【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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教義を正しく守っても生き残れないなら、人間は容易く教義を捨てる生き物だよね。


超終末級の幸運2

 

 

 適当に霊符をバラ撒き、拍手一回。

 

 ただそれだけでバラバラになった肉片は人の形を取り戻し、輪廻の輪に戻りかけた魂を再びその身に宿す。

 

 ついでに生き残った人間達にも霊符を飛ばして人生で最高の体調に戻しておく事も忘れない。仲間はずれは悲劇を生むし。

 

 スキルでも権能でもなく、こういう時は術式の()()()()()()()しか発揮出来ない仕様はありがたい。

 

 手を抜く必要も、過剰に力を込める必要も無いしな。

 

 

「セツニキ、知ってる?実は高Lv霊能者が低Lvの霊能者に【ディア】を掛けた場合、高確率でオーバーヒールによって肉塊になるんだ。ついでに【リカーム】が使える術者は世界的に貴重*1だったりするよ」

 

「……それを俺に聞くのか?」

 

 

 自慢じゃないが、オーバーヒールによる死亡経験は世界中を見回しても修羅勢(俺達)より上は居ない。ついでに【リカーム】を始めとする蘇生経験も俺達を超える者は居ないだろう。

 

 なにせオーバーヒールによる圧殺はクロネキの得意技で、悪名高き【ディア(魅了)】や格上殺しと恐れられる【ディア(猛毒)】など、肉体や精神が受け入れやすい()()()()からの状態異常付与は一時期Tier1まで上り詰めた修羅勢の基本技能だ。【貫通】が無くても耐性を抜けるメリットを対人戦で悪用しない理由が無いし。

 

 【リカーム】に関しても修羅勢で上達してない奴は居ないと断言出来る。殺し殺され蘇らせてはまた殺してきた。

 

 一部の超特化型の霊能者を除けば、素質の有無を超越出来るぐらい練度には自信があるぞ。その特化型達もシキガミが使えるからこそ、俺達は遠慮なく殺し合ってきたのだから。

 

 

「あ、あのっ!」

 

 

 声の発生源に視線を向ければ、そこには先程まで倒れていた青年が。視線に混じっているのは──羨望と感謝か。この御時世で良くそこまで真っ直ぐに育ったもんだ。

 

 

「救援ありがとうございました!もし、貴方様がいらっしゃらなかったら自分達は──」

 

 

 引き止める声を無視してアクセル全開。ついでに適当な試作品(霊装)を四本ほど掴み、撒き菱代わりにばら撒いておく。

 

 

「無視して良かったの?」

 

「終末後に隊列組んで戦うのは大抵メシア関係なんだわ。厄介事はごめんだぜ」

 

 

 多神連合は多彩な国籍の霊能者が各自で好き勝手に戦い、大和神系列は自衛隊と和服とデモニカ(原作再現)が入り交じる。

 

 で、メシア系列は前列にテンプルナイト、中央に一般覚醒者、後列に天使とその契約者が並ぶという陣形を組む事が多く、責任者である司祭達はまず前線に現れないのが特徴だ。

 

 過激派の場合?

 

 まず最前列に反抗的な人間と実験体が追加され、その次に一般覚醒者という名の種馬と母体候補がレベリング目的で置かれ、続いてそれらを戦わせる為の肉盾という名の信徒が立ち並び、その後ろにテンプルナイトが横一列に並んで威嚇する。

 

 最後に契約者を盾代わりに前に置いた天使を置けば、過激派版のメシア陣形の完成だ。クソかな?

 

 ちなみにガイア系列は良く分からんトンデモ兵器が戦場を駆け抜けるので一番分かりやすいぞ☆

 

 多脚戦車が砲撃を行い、自衛隊が弾を気にせずトリガーを引き、昭和から平成ライダーが暴れまわり、ハリセンのようなネタ武器で真剣に戦う姿を見れるのはガイア系列だけだ。

 

 酷い時には水風船やら冷凍マグロや遊戯王やベイブレードも追加され、所属する組織の名に相応しいカオスな光景が見られる事も珍しくない。

 

 

「ふーん……それならそれで、ゴミとはいえ霊装を渡して良かったの?メシア教だよ?他の黒札が難癖つけてこない?」

 

「あー……ベルフェゴール。お前、終末後に外出た事ないだろ?」

 

「……?うん、無いけど?」

 

 

 不思議そうな声が返ってきたので、軽く講義する為に速度を落とす。

 

 

「今の人類はマジで余裕が無くてな?シェルターの大きさにもよるが、本当に小さいところは暖を取る為に聖書を燃やしたし、ガイア連合に擦り寄る為に聖書を燃やしたし、過激派のやらかしをガイア連合や避難民の霊能者、流れのデビルバスターなんかが包み隠さず伝えるお陰で棄教したヤツも多いんだわ──っと」

 

 

 近くの大岩を斜めに切ってジャンプ台に加工。更にアクセルをぶん回して亀裂を飛び越える。

 

 終末後の日本はこういう場所が多いから困るぜ。

 

 

「何処まで話したっけ?」

 

「棄教した人間が多いってところまでだね」

 

「じゃ、そこからか。……聖書は食べられないし、着られないし、住めない。【十戒プログラム】を入れた後にレベルが上がったまともな天使*2の中には寒さで命を失う前に聖書を燃やすよう進言した天使も居たぐらい困窮してるんだ。そんな状況の──」

 

「待って。天使が本当に言ったの?」

 

「おう。天使にとって大切なのは聖書より信徒だからな。MAG的にも主の為にも」

 

 

 とはいえ最終的に天使の言葉に感動した信徒の信仰心(MAG)は天使に流れるようになり、無事に階位が上がるというオチが付く。

 

 ただ、これを天使が上手くやったなと思うか、人間側が実利を取ったと思うかは人それぞれだろう。

 

 

「話を戻すぞ。そんな状況の小規模シェルターで信仰を守るのは厳しく、人間なら誰でも生き残る為の実利を求め始める。──まぁ、早い話がハンターランク*3を意識した生き方になっていったんだ」

 

 

 ショタオジがノリで追加したログボは文字通り小規模シェルターの命綱だ。それでコツコツマッカを貯めて食料を生み出せる悪魔と契約を結び、水を生み出せる悪魔と契約を結び、防衛用の戦力と契約を結ぶ。ガチャはシェルターが崩壊する寸前の〝一か八か〟チャンスだな。

 

 エンジェル?オンモラキの【ムド】で即死するお荷物の枠はねぇよ。……ってのは冗談で、指導者層が回復とインフラを握らないと内部統制が上手く行かず、崩壊へと一直線で進む。というか初期の頃はそれで多くのシェルターが崩壊したし。

 

 そこら辺の事情を簡潔に伝えると、ベルフェゴールは大きな胸を俺の背中に押し付けながら疑問を口にする。

 

 

「でも、それだけだとメシア教を支援する理由にはならないよね?メシア教はメシア教なんだし」

 

「まぁ、終末前ならお前の言う通りだ。ただな、今の日本だと話が変わるんだわ」

 

「んー……?ヒントぷりーず!」

 

 

 あざとい表情でベルフェゴールが可愛くお願いして来たので、少しだけ頭の中で考えた後にヒントを出す──前に。

 

 

「ちょっと派手に行くぞ」

 

「うぇーい」

 

 

 バイクの前輪を一度浮かし(ウィリー)再び落として悪魔を踏み潰す(スタンプ)。さらにトドメのひき逃げアタックだ。……ガラクタ(モヒカン)製なのにやけに硬いな。

 

 

「セツニキ?」

 

「ああ、悪い。それじゃヒントだ。ここらへんには中規模シェルターが無く、代わりに無数の小規模シェルターが乱立している」

 

「つまり、戦力的には何処も変わらない……?もう一声!」

 

「んー……小規模シェルター同士は余り離れておらず、レベル5の霊能者なら多少の危険で移動できる」

 

「………あっ、そういう事か!」

 

 

 気付いたか。

 

 

「何処かの勢力が力で纏め上げるには力量差が無く、かと言って交渉で纏めるには幹部の席が足りない。そして防衛の要である霊能者は個人で()()()()。だからあそこの穏健派は教義に固執出来なかった。……これで合ってる?」

 

「正解だ。補足するなら周辺全てに襲い掛かる過激派が居たってのも理由の一つになるぞ。そのお陰でここらへんのシェルターは互助同盟を組めたらしい」

 

 

 シェルターの責任者は回復やインフラを握って命令していたが、より好条件のシェルターが近くにあるなら現場は逃げる事も選択肢に入る。

 

 命を賭けて戦って、他の住人と大差無い雀の涙の報酬。

 

 たまに会う近くの同業者は女や男を侍らせ、食べる物にも困らず、着る衣服や霊装は常にピカピカに磨かれている。

 

 これでメシア教の汚名を背負ったままの穏健派シェルターの為に働けって言われたら誰だって嫌だろう。実力的にも大した違いは無いのだから。

 

 

「なるほどね。霊能者の引き抜きが横行して報酬が釣り上がり、破産寸前で上層部が手を組んだってところか」

 

「いや、その前に過激派からの襲撃があったみたいだぞ。それを一致団結して追い返した結果、お互いが生き残る為に教義や霊能者の扱いに関して譲れるところは譲った感じだ」

 

「譲らなきゃ防衛戦力が消えるから?」

 

「移籍に上司の許可はいらんからな」

 

 

 ちなみにここらへんの情報はガイア連合の【基本アプリ】を入れているCOMPから引き抜いた。

 

 【悪魔の行動ログ】と霊能者の動きを見れば大体の流れは見当がつくのだ。ガイア連合(俺達)にとって予想外の行動に出られる余力なんざ小規模シェルターには無いしな。

 

 

「我らが連合は恐ろしいねぇ。メシア教徒に折れさせるなんて偉業でしょ。少なくとも終末前なら考えられないよ」

 

「独力で信徒を守れない奴が悪い」

 

「セツニキは厳しいね」

 

「いや、厳しい以前の問題だろ」

 

「その心は?」

 

「大抵の人間は衣食住さえ確保出来れば基本的に現状を変えようとはしないんだよ。なのに信徒が〝移籍〟を考えるって事は、シェルターの長が統治者としても神としても失敗してるって事になる」

 

「なるほど。誰だって居心地の良い場所からは離れたくないもんね」

 

 

 そんな会話をベルフェゴールとしているうちにコンクリートで作られた現代建築が見えてきた。

 

 壁に囲まれている訳でもない。結界が張られている訳でもない。

 

 荒野に飲み込まれてる訳でもなければ、廃墟と化している訳でもない。

 

 なんというか荒野のど真ん中に建築済みの街を直接置いたと言うべきその光景は、確かに()()()()という言葉以外が思い浮かばない、見た者に不思議な感想を与える奇妙な光景だった。

 

 

 

 

*1
小ネタ 転生者と各種蘇生魔法に懲りない人 に書かれている公式設定。

*2
☆【一神教】エクソシストスレ part40 で語られていた貴重な天使達。たぶん出現率は大連携!!オーディンバトルの神器レアぐらい。主を感じます……!

*3
小ネタ ハンターランクって?で詳しく説明されてる要素。要約するとガイア連合の役に立つと色々支援が受けられるよ!って感じ。





書いてる時のイメージは30人前後の小規模シェルターが10個ぐらい近場に集まってる感じ。

何処のシェルターもレベル10前後の霊能者しか居ないので、一つに纏まらないし、纏められない。

たぶんレベル20ぐらいの霊能者が現れれば容易く王様になれる立地。その苦労に見合うかは知らん。


以下、見る必要なし!



【挿絵表示】



「やぁ、どうしたんだい?お姉さんに何か質問かな?」


ガイア連合の黎明期から製造班の指導役の一人として活動していた大悪魔兼シキガミのお姉さん。終末後についに便所の悪魔を卒業した。

真面目な助言もするが、基本的にはスケベ部の商品開発や堕落した生活を送る為の製造の方が好き。エアコンとか炬燵とか自動調理器具などの生産が得意。

実はとある賭博師の助言により、現地民含むペルソナユーザーには優しいお姉さんとして各種装備の提供を行い、相談には親身になって応えていた。

集合無意識に接続出来る人間は本霊の容姿を変えたいベルフェゴールにとって全てを捧げる価値のある人間なのだ。当然だよね。

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