【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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という訳で解決編!

モブ修羅勢達の活躍を是非御覧ください(笑)


バッドエンドのその先で 解決編・前編

 

 

「今回の事件は、グラ爺率いる俺達が依頼で過激派拠点(この場所)を襲撃した事で始まりました」

 

 

 俺達に説明しつつ()()()()に染まる廃墟と化した教会を歩く。

 

 壁、床、天井。この場にある物を否定するかの様な惨劇の跡は、グラ爺が怒りのまま武器を振るった証でしょうね。

 

 

「なんというか今のグラ爺からじゃ想像つかないぐらい暴れたみたいだね?斬撃痕がすげぇ」

 

「怒りに任せて暴れたって感じだよね」

 

「まぁ、グラ爺にとっては初めてメシア教の悪行を目にした場所ですからね。そうなっても不思議ではないかと」

 

 

 気が狂っている人間でなければ決してやろうとは思わない人体実験の数々。当時はまだ一般人に毛が生えた人間だったグラ爺にとって、それがどれほどの衝撃を与えた事やら。

 

 そういう意味では主様はいったい何なんでしょう?幾ら戦地帰りとはいえ、明らかに慣れすぎてるような……?

 

 

「ん?それはおかしくない?グラ爺は黎明期組だし、今回の事件の発生は最近だよね?時系列が合ってないよ?」

 

「それについては見てもらった方が早いかと」

 

 

 教会の地下に作られた後ろ暗い区画へと続く道は何重にもコンクリートで塞がれている。

 

 とはいえ、物理的な強度は私には関係の無い話。

 

 空間ごと埋め立てられた壁を空間ごと切り抜き、無理矢理道を作り出した。……あ、そうでした。

 

 

「脳缶ニキ。この先は貴方にとって思い出したくない記憶を想起させる場所だと思うので、体調が悪くなったら無理せずに言ってくださいね?すぐに山梨へ運びますので」

 

「…………ってことは、ボクの()()が居たエリアになるんだね」

 

 

 神妙な表情で呟いた脳缶ニキに一度だけ頷く。

 

 

「遺体は残ってませんが、当時の面影が色濃く残ってますから。一度でも見たことのある方ならすぐに想像してしまうと思います」

 

「そんなに?」

 

「国内最大の集積場でしたので」

 

 

 切り抜いた道を通り抜けると、後ろを歩く俺達の足音が木床を踏む音から硬質な音へと変わった。

 

 

……床の材質は白大理石ですか。

 

 

 西欧の教会には良く使われている石材で、荘厳華麗を演出する為に太古の昔から使用されており、本来ならば歴史的に保護されるべき物になる。

 

 残念ながらこの場所は血に穢れすぎていて普通に取り壊す方向になるでしょうが。ここに住みたいなんて奇特な人も居ないでしょうし。

 

 

「ん?異界……?」

 

 

 斥候系の俺達が違和感に気付いて足を止める。その後すぐに術系俺達が探知術式を起動して場の違和感を探り、答えを出した。

 

 

「いや、これは【空間拡張】の方だね。俺らの拠点に使われてるやつは神道式だけど、これはキリスト系かな?」

 

「外観と合わなくなるやつか。でも、それにしては広くね?ここ、一応破棄拠点なんだよな?」

 

「キリスト系の【空間拡張】は大抵侵略とセットだからね。たぶん地脈に食い込んでるんじゃないかな?もしくは──まだバッテリーが残ってる?」

 

 

 こちらに視線を移したので首を横に振っておく。

 

 

「それよりも、もっとえげつない仕組みですよ」

 

「マジか~……嫌な予感しかしねぇ」

 

 

 最悪を超える最悪を想像した俺達を引き連れ、螺旋階段を降りる。

 

 その途中の視界に入る壁には、キッチリと計測してから作られたと思われる大きさの穴が空いており、その穴の中、上下左右の壁には接続する為のプラグの様な物の残骸が残っていた。

 

 

「……ねぇ、ムラサキ。さっき、ここの事を()()()と言っていたよね?」

 

「ええ。確かに私はそう言いました」

 

「で、ここはボクの同類が居た場所とも言ってたよね?」

 

「ええ。確かに私はそう言いました」

 

「そっか。…………こんな数の人間が犠牲になったんだね」

 

「ええ。信仰心とは恐ろしい物ですね」

 

 

 アメリカで作り上げた()をコンテナ船で横浜港へ運び、そこからこの拠点へ運搬。後は()()()()ごと壁に嵌め込めば、各地へ配送されるまでの間、基地を維持するバッテリーとして動くという仕組みだ。

 

 脳缶を一つ一つ作り上げるのでは無く、コンテナに無数の脳を詰め込み、そのまま一つの巨大な脳缶バッテリーとして運用する。

 

 他の拠点に運ぶ時は脳みそを取り出し、改めて小分けにパッケージすれば良い。

 

 コンテナ側にも細工が必要だが、腐ってもアメリカなのだ。日本とは違い、土地も金もある。

 

 だからこそ出来た、合理性だけを追求した施設が──この拠点の正体となる。

 

 もはや軽口を叩く余裕すら無くなり、誰もが口を閉じて階段を降りていく。

 

 当時の俺達の技量では拭い切れなかった怨嗟があらゆる場所にこびりつき、負のMAGを生み出しているが、その割に道中では悪魔一匹すら湧かず、ただ不気味な静けさだけが場を包みこんでいる。

 

 そんな環境に耐えられなかったのだろうか。

 

 わざと明るく振る舞ったカス子ネキが場の空気を変えるように当然の疑問を口にした。

 

 

「いや〜でも流石グラ爺だよね。当時のレベルで良くもまぁこの規模の施設を落とせたもんだ」

 

「確かにそうだな。私もその場に居れば心踊るような殺し合いを楽しめたかと思うと残念でならん」

 

「残念ながらそれは厳しいかと」

 

「ほう?何故だ?これだけの規模なら手応えも相応にあると思うが?」

 

 

 こちらへ顔を向けた黒死ネキの視線を扇子の先へ誘導する。

 

 その先には在るのは──西欧ではポピュラーな魔除けと知られる十字架と文字列。

 

 

「テトラグラマトン*1とクロスの組み合わせは厄除けとして機能しますからね。敬虔な信徒に降り掛かる災厄を異教徒に流すぐらいは造作もないでしょう」

 

「…………なるほど。大規模拠点だからこそのギミックか」

 

 

 術系を得意とする主様とは違い、黒死ネキは自身の才能を武器に戦うタイプ。それはそのままギミックに対する対処法にも現れる。

 

 斥候系や術系の俺達は【看破】から入りますが、戦闘狂の方々は【貫通】から試しますからね。たぶん、その場合はペナルティとして周辺に住む街の住民(異教徒)が万単位で吹き飛んだ事でしょう。

 

 数十万のバッテリーと世界最大宗教が組み上げるギミックとは本来そういう代物です。頭メシアの方々は何故か慢心して力技に走ってますが。

 

 そこら辺の話を軽く語りながら先へ進んでいると、前に居たカス子ネキが後ろ向きに階段を降りながら私に疑問を投げかける。

 

 

「ムラサキの話通りなら良くグラ爺達はここを落とせたね?セツニキが居たならまだ分かるんだけど、居なかったんでしょ?」

 

「ええ、居ませんでしたよ」

 

「それならギミックはどうやって抜いたん?今のウチらなら余裕だけど、当時のグラ爺達じゃかなり厳しいよね?」

 

「ああ、それなら簡単な話ですよ。何故か掲示板では話題になりませんが、武器式神には武器式神()()()利点があるんです」

 

「利点……?」

 

 

 首を捻るカス子ネキに一度頷く。

 

 

「ギミックに対応する知識を入れておくと【貫通】に補助が入ると言いますか。武器側がギミックを抜く為の最適化を行ってくれるので、所有者は意識せずとも抜けるようになるんです」

 

 

 とはいえ武器に知識系スキルを入れる人間がどれだけいるのか、という話になりますが。

 

 

「…………それって結構大切な要素じゃない?」

 

「私のような人型式神に知識を入れれば斥候型と同じ動きが出来ますし、主様のように自身で知識を蓄えれば問題無いですからね。基本的に物理型の中でも武芸に生きている方以外には余り意味が無い要素と言うか……」

 

「あー……」

 

 

 攻撃スキルや補助スキルを入れた方が簡単に強くなるのも話題にならない理由でしょうか?修羅勢のような方々ならともかく、一般的な俺達は戦闘自体を忌避してますし。

 

 説明してる間に螺旋階段は終わりを迎え、視線の先には豪華な扉が。わざわざ木製の扉に金縁の加工している辺り、メシア教の資産の大きさを改めて誇示されている気分になりますね。

 

 

「この先に元凶が?」

 

「いえ、そちらの先には何もありませんよ。──元凶はこちらです」

 

 

 グラ爺達の暴れた跡の残る教会では無く、その反対側の()()()()()を切り開く。

 

 後から埋め立てられた訳では無い完全に隔離された区画。だからこそグラ爺達は見逃した訳ですが……当時のグラ爺達が見てしまえば狂う可能性もありました。

 

 その事を考えると皆さんが下層クラスに到達したこの時期に発覚して良かったと思います。──それぐらい()()光景ですからね。

 

 

「…………信仰心って凄いね」

 

「凄いですよね」

 

 

 目の前の光景を見て呟いた脳缶ニキに同意しつつ、俺達が全員部屋に入ったタイミングで空間ごと隔離する。

 

 

 この光景を一言で表すなら──肉の柱でしょうか。

 

 

 柱の全面に苦痛に歪んだ人の顔が浮かび上がり、心臓の鼓動に合わせて脈動していて、大量の蛆が湧いている事を除けば、この規模の拠点を支えるに相応しい見事な柱です。

 

 

「……解析完了。考えてみれば当然だけど、それでもやるか普通?っていう感想が拭えねぇわ」

 

「どういう事だってばよ?」

 

「脳缶の材料は覚醒者。で、連合の製造班達がやってるように俺達霊能者の血肉は霊能素材になる」

 

「つまり、脳みそを抜いた後の肉体を勿体無い精神で使ってるって事?」

 

「おう。御丁寧に圧縮まで駆使してるが、下手すりゃ数万単位の肉体が使われてるぞ。──こんなくだらねー拠点を維持する為にな」

 

 

 吐き捨てるように山梨の修羅勢が語っている間にも、湧いていた蛆が蛹となり、蝿に変わる。……感傷的な気分で大事な部分を見逃すとは。

 

 皆様もまだまだ人間ですねぇ。

 

 

「柱はそれ単体で()()()()としての概念を持つが、そこに人柱の意味を重ね、()()()()としての概念を追加する。そうすればこの肉柱は拠点を支える物となり、同じ境遇の者を望まずとも支え合い、人柱として拠点に降り掛かる災厄を引き受ける便利な()()に早変わりだ。反吐が出るな!」

 

「まぁ、メシア教だしなぁ。恐山の巫女で人間牧場やってたらしいし、その子供を肉柱に組み込むぐらいは平気でやってそう」

 

「ん?やってるぞ?だからそこら辺に死んだ事に気付けなかった赤子の霊が漂ってんだろ」

 

「うげ、ホントだ」

 

「だから脳缶ニキは()()()()()()()()って言ったんだよ。神を信じるだけでここまでの事が出来るって証明しちゃったからな」

 

「ガチキリスト系俺達がブチギレそう」

 

「最初からキレてるから今更だろ」

 

 

 俺達が話してる間にも斥候系俺達がギミックの解除を試みているが、最下位とはいえ終末案件。レベル五十程度では力が足りず、早々に解除道具を懐にしまい始めた。

 

 

「無理……っつーか駄目だな。解除率六割は終末案件でやっていい数字じゃない」

 

「双子ニキ(弟)でその数字なら最初から無理って事で良いよね?」

 

 

『『『異議なし!』』』

 

 

 ここらへんは日頃の積み重ねですね。斥候系俺達のトップがそう判断するなら異論は無い。それが修羅勢の結論になります。

 

 

「あ、そういやムラサキにはどんな案件かの心当たりがあるんだよね?その知識を足しても無理そう?」

 

「んー……詳しい説明は省くが、意味が無い。俺もギミック解析して分かったんだが、コレは起動中の時限爆弾みたいな状態なんだ」

 

「赤を切るか、青を切るかって事?」

 

「おう。で、赤を切れば青の終末案件に繋がり、青を切れば赤の終末案件に繋がる。そんな感じになってる」

 

「両方切ったら?」

 

「神話ミックスの終末案件だな」

 

 

『『『最悪やんけ!』』』

 

 

「だからムラサキも口を出してないんだろ」

 

 

 口を挟まないのは貴方達の教材に使っているという事情もありますけどね。

 

 

「俺が把握してる事前情報から推測すると、片方がゾロアスター系列なのは分かるんだが、もう一つは何の案件なんだ?ギリシャか?」

 

「いや、北欧だ」

 

 

 カビゴンニキの問いに双子ニキ(弟)が答えると、黙って話を聞いていた黒死ネキが口を挟む。

 

 

「北欧?グラ爺はハデスだからギリシャじゃないのか?」

 

「グラ爺の根源は確かにギリシャ系なんだが、肉体は欧州系だからな。隻眼で槍使いってのもオーディンの役割を担うには十分だし、もしかしたら本当にオーディンの転生体の末裔かも知れん疑惑がある」

 

「……成程。我々が転生者故に、という事か」

 

「セツニキなんか仏教系のくせに神道生まれだしな。一族の中には日本神の生まれ変わりが居てもおかしくないし、俺らの中にも〝二重血統(ダブルブリード)〟や〝三重血統(トリプル)〟ぐらいは居るんじゃないか?」

 

 

 長い歴史の中で他の悪魔の転生体と交わらない可能性が低い筈も無く。

 

 最初から神の血肉から生まれたとされる民族は転生体の要素も兼ね備えますから、歴史の中で混ざった事も一度や二度では無いでしょう。

 

 というか名家同士で血を混ぜていますしね。名家の源流を辿る過程で複数の悪魔に辿り着くでしょうし、海外でもそれは同じこと。

 

 だからグラ爺の血にオーディンの血が流れていても不思議ではありません。今回はそれを悪用され、見事に終末案件に繋げられましたが。

 

*1
ヘブライ語で神を意味する四文字。





ネタ自体は結構昔から考えてたんだけど、脳缶ニキの設定公開待ちだったのは秘密。

蝿の悪魔はアイツの印象が強すぎるんや。

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