【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
田舎ニキが【真・女王艦隊】を収束させ、小さな一隻の漁船を生み出す。性能は大和型十隻分──とまでは行かないが、それに近い強度の漁船だ。
「これでも沈没する可能性があるけどな!」
「マジかよ!」
「マジだぞ。合同調査の時はジャンヌネキが同じ事をやったんだが、見事に沈められたわ」
「うへぇ」
そんな会話をカス子ネキと交わしながら漁船に乗り込み、いざ大海原へ。どう考えても出港日和とは言えないが、大体毎日こんな荒れ模様なので気にしたら負けだ。
広くなった海を田舎ニキの操船に任せて走っていると、ワクワクを隠せていない幼女ネキが尋ねて来た。出会った頃に比べれば身体は成長しているんだが、何というか行動パターンが未だ幼女なんだよな。幼女ネキ。
「セツニキ。これから何をするんだ?また【真・女王艦隊】で漁業か?」
「いや、これから狙う魚は一本釣り以外じゃ駄目なんだ。それ以外の方法で釣り上げると味がものっそい劣化する上〝ギミック〟が過剰反応して地獄を見る事になる」
まさか現世で深層並の光景を見ると事になるとは。この海のセッツァーの目を持ってしてもわからんだわ。
「ちょっと待ってセツニキ。魚釣りなのに〝ギミック〟ってどういう事?」
「んー……詳しく説明すると長くなるぞ?それでも聞くか?」
「これでも支部長だからさ。影響ありそうな情報は聞いておかないとね?」
「あたしも田舎ニキと同じで詳しく聞きたいかな?道南支部も関係しそうだし」
「宮城支部も海があるからな。私も聞いておきたい」
「分かった。そんじゃ準備が済んだら説明してやるよ」
程々な場所で船を止め、予め用意しておいた竿に餌を取り付け、四人並んで海に投げ込む。釣りの経験者かどうかは、ぶっちゃけ関係無い。大事なのは、これから起こるイベントに
「始まりは星霊神社での宴会だったかな。誰かが久々にネギトロ丼が食いたいって呟いて、それならちょっくら取りに行こうぜ!って
俺ら星祭は終末後でも肉や野菜に困る事は無かったんだが、新鮮さが味に直結する魚介類は、幾ら俺らでも好きな時に何時でも最高の品を食べられる訳じゃなかった。
これが海有り県ならまだ何とかなったかも知れない。だが山梨は残念ながら内陸地だ。ついでにターミナルの個人使用は中々許可が降りない上に費用も掛かる。
必然的に自身の手で取り行く事になり──その結果、今回狙う
「終末後、野生動物の多くは魔界のMAGに汚染されて死んだ。そして、ごく一部の生き残りはMAGに適応して悪魔化した」
とは言っても大半はレベル1未満の雑魚だが。ガイア連合に馴染み深いのは十勝支部の羊か。アレは普通にレベル持ちだった気もするが。
「その時にな、ガイア連合の〝業〟が
考えてみれば当然なんだが、誰もその事について気にしていなかった。というか食料不足に悩む終末後の世界にとっては利点しか無いしな。そら誰も気にせんわ。
「……いやさ、セツニキ。正直〝業〟と言われても多すぎてどれが影響したのか分からないんだけど?」
「うむ。というかガイア連合の黒札なんて〝業〟の塊だろう」
「あたしは違うからっ!……って言いたいけど、否定出来ないんだよねぇ」
田舎ニキの問いに二人が同意する。それに対しては苦笑いを返すしか無い。
「俺も少なからず影響与えてるからな。罪という点では同罪だ。……もうぶっちゃけちまうが、探求ネキを筆頭とする第一次生産組の〝トリコ素材〟という概念が世界に影響を与えちまったんだよ。分かりやすく言うと
リヴァイアサンの様な終末後に食料となる神話や自ら火に飛び込む豚の様な希望のある伝承。モンハン組の様な狩った命に感謝し、血肉とする狩人の作法。
そして──それらを包括出来るトリコ世界の概念。
世界的に悪魔が湧く様になった世界において、人類が辿り着く事すら危険な場所に生息する悪魔や植物は
特に影響が出たのは世界的に有名な食材の産地だ。世界三大珍味なんて〝ギミック〟が下層レベルに至っている場所もある。地獄かな?
「……成る程。〝ギミック持ち〟が湧く原因については分かった。それで、ここのマグロはどんな〝ギミック持ち〟になったんだ?船を沈められる程の酷いモノなのか?」
「あーそれはあたしも気になってる。セツニキ達ですら守れないで沈められるレベルって相当だよね?」
修羅勢の力量を正しく理解している幼女ネキとカス子ネキの二人がそう口にすれば、同じタイプの能力者としてジャンヌネキと面識のある田舎ニキも続けて口を開く。
「多少の違いこそあれ低く見積もっても俺と同等だからなぁ、ジャンヌネキ。それが沈められるって相当だよ?」
「
「んー……命の危険は無い?」
「一本釣り以外で仕留めなきゃ大丈夫だ」
逆に言えば【貫通擊】とかで〝ギミック〟ごと殺すとヤバいんだが。
「それなら最初は大人しく釣りしよっか。二人もそれで良いかな?」
「「了解」」
「じゃ、掛かるまで雑談でもするか」
この面子で集まるのも珍しいしな。
◇
「そういやセツニキ。中層以降の〝アイサツ〟って何であんな形になったん?」
釣り上げた水魔に腹パンを決めたカス子ネキが何事も無かった様に聞いてきた。こちらも釣り上げたサハギンの首を刎ね飛ばしてから答える。
「あれ、実はTS俺達向けの荒療治の結果だぞ?」
『『『ちゃんと意味あったのっ!?』』』
「流石の俺らも理由が無ければあんな無駄な事はせんよ」
ノリと勢いでやった事は間違いないが。
「中層解禁されたばかりの頃にな?インキュバスやサキュバスに耐性をぶち抜かれて【
当時はまだ【無効】系の装備も少なく、ついでに言えば権能による強引なぶち抜きに対応する術も少なかった。……いや、むしろ耐性装備に頼ったが故に油断していた面もあったか。
「俺も含めて前世と性別が変わってない奴は問題無かったし、前世より今世の性別との付き合いが長い奴も問題無かったんだが、TS組の一部が厄介な事になってな」
「というと?」
「性自認が男なのにインキュバスに
今でこそ笑い話だが当時は塞ぎ込み、メンタルケアの必要があるぐらいには問題になった。というか、それ以外の問題も発覚したし。
「想像が着かないな。私にとって山梨と星祭の修羅達は、そんな些細な事を笑い飛ばす人達のイメージなのだが」
「俺もそういう印象だわ」
「田舎ニキや幼女ネキが合流した頃にゃ今の俺らになってたからな。これはその前の話だ」
餌を盗られたので新たに付け直して再び荒れた海へ投げ込む。掛かれば一発で判るので、竿が引いただけでは喜べないのが欠点だよな。
そんな事を思い浮かべていると、カス子ネキが深き者を蹴り飛ばしながら疑問を投げ掛けてきた。
「ぶっちゃけ何が問題になったん?あたしの知り合いもTS組だけど特に問題があった記憶無いよ?」
「邪視ネキ*1と比べちゃ駄目だろ。というか俺ら星祭は量産型修羅だから、真修羅とは比べ物にならんぐらい一般人メンタルの奴が多いんだぞ?」
早期に合流してショタオジ主催の厳しい修行の実験台となって覚醒。その後は皆がやってるから……という消極的な理由でダラダラレベリングした結果、
今世で再び〝ぼっち〟になる精神的苦痛よりも、身体的な痛みの異界探索を選んだ異常者達と言われればそれまでなんだが。
「星祭が一般人メンタルだったら他の黒札はどうなるんよ」
「ロボ部とかの情熱が友達と遊ぶ事に全力で注ぎ込まれてるだけって言えば理解出来るだろ」
「あ~……そう言われると納得出来るかも」
「ナマモノネキの情熱が戦闘に割り振られていると考えれば……まぁ、理解出来るな」
釣り上げたシードラゴンに【ジオダイン】を叩き込み、MAGに還した幼女ネキが少しだけ嫌そうに口にする。
ナマモノネキはなぁ……恐れ知らずというかショタオジを題材に書く勇気は凄いと思う。
「話戻すけど何が問題だったの?厳しい修行で同性からの強姦体験とかあったし【魅了】も経験済みっしょ?」
「あくまでもアレは修行の一環で、中層で起きたのは実戦だったってのもあるんだが、丁度、増長してた頃だったからな。見事に伸びた鼻を折られたというか──早い話が
「甘かった?」
「性自認の揺らぎってのは厄介なもんでな。男の俺ならインキュバスからの【魅了】に耐えるのは余裕*2だし、逆にサキュバスの【魅了】を食らっても笑い話で済むんだが、揺らいでいるTS組は
自分は男だと思っていたのにインキュバスに惚れてしまった。嫁式神の悲しそうな視線、仲間達から向けられる視線を
それを引き摺り出して性癖を叫ばせ、自身の性自認をハッキリさせたのが〝アイサツ〟の原型だ。
恥をお互いに知っている事で安心感を生み出し、仲間同士の連帯感を出す為でもあったが。
「探求ネキや幼女ネキの様に確固たる自分があるなら問題無いし、邪視ネキみたいに今の自分を受け入れてる奴なら特に影響はない。ただ、さっきも言った様に俺らは一般人メンタルが多かった」
「成る程ねぇ。自分に自信が無ければ精神的に脆くなるのは当然で、余計に【魅了】を食らいやすくなったと」
「そう。それをそのままドッペルゲンガー対策に利用した結果〝アイサツ〟が生まれたんだよ」
釣り上げたサハギンを【ノッキング】で絞めてから再びリリース。数秒もしない内に今度はメガロドンが掛かった。
これを再び【ノッキング】してリリースすると、次は龍神が釣れた。流石に邪魔なので真っ二つに叩き割ってMAGに還す。
餌として用意したイカやサンマやサバ*3はまだまだあるが、いい加減掛からないかねぇ。
完結後だからこそ出来るお遊び要素。
連載中もやった記憶ある気がしないでも無い(笑)