを仕舞う。【転移】の術式は苦手なんだが、東方組を呼べない以上、仕方がないか。
「セリス。少し手伝ってくれ。〝転移陣〟を描く」
「三人を呼べない程に戦況が酷いの?」
「いや、たぶん行く頃には終わってると思うぞ?」
「どういう事?」
「それは行ってからのお楽しみだ」
「引っ張るわね」
「まぁ、お前なら俺が笑った理由を理解出来る筈だ」
俺は何処まで行っても〝主人公〟では無かったというだけの話なんだが。
ポジション的にはラスボス前で雑魚を足止めする古参の仲間って所か。ここは俺に任せて先に行けッ!って奴だ。
疑問符を浮かべながらも沈黙を選んだセリスと共に作業に入る。【転移】系の術式は種類こそ多いが、実際に使える物は少ない。
ハッキリ言って式神に【転移】を突っ込んだ方が安全で確実なのだ。だから術スレまとめでも、一番上に発光する文字でデカデカと書かれている。
それでも行う奴は多いんだが。術式の難易度、掛かる費用的に上級者ラインの入り口に位置するからな。
「────よし、完成。飛ぶぞ」
「警戒はした方がいいの?」
「一応な。無駄だと思うが」
「そう」
陣に霊力を流して術式を起動。ほんの僅かな酩酊感の後、気付けば先程とは全く別の景色に切り替わった。
「Non c'è alcuna possibilità che noi, che abbiamo la fede giusta, perderemo contro di te che usi gli insegnamenti a tuo piacimento!」*2
「馬鹿な……我らが負けるだと……?我らこそが……主の正しき教えを体現しているというのに……!」
テンプルナイトの正式衣装を身に纏い、背後にガブリエルらしき姿の悪魔を背負うナイトが剣を振るう。
それは過激派の集団の中でも高位の衣装を着ているメシア教徒を真横に切り裂き──追撃の一刀でその身体に十文字を刻んだ。
「Ero orgoglioso della mia posizione. Il Signore ama la pace. Quelli di voi che interrompono tutto questo si sbagliavano fin dall'inizio. ...È già tardi però.」*3
剣を軽く振り、血糊を飛ばして納刀。その姿は日本人が思い描く騎士の姿その物だな。
「……む?セッツァー殿か」
こちらに気付いたブロントさんが周囲に治療の指示を飛ばした後、こちらにゆっくり歩いてくる。
「よっ。お疲れ。オランダから中国経由で強行軍したんだって?」
「ああ。日本で
そうでなければ、全員生存は不可能だった、とブロントさんが言葉を締める。
「秋雨ニキ達は何処に居る?」
「あちらの〝リーフデ号*4〟だ」
ブロントさんの視線の先に目を向けると、丁度良くフリュート船から【浄化】の光が立ち上ぼり、続いて猛火が包み込む。
積んでいた火薬に引火したのか、次々と大爆発を引き起こし、耐えきれなくなった船体がそのままゆっくりと沈んでいく。
「随分派手にやったな」
「……奴隷として連れてきていた人間を黒死病に感染させて生け贄にしようとしていたからな。御丁寧にクマネズミも満載だ」
「ヤン・ヨーステン*5やウィリアム・アダムス*6がブチ切れて黄泉から甦りそうな話だ」
「歴史も死者も愚弄しておきながら聖職者を名乗るのだから、本当にメシア教徒は救いようが無い」
二人で苦笑いを浮かべていると、海岸*7から濡れ鼠になった修羅勢が歩いてきた。
「お、セツニキだ。おっひさー!」
「出迎えご苦労!大義である!」
「何様だよ!」
「おれさま~」
大陸に渡った時から変わらない俺らに霊符を投げつけ、穢れを払う。
「変わらねぇな。お前ら」
「ふっ。我らは星祭の人間だからな」
「秋雨ニキの言う通りだね。確かに後ろ暗い事をやって来たけどさ。
「さよけ」
見た感じ、精神的にやられてる奴は居ないか。中華戦線がここまで持ったのはコイツらの頑張りも間違いなくあっただろうし、上に報酬を上げる様に交渉しておくかね。
「そういえば他の四騎士はどうなった?すぐに動いた方が良さげ?」
「いや、レッドとブラックは俺が召喚前に潰して、ホワイトはさっき処分してきた。残りはペイルライダーだけだったんだが……」
「呼ぶ前に俺らが止めた感じか~」
「てかホワイトライダーは呼ばれたん?」
「アメリカで呼ばれて、黒船に乗って襲撃してきたぞ」
「最悪なペリー来航過ぎて草生える」
『『『それなッ!』』』
何時もの空気。何時もの会話。終末が迫ろうとも変わらないこの感じに感慨深い物を感じるのは、俺自身にとっても星祭が帰る場所であり、守るべき場所だからだろう。
ある意味では
「それじゃ、いい加減我が家に帰るとするか。ブロントさん達も含めて全員で宴会するぞ」
「ブロントさん達ってレベル足りてない子も居ない?結構長い間一緒に活動してたし、除け者は嫌なんすけどー?」
「実は星祭の一時滞在許可書って俺も発行出来たりする。俺らの霊圧がゲストに悪影響与えない様に保護する奴とセットでな」
『『『そうなのっ!?』』』
「流石に永住権は無理だが」
あれはショタオジの許可が必要となる。マッカ生産してるから仕方ないわな。
「……いや、役割を考えれば当然じゃね?」
「何で今まで使わなかったの──って思ったけど、低レベルはそもそも入る必要ないよね」
「確かに。まーこれで心置きなく大陸組で宴会出来る訳だし、とっとと帰ろうか」
「おう!温泉に入りたいしな!」
仲の良くなったブロントさん麾下の人間を連れ、次々と俺らが消えていく。
それを秋雨ニキやブロントさんと共に見送り、最後に飛ぶ──直前、一つだけ気になっていた事を尋ねる。
「教皇はどうだった?」
「……猊下は他の信徒を守る為、四騎士に甚大な被害を与えて天に召されていた」
「…………そうか」
自身の役目を果たしたんだな。──平行世界の
◇