【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
本スレ眺めて思い付いた話。
それなりに長いぜ!
星祭神社の門前街には終末の前から続く焼肉屋がある。俺らがオークションを開いた時に打ち上げに使った店だ。
残念ながら先代は半終末の頃に寿命でお亡くなりとなってしまったが、その息子夫婦が二代目として店を引き継ぎ、終末後も俺らの支援を受けて焼肉屋を経営している。
来客の職種は様々。門前街で店を構える者も居れば、流れのデビルバスターも来店する事があるし、穏健派が来る事もあれば、黒札が終末前を懐かしむ為に来店する事もある。そんな店だ。
『『『乾杯ぁぁい!!』』』
グラスをぶつけ合い、
今日の日の為に店を貸し切った。終末後はそれが出来る権力を持つのが黒札だ。
そんな事をぼんやり考えながらチョレギサラダを食べていると、俺の席に着いてきたタタラネキが肉を焼きながら楽しそうに笑う。
「いやー、話には聞いてたけど、星祭って本当に宴会しまくってるね」
「実は星祭以外も紛れ込んでるけどな」
「え、そうなん?」
「ほれ。あそこの席はダメンズ同盟だし、あっちは呑兵衛の会の奴等だ。製造班や農業系俺達もあそこに居るし、ちひろネキは居ないが運営業務に携わってる事務課俺達も来てるぞ?」
視線でそちらの卓を示せば、そこにはすでに出来上がってる呑兵衛共と一緒に、甲斐甲斐しく嫁に世話をされている黒札達の姿が。
それを見て笑いながら肉を焼いている俺達も居る。全員に共通しているのは楽しそうに参加しているという事だ。当然なんだが。
「普通に参加して良いんだ……」
「というか、これも修羅勢の業務の一環なんだ。終末前の準備不足で気軽に出歩けない俺達も多いから、その保護者役として定期的に連れ出してるんだよ。シェルター内で引き篭もるだけの生活は辛いからな」
呑兵衛の会は普通に修羅勢も多いが、ダメンズ同盟は終末後でも三十に到達してない奴が多い。運営系俺達はそもそもレベリングなんてしてる余裕が無かったし、農業系俺達は現在進行系でデスマーチ中だ。
そりゃ息抜きの為の依頼が山梨支部から出されるわな。
「あ〜って事は外で警戒してる俺らってそういう事?」
「おう。だから今この場所は、ショタオジの側を除くと世界で一番安全な場所になってるぞ」
何せ三桁修羅が守護してる場所だ。俺とか魔型が内外から結界張ってるし、三桁程度の悪魔なら何もさせずに袋叩きに出来る。
しかも、例え俺らを殺せたとしても、最終的には山梨支部からショタオジが飛んでくる。だから余程の馬鹿じゃなきゃここで騒ぐ悪魔は居なかったりする。
「ほえ〜……あ、俺は参加しなくても良いん?」
「連携訓練受けてないと邪魔になるしな。将来的にはともかく今はゲストとして楽しんでおけ」
「おk。というか修羅勢って色々やってるんだね。戦闘特化でそんな訓練とかしないイメージあったんだけど」
「それは今も何処かの異界に生息してる真修羅達だけだ。俺らは富豪俺達とか製造班の護衛をする事が多かったんで、マニュアルまで本気で作ってるぞ」
「コイツら、やる事が
本当はキノネキ率いる実銃愛好部から訓練用の実銃や弾薬を買い取りたかったんだが、流石にあちら側に余裕が無かった。
仕方なく探求ネキの火栗の木から量産したのは良い思い出だ。
過去に記憶を飛ばしていると、注文した肉と酒が来た。ここからは何時もの食事の時間。タタラネキも俺が食事中は喋らない事を理解しているので、お互いに食事に集中。
それから三十分程で食事を終えたら、今度は肉を肴に飲み会の時間だ。
「そういやセツニキ──つーか、星祭の皆ってさ。頑なに俺達の名前を呼ばないよね。本名を悪魔に知られると不味いってのは分かるけど、他になんか理由あるん?」
「んー詳しく説明すると長くなるぞ?」
「酒の席ですしお寿司!」
「そんな楽しい話じゃ無いんだけどな」
軽く酒で喉を潤し、話す内容を手短に纏める。タタラネキは山梨修験者組だから当時の俺達の状況についての知識は掲示板ぐらいか。そこらへんも含めて説明するべきかね?
「そうだな。まず最初に知っておいて欲しいんだが、これはどっちが悪いって話じゃない。当時の俺達からして見れば頭が可笑しいのは俺らだったし、それは俺らも認めてる。ただ結果的に終末が来て、勝ち馬に乗ったのが俺達だったって話だ」
「分からんけど分かった!要は白黒ハッキリ答えが出る問題じゃないって事だね?」
「その認識で大丈夫だ」
本当にニキネキ呼び問題は危機感の差だからな。対岸の火事と見ていたか、それとも自身に降りかかる震災だと思っていたか。
俺達は後者で、実名で呼び合う俺達が前者だと思っていた。それだけの話だ。
「俺が本名で呼ばないのはガイア連合と呼ばれる前の時代の名残だ。当時はショタオジ以外メシア教に刃向かえる強さの奴なんて少数だったから、自己防衛も兼ねて名前を呼ばなかったんだよ。集まった時はオフ会のノリだったしな」
「あ〜確かにそんなノリだったね。でもすぐに本名教え合ったりしてたよね?俺もセツニキに名乗った記憶あるし」
「俺は吾輩は転生者である。名前はまだ無いって自己紹介した記憶あるぞ?」
「そうそう。真剣な表情で言われたからマジでびっくりしたし、過去を聞いてさらに驚いたよ」
俺の名前を知ってるのは星祭の巫女と嫁達だけだ。正確には本名なんて無いんだが。
「で、ニキネキ呼びを通した理由なんだが、ぶっちゃけて言えばメシア教対策だ」
「え?過激派は穏健派が追い出したのに?」
「そりゃ記憶が間違ってる。
恐山や日本神解放戦ぐらいで合流した俺達にとって、メシア教は穏健派と過激派に分かれている組織だ。
だがまだガイア連合の名前が無かった時期は一つの纏まった組織だった。それこそお互いに情報のやり取りをするぐらいには。
「当時の俺は世界的に見て中堅クラスのレベル三十。そんな奴が誰かの名前を呼ぶとする。タタラネキはどうなると思う?」
「え?特に何も起きないんじゃない?」
「答えは──
当時の俺達は根願寺にすら『あぁ、そういえば、そんな霊能組織もあったな』程度の認識だったんだ。
そんな零細組織(笑)をメシア教から匿う理由が根願寺には無く、基本的に情報は筒抜けだったと思っている。逆の立場なら俺でもそうするしな。残当。
「ちなみに覚醒した直後に地元に戻った奴は、二、三日もしない内にお隣が引っ越して、代わりにメシア教が〝こんにちわ〟だ。過激派が来た奴のところには霊視ニキが出勤したぞ」
「うわぁ〜……」
日本は根切りのお陰で覚醒者の数が少ない。その前提を忘れてノコノコ覚醒した状態でショタオジの庇護下から離れれば、そりゃそうなるとしか言えん。
当時は高級式神どころか普通の簡易式神すら普及待ちだったし。
「で、これで話が終わるなら楽なんだが、残念ながらそうは問屋が卸さない。見知らぬ美女シスターに優しくされ、鼻の下を伸ばした奴が俺達の名前を気付かぬ内に漏らす。すると、次の日には漏らされた奴の隣にメシアンが引っ越してくる」
「待って。メシアン相手に漏らす奴いるの?」
「女神転生を知らない、またはゲームの話としか思っていない俺達にとって、当時のメシアンはメシア教のシスターでは無く、何か知らんけど自分に優しい美女or美少女シスターなんだよ。メシア教の所業を嘘だと思っていれば自分に優しくしてくれる天使に惚れるし、覚醒してなければ洗脳されても気付けない。ここらへんは嫁や女悪魔に対する俺達の反応を見れば分かるだろう?」
「ひ、否定出来ない……!」
これが対岸の火事だと言った理由だ。俺ら修羅勢と一般的な黒札の差は
「俺らは霊視ニキが掲示板に書き込んだ
リアルでニキネキ呼びとか有り得ないよなwwwなんて言葉は良く言われたし、好んで戦闘する事に対して頭がおかしいと言われる事なんて日常茶飯事だった。
中には黒札なのに何で努力する必要があるの?って台詞を吐く奴も居た。嫁遠征だけで生きていけるのに、とも。
まぁ、考え方は人それぞれだし、確かに終末後の黒札はある種の特権階級みたいなもんだろう。
金札以下とは手に入る物が違うのもその通り。何も否定する事は無い。
だけど、ソイツらは肝心な事を忘れている。
ガイア連合は黒札同士の互助組織であり──終末の為に支払った努力の分だけ、
「
「……どうなったの?」
「
ショタオジですらノリで掲示板越しに腹痛呪詛を飛ばす*1んだ。
掲示板で生意気な奴に呪詛を飛ばす黒札の数なんて、数える方が馬鹿らしい。*2
これが厳しい修行を受けていたなら問題無かった。呪殺や破魔の怖さを体験出来るからな。しかも術者はショタオジだ。
俺達の自我が消えるギリギリレベルの【呪殺】や【破魔】を経験出来た筈だ。
悪魔と戦った経験があれば、まぁ今よりはマシだっただろう。世の中には平気でこういう事をしてくる存在が居ると知れただろうし、対処法を学ぶ機会もあった筈だ。──でも、その黒札は
「ちょっと掲示板で調子に乗って、それが俺達の怒りを買った。異界に潜っていたなら【呪殺】対策の装備を持っていたかも知れない。でも嫁遠征で手に入れた金を自分の娯楽の為にしか使ってこなかったソイツは、素人の俺達が面白半分で連打した呪詛の雨を喰らい、パソコンの前で盛大に下痢をぶちまけた」
「それで心が折れて引きこもり?心配する人は居なかったの?」
「さっきも言ったろ?嫁遠征以外は何もやってなかったって」
ガイア連合が互助組織である以上、
それすら
「タタラネキなら分かると思うが、誰だって痛いのは嫌だし、面倒事は避けたい。それは
「嘘だッ!──って、話を聞く前はそう思ってたかも」
「まぁ、今の俺らしか知らないとそうなるよな」
そこへ聞き耳を立てていた俺らがやって来る。片手には──いや、待てや。なんだその酒?それは酒なのか?
「実はマジなんだぜ?この話」
「俺らとか初依頼で盛大に漏らして、脱糞して、セツニキに【浄化】して貰った実績持ちよ!」
「当時は一反木綿だったムラサキさんに泣きついた経験だってあるんだぜ!」
「レティちゃんとかアイちゃんには今でも頭が上がらねぇんだわ!!」
謎のドリンク?片手に昔の失態を肴に盛り上がり始めた俺らから視線を外し、タタラネキがこちらを向く。
「……セツニキ。この話、マジ?」
「マジだぞ。星祭所属の黒札で最初から覚悟があったのは、俺を除いてグラ爺、シエラ婆、秋雨ニキの三人。それと喧嘩慣れしてた男鹿ニキ達ぐらいで、他は泣いて漏らしてヒーヒー言いながら頑張ったんだ」
今でこそ深層で自称神や大悪魔と殺し合ってるが、最初はそんなもんだった。だから俺らは〝
「掲示板を眺めてると分かるんだが、依頼の話で盛り上がったり、ガチャの結果で一喜一憂出来たり、嫁自慢出来る奴は基本的に黒札の中でも中の下以上なんだぞ?」
「……依頼や悪魔討伐、もしくは製造班で働いてるから?」
「そうだ。推しや好きな事に課金する余裕があるって事は、少なくとも本人が悪魔と戦える黒札か、手に職のある技術持ちの黒札しか居ない。お気に入りのシェルターへ行く奴なんて最低でも
平気で三十過ぎの悪魔が湧く終末後の世界で、外を出歩ける奴なんて
彼ら、彼女らと俺らの違いは──終末対策に支払った努力の時間だけ。
散々、俺らを頭おかしい呼ばわりしていた奴が、悪魔に襲われた推しのシェルターに駆けつけるなんて話は良く聞く話だ。そいつ相手に俺らと同じじゃんと言えば、顔を真っ赤にして
「ついでにもう一つ、面白い話をしておこう」
「今までの話、全然面白くないんだけど?」
「まぁ、聞いておけ。表社会で活躍したせいで本名バレした黒札の話だ」
富豪俺達にはショタオジお手製の【呪殺無効】装備があった。それに加えて星祭から護衛を派遣していた。──だからこそ、事件の発覚が遅れたんだが。
「とあるアイドル志望の黒札がガイア連合のコネを使って芸能界に入った。歌は人魚ネキほどでは無いが上手く、踊りも悪くない。年齢は恐山の霊水で誤魔化せるし、覚醒者故のカリスマもあった。だから、そこそこの人気が出た」
「もうこの時点で嫌な予感しかしない」
「その結果【探知】系スキルで辿られ、身代金目的の闇召喚士や聖母を求める過激派残党から襲われる毎日の始まりだ。ついでにネットの暇人達が実名を特定。程無くして自宅を突き止められ、両親が〝羽根入り〟になる事件も起きる」
「デスヨネー!覚醒者が公共の電波に乗ったらメシア教が近寄らない訳無いじゃん!!」
まぁ、クズノハやヤタガラスが何で国の影に隠れていたかって話だ。名前と容姿が分かれば【呪殺】は出来るし、どちらか片方あれば追跡は可能。
アメリカ相手に日本がやったのにな。そのせいで日本の霊能組織は根切りにされたってのに。
「で、オチだ。ガイア連合と繋がりがあるって芸能界経由でバレて、名家やメシア教からのアプローチに耐えきれずにノイローゼ。今では立派な引きこもりだ」
「俺、ずっと山梨で遊んでた自分を褒めたい。少なくても黒札って事はバレてないし」
安堵の溜め息を吐き出したタタラネキに対して、再び俺らがやって来る。
「俺らは黒札バレしてるぞ!殺気向けると大抵相手は死ぬが!」
「それな!ちょびっと霊力漏らすだけで気絶は余裕だぜ!」
「だから堂々と推し活するし、ライブにも行く。ついでに周辺の異界潰して好感度アップだ!」
「これが霊格格差……!」
「まぁ、その為に終末前からコツコツ努力してきたんだ。好き勝手やる為にな」
だから努力してない黒札が幾ら平等を叫ぼうと、俺らは鼻で笑って努力しなかったからだろ?と返す。
だって、時間は平等にあったんだからな。
◇
うちの主人公が自己紹介以外でニキネキ呼びに固執する理由はこれです。初期勢&オカルトガチ勢なら警戒しない方が可笑しいという考えですね。
カオ転世界の掲示板は現実の掲示板と違って、荒しやレスバがヒートアップしたら呪詛が飛び交うと勝手に思ってる(笑)