【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


超終末級の幸運

 

 

 掲示板を眺めていたスマホを懐にしまい、同行者の方へ視線を向ける。

 

 烏のような艷やかな長い黒髪を暗雲立ち込める荒野に靡かせ、砂煙立ち込めようとも一切汚れぬ二本の角を持つスーツ姿の美女。

 

 

 終末後、ついに悲願だった容姿の変更を果たした彼女の名は──ベルフェゴール

 

 

 ガイア連合の初期から俺と共に暗躍し、お世話になったヤツも多いであろう悪魔だ。

 

 

「君達は本当にいきなり突拍子もない事を考えるね?」

 

「終末前に準備を完全に終えた俺達も多いからな。年末前の大掃除の時期だし、掃除ついでに遊ぶぐらいは可愛いもんだろ」

 

「そのせいで──いや、()()と言うべきかな?本来なら無意味に死ぬ筈の人間が助かる事を考えると、君達はある意味では神よりも神らしい」

 

「世界の何処かで誰かが丁度良いタイミングでクリティカルでも引いたんじゃないか?」

 

「出る時は出るからねぇ……」

 

 

 そんな他愛のない会話を交えつつベルフェゴールと共に荒野を進む。

 

 

「ところで目的はまだまだ先なのかい?いい加減、この赤銅色の景色にはうんざりして来たんだけど?」

 

「俺の距離感が正しければ、もう岡山駅に着いてる頃なんだが……」

 

「ボクの目が確かなら周囲に文明の色は見えないねぇ」

 

 

 見渡す限り広がる何も無い荒野。アメリカのグランドキャニオンに負けないぐらい立派な渓谷は、ここが日本という事を忘れさせてくれる素敵な景色だった。

 

 流石に支部も派出所も無い土地では道すら残らなかったらしい。まぁ、これがガイア連合が手を出さなかった県の末路だわな。

 

 空に向けて紙の人形を飛ばし、片目だけ視線をリンク。すると遠くの方に灰色が見えた。ここからだと──二時間ぐらいか。

 

 

「一応、目的地自体は見えたぞ。残念ながら暫く先だがな」

 

「やれやれ。こんな事なら第一支部に居れば良かったよ。そうしていれば今頃は──」

 

 

 ベルフェゴールの言葉を遮るように飛んできた無数の銃弾。その脅威に対して俺は霊符で物理結界を張り、ベルフェゴールは軽く片手を振って全てを弾いた。

 

 

「ヒャッハー!久々の女だッ!今夜は楽しい夜になりそうだぜぇ〜!!」

 

「死にたくなければ女を置いてさっさと消えなッ!!まぁ、逃げても殺すけどなぁッ!!」

 

 

 バイクに跨り、マシンガンを乱射してくるのは──モヒカン頭の男達だ。半裸に肩パットという素晴らしい格好は鍛えられた(?)肉体をむさ苦しく際立たせている。

 

 

「良かったな。ちょっと見た目はワイルドだが男に誘われてるぞ」

 

「【外道 モヒカン】は悪魔なんだよなぁ……」

 

「それなら後ろのやつらはどうだ?」

 

 

 正面の男達を無視して後ろを指さすと──

 

 

「アイツら、やっぱり【外道】認定されたのか」

 

 

 興味本位で振り向いたベルフェゴールの顔が、まるで汚物を直視したような歪んだモノに変わった。

 

 俺が指差した先に居るのは下半身を露出し、男性器を勃起させている鉄仮面の天使と、聖職者の姿をした同じく男性器を丸出しにしている二種類の悪魔で構成された悪魔の群れ。

 

 終末後に過激派が人間牧場を行っていた地域で見かけるようになった──【外道 メシアン】【外道 ()()()()()だ。

 

 

「元は人間のメシアンならともかく、普通はあそこまで霊器が歪んだら別の悪魔になる筈なんだけどね」

 

「そりゃお前が勘違いしてるだけだ。あれは終末前の行いが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ぶっちゃけてしまえば新種の悪魔だ。ターボババアなんかと同じだな。

 

 

「……マジ?」

 

「マジだ。物好きな黒札が調べて論文を上げてるから興味があるなら読んでみるといい」

 

 

 かなり分厚い論文だが簡単に要約すると、過激派の人間牧場の中にペルソナ使いが居た、またはペルソナ使いに覚醒した場合、過激派達から与えられた過度な苦痛や恐怖、動物扱いされるというストレスが人類の集合無意識に悪影響を及ぼして当然だよね?という話になる。

 

 この論文をショタオジと二人で読んだ時は『そんな馬鹿な』という感想だったんだが……【外道 モヒカン】の存在がその説を裏付けしちまったんだよな。

 

 コイツラはある意味、終末後の人類が新しく生み出した悪魔だし。

 

 

「普通はすでにある〝概念〟の改変止まりなのに新種まで行ったかー」

 

「まぁ、人間牧場周辺に湧く御当地悪魔みたいなもんだ」

 

「なんて嫌な御当地悪魔なんだ」

 

「それな」

 

 

 軽口を交わしつつ襲い来る悪魔を片っ端から射殺する。というか両方とも〝女を性的に襲う悪魔〟なので自然とベルフェゴールに引き寄せられているから作業に近い。

 

 

「うーん、持つべきものはやっぱり肉盾(友達)だな。楽でいいぜ」

 

「格好良く助けてくれても良いんだよ?」

 

「その願いは私の実力を超えている」

 

「嘘つけぇ」

 

 

 人懐っこい笑みを浮かべるベルフェゴールが右手を振れば大地が円錐状に隆起してモヒカンを貫き、左手をメシアン悪魔に向ければ突風が吹いて風が切り刻む。

 

 これが魔法でも権能でも無く、ただのMAG操作なのだから恐ろしい。

 

 それから三十秒もしない内に戦闘終了。ドロップはイカ臭い白濁色の液体が付いた天使の羽根(フォルマ)と同じくイカ臭いカピカピな牧師の服。それと──〝ガラクタ〟と呼べるレベルまで破損しているバイクのパーツだった。

 

 

「ラッキー♪足ゲットぉ♪」

 

「直せるのか?」

 

「ボクはガイア連合の製造班付きの()()()()だよ?──この程度の修復なんて朝飯前さ♪」

 

 

 

 

 僕達なら何とか出来ると思っていた。僕達には今までこの岡山シェルターを守ってきた自負があった。──でも。

 

 

「オイオイッ!最初の威勢はどうしたぁ!?」

 

 

 地に伏せたまま見上げるのは──この周辺では滅多に見る事の無かった強力な悪魔。

 

 

──【妖鬼 オニ】

 

 

 赤銅色の筋骨隆々な腕を振っただけで防衛隊を挽肉に変え、僕達が今まで生きてこれたのは()()()()()()()()()()という、どうしようも無い現実を突き付けた大悪魔。

 

 

「ん〜?もしかしてもう終わりか?……オイオイ、根性無さ過ぎだろ。お前ら」

 

「がッ!?」

 

 

 わざわざ殺さないように手加減したのだろうか。それでも車に跳ねられた方がマシな程の衝撃が腹部を襲い、血反吐と酸いた胃液が口から漏れる。

 

 

「……チッ。つまんねえな。俺を楽しませてくれる人間が居るっつーから、わざわざ隣のシェルターを見逃して来たのによぉ」

 

 

 これならあそこの人間も食らってやれば良かったぜ。と大きく溜息を吐き出したオニを見て、何故これほど強力な悪魔が()()()()()()()()この地に来たのかを理解した。

 

 

──アイツら……俺達のシェルターを売ったのかッッッ!!

 

 

 世界が崩壊した日から数十年。僕ら若い世代の人間には過去の映像でしか知らない平和な世界。

 

 そんな風になった世界でお互いに助け合いながら必死に生きてきた。

 

 もちろん、仲が良かったなど口が裂けても言えない。

 

 だが何度かあった滅びの時ですら我々の長は同盟相手を売る事を選ばなかった。

 

 一度でもその選択を選べば、今まで築き上げた信用が一瞬で地に落ち、二度と周囲のシェルターから助けを得る事が出来なくなるのだから。

 

 

──それは、この世界では致命的だ。

 

 

 我々のような小規模シェルターにとって〝命綱〟とも呼べるガイア連合という組織の方々は義に厚く、情に深い方々*1だ。

 

 彼ら彼女らは人道に(もと)る行為を嫌悪し*2、裏切りを許さず*3、人として正しく生きぬ者に救いの手を差し伸べない*4

 

 その生き方を貫いてきたからこそ我々は今日まで生きてこれた。周囲のシェルターと人間や霊能者を融通しあいながら助け合って生きてきた。

 

 もちろん我々の力が及ばず、滅んでしまったシェルターもある。

 

 その時に起こった人間の醜さが前面に表れた会議の内容は思い出したくもない。

 

 だが、それでも僕達は〝救いの手〟を差し伸べた。

 

 最終的には難民となった者達を受け入れ、ただでさえ余裕の無い物資を分け与えたのは、同じ境遇に陥った時に助けてもらう為なのだから。

 

 

──その、この世界で最も大切な〝約束(モノ)〟を奴らは捨てた。

 

 

 これから先、自分達だけで生きていけると考えているのか?たった一度の命の為に、シェルターで生きる全ての住人の未来を捨てたのか?

 

 その余りにも軽率な行動に茫然自失していると──さらに事態は悪い方へ進んだ。

 

 

「お?この女、まだ息があるな」

 

「……ぁ……ぁぁ……」

 

 

 オニが無造作に首を掴み、値踏みを始めたのは、僕が世界で一番守りたい者。

 

 こんな僕を素敵な男性だと言ってくれた、僕の初めての彼女。

 

 

「んー……貧相だが、まぁ、楽しめるか」

 

「や……やめ……!」

 

「嫌なら抵抗しても良いぜ〜?その代わり、あそこで寝転んでる男を殺すけどな〜?」

 

「ッ……!」

 

 

 抵抗しようとした彼女を言葉だけでオニが制すと、そのまま衣服を切り裂き、生まれたままの姿へ変える。

 

 その姿を見た瞬間──僕の中の何かが燃えた気がした。

 

 

「その人から……手を離せ……!」

 

 

 もはや怪我していない部位を探す方がボロボロな身体で。

 

 戦う前は恐怖しか感じていなかったオニを睨みながら立ち上がる。

 

 

「へぇ。根性あるじゃんか。──でも、実力が足らんなぁ!!」

 

「ガァァァァ!?」

 

 

 オニが軽く僕を小突く。人間同士ならトンッと軽く押すような動き。ただそれだけだったにも関わらず、僕の身体はダンプカーに突進されたかのように吹き飛ばされる。

 

 

「弱いってのは哀れだな?惚れた女すら守れねぇ」

 

 

 僕から興味を無くしたオニが腰巻を脱ぎ捨て、男性器を露出させる。

 

 

「やめ……ろ……」

 

 

 もはや立ち上がる事すら出来ず、せめて意思だけは伝える為にオニを睨みながら叫ぶ。──だが、何時だって現実は残酷だ。

 

 

「嫌なこった。俺様を止めたきゃ殺してみな」

 

「い、いやぁ……や、やめてぇ……」

 

「良い恐怖(MAG)だ!これだから女を犯すのは止められねぇ!」

 

 

 嫌がる彼女を無理矢理地面に押し付け、その身体を抑え込むようにオニが覆い被さる。さらに彼女の恐怖を煽るように冷たい言葉を口にした。

 

 

「精々楽しませろよ?──その間は食わないでおいてやる」

 

 

 どうして、なぜ、やめろ。様々な言葉が頭を過ぎり、消えていく。

 

 神に祈ったところで神は助けてくれず、悪魔に頼ったところで助けてくれず。

 

 人の力だけでは生きる事すら許されないのか。所詮人間は悪魔の餌に過ぎないのか。

 

 そんなある種の諦めを悟りながらも目の前の光景から目を反らさず、せめてもの抵抗として最後まで地を這い、彼女の元へ手を伸ばすと──

 

 

「星祭流二輪戦闘術──360°ギロチンターンッッ!!

 

 

 目の前のオニの首が突然現れた()()()姿()()()()が跨るバイクの後輪とボディの間に挟まれ、強引にねじ切られた。

 

 

 

 

*1
岡山シェルター(仮)の感想です。

*2
岡山シェルター(仮)の感想です。

*3
岡山シェルター(仮)の感想です。

*4
岡山シェルター(仮)の感想です。





・星祭流二輪戦闘術

バイク好きな修羅勢が編み出した戦闘術。バイクに乗ったまま悪魔を殺す為の多種多様なトリックプレイが現在進行系で開発されている。たぶんキノネキは行ける。



以下、読みたい人だけどうぞ。かなりの長文です。



凄い今更なんですけど、この作品はどくいも様の

小ネタ 割とひどい小ネタ と 現在の人形式神などの補足 から黒札とシキガミの成長速度の差や仕組みを考え、

小ネタ おまけ と 小ネタ 対魔忍系現地霊能組織VS催眠エロ俺たち と 小ネタ 告白以外なんでも出来る娘 から黒札の民度とアウトラインを決めて、

小ネタ 16話小ネタ補足 から現地民の強さを参考にしていて、

小ネタ 人間きもスキルカードは差せるのか? から黒札はシキガミボディより素の肉体の強さ&素質が勝る設定に決め、

小ネタ 悪役令嬢俺たち から権能のはっちゃけ具合を決め、

小ネタ 転生者たちの初期プランと現在の状況 と 小ネタ 終末後、とある辺境にて から修羅勢の強さを決め、

小ネタ 転生者たちの成長現界とレベルの概念 から中層や下層や深層以降の描写を考え、

小ネタ 修行用異界と専用スキル から権能の仕組みを考え、

小ネタ やる夫さんならできたぞ! から低Lv黒札と一般黒札の待遇格差を決め、

小ネタ メスガキママ式神とデイリー探索 と 小ネタ ミナミィネキに聞いてみた から主人公の強さとストーリーの根幹を考えました。

(久々に読み直したら面白くて正月休みが消えたのは秘密)
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