【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「さて、まず始めに俺達が決めなきゃいけない事は、これを真面目な指南書にするか、それともゲーム要素をメインに押し出すか、だな」
「んえ?普通にTRPGを作るんじゃないの?」
「終末後に増える覚醒者達向けの教科書になる予定もあるんですよ。セツニキの発言はそれを含んだ上のモノになります」
「ほえ〜」
気の抜けた返事を返しつつ手元のメモに書き込むアラクネキ。その動きを視線で追いながら続きを語る。
「指南書をメインにする場合、完成形は遊びながら学べる教科書みたいな形になるだろう。具体的には前世で一大ジャンルになった頭を鍛える系のゲームだ」
脳を鍛える大人のDSトレーニングや百マス計算なんかが有名か。ある意味ではタブレット学習の先駆けみたいなもんだ。
「逆にゲーム要素をメインに押し出す場合、まず間違いなく指南書にはならん。これはゲームとしての面白さを維持する為にプレイヤーへの知識の要求量を下げる必要があるからだ」
「具体的にはどんな感じです?」
「例えば【アギ】を使う度に紙に火炎術式を書かせるとする。この場合、遊んで学べる指南書としては満点だがゲームとしてはテンポが死んでるクソゲーになるぞ」
「センセー!霊力操って直接火炎術式展開しちゃ駄目ですか!」
「それが出来るなら指南書なんて作らん──っと、そうか。アラクネキは知らんのか」
「んえ?」
探求ネキは──香川支部と付き合いあるから大丈夫そうだな。
「
紙にペンを走らせ、分かりやすくゲーム風に書き込んでいく。
ステータスが1D6で決まると仮定した場合、
現地民 → 補正無し
現地民(有能) → 数値に+10〜20される
星祭の巫女(や全盛期名家) → 数値に+30〜60される
俺達(と現地の英雄) → 数値に+50〜100される
ショタオジ(と主人公) → 数値に+?される
尚、この初期値の半分がレベルアップ時の上昇値とする
「いや、草。とはいえ流石に現地民を過小評価しすぎじゃない?」
「いえ、ゲーム風に書いてますがセツニキの想定は間違ってないかと。私達は最初からレベル1の悪魔を一人で相手に出来ますけど、現地民にとってはレベル1の悪魔ですらチームで戦う必要がありますし*1」
「えぇ……」
想定していた以上に現地民が弱すぎたのか、軽く引いているアラクネキをよそに探求ネキが自分の考えを口にする。
「こう改めて可視化されると狙う客層に悩みますね。大抵は現地民クラスになるでしょうが、こういった知識を必要とするのは有能枠や全盛期の名家でしょうし」
「それもあるが、狙う客層によってゲーム性を変えなきゃならんのよ」
「と言うと?」
「一番下に合わせるならキャラロスト前提になるんだ。レベル10まで育ったら子作りエンドで新しい
「あー……簡単過ぎても危険ですか」
「うむ」
下手に現地民レベルの強さでゲームを成り立たせると、終末後に現地民が悪魔を舐める危険性が生まれてしまう。
かと言って、真ん中辺りに向けたTRPGでは一番数の多くなるであろう層が着いてこれない。
才能で決まる分野は何時の時代もピラミッド型の分布になるのだ。そうでなかったら〝特権階級〟なんて言葉は生まれていないしな。
「聞いてる感じだとシステム自体は中間層を狙って、ストーリーで人類の大半は現地民クラスって説明するしかなくない?」
「もしくは最初から死にゲーとして作り、ルルブを辞典みたいな厚さにする形で知識を提供ですね」
「だから指南書とするか、ゲームとするかを最初に決める必要があるんだよ」
「「あ〜……」」
ゲーム性が全く変わるからなぁ……。パラノイアとソード・ワールドぐらい変わるし。
「セツニキ的にはどっちが良いと考えてますか?」
「死にゲーだな。そっちなら新しいキャラシにする時に両親の霊的素質を引き継げるって設定でボーナスを入れられる」
「両親が優秀なら最初からボーナス込みでキャラを作っても良いわけですか」
「それをダイスで決めるのもTRPGらしいかもね。優秀な両親の低いところを引き継いだせいで現地民に落ちたり、尖った両親の良いとこ取りをした結果、全盛期名家クラスが生まれるのも楽しそう」
「そして始まる人間ダビスタと蔓延る選民主義」
「最高に人類ですねぇ」
霊能組織としては間違ってないのが困る。
「それでどうする?どうせ仮設定だし、このまま進めるか?」
「それで良いかも知れません。変更は何度でも出来ますし」
「最初から神ゲーは下敷き無しじゃ無理だろうしね」
「それじゃまずは死にゲーで確定だな」
紙に死にゲーとデカデカと書き、次の設定に移る。
「次はゲーム中の判定に使う物だな。具体的にはジョブ制にするか、スキル制にするか、ステータス制にするか」
「混合は駄目なんですか?」
「複雑にすればリアリティは出るし、参考書として相応しいんだが……データの管理がなぁ……」
RPG物のお約束のレベルアップは何度も消したり書いたりする関係で普通に間違いが多々起こる。ついでに言えば、プレイヤーがスキルの宣言を忘れたり、アイテムを書き忘れたりでグダグタになるまでがお約束だ。
「でも簡単にし過ぎると参考書にすらならなくない?その為に作るんだよね?」
「ですね。ある程度はアニメの方でカバー出来ますが、そこから突っ込んだ物を教える為に作るわけですし」
「んー……ならジョブ切って、ステータスでスキル習得にするか?それなら多少は指南書に相応しくなると思うぞ」
「例えばどんな感じです?」
「さっきの説明をそのまま利用して腕力3でスキルを一つ習得、6でスキルの強化か追加された新規スキルの選択って感じにステータスで習得出来るスキルを縛るんだ。最初のステータスでキャラの方向性は決まっちまうが、どうせ死ぬか子作りして継承していくシステムだし上手く行くと思う」
選択出来るスキルを複数用意すれば、それなりの形に収まるとは思う。管理はめんどいが。
「えーっと……現地民だとレベル10で最大36かな?」
「ですね。3、6、12、24、48の倍々計算だと五段階目のスキルは厳しい感じになりそうです」
「いや、そもそも初期ステで6持ちは天賦の才になるんじゃないか?レベルアップの上昇値が3なのは6だけだぞ」
「あ〜4と5は2だし、3以下は1になるのか」
「1の扱い次第では?成長しないのも面白そうですが」
「継承していけばどうせ増えるし、成長しないのもアリだな」
非力なキャラや知識無しの孤児キャラなんかが生まれるキッカケにはなるだろう。速度が遅いなら肥満キャラで良い。
精神1は……現実でも時々見かける大人子どもか?
「後はペルソナ使いとか特殊な覚醒者への対応ですかね?」
「ペルソナ使いは精神の初期値6のみ習得可能な特殊スキルで良いだろ。ガイア連合に居るペルソナ使いは精神的に何処か可笑しいし」*2
「あぁ〜……確かに精神的にぶっ飛んでる人多いよね」
「おっと?いきなりアウェーになったんですけど?」
アラクネキと二人で生暖かい視線を向けると、わざとらしいリアクションで自分は常人だと主張する探求ネキ。
ペルソナ使いはみんな
──だって、そうだろ?
自分の醜い部分ってのは本来、目を逸らしたり、気付かないフリをするものだ。多くの人間はそうやって何とか折り合いをつけて生きている。
だからこそ
それぐらい醜い自分ってのは受け入れられない筈なのに、それをアッサリ受け入れるペルソナ使い達が精神的に弱い筈が無い。
というか、そうじゃないとシャドウの多さに説明が付かんだろ。俺のように年齢を重ねて自分がどういう人間か受け入れた訳じゃあるまいし。
「探求ネキのアピールは無視するとして、デビルシフターはどうする?」
「どんなステでも選択可能。但し自身の精神の数値以上の悪魔になった場合、乗っ取りが発生する場合があるでいいだろ」
「それだとみんな悪魔召喚士に流れません?」
「探求ネキ。悲しい真実を教えてやろう」
「?」
可愛らしく首を捻る探求ネキと視線を合わせ、真剣な眼差しで──告げる。
「COMPあるなら現地民は悪魔召喚士になるのが最強なんだ」
「まさかの指南書作り全否定!?」
悲しいけど、これが現実なんだ。
「あー……確かにアニメの主人公達ならともかく、一般的な生徒はCOMP入手 = でエンディングになるよね。言っちゃなんだけど自分と同じ
「俺みたいに古式悪魔召喚士から
「陰陽寮の設定的には行けるけど、終末後に魔匠が居るかも問題よねー」
ゲームとは違って現実故のジレンマと言うべきかね?終末後の環境を考えると、魔晶武器使いは俺達のお気に入り以外は無理だろう。
もちろん、スキルとして実装するのは簡単だ。ようは悪魔のステータスを持った武器データを作るだけだし。
とはいえ当初の目標を考えると、追加のルルブでの実装辺りが現実的になりそうだ。
「……こうやって改めて考えてみると、終末後の現地民は地獄ですねぇ」
「現実の陰陽寮が潰れてなかったらワンチャンあったんだけどな。
「好き勝手盛ってクソゲー作って皆で笑ってただろうね。制作の際の制限なんてないし」
メガテンTRPG的には巫女もシスターもナースも回復役だが、現実では【ディア】を使える人間が担当する事になると思う。
もちろん終末後では貴重になる事が確定している薬品を駆使すれば、どんな人間でも医者やヒーラーの真似事は出来るだろう。
だが野戦キャンプより酷い環境で治療を行う過酷さは想像以上に厳しいし、そもそも薬品を扱うにも知識がいる。その前提を満たせていないやつをヒーラーと呼んで良いのかは議論が必要だ。
他の職業も同じだな。武器無しで悪魔に挑むのは蛮勇に過ぎず、無手系のクラスは指南書に入れるには不適格。
武器持ちにしても剣を持たせるぐらいなら鈍器か槍を持たせるべきだし、理想言えば銃一択。
だからこそ俺は悪魔召喚士が最強だと断言した訳だ。
「……ふーっ」
考えが纏まった探求ネキが大きく溜息を吐き出し、軽く頭を振って気持ちを切り替える。その動きに合わせて長く綺麗な髪が舞った。
その美しい姿に視線を奪われていると、探求ネキはこちらを気にせずハッキリと自分の考えを口にする。
「試作ですし、ペルソナユーザー、デビルシフターだけに絞りましょう。それ以外は後回しです」
「あいよ。データ管理を楽にする為にデビルシフターとペルソナ使いは共通のカードを使う形で良いか?」
「はい。それで構いません」
紙にデビルバスター、ペルソナユーザー、デビルシフターの三つの単語を書き込み、それぞれに条件を書き足す。
まぁ、条件あるのはペルソナユーザーだけなんだが。