【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
暑さのせいでこの話を書くのに二ヶ月近く掛かったぜ……
パンッ!と一度手を叩き、俺達の視線を集める。主様が長い月日をかけて刻み込んだお陰で、修羅勢の皆様は即座にお喋りを止め、視線を私に向ける。
「────さて。事件を解決する為にも一旦情報を整理しましょうか。近い将来、皆さんはこういう事件に投げ込まれる事も多くなるでしょうし、初動の動きを覚えておけば別の案件でも役立つでしょう」
「えっと、覚える事は良いんだけどさ。それ、腕力判定で行けない?知力判定だとクリ出ない限り失敗するんだけど?」
「いや、お前下層試験突破してんだろ。それなのに何で失敗する前提なんだよ」
「いや〜キツイっす。上位層見ると自分の知力を信じられなくない?」
「それは比べる相手が悪いだけだと思うよ」
冷静に突っ込んだ脳缶ニキも上位側なんですけどね。
「まぁ、こんだけ修羅勢が集まってりゃ一つぐらいはマシな案も出るだろ。とにかく今は動くぞ」
『『『うぇ〜い』』』
カビゴンニキが音頭を取り、俺達が円を作るように座る。とはいえ即応出来る態勢を維持しているので、問題が起きても即座に全滅する心配は無さそうです。
「北欧側は分かりやすいよな。間違いなく〝ユミル*1〟関係だろ」
「〝
多くの方には説明不要な気もしますが、
神話の中では珍しく明確に一度滅びる事が明言されており、それをこの世界に当て嵌めれば容易く終末案件に繋がるので、私達ガイア連合が重点的に警戒していた神話群でもあります。
……正直、この神話は知名度の高さが厄介なんですよね。
神器の大半が名だたる名作の最強武器として登場してる関係で、ただでさえ強い主神クラスの戦力が跳ね上がる事が多々あります。
まぁ、そんな悪魔を相手に武具を奪うからこその修羅勢なんですが。
「って事は、この蛆は
「諸説あるけど、蛆から人に変えたのはオーディンを筆頭とした神々だからじゃない?」
「つまり、
「あー……それはありそう」
まぁ、間違いなくそうでしょう。オーディンの条件をグラ爺が満たしている以上、その仲間である私達は名もなき北欧の神々の代役条件を満たしているでしょうし。
「……これ、もしかしなくてもかなり厄介な案件じゃね?」
「終末案件なんだから当然だろ」
「いや、北欧ルートだと仲間割れ強制されね?根源が巨人っぽい奴も俺達の中に居るし」
『『『あー……』』』
多種多様な霊能者を抱えている事はガイア連合の強さの一つですが、神同士の戦争がベースとなる事の多い
まぁ、私個人としては主様以外の皆様がどうなろうと構わないのですけど。
ただ、そのせいで構ってもらえる時間が減るのは楽しくありません。これは嫁式神達の大半から同意を得られる意見だと思います。
「んー……って事は、必然的にもう一個のルートかね?」
「だな。でもゾロアスター関係で終末案件って、アフラ・マズダー*4とアンリ・マンユ*5がかち合うぐらいしか分からねぇんだよな……」
「キリスト関係の可能性は考えなくて良いのん?メシア教の拠点だし、メシア関係の可能性もあるんじゃない?」
「いや、それは無いと思うぞ?脳缶ニキも黒死ネキも〝縁〟を感じてなさそうだしな」
この場の全員の視線がお二人に向かいますが、二人は一切動じず、軽く頷くだけ。
「少なくともソロモン関係じゃない事は確かだよ。ボクは全く〝縁〟を感じてないし」
「私も脳缶ニキと同じだな。私は〝疫病〟と深い関わりがあるが、今回の件は私の権能に反応が無い事から考えるに別の神話群の影響だと思う」
「二人がそう断言するならやっぱゾロアスターで確定か」
「まぁ、ムラサキが言ってたから分かってた事だけどな〜」
「それを言っちゃおしめーよ」
「確認は大事。今更疑う気も無いけどムラサキも悪魔だしねぇ」
「良い判断です。私は主様を裏切れませんが、皆様の事は裏切れますからね」
やる意味は無いですが。
「ま、そこら辺は心配するだけ無駄だろ。それより今回の事件から繋がりそうなゾロアスター神話が分かる奴は居るか?状況が落ち着いてる内に概要だけでも知っておきたいんだが」
俺達に視線を動かしながらカビゴンニキが問いかけると、双子ニキ(兄)が軽く手を上げた。
「根源の関係でゾロアスターは俺の専門だよ。ただ……」
「ただ?」
「学んだ知識と事件が微妙に
「何処らへんが気になってるん?」
「俺がショタオジやセツニキから学んだ話だと、その悪魔には死体を動かす力は無いんだ。でも、今回の案件では死体が動いてるでしょ?そこが気になってる」
「…………取りあえず説明を頼んでいいか?もしかしたら俺達の中から〝答え〟が出るかも知れん」
「了解」
カビゴンニキにそう返事を返した双子ニキ(兄)が目を閉じ、知識を思い出しながら言葉に変える。
「今回の事件に該当しそうな悪魔の名は──ドゥルジ・ナス。ドゥルジには『虚偽』の意味があり、ナスには『死体』って意味があるよ。特徴としては蝿に変身する力がある女悪魔で、死体に潜伏して疫病を広げる力があって、生前に慕われていた人間や高名な戦士の死体に潜伏すると伝染病の拡散範囲が広がるって記述があるから今回はまだ運が良かったかも知れない。……それと、近くに番犬が居る場合、何故か潜伏出来ない弱点があったりもする」
その言葉で皆さんの視線がギンへ向くが、視線を向けられたギンは軽く鳴き、首を捻るだけ。本犬(?)は主様に言われたからこの場に居るだけですし、その反応も当然ですね。
「……セツニキには最初から分かってたんかね?」
「いや、あくまでも保険じゃないか?予想が外れても戦力になるし」
「神々の黄昏ルートだったらフェンリルの役割を担えるってのもありそうだ」
「確かに。ま、とりあえず俺達もイヌガミを出しておくか。番犬は多いほうが良いだろ」
「だな」
ショタオジから譲り受けたイヌガミを次々と
「終末案件に繋がりそうな話としては、この悪魔がやって来る地獄の入口のある山がアンリ・マンユとその眷属達の集会所として使われてるんだ。そこからドゥルジ・ナスが現れる場所=アンリ・マンユ達の集会場になって、アンリ・マンユが現界出来るぐらいGPが上がる流れになるんじゃないかな?」
「……なるほど。確かに今回の件に該当しそうだ」
「さっきは気付かなかったけど蛆が蝿になってるから全部の条件が当て嵌まるしね」
俺達の一人がそう言うと、何かに気付いた別の俺達がポンッ!と手のひらを叩いた。
「あー……蛆から蝿になるから人間になれなかったのか!」
「ありそう。北欧神話では蛆から人になる流れだし」
長年の悩みが解決したかのように盛り上がる俺達。
一度気付いてしまえば、この程度の終末案件なんですよね。防ぐ事は容易く、これだけの戦力があれば何の問題も無いというか。
まぁ、
「後の懸念は死体が動いてることかな?」
「あ、それなんだけど、仮説で良けりゃアタシが説明出来るよ」
「お?まじで?」
黙って話を聞いていたカス子ネキが軽く手を上げると、俺達の視線がそちらへ集まる。
「たぶん、この肉柱の〝核〟になってるのはバッドエンドを迎えた霊視ニキや脳缶ニキなんだよ。メシア教に捕まって、拷問されて、覚醒こそしたけど生き残れなかったね」
「あー……そういう事か。根源が〝ユミル〟だと仮定するならそれで全ての説明がつくね」
「どういう事だってばよ、脳缶ニキ!」
「ショタオジが言ってたでしょ?俺達は自我が強いって。だから〝ユミル〟の死体から生まれた蝿にドゥルジ・ナスが宿ったとしても、俺達の魂の残り香がそれを上書きしちゃうんだ。その結果、自分がまだ
「たぶんね」
「補足をしておくと、ユミルは死後に世界の土台となり、人を生み出す存在というのも関係しています。皆さんに分かりやすく説明するとしたら、死んでから本番な悪魔だった、という訳ですね」
『『『これだからオカルトは……!』』』
こじつけに近いですが、筋が通ってしまえば〝あり得る〟のがオカルトですから。
だからこそ正しい知識を学び、対策を考えなければなりません。でなければ修羅勢は名乗れない。
「ま、そこまで分かれば話は早い。さっさと現界させて悪魔狩りといくか」
カビゴンニキが総括すると同時、待ってましたと言わんばかりに俺達が立ち上がる。
「やっと俺の出番だな!鍛え上げた権能が火を吹くぜ──いや、使ったらまずいんだっけ?」
「ゾロアスタールートでも下手すりゃ蛆が人間になるかも知れないからなぁ。使わん方が良さそうだ」
「無意識に権能使ったら戦犯になりそうだよね」
「つまり、物理型は魔法で、魔法型は物理で、万能型はデバフやバフ?」
「もしくはヒーラー?」
『『『クソ面倒だな!』』』
「これから先は気楽に戦わせてくれる悪魔の方が少数ですよ」
下層以降は概念バトルの〝色〟が濃くなりますからね。一部の方々以外は気持ちよく戦える事の方が少ないでしょう。
◇
根源ユミルの俺達
本スレで話してた転生者の運命力の高さで引き寄せた試練に敗北した黒札も居そうだよなwという会話から思いついたキャラ。
実は脳缶ニキの話を初めて読んだ時から肉体の方はメシア教に悪用されてそうって考えがあったんだけど、ネタバレになったら悪いので我慢してた。完結したから解放した。
メシアの話だし、アビャゲイル様のキャラも使いたかったけど、姿を隠してるキャラなので使えなかったのが心残り。