【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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野外と廃墟

どっちでキャンプするかを最後まで迷ってたのは秘密

作者の想像する終末キャンプはこんな感じです


超終末級の幸運4

 

 俺の希望も虚しく、残念な事に岡山駅の北側は深い森で分断されていた。西側には毒沼が広がり、改めて魔界落ちの影響を実感する事に。

 

 強行突破するのもアリだが、別に急ぐ旅という訳でもない。ベルフェゴールと話し合った結果、今夜は適当な空き家で一泊する事になった。

 

 

「流石に十数年も人が住んでない場所だと傷んでるな」

 

 

 適当なマンションの一室をチャチャッとこじ開け、そのまま二人で中に侵入。ざっと見た感じ室内には殺された痕跡が残っておらず、どうやらこの部屋の主は避難した先で帰らぬ人となったようだ。

 

 

「魔蟲が湧いてないだけマシじゃない?」

 

「そっちは雑に祓えるから居ても居なくても変わらねぇよ」

 

 

 生前(?)は綺麗だったであろうベッドのシーツを剥がし、浄化の霊符を起動。埃臭い部屋は瞬時に清浄な空間へと変化する。

 

 後は霊符から適当に毛布やシーツを引っ張り出せば、寝床の準備は完了だ。

 

 

「寝床の出来をボクの身体で確かめておく?」

 

「インフラが死んでなきゃそれでも良かったんだけどな」

 

「それは残念」

 

 

 電気ガス水道全てが死んでる以上、食事の準備に掛かる時間は野営と大差ない。つまり、キッチンがあるのにベランダで火起こしする必要がある訳だ。

 

 リビングにあった適当な椅子をベランダまで運び、霊符から野営道具を取り出して調理開始。まぁ、お湯を沸かして鍋にレトルトカレーとパックご飯を投げ込むだけなんだが。

 

 

「終末後だと金を食ってるようなもんだよね、コレ」

 

「ガイアカレーもパックご飯も需要が供給を上回ってるしな」

 

 

 米を作れる支部は全力で生産しているが、電脳界の麦とは違い、現実では時間加速を行えないので生産量はそこまで多くない。

 

 いや、正確には量を作ってる場所もあるにはある。ただ黒札の舌には合わない、海外の米のような量を優先した生産方法の為、俺達の舌には合わんのだ。

 

 さらにそういう風に作られた米は()()()()でしかなく、ガイア連合のブランド米のような霊能効果が無いのも痛い。

 

 そのせいで余計にガイア連合のブランド米には高値が付いてしまい、値崩れが起こらないという悪循環に陥っていってしまっている。多神連合の神や悪魔にも人気だしな。

 

 ちなみに星祭神社前の水田は神田なので、基本的に星霊神社と星祭神社の儀式に使う方が優先だ。儀式後はそれぞれの神社に下賜されるが、もちろん需要を賄えるほどの量は無い。

 

 やはり隠し畑は正義。イワナガもサクヤも豊穣神としての権能があって良かったぜ。

 

 

「君たち黒札は米が好きだよねぇ。そのせいで西洋の豊穣神は勢力を伸ばせないって嘆いてるよ」

 

「実は大和神も昔の米しか生み出せなくて苦労してるけどな」

 

「そうなの?」

 

「おう。日本人が長い年月をかけて作り上げてきた米の味はお前らが現役だった時代とは比べ物にならんのよ。だからこそ現代米の生産を行えるサクナヒメは人気だし、あそこを俺達の()()だと勘違いした悪魔は滅びる事になったんだぜ」

 

 

 俺達が大切に守っている場所を多神連合の駄目な方や過激派が狙う事は良くある事だが、サクナヒメのところだけはなぁなぁでは許されなかった。

 

 修羅勢は総出だったし、普段は深層で暮らしている真修羅達ですら巣穴から出てきたぐらいだ。

 

 

 お前を殺す。

 

 

 その意思を体現した俺達の殺意は凄まじく、()()に触れた悪魔達が本霊まで消されかけた事は言うまでもない。

 

 

「あ〜……あの殲滅戦ってそのせいで起きたんだ。本気で防衛するような土地でも無いし、不思議だったんだよね」

 

「お前達も気をつけろよ?幾ら俺でも庇えんぐらい米に関しては黒札(俺達)は本気になるぞ」

 

「肝に銘じておくよ」

 

 

 苦笑いを浮かべながらも鍋に視線を向けるベルフェゴールを見て、俺の中の〝いたずらごころ〟の夢特性が悪さをする。

 

 

「ところでベルフェゴール。お前達はキリスト教が定めた『七つの大罪』の権能を有する大悪魔なわけだが、怠惰を極めた食事の行き着く先を知っているか?」

 

「……知らないけど、どうせ一口で生存の為に必要な栄養を全て取れる料理なんかに行き着くんじゃない?」

 

「その考えも間違いじゃないが、本物はもっと凄いぞ」

 

 

 沸騰するお湯からパックごはんを引き抜き、スプーンで二つに割った後、片側を掬ってルーを入れる()()を作る。

 

 その後もう一度鍋に手を突っ込み、ガイアカレーを引き出して空いてるスペースに流し込んだ。

 

 

「例えばこのカレーだが、怠惰を極めると()()なる」

 

 

 霊符をばら撒いて術式を起動。発動した術式は──探求ネキが得意とする()()()()()

 

 仙人系列からの発展ではなく美食の為に一から生み出された()()は、様々なトリコ食材を作る上で欠かせない術式の一つだ。

 

 術式の燐光が収まる頃にはパックの中にあった筈のカレーは消え失せ、ただ()()()()()()()()スプーンだけが鎮座する。

 

 それをベルフェゴールに差し出し、視線で咥えるように指示を出した。

 

 

「…………!これって──」

 

「口に運ぶという行為だけで、本来は食事する為に必要な咀嚼や消化といった肉体の動きを全てすっ飛ばし、()()()()()()という結果だけを与える〝概念料理〟ってヤツだ。どうだ?怠惰だろう?」

 

 

 栄養もちゃんと摂取出来るし、味も感じられる。食べ過ぎればもちろん太るし、これで消化器系が弱る事も無ければ顎が弱くなる事も無い。もちろん、虫歯にならないわけでもない。

 

 分かりやすく言えばキングクリムゾン(キンクリ)だな。〝食事〟という概念を直接肉体で摂取する。〝霞食〟はそんな術式だ。

 

 

「忙しい人間には神のような術式だし、時々医療系俺達や忙しいヤツも使うが、これだけで生きている奴は極少数だ。それが何故か分かるか?」

 

「……分からないね。これこそ君達が好きな『タイムパフォーマンス(タイパ)』が良いというヤツでしょ?人間はわざわざ食事に無駄な時間を使うより、その時間を趣味に使った方が有意義だって言うじゃん」

 

「ま、悪魔ならそう答えるよな」

 

 

 だけど残念。人間は我儘な生き物なんだ。

 

 鍋に残っているパックご飯とカレーを先程のように合体させ、ベルフェゴールの目の前で食事を始める。

 

 もちろん食事中に喋ることなんて事はしない。何か言いたげなベルフェゴールは無視だぜ。

 

 それから十分ほどガイアカレーを楽しんだ後、俺は空のパックの上にスプーンを置き、懐から取り出した煙草に火を付けた。灰皿は部屋にあった物を拝借した借り物だぜ。

 

 

「ふぅー……。やっぱ食後の一服は最高だぜ」

 

「いい気分なところ悪いけど早く答えを教えてよ」

 

「今の俺の姿が答えだぞ?」

 

「……ふざけてるの?」

 

「嘘じゃないんだが……まぁ、悪魔には少し分かりづらいか」

 

 

 灰皿に一度灰を落とし、口に咥え直す。ついでに食器棚からパクってきたカップを浄化した後、残り湯で珈琲を淹れてベルフェゴールに手渡した。

 

 

「俺達人間は〝無駄〟が好きなんだ。例えば、この食後に煙草を吸ったり、お茶や珈琲を飲む時間。効率的に生きるならバッサリ削って自身の趣味やスキルアップの為に使うべきだが、そこまでする奴は少数だろう?」

 

「適度に身体を休めないと逆に非効率になるから──って話じゃないよね?」

 

「人間の中には科学的に非効率だと証明されてなお、食事をしないで働けと言う奴が居るんだぜ?」

 

 

 過労死なんて言葉が生まれる方が可笑しいと、怠惰を司る大悪魔に突っ込まれたのは人間ぐらいだろう。

 

 掲示板に居る俺達のショタオジ酷使発言に引いてる辺り、ガイア連合でも数少ないショタオジに同情してるヤツの一人が大悪魔な事には苦笑いしか浮かばない。

 

 

「……人間って時々悪魔を超えるよね」

 

「有史以来、世界で最も同族を殺してる種族だからな。キル数で言えば鳩の洪水を超えてるんじゃないか?」

 

「当時の人口を考えれば……待って、本当に超えてない!?」

 

 

 人類の所業に今更ドン引きするベルフェゴールに曖昧な笑みを返す。裏で悪魔が手を引いていた今回の一件はどちらの罪に加算されたのやら。

 

 まぁ、それを除いても洪水超えは果たしているだろうが。

 

 

「さて、話を戻すぞ。今回は無理だったがカレーを食べている最中に福神漬けに手を伸ばす事もあるし、サラダを食べる事もある。これらは一瞬で食事を終えたお前には不可能な事で、無駄を愛した俺だからこそ出来る訳だ。だからまぁ、人間は怠惰の行き着く先だけでは生きられないってのが俺の持論だぜ」

 

「そんなの気にならないぐらいさっきの話が衝撃過ぎて、そんな話はどうでもいいよ、もう……」

 

「くくく。大悪魔のくせに繊細だな、お前は」

 

 

 衝撃から立ち直れないベルフェゴールを肴に、煙草と珈琲の味をゆっくり楽しむ。

 

 耳を澄ませば誰かの悲鳴が聞こえ、悪魔の嘲笑が鳴り響く。

 

 ベランダから見える景色は廃墟で、目の前の道路では五人組のデビルバスターと悪魔の戦闘が始まった。

 

 うーん、この終末感よ。堪らないぜ!

 

 とりあえず至福の時間を守る為にベランダから【マハンマオン】をブッパした(霊符を投げつけた)俺は悪くない。

 

 

 

 





ショットガンで鍵をぶち抜くシーンを入れようか迷って、修羅勢だし道具いらんなで決着してしまった悲しみ
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