【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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20xx年!東京は核の炎に包まれなかった!

 

 

 終末がやって来た。世界は魔界へ落ち、ありとあらゆる場所に悪魔が湧くファンタジー世界になってしまった。

 

 終末まで後七日となった段階で俺ら修羅勢は山梨異界の防衛に回り、それからショタオジが復活するまでひたすら戦い続けていた。

 

 そうなる事は覚悟していたが、実際にショタオジが死んだ影響は大きく、地を埋め尽くす程の悪魔を薙ぎ倒す日々は今や昔。

 

 ガイア連合傘下の支部やシェルターの混乱も落ち着いてきたので、ショタオジの復活と今までの苦労の労いを兼ねて宴会を開こうという流れになり──

 

 

「皆、今までお疲れ様。これから大変だろうけど、今日は全部忘れて楽しもうぜ!!」

 

 

『『『うぇ~い!!』』』

 

 

──ショタオジの号令の元、宴会が始まった。

 

 

「いぇ~い!セツニキ見てる~?ショタオジの初PS3プレイは俺達が貰いました~!」

 

「せめて食事ぐらいさせてやれよ」

 

「大丈夫。ショタオジスキー達が餌付けするから」

 

「マッテ!自分で食べられるからッ!!」

 

「はい。ショタオジ様。あ~ん♪」

 

 

 ぎゃーぎゃー騒ぐ黒札の真ん中で楽しそうに(?)笑うショタオジ。その姿を遠目に眺めながら酒を飲む。

 

 

「今日は食事しないんだ?」

 

「流石の俺にも大事な日に会話を拒否らない分別はあるぞ?」

 

「ほへー。あ、そういや気になってたんだけど、酒と摘まみが別枠なのは何で?」

 

「俺が会社で働いてた時は飲みニケーションが全盛期でな。美味しくも無い酒を飲みながら仕事先の重役をヨイショしないと、何一つ仕事が手に入らなかったんだわ」

 

 

 あの頃は前世の記憶なんて無かったし、社会の荒波に揉まれていたなぁ……懐かしい。

 

 

「今のセツニキしか知らないから、相手が凄い人物の様に聞こえるな」

 

「後から評価の上がるキャラクターみたいだよね」

 

「あの糞みたいな連邦の補給を一手に担っていたゴップ大将の話?」

 

「SEEDの盟主王」

 

「呪術のミゲル」

 

「鬼滅の刃の煉獄さん。痣も透き通る世界も無いのに圧倒したぜ」

 

「ワートリのA級全員」

 

「キン肉マンのミラージュマン」

 

「セツニキは?」

 

「シャンクスの腕を食い千切った近海の主」

 

 

『『『それは禁止カードッ!!』』』

 

 

 令和まで生きていた俺達の話だと、アニメ版シャンクスの〝神避〟が凄かったらしい。そんなシャンクスの腕を食い千切った主は最強だろう。長期連載故の弊害なんだが。

 

 ボトルも飲み干したので、次の酒を探す。楊貴妃の愛した『桂花陳酒』*1にクレオパトラの愛したとされる『蜂蜜酒(ミード)』にヘレネーの『葡萄酒』か。

 

 世界三大美女(悪魔)からの贈り物過ぎて笑う。どう考えても地雷だろコレ。

 

 探究ネキや酒造系俺達のお酒を適当に掻っ払い、グラスを洗わずに注ぐ。

 

 真の酒飲みには怒られるだろうが、宴席ではこれが正しい。摘まみもファミチキだしな。

 

 

「これの為に設立された秘密結社ガイア連合山梨支部!」

 

「気が付けば日本を救うこと数十回の組織になっていた!」

 

「いや、草」

 

「意味不明で笑う」

 

 

 完全に酒が回ってゲラゲラ笑う俺らを尻目に周囲に聞き耳を立てると、出るわ出るわ終末直前の日刊駆け込み危機。

 

 俺も人の事は言えないが、良く日本が持ったもんだ。歴代のラスボス全集合したんじゃないか?これ。

 

 

「仕方が無い事とはいえ惜しい事をしたのう。ワシも神霊クラスと殺り合いたかった……!」

 

「俺が倒したホワイトライダーは微妙だったぞ?権能も深層より温いし、ギミックも日本という地だけで見れば厄介だったが、戦闘力を跳ね上がる系じゃ無いしな」

 

「ちなみにレベル差はどうだったんじゃ?」

 

「俺が七十、現地協力者(アメリカ)が五十。煙々羅が七十でセリスが百。【アナライズ】してないから大まかな感想になるが、ホワイトライダーが百前後。だから三十ぐらいかね?」

 

「…………微妙じゃな」

 

「だよな。セリスを日本の防衛に回したんだが、それでも強いって印象は全く無かったわ」

 

 

 異界の主とは違い、MAG配給先が地脈以外に絞られるのも余計に強くないと感じる要因だろう。

 

 行動する度に霊力が減っていく悪魔なんざ長期戦がメインのドレイン系のカモでしか無い。

 

 だからこそ〝(アメリカ)〟が戦えたんだが。……命を燃やしてホワイトライダー 一匹か。割に合わねぇな。

 

 

「霊山同盟や新潟支部は地獄だったらしいよ?他にも呉支部は大陸でメルカバーと殺り合ったらしいし、速報を見る限り、セツニキが一番楽だったみたいだね」

 

「ペルソナ組も凄かったっぽいな。あのはしゃぎようを見るとさ」

 

 

 視線の先ではペルソナ組がやけ酒を飲んでいた。どんだけの地獄だったのか興味本意で聞いてみたいが……何か爆弾が出てきそうだから止めておく。

 

 

「セツニキが合流するまでの深層も酷かったよねぇ」

 

「あれだけ用意しておいた消耗品の九割が飛んだよな」

 

「正直、シエラ婆を筆頭としたドレイン組が戦線維持してくれたお陰で何とかなっただけで、俺らは定期的に補給行かないと死んでたしなぁ」

 

「少し悔しいが、儂も継戦力は高くないからのう。あの時ばかりは二人が羨ましかったぞ」

 

 

 本心から残念そうな声で溜め息を吐き出すグラ爺に対し、呆れた様子で慰めたのはシエラ婆だった。

 

 

「いや、ワシらはその分火力不足に悩んでいるからな?近接型や魔型が凪ぎ払う中で三発ぐらい叩き込まんと倒せんし」

 

「だよな。俺なんて高火力技は基本的に霊符爆撃(銭投げ)だぜ」

 

「隣の芝は青い!」

 

「全知全能の存在のヤバさが良くわかるよねぇ」

 

 

 今度は素質で盛り上がる俺らに一言断りを入れ、一人宴会場の外へ向かう。ショタオジのお陰で何時もと変わらぬ夜空を眺めながら煙草に火を付けると、背後に人の気配を感じた。

 

 

「やっほ」

 

「ショタオジか。抜けてきたのか?」

 

「バレるまでは分身で誤魔化してる。修羅勢じゃないし、暫く持つでしょ」

 

「愛されてるなぁ」

 

「どうだろうね?打算混じりの子も居るし、悩ましいところだよ」

 

 

 苦笑いを浮かべるショタオジと二人で酔いを醒ましていると、不意に昔を懐かしむ様な声色でショタオジが口を開いた。

 

 

「思えば、ここまで来るのに色々あったねぇ」

 

「俺はそれなりに楽しんでいたが、お前は嫁式神作りまくってたな」

 

「あれは誤算だった。俺達の欲望を甘く見てたって言うか何と言うか」

 

「お陰で悪魔被害を抑えられたし、方針として間違ってなかったのが余計に笑う」

 

「…………セツニキさ、何気に式神作りから全力で逃げたよね?速攻で星祭立ち上げてそっち行ったし」

 

「いや、俺の終末対策的にそうなるだろ。お前をフリーにする為に手を尽くしていた訳だし」

 

 

 念のために出来る範囲内で歴代メガテンボス対策は用意していたが、ペルソナに関しては完全にショタオジ頼りだった。

 

 その為に修羅勢を育てる方向に舵を切っていた訳だし、決して逃げたつもりは無い。……何が悲しくて他人の嫁を作らなきゃならんのだと常々思っていたが。

 

 

「それでも一度ぐらいは手伝いに来てくれても良かったんじゃない?」

 

「無理言うな。分身とはいえお前が過労死する現場なんて常人の俺だと死ぬわ」

 

「常人(笑)」

 

「地位的には一般黒札だぜ?俺」

 

「詐欺過ぎる!」

 

 

 俺がトップに立ったら黒札の大半を切り捨てたからなぁ。ショタオジの願い的にアウト過ぎた。

 

 

『あっ!知らぬ間にショタオジの奴、分身に入れ替わってる!!』

 

『探せ!イッチには嫁式神を作らせなければならん!』

 

『いや、今日ぐらいはショタオジを休ませてやれよ』

 

『大丈夫。イッチは分身できっから。それにまだ俺の嫁作ってもらってないもん!』

 

『ちな、何人目?』

 

『二十人目だが?』

 

 

『『『自重しろや!!』』』

 

 

 

 騒がしくなった宴会場を二人で眺める。〝神の子〟として崇められず、気安い仲間として扱う俺達の姿。

 

 きっと、これが前世からショタオジが望んでいた光景なんだろう。この光景を見せられただけでも頑張った甲斐があったな。

 

 

「ご指名だぞ。行ってこい」

 

「そうする。またね~」

 

 

 部屋に戻るショタオジと入れ替わる様にやって来たのは、ガイア連合エンジョイ勢と噂されている悪魔──ベルフェゴールだった。

 

 

「やっほ!飲んでる〜?」

 

「一休み中だ」

 

「そいつは行けない!って訳でドーン!」

 

 

 背後から抱き締められながら口に差し込まれたのは、どう考えてもスピリタス*2だった。喉が焼ける!というかオールドボトルだと!?

 

 

「────っぷは!流石に死ぬわ!!」

 

「あははははっ!!」

 

 

 満面の笑みで大爆笑するベルフェゴールを尻目に、作り出した水を流し込む。喉も胃も熱い。これマジで酒焼けしたんじゃないか?

 

 

「いや〜ゴメンゴメン!嬉しくてさ〜!」

 

「終末が来た事が?」

 

「ううん、違うよ。──私が嬉しかったのは君が〝契約〟をちゃんと守ってくれた事だ」

 

 

 一瞬で真面目な顔に切り替わったベルフェゴールの顔に嘘は無い。……悪魔らしく無いな。この場面は嘘を吐く場面だろうに。

 

 

「正直、出来たらラッキー程度だったんだよね。あの時は乗せられちゃったけど、君が失敗したらそれはそれでガイア連合に食い込めるし」

 

「お前、そりゃ『中野学校』*3の諜報技術を舐め過ぎだ。戦後、色んな国に散って国の為に情報ラインを繋いでいた組織だぞ?情報操作ぐらい余裕に決まってんだろ」

 

「待って。初出の情報なんだけど!?」

 

「そりゃ当然だ。初めて言ったし」

 

 

 前世と〝合言葉(パスワード)〟が変更されて無くて良かったぜ。お陰で世界中の情報をくれる〝親友〟と出会えたし、そこから簡単に〝友達(金蔓)〟と出会えた。

 

 後期ならともかく、前期は〝親友〟の情報や手助けが無かったら……ここまで辿り着けたかねぇ?

 

 

「つまり、私は君の掌の上で踊らされていたのかな?」

 

「勝手に踊った責任を俺に押し付けるなよ」

 

「大悪魔として悔しいんだよーう!分かれ!」

 

 

 抱き締めが強くなり、仄かに温かいベルフェゴールの体温が、背中と自身の間で潰される両胸を通して伝わる。

 

 ラブコメの主人公だったらドキドキする場面なんだが……

 

 

「金髪碧眼か銀髪褐色肌になって出直してこい」

 

「なん……だと……!」

 

 

 俺の()()は偏食なのだ。つーか、性欲のコントロールぐらい余裕だ。

 

 

「はぁ……何か馬鹿らしくなっちゃった。私も戻る事にするよ」

 

「おう、また明日な」

 

「うん、また明日」

 

 

 去っていくベルフェゴールを見送り、二本目の煙草に火を付ける。

 

 終末が来たというのに俺の周りは何も変わらず、何時も通り。

 

 ついでに言えば──

 

 

 

 母親の大好きだった煙草も、何時も通り美味かった。

 

 

 

*1
白ワインにキンモクセイのお花を約3年ほど漬けてできた混合酒

*2
アルコール度数96

*3
第二次世界大戦時に実在した日本の諜報員育成学校。すでにGHQに解体されている。




これにて完結!まだまだ続きそうな変わらぬ日常エンド!


ここまで付き合ってくれた方々、感想、評価、ここすきを使ってくれた方々、今までありがとうございました!

最後に素敵な作品を読ませてくれたどくいも様に感謝を!!
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