【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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時系列的にはアニメ放送後になります。



陰陽寮の日常 αテスター達の遊戯会1

 

 

「あ、セツニキ。丁度良かった。今ヒマです?」

 

 

 久々に星霊神社へやって来た俺に声を掛けてきたのは、ガイア連合が誇る才媛、探求ネキだった。

 

 

「おう?どした?」

 

「ちょっと手伝って欲しい事がありまして」

 

「それは構わんが……俺に手伝えるレベルの話か?」

 

 

 初期の頃ならともかく今のガイア連合には俺以上の術者も多い。

 

 製造関係も基本的には本職に劣るし、自分で言うのもなんだが、俺は新規アプリゲーの配布SSR枠と似た性能しかない。

 

 早い話がガチャ産SSRを引いた時点でリストラされる枠であり、その後はベンチで仲間たちを見守るポジションのままサービス終了まで出番が無いのだ。だいたい新強化システムからも漏れるし。

 

 

「えっと、私が終末に向けて増えるであろう現地民の覚醒者向けにアニメを使って知識を広めているのは知ってますよね?」

 

「星祭のみんなで見たばっかりだぞ。公開していい情報の取捨選択に苦労が垣間見えたところが面白かったな」

 

「そんなところに注目するのは修羅勢(セツニキ達)だけですよ」

 

「さよけ」

 

 

 呆れた視線を向けてくる探求ネキに肩をすくめてみせる。

 

 素人に深く教えれば興味本位で事故が起こり、浅く教えれば何の役にも立たないという難しさ。

 

 それを見事にアニメという娯楽に落とし込んだ手腕は、俺じゃなくても術者なら称賛すると思うんだが。

 

 

「それで?これから何をするつもりなんだ?」

 

「アニメという形で気付く者には気付ける形で広めはしましたが、それだけでは全てを補えませんからね。次はより深い知識を、求める者だけが気付く形で広めようと思ってるんです。──具体的にはTRPGという形で」

 

「TRPGか……」

 

 

 TRPGの歴史を語るとしたら1974年に Tactical Studies Rules 社から発売された『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』は外せない。

 

 日本のRPGにも多大な影響を与えたこの作品は1970年代初頭に流行していた『ウォー・ゲーム*1』をベースに、ゲイリー・ガイギャックスとジェフ・ペレンという名の二人が中世の戦闘を主軸に魔法やモンスター、成長要素を追加した『チェインメイル』という作品を作成。

 

 その『チェインメイル』をさらに発展させた物になるのだが……実は多くの日本人がTRPGと聞いて思い浮かべる物とは少し違ったりする。

 

 実は初期版──現在では『オリジナル・ダンジョン&ドラゴンズ(OD&D)』と呼ばれる作品ではキャラクターのステータスのランダム性が高く、要所要所で使われる成功判定も複雑だった。

 

 分かりやすく言えば、初期版はキャラロストする事が多いのだ。ルールブックも薄い冊子でしかなく、大半の裁定は『ゲームマスター(GM)』に委ねられていたし。

 

 そこから何度も改定を重ね、俺達が良く知るD&Dになっていった訳だが……語ると長くなるので興味があるなら調べてみるといい。俺もそこまで追ってなかったから分からん。

 

 

「ベースルールは何でやるつもりなんだ?既存のルールブック(ルルブ)を流用するなら星祭から持ってくるが」

 

「もちろん女神転生──と言いたいところですが、ルルブが無いんですよね。完全暗記してる人も居ないでしょうし」

 

「あー……」

 

 

 知ってる人は知っていると思うが、実は女神転生もTRPG化していたりする。

 

 残念ながらTRPG人気が再燃した時には絶版となっていたうえ、市場に出回ったルルブの数も少なく、中古品も高値で取引されていたので、実際にプレイした事ある奴は俺達でも少ないだろう。

 

 そして、この世界にアトラスは存在しない。──つまり、だ。

 

 

「一からこの世界に合わせて作るのか。長い戦いになりそうだ」

 

「まぁ、無理そうなら設定集として販売するつもりです。TRPG化するのは半分趣味みたいなものですし」

 

「さよけ」

 

 

 とりあえず、一旦星祭に戻って既存のルルブでも持ってきますかね。

 

 

 

 

 星祭の宴会場に複数用意されているルルブを一種類づつ霊符にしまい、再び星霊神社に戻る。

 

 向かう先は初期組か星霊神社を真面目に探索した人間しか知らない秘密の隠し部屋。ショタオジの悪戯心によって作られた、一度は自力か偶然によって辿り着かないと決して辿り着けない部屋だ。

 

 

「持ってきたぞ──って、おろ?」

 

 

 襖を軽く開いた俺の視界に入ってきたのは、仰向けで寝転がっている黒髪の美少女のあられもない姿。

 

 近くにスマホが転がってるところを見るに、どうやら休憩中らしい。

 

 

「こっちに居るなんて珍しいな?アラクネキ」

 

「いや〜製造班に依頼された反物(たんもの)を納品しに来たんだけどさ。その帰りに俺達に捕まりそうになってねぇ……しつこかったから逃げてきちゃった」

 

「なるほど」

 

 

 まぁ、俺達の気持ちも分からんでもない。誰だって金を出すなら最強装備が欲しいからな。

 

 アラクネキは最初期のオフ会参加組の一人で、エドニキ達と同時期に覚醒した製造系俺達だ。

 

 現在の所属は星祭神社だが俺達のような修羅勢という訳ではなく、どちらかと言うと素材集めの為に異界に潜った結果、気が付けばLv30を超えていた俺達の一人だったりする。

 

 大半の製造系俺達は全体魔法が飛んでくる辺りで挫折したので、ある意味では俺達の同類──というかエドニキやアラクネキのような製造系のトップに居る連中は、ほぼ100%()()()()を嫌がり、俺達修羅勢が戦ってる横で採取や採掘を行って一喜一憂してるぐらいにはぶっ飛んでいたりする。

 

 つまり、なるべくしてなったというか、方向性が違うだけで間違いなくアラクネキは修羅勢なのだろう。うん。

 

 

「別に次々合流してる俺達の装備を作るのが嫌って訳じゃないよ?だから製造班からの依頼で機織(はたおり)したしね」

 

 

 そこで言葉を一旦区切り、近くにあるスマホを引き寄せて何らかの操作する姿を眺めていると、ずいっ、とこちらにスマホの画面を向けてきた。

 

 そこにはびっちり埋まっている制作依頼を管理しているスケジューラーと、カンストしている未読のメールの通知が。

 

 

「でもさ、アタシの技術は素人だった頃から初期組が素材を無償で融通してくれた〝優しさ〟の上に成り立ってる訳じゃん?だからアタシの中での優先順位は決まってるし、流石に合流組までは手が回らんのよ」

 

 

 メールを見ずに消去し、スマホを畳に投げ出して大きく溜息を吐き出したアラクネキの表情には疲れが見える。

 

 悪魔の素材(フォルマ)を糸に変え、布を織り、服を縫う事が出来る()()のスキル。──と言ったら、世界中の霊能組織に殺されるだろう。

 

 衣食住という言葉がある通り、〝衣〟は人が生きていく上で必要な物に数えられているぐらい大切な物だ。

 

 もちろんそれは霊能業界でも変わらず、むしろ必須と言っていいほどに様々な場所で使われている。

 

 鎧の下に着る鎧下やギャンベゾンから始まり、室内を霊的な監視から隠す為のカーテンまで。

 

 呪物を封印する為の聖布なんかもあるし、性的な暴行から貞操を守る為に下着に【霊的防御】の付与(おまじない)なんて女性なら誰しもが欲しがる物だろう。

 

 それを【権能】レベルで行使出来るアラクネキの価値()は戦う事しか出来ない修羅勢よりも高く、青天井どころか連合の幹部クラスと同等と言っても過言ではない。

 

 俺もいざという時は命を賭けて逃がせと修羅勢に命じているぐらいだし。それぐらい技術力のある【裁縫】持ちは替えが効かん。

 

 だからこそ俺達にも大人気な訳だが……命の掛かる装備を少しでも良い物にしたいという俺達の気持ちも良く分かるし、とてもじゃないが依頼するなとは言えん。

 

 かと言って放置するのも駄目だ。ショタオジは俺達同士の争いを忌避してるし。

 

 

「俺達が依頼してる幾つかを星霊神社の方に回すか?そうりゃ多少新人の依頼も受けられるだろ」

 

「だが断る。というか切り捨てるなら下の方だよ。言い方は悪いけど、他人の金で自分の現在の技術を全て注ぎ込める〝美味しい依頼〟は上を目指してる者同士で争奪戦だし」

 

「そうなのか」

 

 

 戦艦金剛の制作秘話を思い出すな。あれも実験的な技術を日本の金で突っ込んだヤツだったらしいし。

 

 

「セツニキ達戦闘系修羅勢が打倒ショタオジを目標にしてるなら、私達製造系修羅勢はショタオジが使える装備をメイド・イン・自分で作るのが目標だからね。一応、ガイア連合には世話になってるし、その感謝の気持ちとして低レベルの俺達用の霊装も作ってるけど……量産品はクソ食らえって考えの俺達も多いよ?」

 

「まぁ、その気持ちは分からなくもない」

 

 

 聖剣や魔剣を作れる技量を持つ匠が一人前の技量があれば打てる鉄の剣を打ちたいかと問われたら、百人に聞けば百人が〝ノー〟と答えるだろう。

 

 職人なら自分の全ての技量を注ぎ込みたい。趣味でやってるなら尚更だ。

 

 

「低レベルの霊装に全力を出す必要がある名家の装備なら楽しいんだけどね〜。あれはあれで勉強になるしさ」

 

「装備可能レベルを極限まで下げつつ盛り込めるだけの付与を突っ込むのは、一つ上の素材を加工するのとは使う技術が違うからな……」

 

「黒札だと一瞬で使わなくなる装備でも名家なら一生もんだし、裏技とパズルチャレンジは脳汁ドバドバ出るよ!」

 

「趣味でやると技術料と素材費が完成品に見合わないけどな」

 

「だから人気なんだよ。他人の金で好き勝手出来るからさ」

 

 

 ちなみに裏技とは高位悪魔のフォルマを作りたい霊装のレベルまで()()()()()()()()()()作業の事を指し、パズルチャレンジは付与を刻む時の〝入れ方〟の工夫を指している。

 

 ゲーム的に説明するならテトリスを思い浮かべると分かりやすい。様々な形や色のスキルを隙間無く入れるイメージだな。

 

 それに加えて素材の段階で不必要なスキルを削除して入れたい効果だけを残し、素材を中間素材に加工する段階で新たに入れたい効果を付与し、霊装に加工した時にさらに付与して、完成品した霊装にも仕上げの付与を入れる事で低レベル用高位霊装は完成する。

 

 素材の組み合わせによって勝手に新たな効果が付いてくる事もあるし、スキルの組み合わせが悪いと無駄な空白が生まれたりするので〝パズルチャレンジ〟な訳だ。ハマる奴は本当にハマるんだよな、これ。

 

 それから暫くアラクネキと製造談義で盛り上がっていると、待ち人がついにやって来た。

 

 

「お待たせしました──って、アラクネキ?」

 

「おいーす!お邪魔してるよ〜」

 

「……見たところ俺達から逃げてきた感じですか」

 

「そそ。修羅Tぐらいなら量産するけど、それ以下はやる気が出ないのだ」

 

「分かります。私も基本的にレシピ投げて放置ですからね」

 

「だよねぇ」

 

 

 二人が製造談義で盛り上がってる隙に端へ寄せていたテーブルを引っ張り出しておく。

 

 さらに紙とペンとサイコロとルルブを用意しておけば準備完了。これで何時でも始められるぜ。

 

 

「おろ?二人でTRPGするん?アタシも参加していい?」

 

「参加するのは大歓迎ですが、やるのはTRPGじゃなくてTRPGの制作なんですよね。それでも構いませんか?」

 

「なにそれ面白そう」

 

 

 ワクワクした表情のアラクネキが机の前に陣取り、その横に探求ネキが座る。俺は反対側に回った。いわゆるGM席ってヤツだな。

 

 

*1
ミニチュアを使って歴史上の戦闘などを再現するテーブルゲームのこと。





緋咲虚徹様から許可を貰ってから書き上げるまで長かった……!

零からルールを作るのは楽しいけど、それを分かりやすく説明する能力が作者には足りなかった(笑)
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